HMO歯科保険のナゾ – 保険がどうやっても使えない

2009年にカリフォルニアに引っ越してきてから、我が家は2年間、主人の職場で提供されているHMOタイプの歯科保険(dental + HMOで、DMOとも呼ばれる場合があるようですね)を使っていました。Deltaという保険会社で、保険料は職場持ちでHMOとPPOを選べるのですが、治療費などの自己負担額を比べてみた場合、どう見てもHMOのほうが劇的に少ないうえ、歯科矯正も自己負担$1,000をすれば、あとは全額カバーというすばらしさ。しかも年間の補償限度額もなし。微々たる自己負担を支払えば、あとは全部保険会社もちという魅力!

ところがですよ、このHMO歯科保険、2年間苦労してなんとか使いこなそうと努力しましたが、どうやっても使えないのです。そう、どうあがいても保険を使って、クリーニングやチェックアップを超えたサービスが受けられないのですそしてとうとうギブアップし、昨年のオーンエンロールメントでPPOに変更したわけなのですが、この「すばらしい補償内容のはずのこの保険が、保険会社が指定するネットワーク歯科医に言っても使えない!」というこのナゾに、わたしはずっと困惑していました。そしてこのナゾについての自分なりの推測を持っていたのですが、それを裏付けるような記事(しかも歯科医自身による)を見つけ、な~るほど・・・やっぱり!と合点がいきました。今回はこの点について2回シリーズで書いてみます。

 

ブランドものは要りません

まずは我が家の苦悩NO.1からお聞きください。カリフォルニアに引っ越して間もなく、チェックアップに行きました。HMOのネットワーク歯科医を調べ、近くにあり雰囲気のよさそうな歯科オフィスに出向きました。引越しなどなどで1年半くらいクリーニングもしていなかったので、そろそろ行かねばと重い腰を上げたのです。

見てもらうなり、「ディープクリーニングが必要です」といわれ、確かに1年半クリーニングしていないのでそんなものかと思い、やってもらうことにしました。普通のクリーニングなら保険が全額カバーするはずのところ、ディープクリーニングは別物で、プラス、麻酔の注射1本につきいくらという請求で、全部で数百ドル払いました。ま、これはいいとして、次が問題。

ある日、私の歯の詰め物がポロッととれてしまいました。そこでさっそく同じ歯科オフィスに予約をとりました。歯科医の話しによると詰め物(私の場合Onlayといってちょっと大きめのやつでした。小さめのほうはInlayというらしいです)を新しく作るのに、「保険が利いて$750」という見積もりでした。

私: 「保険が利いて$750はちょっと高いですが、他のオプションはないんですか?」

歯科医:「保険が利かないと$1,250ですから、$750でもいいほうですよ。他にオプションはありません。」

私:「この歯は上の奥歯だし、たとえばアマルガム合金なんかだったらもっと安くならないんですか?」

歯科医:「アマルガムは水銀が含まれているのでお勧めしません」

私:「でも日本はずっとアマルガム合金でやってきたわけだし、私はもう今から子どもを生むわけでもないのでいいんですけど・・」

歯科医:「とにかくありません」

ということで、他にオプションがないというので、しぶしぶ$750に同意し、型をとってもらって帰宅しました。すぐに保険のベネフット表(これをはじめから持参して、歯科医のところに行くべきでした)で見てみると、Onlayは、アマルガムなら自己負担なし、ResinのComposite素材なら自己負担$200、セラミックなら自己負担$340と明記してあるではありませんか。だいたい$750などという数字はベネフィット表のどこを見てもありません。

すぐに歯科医のオフィスに電話し、保険の担当の人に質問しました。

私: 「$750といわれたんですがそれがベネフィット表で見つからないので、保険会社に請求する医療コードを教えてください」 というと・・

担当: 「これは医療コードがないのです。」

私: 「ないというのはどういうことですか?」

担当: 「これはEmpresssなのです。」

私: 「Empressってなんですか?」

どうも話していても拉致があかないので、そこで電話を切り、今度は歯科保険会社に電話しました。

私: 「こうこうしかじかで、医療コードがなく、$750という見積もりで、Empresssだというのですが、なんでしょう、それ?」

保険会社: 「それはブランド名です。ブランドもののOnlayなので、保険は一切カバーしません。$750というのは歯科医の指定する値段です。」

な、なんと!だって歯科医は、保険が利かないと$1,250、保険が利いて$750といったんですよ。それが、実はブランドものなので、保険は一切利かないと。。。

すぐに歯科医のオフィスに電話し、自分はそれは要らないことを告げEmpresssのオーダーをキャンセルしてもらいました。そして、ふつうのGenericなセラミックかResinの素材は本当にないの?と聞くと、今度は「ある」という答え。それは保険のベネフィット表に載っているように$370だというのです。もうその歯医者には行きたくない気分でしたが、他に今からいくのも面倒だし、早く直してもらいたかったので、$370のをオーダーしました。上の奥歯の詰め物にどうして審美用に使われるようなブランドもののフィリングが必要でしょうか・・

 

今度はぐらぐらレントゲン

その後その歯医者はやめて、他を探しました。前回の歯科医は、審美歯科を前面に出しているところだったのであのようなことになったのかと推測し、今度はふつうの歯科(General Dentist)であまりオフィスもきれいそうでないけど、ムダなものは押し売りしなさそうなところを見つけました。ちょうど主人が歯のクリニーング+チェックアップの時期だったので、主人を送り込みました。

帰ってきた主人の話では、クリーニングはとてもいい加減、しかもレントゲンを取るとき、機械のヘッド(カメラ部分)がぐらぐらしていて、ちっとも揺れが収まらないので、「こんなんで、大丈夫なんですか?」と聞いてみたけど、「オッケ~、オッケ~」という返事でどうも信頼できなさそう・・・とのこと。チェックアップの結果も、“Everything looks great.”で済んでしまいました。この時点で主人は2年くらいクリーニングをしていなかったはずで、きっと私と同じようにディープクリーニングになるよ~なんて言っていたのですが、あっさり帰宅。。。

ふ~む、ブランドものを押し売りされるのもいやだけど、かといって撮ったか撮らないかのレントゲンに“Everything looks great.”もちょっとね~。それはそれで、何にもしないのに保険会社には請求して生計を立てているの~などという疑いがぬぐいきれず。この時点で、歯医者に対する懐疑心はむくむくです。

 

お次はEmax・・・

そしてまたHMOのネットワーク歯科医を探します。この時点までで、このHMOのネットワーク医師は本当にひどいということがわかってきました。近隣にある程度の人数のネットワーク歯科医がリストされていますが、Yelpなどでレビューを見ると、ひとつ星やふたつ星ばかり。レビューの内容もかなりひどい。。。なんとかやっとこさ、星みっつがついている歯科医を探し予約をとりました。

半年後のチェックアップの時期になり行きました。虫歯がひとつ見つかり、「$1,200です」と歯科医。前の経験から、保険のベネフィット表を持参していましたので・・

私: 「それはブランド物の値段ですね。私はふつうのセラミックでいいんですが、この表にはInlayやOnlayは$100~$370までの負担額でできると書いてあるんですけど。ちなみに私の今回の治療はInlayですかOnlayですか?Two surfacesですか、Three surfacesですか?治療コードを教えてもらいたいのですが」

歯科医: 「そういう話は、受付の担当に聞いてください」

というので受付に同じ質問をしてみると・・・

受付: 「そのベネフィット表に載っているのは、安い材質のものなのでうちでは扱っていません。お勧めしたのはEmaxといって、非常に頑強で長持ちするものです。」

私: 「じゃあ、この保険をアクセプトしているのに、このベネフィット表のベネフィットは提供してないということですか?」

私がごねているのを見て、歯科医が戻ってきました。

歯科医: 「もし安く済ませたいなら、アマルガムで$400でできますよ。」

私: 「でも、アマルガムなら、このベネフィット表には自己負担ゼロと書いてありますよ。」

歯科医: 「ああ、それは保険がカバーするレベルの安い材質のアマルガムです。うちのアマルガムはいいアマルガムです。」

私: 「なんだそりゃ???(と思わず日本語でつぶやく)」

この時点で、この保険のネットワーク歯科医というものに対する信頼は完全に崩れ去っていました(いやあ、いい先生もいるのでしょうけど、我が家の体験はひどすぎた)。

 

保険会社の言い分は・・

とにかく、保険のベネフィット表どおりの治療費でまともな治療が受けられたためしがない。いったいこれはどういうことなのか?保険会社に電話しました。

私: 「こうこうしかじかで、フィリングひとつにしても、おたくのベネフィット表どおりの治療が受けられないのですが。」

保険会社: 「そういうこともあるでしょう。歯科医を選ぶ時点で電話をして、保険がカバーする素材のフィリングを扱っているかをあらかじめ確認するとよいでしょう」

・・・とのこと。なんだそりゃ??とまた頭の中が?? 保険のネットワークには入っているけど、保険の補償するサービスは提供してないってこと? 私のノウミソは?マークだらけになりましたが、言われたとおりいくつかの歯科医に電話して、「保険でカバーするふつうのフィリングとかInlayとかOnlayを扱っていますか?」と聞いてみました。この質問に対してなら、「扱っています」とか「扱っていません」とかの答えを期待しますよね。ところが、

「保険のタイプは何ですか?HMOですか、PPOですか?」

という答え。HMOだというと、どうも釈然とした回答が返ってきません。

また、他の歯科医のオフィスではこういう答え。

「保険でカバーする素材かそうでないかは普通は患者は気にする必要はありません。ImpressだろうかEmaxだろうかどこのメーカーのものを使っていても、フィリングの医療コードで保険会社に請求すれば、保険会社はあらかじめ決められた額を払い、あなたが差額を払うだけです。だたし、うちはHMOはアクセプトしていませんけどね。」

ますます困惑です。その人の話だとImpressとかEmaxはただのメーカーの名前で、保険が利く対象だといいます。でもHMOではだめなんだって。

 

保険なしのほうが安い?

しかも、新たな発見がありました。歯科保険を持っていない友人たちの話を聞いていると、どうやらHMO歯科保険を持っている私が請求された額より、ずっと低い額で同じような治療を受けているようなのです。歯科保険を持っていない患者をたくさん持つ歯科医は、最初から患者が全額負担することを念頭に値段設定し、良心的な歯科医だと値段も同様に良心的であるということを知ったのです。歯科衛生士をしている知人からも、「保険を使わないほうがかえって安かったりしますよ」と聞きました。

 

私の推理?

ここまできて、もうあきらめました。もうネットワーク歯科医でまともそうな(Yelpで3つ星以上の)ところで、まだトライしていないところはなくなってしまいました。もう選択肢が尽きたということです。どうやっても、保険のベネフィット表どおりの治療は受けられないことを確信しました。今までの歯科医とのやりとりを通しての私の推測はこう・・・

HMO歯科保険は、保険ではない。歯科医は、本当にHMO保険のベネフィットを提供しようとして保険をアクセプトしてはいない。おそらく、HMO保険のネットワーク歯科医に登録していると、それを見て患者がやってくるというマーケティング/販促のツールとしてとらえているのではないか。やってきた患者はいいカモで、実際治療が必要になったら、いきなり治療費をつりあげて稼ぐ。

釈然としないまま、それでも私たちのHMO歯科保険は自分たちにとってはまったく意味がないのが明白だったので、もうひとつの選択肢であるPPOに変更してみました。これから使うところなので、なんとも言えませんが、ひとつ明らかなのはネットワーク歯科医の質が少しはよさそうだということ。Yelpなどで4つ星、5つ星もいます。さて、実際に使えるかどうかは、これからのお楽しみ(う~、楽しみでもないけど・・。あんまり期待しないでおこう)。みなさんの経験はどうですか?次回は、冒頭でお話した、歯科医によるHMO歯科保険についての記事をご紹介します。

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10 comments

  1. 私はひどい虫歯体質で、デルタPPOで、しかも大学の実験台になったので、自己負担たぶん1割くらいでインプラント3本、各種詰め物やりました。

  2. 我が家は歯科の保険には入っていないので、虫歯になれば歯と同様に懐も痛くなります。。。上の子は会社で歯科の保険に入っているのですが、これも使えそうで使えない保険で治療後に保険適用外ですと、想定外の金額の請求書が届いた事があります。以前、日本に一時帰国した時に小さい詰め物を自費で治療してもらいましたが、アメリカで治療するより安かったです。

    1. そうらしいですか~。わたしの美容師さんは、毎年夏、日本に帰国前に日本の歯科医の予約をとっておいて、帰るなり国民保険に入り、滞在中に保険適応で全部直してもらうそうです。

  3. はじめてコメントさせていただきます。
    カリフォルニアではアマルガムはイリーガルで使われていない筈ですが・・・
    メタルを使用したクラウンの根元辺りの歯茎が黒く変色していた場合などはほとんどメタルのアレルギーである可能性があります。良いアマルガムってなんなんでしょう?意味不明・・・
    もし今度機会がありましたら使用するメタルが ”ノンプレシャスメタル” か ”プレシャスメタル” か確認してみると良いです。もし使われているのが ”ノンプレシャスメタル” でしたらあまりお勧めできる歯科医ではありません。(最近はメタルを使用しないクラウンもあります。)
    歯医者の値段もあってないような物で交渉次第でかなり差が出てきます。歯を削られてしまう前によ~く話し合う事をお勧めします。

    1. 情報ありがとうございます。カリフォルニアではアマルガムはイリーガルではないようです。Proposition65という法律で、アマルガムを使う場合は、患者にリスクについてのwarningをしなければならないと決められているみたいです。わたしがコンタクトした歯科医はどこもアマルガムは使いたがらないけど、扱っていました。FDAもWHOもその他多くの健康関連の機関もアマルガムについてはリサーチをし、rareケースのアレルギーを除いては、人体に悪影響を起こすという科学的な根拠は認められず、アマルガムは安全でコスト効果の高いマテリアルだ・・・という結論を発表しているようです。アマルガムが気になる人は多いようでそれも理解できますが、それを逆手にとってもっと高いマテリアルをプロモートしようとするビジネスも多いのではないかと思っています。

  4. いつも広範囲の為になる生の情報を掲載して下さり、ありがとうございます!
    私は、アメリカの歯科医が作った仮歯が合わず色も異様に真っ白なので、修正を何度も依頼しましたが「これはこういうものでこれ以上どうにならない!」と言い切られあまりの痛さに泣いていました。約$1,000支払いました。(delta, PPO)その後日本に行き、日本の歯医者さんで痛みもなく色もピッタリ合う仮歯を作ってもらいましたが、費用はたったの3500円でした。(私は国民健康保険に加入しています)
    そもそも、なぜ私たちは歯科治療の件で、こんなにも多大な時間と努力とエネルギーと労力をかけなければならないのでしょう?なぜ健康保険に目と歯が入ってないのか?目と歯も体の一部です。今に、耳は別、足は別なんて事にならないでしょうね~?
    全ての疑問の答えは、私たちは「アメリカ」に住んでいるからです。日本にいたらまったくしなくていいような苦労をしていますよね~。老後は日本で暮らします♪

    1. likehyさん、コメントありがとうございます。大変な思いをされたのですね。本当に、私たちは医療も歯科治療も、多大な時間と努力とエネルギーを使いますよね。きっと医師や歯科医も保険会社相手に、多大な時間と努力とエネルギーを使っているのでしょう。アメリカ医療は、そういう意味でオーバーヘッドがあまりにも大きすぎて、それで費用も高くなるし、悪循環ですよね。。耳は別、足は別。。笑えますけど、笑い事ではないかも。。ほら、エアラインだって、check-in bagは有料、食事は有料、ヘッドフォンは有料、、そのうちトイレも有料、ブランケットも有料。。になったり??

  5. 最近、子供の頃に日本で治療したルートカナル(根管治療)の再治療をしました。治療前に特に痛みが無かったのですが、必要と言われたので従いました。実は、治療してから痛みがまだ残っているので、必要な治療だったのか?というのは疑問が残ります。

    ルートカナルはスペシャリストがする治療のようで、いつも通っている歯科医から紹介してもらった歯科での治療となりました。治療費は、ルートカナルの治療1500ドルのうち60%を保険がカバーし、残りの40%を自費で払うということで600ドルを支払いました。

    ルートカナルの治療後、2週間以内にいつものデンティストでクラウンをかぶせるようにということでこちらも保険でカバーしない分を自費で500ドル程度。合計で1100ドルの請求となります。

    ルートカナルスペシャリストはいつもの歯科からの紹介でしたが、推測すると、紹介料制度みたいなものがあるような感じでした。(自分でルートカナルドクターを探してもよいか?と聞いたらokと言われましたがすんなりした答えではなかったのです。)紹介制度というのは(不動産なども含め)どこの業界にでもあるとは思うので問題はないのですが、そういった仕組みもあるのだろうなということです。

    デンタルスクールでルートカナルの治療をした友人は、ルートカナル+クラウンまでの治療を含めて保険無しで1000ドルだったということなので、保険を使えばおそらくかなり費用は抑えられたのかなと思いました。(紹介料みたいなものだって患者のお財布から出ているのだろうから。)次回、治療はデンタルスクールに付属している歯科に行ってみようと思いました。

    以下、質問になります。

    いまお世話になっている歯科医から、他の歯科医に変更する場合に、歯科医に対して『変更します。』みたいなことは伝えるべきなのでしょうか? あるいは、保険会社にも『歯科を変えたい。』という相談はした方がよいのですか? なにか決まった手順があれば、教えてください。

    こちらのサイト、アメリカで暮らす者にとって大変勉強になります。ありがとうございます。

    Naoko

    1. 経験談をありがとうございます。私たちにはよく分からない世界があるのでしょうね。。
      医療保険でプライマーケアドクターが必要な場合などは、保険会社に医師変更を報告しなけれなりませんが、デンタルの場合はそういうケースは少ないように思います。ただそれぞれ保険会社のルールが違うでしょうから、契約書かオンラインサイトでルールを確認するのがいいと思います。とった放射線写真や治療方針の記録などを新歯科医に移したいのなら、現在の歯科医にその旨話して変わった方がいいでしょうが、そういうことが必要ないのなら何も言わず新しいところへ行っても問題ないのではないでしょうか。。ファイナンスに直接関係することではないので、あくまで一意見としてお聞きください。

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