教育費で受ける税優遇 その1 - American Opportunity Credit

高騰するカレッジ費用。529プランなどを利用して費用準備をし、ファイナンシャル・エイドをなるべくたくさんもらい、そしてなるべく早く卒業する・・・というのが、よく語られる費用対策ですが、もうひとつの知っておきたい費用対策があります。教育費のタックス・クレジットです。

 

タックス・クレジットの大きさ

その年に発生したカレッジ費用の最初の$2,000の100% と 次の$2,000の25%が受けられるタックス・クレジットの額です。つまり、最高で$2,500($2,000x100%+$2,000x25%)まで。また、受けられるクレジットの40%まで(最高$1,000まで)はrefundable(支払わねばならない税金がなくても、タックス・クレジットが使える。つまり支払う代わりにもらうことができるということ)。一時的に仕事を失ってしまったなど、その年の収入が限られており、支払うべき税金が無い場合は、逆に政府から支払いを受けることができるということです。

 

誰が利用できるか

このタックス・クレジットを利用できるのは以下の条件を満たした学生:

  • Degree、certificate、あるいはその他認定された高等教育機関のcredentialを目指したプログラムに在籍していること
  • その年のはじめの時点で、高等教育の最初の4年(大学・大学院の別にかかわらず)を終えていないこと
  • そのコースの平均的なフルタイム学生のとる単位の最低半分はとった学期が少なくとも一学期はあること
  • Felony(重罪)や薬物違反などに定められていないこと

 

利用にあたっての所得制限は?

MAGI(Modified Adjusted Gross Income:通常のAGIに、AGI計算で除外された米国外収入、プエルトリコなどの米国領土での収入を足し返したもの)が、シングルで$80,000以下、ジョイント(夫婦)で$160,000以下の場合は、上記にあるとおりのパーセンテージのクレジットがフルに利用できます。これ以上のMAGIの場合は、利用できるクレジットが順次減らされます。シングルで$90,000、ジョイント(夫婦)で$180,000以上になると、利用できるクレジットはゼロになります。

なおクレジットは学生ひとりにつき許されたクレジットが使えます。家庭の中に複数の対象となる学生がいる場合は、該当人数分だけそれぞれのクレジットを使うことができます。

 

トランプ税制導入後の考察

American Opportunity Tax Creditは、上記のとおりMAGIによりクレジット利用額のフェーズアウトがあるため、高所得者は利用しにくいクレジットです。代替としては、学生自身がタックスリターンを申請して、American Opportunity Tax Creditを受けることができます。学生自身に所得があれば支払うべき税金を減らしますし、所得がなくともRefundとしてクレジットを受け取ることができます。

トランプ税制が導入されるまでは、学生がAmerican Opportunity Tax Creditを受けるためには、親のdependentとしてのclaimを失うことを意味し、それは親が子どもの分のExemptionを失うということでした。トランプ税制で、このExemption自体が廃止されましたので、子どもをdependentとしてclaimしてもしなくても、Exemption上の差がなくなりました。ただし、トランプ税制は、Qualifying Dependent(19歳以下か、あるいはフルタイム学生で24歳以下)に対し、$500のDependent Creditを認めています。親のDependentでなくなれば、親は$500のCreditを失います。

よって、親が学生をQualifying Dependentとしてclaimし$500のクレジットを得るか、親がQualifying Dependentとしてclaimせず、学生がタックスリターンをしてAmerican Opportunity Tax Creditをclaimするかのどちらが有利か計算する必要があります。また、Dependencyのclaimは、Federalリターンだけでなく、Stateリターンにも影響します。どちらが有利かはState税まで含めて考える必要があります。Turbo Taxなどのソフトでシュミレートするか、税理士、会計士に問い合わせてください。

 

カレッジ費用のなかのどんなものが対象?

このタックス・クレジットを受けるために、対象となるカレッジ費用とは、Tuition(授業料)とRequired Fees(必要となる諸経費)です。

キーワードは“required for enrollment and attendance”です。たとえば、教科書や備品など、コースをとるため(enrollment)、あるいはとり続けるため(attendance)に必要であるものは、対象費用に含めることができます。教科書、その他の教材、備品、器具などは、大学から直接買おうが、他から買おうが、“required for enrollment and attendance”であれば、対象費用です。コンピュータも、この条件を満たす限り対象費用となります。

これらの費用のうち教育機関が把握できるものは、From1098-T(Tuition Statement)に記録され学生のところに届くはずです。もし届かない場合は教育機関に問い合わせます。

 

対象外費用

“required for enrollment and attendance”の条件を満たさない下記の費用は対象となりません。

  • Room and board (寮費・食費)
  • Transportation (交通費)
  • Insurance(保険)
  • Medical expense (医療費)
  • Student fees (学生費。ただし、“required for enrollment and attendance”であれば対象となる)

 

期間のカット・オフはいつでしょう?

上記対象費用のうち、その年に始まった学期と、翌年3月までに始まった学期のために、その年の年末までに支払った費用が、その年のタックス・クレジットに適用されます。つまり、2019年のタックス・リターンで、このAmerican Opportunity Creditを利用しようとするなら、2019年1月から2020年3月までの期間に始まった学期に対して、2019年末までに支払った費用を適用することができます。

 

事前プランも大切

このクレジット以外にも、Lifetime Learning Creditという別のタックス・クレジットがあります。また、カレッジ費用は、タックス・クレジットを受ける代わりに、deduction(税控除)を受けることもできます。通常、タックス・クレジットのほうがdeduction(税控除)よりお得ですが、これはTurboTaxなどのタックス・ソフトを使うとどちらが得か自動的に計算してくれます。

American Hope Credit、Lifetime Leaning Credit、教育費deduction(税控除)の3つは、同じ費用に対して同時に利用することはできず、その年にどれを利用するかを選ぶ必要があります。同じ家庭に複数の学生がいる場合は、学生ごとに選びます(兄弟姉妹で同じものにする必要はなし)。

また、もうひとつ重要なのは、上記3つの税金上の優遇策を受けるためには、その対象費用がすでに税金上優遇された資金から支払わられたのでないのも条件です。具体的には、529プランやCoverdell Savings Accountsなどの税金上有利なアカウントから支払った費用には、上の3つの優遇策は使えません。二重には税金上の優遇を受けられないことになっていからです。

American Hope Creditに限って言えば、$2,500の最高クレジットを得られるように、$4,000分のTuitionやRequired Feeは、529やCoverdell以外の資金(課税対象投資アカウントやその年の収入)から支払うというあらかじめのプラニングが必要です。もしも上限まで使いきれていないのなら、翌年の3月開始分までの授業料も前払いするなどの計画も有効でしょう。529やCoverdellからは、寮費や交通費などクレジットの対象にならないものの支払いをするとよいでしょう。カレッジ費用をどう貯めるかだけでなく、どう支払うかもファイナンシャル・プラニングの重要な一要素です。年の最初に、いくらくらいどのような費用がかかりそうで、どの財源からどの費用を支払うかを計画的にする必要があります。

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9 comments

  1. 大変役立つ情報をありがとうございます。American Opportunity CreditにMAGIの上限があること初めてしりました。長男が9月に大学に進学しますので、今年初めてFAFSAをファイリングしたのですが、今年は401Kに貯蓄をしても、FAFSAの計算上、収入と計算されると思い、会社の補助がでる限度がMaxでもらえる限度ぴったりにして手取りを多く設定していました。

    ただし、それでAmerican Opportunity Creditの上限にかかってしまう可能性が高くなる場合には、401Kへの掛け金を大きくするか、年末に追加でお金をいれて、手取りを少なくする方法は有効でしょうか?まだ、2016年分には半年以上あるので、現段階で調整しておくのが得策でしょうか?

    1. そうですね、そのような調整がよいでそうね。401(k)の掛け金を大きくする(年末にまとめて入れられることもあるかもしれませんが、申請のタイミングと給与処理のタイミングで難しいこともあるので、ある程度余裕をもって掛け金の設定をしたほうがいいと思います)、あるいはFSA、HSAなどにも積み立てをするなどがよろしいのではないでしょうか。

      1. もうひとつお聞きします。子供が2016年の9月に大学に入学する場合、American Opportunity Creditを2016年のTax Yearにもらいたければ、4000ドル以上の出費が、529以外の財源から支払われているほうがいいということですよね。こういう場合、子供が1年の内、何ヶ月大学に通ったかは問題にならないのでしょうか?

        1. $4,000の件、おっしゃるとおりです(所得制限にはひっかからないと仮定という過程で)。何か月通ったかではなくて、「そのコースの平均的なフルタイム学生のとる単位の最低半分はとった学期が少なくとも一学期はあること」が条件のひとつにあります。「とった」というのは過去形になっていますが、正確には、学期が終わっていなくてもその学期がそのタックス年に始まっていればOKです。

  2. こんにちは。上記「2013年1月1日に可決された法案で、2012年末まで有効予定であったAmerican Opportunity Tax Creditがさらに5年延長され、2017年まで有効となりました。」とありますが、2018年以降もまだ有効ですか。

    1. はい、トランプ政権によるThe Tax Cuts and Jobs Act (TCJA)はAmerican Opportunity Creditに変更を加えませんでしたので、2018年以降も有効です。

  3. こんにちは。21歳の大学生の子供をQualifying Dependentとして申請できるのかどうか、いろいろと調べてみたのですがわかりませんでした。2019年は全ての学期にRegisterしたのですが、途中でWithdrawしてしまい、5カ月以上大学に通うことができませんでした。条件として24歳以下のフルタイム学生、少なくとも5カ月はenrollした者とありますが、実際に5カ月以上授業を受けることが出来なかったので、dependentとして申請することはできないという解釈になると思われますか?ご意見をお聞かせ頂けますと助かります。

    1. Qualifying Dependentになるための条件をクリアしているかどうかというご質問ですね。このあたりは税金の専門家に確認いただきたい内容で、私が判断できることではありませんが、ただ以下のIRSのStatementにもあるように、これらの条件は”In general”であり、たとえば”5か月のフルタイム”という条件も、”一年間通うつもりでRegisterしたが、もろもろの事情で、実際通えたのが5か月に満たなかった”場合はいいのか悪いのかの明確な指針まではないのではないかと推測します。Tuitionは5か月分以上支払われたのでしょうか?実際通えなかったとしても5か月以上支払いRegisterしていたのならフルタイムとして考えてもいいのではないか(たとえ監査が入ったとしても申し開きができるのではないか)と素人判断ですが思います。
      https://www.irs.gov/pub/irs-news/fs-05-07.pdf

      1. Tuitionは支払っていますので、私も同じように考えておりました。
        いつもとても詳しく分かりやすい記事、そしてコメント欄の質問にも大変丁寧に答えてくださり勉強になります。ありがとうございました。これからもブログ楽しみにしています!

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