高くつくチェッキング口座のはなし

銀行にお金を預けて利子を稼ぐ時代は終わったのかもしれません。今は、銀行にお金を払ってお金を預かってもらう時代となりました。チェッキングアカウントの少額口座ではNon-Interest Bearingといって利子を全く生まない口座も少なくありません。多少預金高が大きくなりInterest Bearingの口座になっても0.01%などという具合。オンラインバンクでHigh Yield Accountと銘打たれるような口座でも、低金利時代の今では利子は1.00%ほど。これに比べ、銀行が顧客に課す手数料は非常に高額です。ATMの利用料は一回につき$4、オーバードラフト手数料は1回で$35という具合。消費者は、利子が少ないことを憂うだけでなく、無駄な手数料を払いすぎていないかをきちんと吟味しないと、「銀行にお金を預かってもらうことで、非常な無駄遣いをしている」という状態にも陥りかねないことになります。

 

手数料で儲ける銀行

2014年にアメリカの三大銀行、JP Morgan Chase、Bank of America、Wells Fargoが、ATM手数料とオーバードラフト手数料で稼いだ総額はなんと$6ビリオンだそうです。これはアメリカに住む成人のひとりにつき平均$25という数字です。WalletHubの35大銀行対象の調査によると、平均的なチェッキングアカウントは25種類の手数料を課しているとのこと。

手数料にはいろいろありますが、たとえば代表的なものはmonthly maintenance fee、overdraft fees、 online bill pay fees、returned check fees、wire transfers、cashier’s checks fee, money orders fee, statements を郵送してもらうfee, 昔のstatementにオンラインアクセスするfee、 Quickenなどに財務情報を読み込むfee, dormant account fees 、bad address feesなどなど。

ありとあらゆる手数料が設定されているわりには、口座を開くときにはどのような手数料があるのかがわかりやすく提示されていなかったり、あるいは他の金融機関と比較するのも非常に困難であったりします。

 

オーバードラフト手数料がもっとも儲かる?

数ある手数料の中でも銀行にとってもっともおいしい利ザヤはオーバードラフト手数料だそうです。これはATMなどでお金を引き出した結果、口座内の預金がゼロ以下になった場合に、チャージされる手数料です。実は、ゼロになったら引き出し不可であれば、この手数料はかからないのですが、ゼロになっても引き出しが可能であるように“opt in”(サービス選択)することができます。口座開設の際には、デフォルトで“opt in”している場合が多く、知らず知らずのうちにこの“サービス”を使っており、結果としてオーバードラフト手数料が課せられたということも少なくありません。実際、2014年のPew社の調査では、オーバードラフトをしてしまった消費者のうち半数以上が、このサービスに”opt in”していたという意識がなかったとしています。

 

とくに、このサービスに”opt in”しているうえ、デビットカードを使っている人は要注意です。口座の残高が十分でないのに、デビットカードで買い物を続けると、度重なるオーバードラフト手数料が課せられることもあります。平均的なオーバードラフト手数料は$34だそうですが、一方でオーバードラフトの原因となったデビットカードなどの利用額・引き出し額の平均は$24とのことです。$24の買い物をするのに、$34の手数料を払うことのばからしさは、あらめて書くまでもありません。

法律で、このサービスから”opt out”(サービス停止選択)することはいつでも可能でなければならないと規定されていますから、消費者は必要でないオーバードラフトは受けないようにできます。これを知っているか知っていないかで、無駄な手数料が省けるか省けないかの差となりますから、自分の口座の条件についてのfine printはしっかり読むべきです。もちろんオーバードラフトを受けないようにしておいて、残高不足を知らずにチェックを書けば、Bad checkとして支払い拒否がされ、これはこれでチェックを書いた相手からペナルティを課せられますから、いずれにせよ口座にはある程度の残高を確保すること、責任あるお金の運用をすることは言うまでもなく大切です。

 

お金がない人ほどひどい目に

WalletHubが、 タイプ別、手数料のかかり方を試算したレポートがあります。口座保持者を5タイプに分け、一年間でどのくらいの手数料を支払うことになるかを試算したものです。このうち最も高額の手数料を支払うタイプは、Cash Strappedと呼ばれるお金の余裕のないセグメントでした。このタイプは給料から給料までの間を自転車操業的につなぐタイプであり、セービング口座はないか、あっても残高はほとんどなく、チェッキング口座の現金がなくなれば、オーバードラフトを使って残高がゼロ以下になることもやむをえず、次の給料を待つというような人たちです。デビットカードの使用頻度も高く、現金が必要なときには他銀行のATMから引きだすこともあります。

WalletHubの試算では、このようなタイプは年間$470もの手数料を払うことになるだろうとしています。 お金がないほど、オーバードラフトや残高不足のための手数料がかさむためです。本当はお金が一番必要な人がどんどん手数料をとられるというこの悪循環。お金の責任をもった使い方をしていないと、お金はどんどんなくなることを意味しています。

 

以下に、チェッキング口座でお金を失わないために注意できることを見てみましょう。

 

銀行どこも同じ、口座もどれも同じと思わない

手数料のしくみやチャージのされかたなど、銀行あるいは口座によって大きなバリエーションがあります。自分はいくら口座にキープできるのか(残高)、ATMはどのくらい使うか、デビットカード利用が主かクレジットカード利用が主か、チェックはどのくらい書くか、給与振り込みなどに使うか、窓口にいくことはあるかなどなど、自分の利用パターンを考察するとともに、それぞれの口座の手数料のしくみ(fineprintも含めて)をよく吟味することが大切です。面倒ですが、一度やればいいことなのでがんばりましょう。

No-fee チェッキング口座を選ぶ

そもそもNo-fee口座を選ぶこと。このためには、ある程度のまとまったお金をいれること、オンラインステイトメントを選択(ペーパーステイトメントに対し)すること、給与の自動振り込みを手続きすることなど条件があるかもしれないが、fine printをきちんと読み、手数料を回避する策を講じましょう。

特定ターゲットのアカウントを探す

学生アカウント、あるいは50歳以上のシニアアカウントなど、銀行によっては特定のターゲット層に対して無料あるいは低コストの口座を用意しています。

自転車操業をしない

銀行をお財布代わりに使って、入れたお金はすぐ使う、あるいは場合によっては残高ゼロ以下もいたしかたないというような使い方をしないこと。ある程度の額(できれば、月々の生活費の3ヵ月から6か月分くらいのエマージェンシーファンド)を、チェッキング口座とセービング口座に蓄え、クッションのある使い方をすることで、オーバードラフトや残高不足のための手数料をなくす。

オーバードラフト機能をopt outする

デフォルトは自動的に機能がout inされることが多いので、あえてこれをopt outすることが必要。残高が十分でない場合、デビットカードを使ったりAMTで引き出しをしようとすると、トランザクションが拒否されるので、オーバードラフト手数料は回避することができます。

口座ステイトメントをチェックする

ステイトメントを毎月チェックして、間違ったエントリーがないかをチェックすることはもちろんのこと、思わぬ手数料がかかっていないかをチェックしましょう。

アラート通知にサインアップする

口座内の残高が一定以下になったとき、メールやテキストで通知してくれるサービスを使い、オーバードラフトをしないでやりくりをする方法を考える。

自銀行ネットワークのATM以外は使わない

自分に銀行あるいは、その銀行の属している銀行ネットワーク以外のATMは使わない。計画的に引き出して計画的に使うことで、急な(時ネットワーク外の)ATMから引き出しをなくす。どうしても必要な場合、スーパーなどで買い物時のキャッシュバックを利用する。

ネゴシエーションも技のうち

いつも使える手ではありませんが、手数料のしくみがわからずついうっかり手数料が発生してしまった・・という場合には、「はじめてのことでよくわかりませんでした。これから気をつけるからちょっと勘弁してもらえませんか」とお願いすると、とくに今まできちんとして口座の維持をしている顧客であれば、手数料を免除してもらえることは案外あるものです。

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8 comments

  1. 自分はWELLS FARGOを使ってます。チェッキングのアカウントは学生用のアカウントにしてもらってて、学生ローンの案内とか鬱陶しいジャンクメールが来るけど、最初に口座を開くときに、銀行さんが学生用の口座は手数料がかからないからと云って学生でもないのに、誰でも幾つなっても学生になれるからと勧めてくれたので、未だにその口座を使ってます。もう一つ家のローンの支払い用にチェッキングを作ったのですが、それも最低金額500ドルを常にキープしてる限り、手数料はかかりません。デビットカードが使われるとメールでお知らせしてもらうようにしてもらうこともできるし、自分でいつも口座の管理を欠かさないというのが一番重要なのですが、強欲なアメリカの銀行の中にあって、WELLSさんはかなり良心的な銀行と思います

  2. 私も家賃の引き落とし用に開いたCHASEで、アカウントがゼロになり10ドル課金されたことがありましたが、このサイトをみていたお陰で、すぐに交渉したら、取り消してくれました。こういうところはアメリカのいいところだなと思います。

  3.  米国暮らしが4ヶ月ほどになりますが、自分名義の口座を持っていないので口座を開設しようと思ったのですが、この低金利の時代に銀行口座を開くのはどうか?と思い直し米国での口座開設について経験をされている、解説をされている方々の意見を
    伺っております。幾つか拝読させていただいたのですが今ひとつ よし!口座開設を決めたと思えないのです。現金で置いておくのは危険とは思うものの、手数料/維持費/いろいろかかりますよねえ。
    何でも高いこの米国暮らしに暗澹としています。

    1. そうですね。お気持ちお察しいたします。ただ、探せば手数料など回避できる使い方もあるはずですので、がんばってくださいね。

  4. オーバードラフトに関する私の経験は、同じ銀行発行のクレジットカードとリンクしていて、チェッキングの残高が借越し(ゼロ未満)になると自動的にクレジットカードのキャッシングが働いて$100単位でチェッキング口座に資金が移動すると言うものでした。つまり1セントでも借越しになると$100のキャッシングが行われ、$20~30の手数料に加えてオーバードラフト発生日の翌日からキャッシング分のクレジットカード残高を支払うまで年十数%の利息が積もります。

    もう一つ。チェッキングではなくセイビングス口座ですが、こちらは他口座へ資金移動を含む引出しが連邦法で月6回までに制限されており、超えた分は1回$25ほどのチャージがかかります。イマドキは金利が安いのでセイビングス口座のメリットはほとんどありませんが、ゆめゆめセイビングス口座をネットバンキングとか引落し支払の決済口座にしようなどとは考えない方がよろしいです。

    1. それはすごいやり口ですねえ!罠があちこちに仕掛けられていて、ちょっと落ちると数十ドル単位で罰金。。残念な世の中です。。

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