楽しい老後?- リタイヤメント・コミュニティ

みなさん、自分のリタイヤメント後の生活、どのように思い描いていますか?アメリカですか、日本ですか?老いたら、やはり日本に帰りたいという方もいらっしゃるでしょう。日本に帰りたいものの、逆カルチャーショックを心配なさる方もいらっしゃるでしょう。今日はアメリカで老後を送る予定でいる方のために、リタイヤメント・コミュニティのお話です。CCRCという名前、お聞きになったことがありますか?

CCRCとは?

CCRCとは、Continued Care Retirement Communityの略で、まだ元気なうちは独立ユニットで自適に暮らし、介助が必要になれば介助付ユニットに移り、看護体制が必要になればナーシング施設に移るという具合に、老後の生活のすべてのフェーズをカバーするリタイヤメント・コミュニティのことです。図書館やゴルフコース、プールやジム、おしゃれなダイニングホール、さまざまなクラブ、オプショナル・ツアーなど、元気なうちはアクティブにリタイヤメント・ライフを楽しみ、その後健康状態が劣化していっても、同じコミュニティーの中で最後まで過ごせるという安心感が売りです。いろいろなCCRCがありますが、中にはリゾート地のようなゴージャスなものもあります。

CCRC
こちらはフロリダのCCRC
こちらはカリフォルニアのCCRC
こちらはカリフォルニアのCCRC
こちらはノースキャロライナのCCRC
こちらはノースキャロライナのCCRC

通常、Entrance Feeといって最初に支払う一時金と、その後月々支払う月額料金が設定してあります。コミュニティーによって、またコミュニティーの中で選択する住居ユニットによってピンからキリまでありますが、入居時一時金は$100,000くらいに始まり、高いと$1ミリオン以上まで、月額料金は、$3,000から$5,000ほどです。この月額料金は年々上昇傾向にあり、また介助や看護が必要になるにつれ月額に加えて追加料金が発生することもあります。

入居の契約にはいくつかのタイプがあって、タイプAは入居一時金が高額だが、月額料金は低いタイプ、タイプBは入居一時金は比較的低いが、介助・介護・看護費用が必要になったとき大きなコスト負担が必要になる可能性のあるタイプ、タイプCは入居一時金は一番低いが、介助・介護・看護が必要になったとき実費を支払う必要のあるタイプという具合です。契約体系はかなりバリエーションがあり、複雑です。入居して一定期間内に死亡あるいは退去したとき、入居一時金のリファンドがある場合もあればそうでない場合もあり、また追加料金が発生する場合についての規定や、独立した生活から介助要、看護要と移るための条件はどのようかなど、契約時に細かいレベルまでチェックが必要です。

CCRCの魅力

入居一時金や月額料金は安くはありませんが、それに見合うCCRCの魅力とは何でしょう?まず大きな魅力は、よいCCRCにめぐり遭えたなら、老後の生活を楽しめるうちは思い切り楽しみ、その後も同じコミュニティーの中で、同じ友人や知り合いとともに過ごしながら年をとっていけるということでしょう。自分ひとりで生活できなくなったため、子どもと同居するので引っ越したり、介助付施設に新たに入るというのでは、まったく新しい土地で生活をリスタートする必要があり、友人・知人ともお別れせねばなりません。まだ元気なうちから、趣味やアクティビティを通してコミュニティの仲間と長期的な関係をつくることができるのは魅力です。一時的に介助が必要になったら必要に応じ介助サービスを受け、状態がよくなり独立して生活することができるようになったらまたもとの生活にシームレスに戻ることもできます。また、元気で独立した生活がしたいが、家や庭の維持などは自分ではしたくないというような場合にも最適です。

CCRCのWebサイトなどを見ていると、ゴージャスな施設に楽しそうなアクティビティが用意され、まるで長期のバケーションに出かけるような明るい気持ちにもなります。ただし、CCRCは比較的新しいサービス形態であり、長期的にその運営・経営において吟味・厳選されてきた長い歴史がないことや、CCRCを吟味・管轄する法規制が手薄なことから、消費者として注意せねばならない課題も残されているのが現実のようです。そのような課題をざっと見てみましょう。。

上昇する月額料金

長期介護保険でも保険料が頻繁に、しかもかなり大きく上がる傾向があるということを以前に見ましたが、このCCRCの月額料金もしかりです。介助や介護費用は、医療費同様、インフレよりも高い率で上昇しています。CCRCにとっても、将来の正確な介助・介護・看護コストは把握の難しいものでしょう。上昇したコストは、月額料金に反映されます。年間最低レベルで4~6%の上昇は見込んだほうがよいようです。ケースによっては、入居してから合計で60%月額料金の上昇を経験した人もいます。リタイヤメント後の生活ですから、あまりに予期を超えて上がる月額料金は、老後の生活の土台をくつがえ返しかねません。CCRCの将来コストの見積もりの甘さのゆえ、自分の老後の生活が狂ったのではたまりませんから、よくよく吟味が必要です。

会社の財務健全性

上のポイントとも重なりますが、CCRCの経営が立ち行かなくなったのでは、20年、30年ある老後生活の計画が狂いかねません。ハウジング市場が大打撃を受けた2008年から2009年あたりは家の価格が下がったため、CCRCに入居したくても家が売れないため一時金の用意ができないないという人が増えました。そのためCCRCの占拠率が下がり、経営難に陥ったCCRCも複数ありました。倒産のため入居者が追い出されるというケースはないようですが、返ってくるはずの入居一時金が返ってこない、経営団体が変わったため以前は無料だったものが有料になった、約束されたサービスが得られないなどのトラブルはあるようです。

最近は少し状況がよくなったようですが、2012年あたりまでは倒産するCCRCも続きました。CCRCのうちおよそ1/3は経営状態がよく、1/3はそこそこの状態、最後の1/3はなんとか経営を続けている状態ではないかと予測する専門家もあります。S&PやMoody’sなどの財務の健全性評価に加え、会社の財務諸表なども吟味するくらいの心構えが必要でしょう。

法規制の薄さ

GAO(Government Accountability Organization)の調べでは、州によってはCCRCに特化した法規制が用意されているが、消費者保護という観点からみると各州の法規制は均等ではないという結果でした。州政府がCCRCに財務諸表を提出させ、定期的なレビューをしている州もあれば、そうでない州もあります。CCRCの長期的な経営継続可能性チェックというところには、まだまだ州の目が届いていないということでしょう。CCRCは、介助・介護・看護が必要になるかならないかはわからないが、なった場合でもCCRC側がサービスを保証するという点で、長期介護保険に似た要素があります。また、最初に入居一時金として大金を支払い、長期にわたってサービスという「利回り」を得るという面で投資にも似た要素があります。保険にせよ、株にせよ、政府や州の法規制はかなり厳しく、消費者はどの州にあってもかなり均等なサービス価値を期待できます。しかしながら、CCRCに対しては、まだ全米で統一された法規制がないため、消費者はある州では比較的権利を保護されているが、他州ではそうでないという状態があります。GAOは、「CCRCを選ぶ際は、単に住む場所として吟味するのではなく、長期投資として吟味が必要」と発表していますが、まったく同感です。法規制にたよらず、個人でそれをするのはなかなか骨の折れることですが、大切なポイントです。

このようにまだ課題は残されていてもCCRCの人気は高く、今後もCCRCは発展していくでしょう。同時に法規制も整備され、今よりも安心してCCRCに入居できる日も来ると期待します。ただし、それでも、財務と経営のチェック、契約書の吟味は必要ですので、あしからず。。

なお、よいCCRCに出会え、素敵な老後をお暮らしのこんな方もいらっしゃいます。こちらの記事をお読みください。

 

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