地震保険の加入を再考する

今回は、カリフォルニア在住以外の方には申し訳ありませんが、カリフォルニアの地震保険の話です。このブログでも以前にカリフォルニア地震保険の話をとりあげ、「買う派」と「買わない派」の考察を行いました。依然として、カリフォルニア世帯の地震保険契約者は10%に過ぎません。ただ、地震保険を提供している非営利機構のCalifornia Earthquake Authority(CEA)は、2016年に保険の内容と料金の改善見直しを行い、以前よりも充実が図られました。よって、地震保険の加入をより積極的に考えるに値する条件がそろってきたと言えます。今日はその話です。

以前このブログで紹介した記事は以下です。

地震保険って買う、買わない? 

以前は、保険内容についての選択の範囲が限定的でした。家屋へのダメージに対するDeductible(自己負担額)が家の価格の10%、15%のいずれか。Personal Property(家財・私財)$5,000から$100,000まで。Loss-of-use(地震の被害により家を使えなくなった場合、一時的に他に住むときの費用への補償)は$1,500から$25,000までという設定でした。

地震発生の時間にもよりますが、地震の場合、家屋の倒壊の被害より、ガス管破裂などによる火災や水道管破裂による水害など、どちらかというと2次的災害で被害を被る確率が多いようです。これらは、たとえ地震がそもそもの原因であったとしても、持ち家保険でカバーされます。また、地震自体による家屋の倒壊も、これまでに発生した地震での保険クレーム額データを見てみると、数万ドル~6万ドルあたりの範囲が多く、これらは上の地震保険のDeductibeの範囲に収まってしまうレベルの額であり、高い保険料を支払うのに結局は補償が得られないのではないかという危惧も高く、保険を購入する人は少数にとどまっていました。

伸び悩む契約者数を前に、カリフォルニア州はCEAを通しての地震保険提供に見直しを掛けることになりました。2016年に上記の保険内容が改定され、Deductibleの設定は、10%、15%、20%、25%と複数レベルに拡大するとともにPersonal propertyへの補償も$5,000から$200,000までの範囲で設定することができるようになり、Loss of Useは$1,500から$100,000までに拡大されました。これと同時に、CEAは4度目の保険料削減を行い、地震保険の購入がより安価にできるようになりました。また、Retrofittingにより耐震対策を行った家の場合には、最大20%までのディスカウントを得ることもできます。さらにPacific SelectとGeoVeraというふたつの会社がカリフォルニア地震保険市場に参入しました。今後は、競合効果も出てくることが望まれます。

これを機に、少しずつ市場に変化が表れてきました。2016年以前は、年間平均7,200件の新規購入だったのが、2016年には52,000件の新規購入を記録し、この保険料と内容の改善による効果は大きいようです。しかしながら、それでもまだ契約世帯は対象世帯の10%にとどまっています。比較的富裕層の多いオレンジカウンティでは19%という数字も出ているので、地域ごとに差があるのも事実でしょう。家のある場所や家の大きさや古さなどさまざまな条件で保険料はまちまちですが、CEAによると「平均的な保険料」は一年で$700とのことです。

 

どのくらい安くなった?

保険料はどのくら下がったのかちょっと見てみましょう。

以前のブログが出た2014年3月時点では、我が家の地震保険は下の条件だと、年に$1,219でした。

 

現在の保険料Estimatorに同じ条件を入れてみると。。

 

年間$1,077です。$142の減額です。また前述のように、このEstimatorではDeductibleやPersonal Property、Loss of Useは以前より広範囲で臨む額を選択できるようになっています。

気になるCEAの財務状態ですが、AM Bestのレイティングによると2002年よりずっとCEAのレイティングはA-のExcellentとしています。 2017年3月現在加入者数は943,000件で、年間保険料収入は$621ミリオン。2017年の第一四半期までに$5.3ビリオンまで自己資本が増え、現在のクレーム支払い能力は、$14.1ビリオンだそうで、十分な支払能力があるとしています。

以前にもご紹介しましたが、ご自分の住所を入力して、地震が起こった場合の被害のシュミレーションができるサイトがあります。フォルトライン(断層)も出てくるので、自分の家が断層に近いかなども一目でわかります。震源の場所を設定したり、地震のマグニテュードを変更することもできるので、たとえば「自分の街が震源で、マグニテュード8.0の地震が起こった場合の、我が家の被害は」というようにシュミレーションできます。

このシュミレーターの精度については私は知る由もありませんが、ただこの結果を見る限り、震源が自宅のすぐ近くの場合は$100,000レベルを超える被害が出ますが、少し震源が離れると、数万ドルレベルになるようです。火事の場合だと家にも家の中にある家財にも被害が及びますが、地震の場合、家屋が完全につぶれたのでなければ、家全体や家財にまで被害が及ぶ可能性は少ないのかもしれません。

保険料のEstimatorでいろいろ試してみる限り、保険料を最も大きく左右するのはなんといってもDeductibleです。先の例を使うならば、Deductibleを5%から10%に引き上げると、保険料は25%近く下がります。あとのPersonal PropertyやLoss of Useはある程度変化させても保険料を大きく変えることはありません。

 

このような考え方がいいかも。。。

カリフォルニアの多くの場所で地震のリスクは避けて通れないものです。

もともと保険というのは、「起こる可能性は非常に低いが、起こってしまった場合、あまりに大きなダメージがあるため家計の将来を左右するようなリスクに対して」購入すべきものです。その意味では地震保険の購入は理にかないます。

「あまりに大きなダメージ」は家計それぞれで見極めることです。たとえば家が部分的に壊れた場合、$40,000くらいならお子さんの高等教育や将来のリタイヤメントを犠牲にしないでも出せるのであれば、それは「あまりに大きなダメージ」ではありません。「$60,000だと苦しい」というのであれば、それが「あまりに大きなダメージ」の入り口です。その場合は$60,000がDeductibleになるように設定する、たとえば家の値段が$400,000(土地は含みません)ならば、15%Deductibleに設定するという具体です。あるいは20%まで引き上げればさらに保険料が節約できます。この際「元をとる」考えは捨てた方がいいです。小さな被害なら、自分で吸収し、どうしようもない被害だけしっかりカバーするという考え方です。15%や20%Deductibleポリシーであれば、比較的安価に「あまりに大きなダメージ」という上方リスクにのみ備えることができます。そしてDeductibleくらいまでのお金は、非常時の蓄えとして現金として蓄えておきます。非常時の場合は、義援金がでたり、IRAや401(k)などの口座からもペナルティなしでお金が引き出せるような応急処置があるかもしれませんので、これらもある程度は計算に入れてもよいでしょう。

反対にあまり自己資金がないので、被害が家の値段(土地は含みません)の5%でも苦しいという場合は選択が難しいです。その場合は、保険料が高額になるがそれでも入るか、あるいはとりあえず見過ごしておいて、できるだけ家の値段の10%分くらいは非常時の蓄えとして貯め、それから保険に入るか・・ですが、これは地震がいつ来るか分からない以上決めがたい判断です。おそらく後者のほうがいいのではないかと個人的には思います。

 

いずれにせよ、今回の地震保険の改善によって、今まで保険を購入していなかった方々にとっても、一度再考の余地があるかと思います。

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