High Deductible健康保険ーお金がないから医療を受けない?

High Deductibleプランは、健康であまり医療サービスを使わない人なら保険料が非常に低く抑えられという特典があります。その上、High DeductibleプランとともにHealth Savings Account(HSA)も雇用者ベネフィットとして提供される場合が多く、しばしば雇用主がいくらか積み立ててくれるおまけまでついてきます。自分でも積み立てることができ、積み立てたお金は所得税控除の対象となり、また医療費に使えばそのまま税金を一切支払うことなく利用できます。貯金だけでなく、長期的に投資することもでき、リタイヤメント資金にも充てられるなど魅力的なポイントがたくさんうたわれています。

 

消費者が裁量するヘルス・プラン

しかしながら、High DeductibleプランはConsumer Directed Health Plan(消費者が裁量するヘルス・プラン)と呼ばれ、医療費コントロールの責任を、保険会社や雇用主などから医療サービスを受ける個人に移すことを目的にしているものであり、「自己責任の医療」という非常にシビアな選択でもあります。Consumer Directed Health Planでは、専門医、テストセンターの選択や値段の確認、保険がどのくらい利くかの確認などの最終責任は、すべて患者にまかされています。同じ医療措置であっても、クリニック、病院、医療センターなどそれぞれの組織で、医療措置に対する値段が大きく違うことはアメリカでは周知の事実です。その中から、ネットワーク内かネットワーク外かという確認にはじまり、質を犠牲にせずなるべく安価に医療サービスをうけられる場所を探すまでの責任が、個人に託されているということです。また、High Deductibleプランの場合、年間Deductibleに達するまでは自分のお財布、あるいはHSAから医療費を支払います。いずれにせよ自分のお金であり、病気をしないと大きく保険料の節約が可能ですが、病気をするとまとまったお金が出ていくことになります。よって消費者は健康に気をつけ、なるべく病気にならないように努め、病気になってもちょっとした症状なら敢えて病院には行かず、そしてどうしても医療サービスを受けざるをえなならばできるだけ安価なところを探し求めていくという行動をとることで、集団的、ひいては国家的に膨らみ続ける医療コストに歯止めをかけよう・・というのがHigh Deductibleプラン導入の狙いでした。

 

それで実態は・・・

この消費者を巻き込んだ医療費削減計画であるHigh Deducibleプラン、その実態はいかに?Consumer Reportsによると、「(消費者による)この医療コストシェアリングプランは、消費者にとって多くの害をもたらしている」としています。たしかに全体的な医療コストは下がったという報告があるようですが、そのコスト削減はほとんど、消費者が自分が受ける医療サービスを削減し「受けない」ことから実現されたものであるとしています。

High Deductibleプランを利用する人は、本来ならば、比較的健康で、しかも病気になった時も医療機関を調べたり、保険のネットワーク内外の区別を調べたり、各機関での値段の違いを調べたりして、賢い消費者として立ち回れる人でであることを想定しているわけですが、実際ふたを開けてみると、そのようなリサーチや値踏みのようなことはほとんど行われておらず、そのかわり医療費が発生することを恐れて、そもそも医療サービスを受けない決断をする傾向が多く、その結果医療コストが下がっているというのです。

Kaiser Family Foundationの調べによると、43%のHigh Deductibleプランの患者が、高い医療費を恐れて、医者に勧められた医療措置やテストを受けないという決断をしたと報告しています。Commonwealth Fund Studyによれば、High Deductibleプランの加入者の4人にひとりがテストやチェックアップなどの受診を先送りしたことがあると報告しています。UC BerkeleyとHarvardの共同研究では、High Deductibleプラン加入者は、42%医療費コストを削減したものの、これは主に、受ける医療サービスの量自体を少なくしたためとしています。たいした症状でもないのにあまりに簡単に医者にかかるような「不必要な医療」はなくなるに越したことはありませんが、本来ならきちんとテストを受け、診断をされて、早期処置をすべきものがそのままにされたり、もうすでに進んでいる症状でも医療費がかさむことを恐れるあまり受診を先延ばしにするという行動が多くみられるようになったわけです。Kaiser Family Foundationの報告によると、High Deductibleプランでの、個人が実際に支払う平均年間医療費は$2,295、家族で平均年間$4,364という数字でした。

反面、National Bureau of Economic Researchの調べによると、High Deductibleプランを提供することによって企業や雇用主は健康保険ベネフィットの提供コストの削減を実現しています。このコスト削減効果は企業にとっては魅力的であり、High Deductibleプランの企業側での人気はますます高まり、健康保険はHigh Deductibleプランしか提供していないという企業も多くなってきました。2016年現在でのHigh Deductibleプランに入っている雇用者は29%でした。3年以内には、40%の企業が健康保険ベネフィットとしてHigh Deductibleプラン以外のプランを提供しなくなるだろうという予測もあります。

 

このような背景を鑑みつつ、以下に健康保険を選ぶ場合に考慮する点をリストしてみました。

もしHigh Deductibleプラン以外にも選択肢があるなら。。。

High Deductibleプランは、健康であれば大きく保険料が節約できるうえ、HSAにどんどんお金が貯まり、老後への投資までできてしまう魅力があります。反面、コストをあまり心配せずに、必要だと思われる医療サービスは積極的に受け健康を維持するという面では、人間の「なるべくお金を払いたくない」という心理がある以上、好ましくない側面も持ち合わせています。小さいお子さんがいる場合、今は健康でも加齢のせいでいつ病院通いが必要になるかわからない場合などは、High Deductibleプラン以外の健康保険を考慮することが賢明かもしれません。

保険会社のWebページなどで、病気になる確率や薬を必要とする確率を設定しながら、どのプランが得かを計算してくれるカリキュレターが提供されています。これらのカリキュレータでシュミレーションをして金額上の吟味をすることも必要ですが、同時になにか「気になる症状」があり$600のCTスキャンを薦められたとき、自分がどういう反応をするかを想像してみることも必要です。けちって受けない可能性があるのなら、High Deducible以外がよいかもしれません。

High Deductibleプランを選択するのなら。。。

まずはご自分のHigh Deductibleプランをよく理解しましょう。High Deductibleプランであっても、無料で受けられる医療サービスがあります。ルーティンの健康診断、大腸がん検診、乳がん検診、予防注射などは無料です(少なくともオバマケアが生きている限り)。しかしながら、これらのサービスが無料で受けられることを知っていると答えたHigh Deducible加入者は10人にひとりというデータがあります。20%の加入者はお金がかかると思ったので受けなかったと答えています。無料サービスは受けて(何か見つかったらお金がかかるから受けたくない・・などとは思わないこと!)、健康の維持をこまめにしておくことを心掛けるのが賢明です。

また、Deductibleまでの自己負担を払わなければならなくなったとき、慌てなくていいようにすぐ出すことができる現金を用意するのは絶対条件です。Kaiser Family Foundation調べによると、43%の加入者がDeductibleの支払いに問題を感じたとしています。HSAに積み立てをしましょう。個人なら年間$3,400 、家族なら$6,750まで積み立てられます。 55歳以上の場合は、個人なら $4,400 、家族なら$7,750まで積み立てられます(2017年現在)。HSAプランには手数料やその他の条件のうえで、よいものもあまりよくないものもあります。雇用主からHSAが提供されている場合にも、そのプランを使わねばならないということはありません。個人で自由に他の金融機関のHSAプランを契約することができます。よいHSAを選び、お金を積み立て、そのお金は医療費に使うものであることをよく覚悟しておくこと。運よくあまり病気やけがをせず「余れば」老後の資金になるものですが、必要な医療サービスを受けないことで使わないようにして老後に残そう・・というのは本末転倒的な考えです。

Health Savings Account(HSA)を利用しなきゃ損!?

 

自分の責任を理解して果たす。。

いざ医療サービスを受けるときには、そのサービスが何であるかを理解し、どこの施設で受けるのがよいか比較検討するという責任があることを理解しておきましょう。よって、あらかじめHigh Deductibleプランのプラン内容を把握しておくことが必要です。保険会社のWebページにいけば、ネットワーク医師や病院のディレクトリがありますから、いざというときにはそれを使えるようにあらかじめ見ておくとよいでしょう。また、それらの病院のレイティグ評価や、必要な医療サービス(MRIとかひざ手術とか)の情報を入力して、病院ごとの値段サーチができるツールを提供しているところもあります。このようなWebページを確認したことがあるとしているのは、High Deductibleプランの加入者の13%とのこと。High Deductibleプランは、別名「Consumer Directed Health Plan(消費者が裁量するヘルス・プラン)」です。High Deductibleプランを選んだ時点で、リサーチの責任を負っていることをわかっておきましょう。

ドクターは情報ソースです。診断テストや処方箋など、できるだけ安価に受ける方法はないかとひとこと聞いてみるだけで道が開けることもあります。症状の名称、診断テストの名称、薬の名称などでGoole検索して、自分も少しばかり予備知識をつけていくことも、可能であればぜひしたいところです。受け身で言われたことを鵜呑みにするだけでなく、こちらからも質問することも大切かと思います。

年間を通じてのDeductibleの確認も肝心です。現在まで支払ったDeductibleがどのくらいかを把握しておき、急ぎでない医療サービスであるならDeductibleに達してから受けたり、大きな額が必要なものなら年の初めに受けることで早々とDeductibleを達成し、その年は他の医療サービスを全額カバーにするなどのやりくりも必要でしょう。専門医などは、電話してもすぐに予約がとれず、2か月待ちということもよくありますから、早めの手配も必要です。

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