FBAR(Foreign bank and Financial Accounts)の申請

「FBAR(Foreign bank and Financial Accounts)の申請をずっとしていなかったのですが・・・」というご質問をよくいただきます。FBARとはアメリカ財務省(Department of Treasury)に対し、アメリカ国外の金融機関にある口座情報を届けるもので、これらの口座の残高の合計が$10,000以上である人は毎年6月30日までに届出をする必要があります。届出を怠った場合のペナルティが高額であるため、申請をしていなかったことに大きな不安を抱える方も少なくありません。ずっと申請していなかったので、いきなり申請をはじめたら、過去の分はどうなるのか?過去の申請がなされていないことがバレて、ペナルティが発生することになるのか・・など、心配が残ります。

 

FBARの目的

FBARは、資産隠しなどによる不当な脱税、マネーロンダリング、ひいてはテロリスト行為のための資金作りなどの不法な行為を見つけ、調査を可能にすることを目的にしています。FBAR申請の施行はIRSに一任されており、同じIRSが執行を司っているタックスリターンと混同される場合がありますが、FBARはタックスリターンとは別物です。申請のシステムも別ですし、期日も別です(タックスリターンは通常4/15、FBARは6/30)。

 

FBARを申請せねばならない人は?

アメリカ市民、アメリカ居住者、株式会社、パートナーシップ、トラスト、エステートのどれかで、アメリカ国外に自分名義の金融口座持っている、あるいは自分の名義ではなくとも、Signature Authorityがある(自分のサインによって、金融資産を引き出す権限がある)、あるいはAccount Authorityがある(サインを介してではないが、口頭の指示やその他の似たような方法で、金融資産を引き出す権限がある)口座を有しており、一年のどの一時点でもその合計残高が$10,000を越えた人が対象です。対象になる口座は、定期預金、普通預金、CD、投資信託、投資口座、金融派生商品口座、その他金融口座などです。

 

ジョイント口座の場合は、基本的にはそれぞれの所有者が別々にFBARを申請します。ただ、配偶者でジョイント口座を持っている場合で、ひとりがジョイント口座以外には自分のみの口座を持っていないのであれば、片方のFBARでもうひとりの配偶者がジョイント口座の所有者である旨申請すれば、夫婦ひとりひとりのFBARを作成する必要はありません。ジョイント口座以外に個人で別々の口座を持っている場合は、基本どおりそれぞれに申請します。

FBARの記録は5年間保存することが義務づけられています。

 

自分でできる?

FBARのWebサイトで自分でできます。タックスリターンを自分でしている人であれば、おそらくFBARは問題なく申請できるでしょう(FBARのほうが入力情報がずっと簡単で、英語さえ理解できれば決して難しい作業ではありません)。あるいは、タックスリターンをお願いしている会計士や税理士さんに一緒にFBAR申請もお願いすることができます。

 

申請しなかった場合のペナルティは?

IRSがFBAR執行の実権を一任された2003年あたりからIRSのアグレッシブな宣伝活動が功を奏し、FBARの知名度も上がってきました。それにつれFBAR申請者の数も加速度的に増えてきました。それでも、タックスリターンを毎年きちんと行っている人でも、FBARのことを知らなくて申請をしていなかったということはまだよくあります。

ペナルティはIRSが査定し決定します。Civil(民法)ペナルティと、Criminal(刑法)ペナルティがあり、一番軽いNegligent Violation(不注意での過失による違反=Civilペナルティ)で最高$500までの罰金、Non-willful Violation(故意ではない違反=Civil ペナルティ)で最高$10,000までの罰金などからはじまり、一番重いKnowingly and Willfully Filling False FBAR(知っていながら故意に誤ったFBAR申請を行う=Civil&Criminalペナルティ)の場合で最高$100,000か残高の50%のどちらか多いほうの罰金、5年までの禁固刑という具合です。

FBARのことを知らなくて過去何年も申請をしていなかったという場合、大きなペナルティが課されるのではないかと心配される方も多いようですが、申請しなかったことが自動的にペナルティにつながるということではないようです。そもそもこのペナルティは、FBAR申請についての意識を高め、できるだけ多くの人に申請の必要性を知ってもらい呼びかけるというような意味合いがあるもので、むやみに罰したりお金を集めたりすることが目的ではありません。IRSの査定者がそれぞれのケースについて情報を集め、ペナルティを課すことが適切であるケースかどうかを判断します。ただうっかり申請をしていなかったということであれば、ペナルティをすぐに課す代わりに、過去の必要なFBARの提出を求めるともに警告状を発行するにとどめるということも大いにありえるようです。

IRS査定者が考慮する情報は、1) その人がすでに以前にFBARのペナルティを課せられたことがあるか、あるいは警告状をうけとったことがあるか、2) 違反の性質や対象となっている金額の大きさ、3) 査定が行われる間の当事者の協力の度合い などです。

 

過去のFBARをどうするか?

過去にFBARを申請してこなかった場合、いきなり本年度から申請を始めてもよいものか、過去の未申請分はどうしたらいいのか・・・というのは悩ましい問題です。このような問題を抱える人は相当数いると予想され、IRSはこのような問題に対応するために下のようなガイドラインをつくっています。IRSは、下記のガイドラインを参考にしつつ、個々の状況に応じて適切な対応ができるよう税務アドバイザーに相談することを勧めています。

 

IRSのガイドラインでは、FBARを申請して来なかった人でも、アメリカ国外の金融口座からの収入を毎年タックスリターンで申請しており、必要な税金はきちんと納めており、IRSのCivil/Criminalどちらもの調査対象となっとおらず、かつFBARの未申請についてIRSから通達などが来ていない場合には、ただ単に過去に申請するはずだったFBARをすぐに申請するとともに、なぜ申請が遅れたかの理由を提出するだけでよいということになっています。そもそも外国口座からの収入がなかったというような場合や、外国口座からの収入はあったが外国で税金を納めForeign Tax Creditを申請して差し引けば税金がなかったというような場合も、含まれます。(この件については、お問い合わせをいただき吟味したところ、このようなケースでは、IRSのガイドラインにある「アメリカ国外の金融口座からの収入を毎年タックスリターンで申請しており」の部分の条件を満たしていないことになるので、過去FBARを申請するだけでOKというケースには当てはまらない・・ということで訂正させていただきます。詳しくは税務の専門家にお問い合わせください。)

反対に、上以外の状態、たとえばFBARも申請していなかったが、タックスリターンでも外国口座からの収入を申請してなかったというような場合は、もう少し対処が複雑になります。いきなりFBARの申請を始めた場合、過去にはこれらの口座は存在しなかったのか・・という疑問を呼びますし、またタックスリターンでは口座からの収入は一切申請されていないが、本当は申請されるべきものではないのかという疑惑もわきあがります。過去のFBAR申請と過去のタックスリターンの修正(Amendment)をこそっり(?)行なって、それでIRSから連絡が来ないよう祈る・・というやり方はQuiet Disclosure(静かな開示)という名前がついおり、このやり方は止めたほうがよいとIRSは特別に注意を呼びかけています。

その代わりに、IRSが呼びかけているのはOffshore Voluntary Disclosure Program(OVDP)を利用するやり方です。 OVDPはCriminalペナルティが課される可能性をなくし、Civilペナルティのみでの解決を提供するプログラムで、このプログラムで考慮されるためには、まずこのプログラムに入ることをリクエストしIRSから同意をもらう必要があります。その後、過去のタックスリターンを修正したもの、FBARなど必要な情報をすべて提出し、税金、遅延利子、ペナルティを支払ったうえで解決ということになります。

 

これらは単に典型的なふたつの例のガイドライントして挙げられており、それぞれのケースで対処の仕方は違ってくるでしょう。いずれにしても、過去のFBARの申請がされていなかった場合は、会計士や税金専門の弁護士さんに相談されるのがよいと思います。(Smart & Responsibleではタックスリターン業務やFBAR申請サポートは行っておりません。 )

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8 responses to “FBAR(Foreign bank and Financial Accounts)の申請”

  1. 素晴らしいまとめですね!これ心配している人多いと思います。
    いまだにちょっとわかっていないのですが、ジョイントでなくて、夫婦別々の口座で例えば、$6000ずつ持っている場合は申請しなくて良いということでしょうか?

    • そうですね、それいい質問ですね。名義が違えば、別申請者ということなので、申請しなくてよいということだと私は理解しています。タックスリターンの申請とFBARの申請は別ものということですよね。ここに詳しく書いてあるのですが、私も全部読んだわけではないので、責任をもって言い切れませんが。。

  2. そうですか!ありがとうございます。実は去年はそんな状態だったんです。それで夫と揉めて(笑)とりあえず提出しました。今年は2人合わせても$10,000以下なので提出しないです。やった~!

    ってお金減ってるんですが。笑

    みんな勘違いなんかもあるだろうに、やたらペナルティーで脅すの辞めて欲しいです。

  3. とても参考になる内容をありがとうございました。
    以下の内容を他の掲示板でも取り上げられていたので、自分がお願いする予定のCPAさんに問い合わせをしてもそのソース(英文)が見つけられないため対応できないと言われてしまいました。、
    もしよろしければこの日本文の元となるIRSのサイトをよろしければ教えていただく事はできないでしょうか?
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    IRSのガイドラインでは、FBARを申請して来なかった人でも、アメリカ国外の金融口座からの収入を毎年タックスリターンで申請しており、必要な税金はきちんと納めており、IRSのCivil/Criminalどちらもの調査対象となっとおらず、かつFBARの未申請についてIRSから通達などが来ていない場合には、ただ単に過去に申請するはずだったFBARをすぐに申請するとともに、なぜ申請が遅れたかの理由を提出するだけでよいということになっています。そもそも外国口座からの収入がなかったというような場合や、外国口座からの収入はあったが外国で税金を納めForeign Tax Creditを申請して差し引けば税金がなかったというような場合も、含まれます。

  4. 「Smart & ResponsibleではFBAR申請サポートは行っておりません。」と明記があるのにこの件で質問してすみません。

    (1)外国口座からの収入とありますが、自宅を売却して得た金額も含まれるのでしょうか?日本の古い不動産で値上がりは見込めず、私の場合も売却損が発生し日本では課税がありませんでしたので、収入とは違うと言う思いがあるのですが、口座に金額があることは確かです。
    (2)それからタックスリターンの際にこの金額を含めると、課税されるのでしょうか?あるいは単に申告義務だけなのでしょうか?
    素人すぎる質問で申し訳ありません。

    • FABRに関しては、「残高」だけが問題なので、どういう理由であれそのお金が口座にあるなら申告の対象になると思います。タックスリターンは税金ですので、FABRの申請とはまるで種類を異にします。お金が口座にあるだけでは税金はかかりませんが、そのお金が利子や配当金、キャピタルゲインなど、課税対象であれば申告して課税されることになります。

  5. うっかり週末に掛けて質問をしてしまったにも関わらず、早速、ご丁寧なお返事をありがとうございました。このサイトの題名通り、Smartかつ Responsibleなお人柄が伺えます(^.^)。大感謝です。良い週末をお過ごし下さい。

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