リタイヤメント準備 - 401(k)かIRAか、どっちがいいの?

老後の資金を貯める主な方法には、雇用主の提供する401(k)、403(b)、457などのグループ・プランに参加し給与天引きで積み立てをしていく方法(ここでは401(k)と総称します)と、Traditional IRAやRoth IRAなどに個人的に積み立てをしていく方法があります。401(k)もIRAも、どちらもTax Deferred(税遅延)プランと呼ばれ、利回りへの課税は老後に資金を引き出すまで遅延されるという大きな魅力があります。では、違いは何なのでしょう。 401(k)かIRAか、どう使い分けるのがいいのでしょう。それぞれの強みと弱みを比べてみましょう。

401(k)のいいところ

1.積み立て上限(Max Contribution)が高い

401(k)に積み立てることができる上限額は$17,000(2012)であるのに対し、IRAは$5,000(2012)です。50歳以上であれば、401(k)ではさらに$5,500追加で積み立てが許されますが(合計$22,500)、IRAでは追加額は$1,000(合計$6,000)です。IRAだけの積み立てではリタイヤメント資金を十分に貯めることは困難な場合が多いでしょう。十分な積み立てをしようと思えば、401(k)を利用する必要があるということですね。

2.雇用主からのマッチング積み立て(Matching Contribution)

401(k)では、雇用主からのマッチング積み立てが受けられることがしばしばです。401(k)は法律の範囲内で、雇用主が運用ルールを決められるので、マッチングの額やルールは雇用主によりまちまちですが、典型例でいうと、雇用者がする積み立て額の50%を、給与の6%を限度としてマッチングするというようなケースが見受けられるようです。たとえば年収が$80,000の場合、本人が年に$9,600以上積み立てておれば$4,800($80,000×6% かつ $9,600×50%)を、雇用主が積み立ててくれるということです。これは、まさにフリーマネー、もらわない手はありません。一方IRAでは、このような雇用主からの援助はありません。

3.ローンが受けられる

雇用主によって運用ルールは違いますが、一般的に401(k)からはローンを受けることが許されている場合が多いようです。これに対し、IRAからはローンを受けることはできません。Roth IRAの元金はいつでもペナルティなしに引き出すことができますが、これはあくまで資金の引き下ろしであってローンではありません。人生でちょっとお金がいるという局面で、ちょっと借り入れをしたいというような場合には便利です。ただし、あくまで計画的に。借りるわけですから、ちゃんと返す必要もあります。

4.Sales Loadなどの手数料が免除されることがある

まったく同じミューチュアル・ファンドに401(k)を通して投資した場合と、IRAを通して投資した場合、手数料が違うことはよくあります。たとえば、大きな会社の401(k)プラン経由で購入すれば、個人がIRAなどを通して投資する場合に必要となるSales Loadなどの販売手数料が免除されるケースも多いでしょう。購入するチャネル(誰から購入するか)によって、同じファンドを買うのでも、販売手数料が異なり、より大口の交渉力のある団体や会社を通して購入したほうが、手数料が安いというわけです。自分の401(k)プランにはどのような投資の選択肢があり、手数料はどのくらいか、それは個人的に投資する場合より有利なのか、そうでないのかを把握しておくといいでしょう。

 

IRAのいいところ

1.投資媒体の選択肢がたくさんある

401(k)は法律の範囲内で、雇用主が運用ルールを決めますので、比較的たくさんの投資媒体が提供されている場合もあれば、非常に限られた選択肢しかない場合もあります。いずれにせよ、あらかじめ用意されたファンドの中から投資先を決めねばならないわけですが、これに対し、IRAでは比較にならないほど多種多様な選択肢から選ぶことができます。401(k)で提供されている選択肢のうち、リスク許容度や利回り、手数料などの面において、自分のニーズに合うものが見つかれば問題ありませんが、そうでない場合は、IRAを通してもっとぴったりのものを見つけることが必要かもしれません。

2.投資の変更(売り買い)が簡単

ファンドAはどうも思うように利回りがないので他のファンドに乗り換えたい、あるいはちょっとアロケーションを変えたいなど、投資に変更を加えたいとき、IRAであれば大きな制限なくいつでも自由に行うことができます。これに対し、401(k)の場合は、1年に○回までとか、3ヶ月に1回までなどというように、ファンドの売り買いが制限されていることが少なくありません。ただし、よく計画された長期的な投資をしているのなら、そもそも頻繁に売り買いをする必要はないかもしれませんので、その場合は401(k)で十分であるともいえます。あくまで自分のニーズを知っておくことです。

3.手数料が低く抑えられる可能性がある

「401(k)のいいところ」の項目のひとつに、「Sales Loadなどの手数料が免除されることがある」というのがありましたが、場合によってはまったくその反対のケースもあります。とくに小さな会社の401(k)などでは、大きな401(k)プランなどに比べて、プランのアドミニストレーションやアドバイザリー手数料などが非常に高い場合も多くあるようで、かえってIRAを通して手数料の安いインデックス・ファンドなどに投資したほうがずっといい場合などもあるでしょう。繰り返しますが、401(k)は雇用主により条件がまちまちですから、自分の401(k)プランにはどのような投資の選択肢があり、手数料はどのくらいか、それは個人的に投資する場合より有利なのか、そうでないのかをちゃんと理解しておきましょう。

4.エステート・プラニング(相続対策)に有利(Roth IRAの場合)

401(k)やTraditional IRAは70歳半を超えると最低引き出し額(Required Minimum Distribution)を引き出さねばならないというルールがありますが(401(k)の場合は、70歳半になってもまだ労働しておれば、引き出し開始をリタイヤ時まで延期可)、Roth IRAはその必要がありません。まったく手を付けず、そのまま子どもにお金を残すことができます。子どもは、税金を払うことなく資金を使うことができます。

5.ソーシャル・セキュリティ年金にかかる税金を低くできる(Roth IRAの場合)

老後、401(k)からの引き出し額やTraditional IRAからの引き出し額は、「収入」として数えられ、所得税がかかりますが、それに加え、ソーシャル・セキュリティ年金にかかる所得税を引き上げるという副作用もあります。言い換えると、401(k)やTraditional IRAからの引き出し額が多いと、ソーシャル・セキュリティー年金への課税が多くなるということです。これに対し、Roth IRAの引き出し額は「収入」には数えられず所得税がかからないうえ、ソーシャル・セキュリティ年金にかかる税金を低く抑える効果があります。老後に支払う税金をなるべく抑えるためには、401(k)、Traditional IRA、Roth IRAやその他の投資プランからの引き出しをうまくコーディネートし、引き出しのタイミングを計ることが必要になります(カリキュレータはこちら)。この点では、Roth IRAの利用価値は高いといえます。

 

あくまで自分のニーズに合わせて・・・

401(k)かIRAか・・・まず基本ルールとしては、401(k)の雇用主マッチングは最大限に利用しましょう。マッチングは「タダでもらえるお金」ですから、もわらない手はありません。最大限もらえるように401(k)に積み立てをします。その後の使い分けは、あくまで自分のニーズに合わせてすることになります。提供されている401(k)の投資の選択肢が自分のリスク・リターンの条件にあったものであり、また課せられている手数料がリーゾナルブル(できれば0.3%以下を望みたいところ。0.5%でまずまず。1%以上は高いと思います)であれば、401(k)を積み立て限度まで利用することもいいでしょう。反対に、401(k)の選択肢が不足している、あるいは手数料が法外というのであれば、IRAを通して幅広い選択肢からニーズにあった低手数料のファンドを選んだほうがいいでしょう。また、エステート・プラニングや老後の税金対策が重要だというのであれば、Roth IRAを利用するのが得策でしょう。しかしながら一番大事なのはとにかくはじめること。迷っているばかりで積み立てを始めないのが一番いけないようですよ。

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