家、買い時?-我が家の場合

2回連続でお届けした、家、買い時?-アメリカ不動産市場を読む(1)家、買い時?-アメリカ不動産市場を読む(2)で、「買い時!買うべき!」的見方と「う~ん、どうかな?」的見方をご紹介しました。いったいどちらか、これは誰にも確かにはわからないことですね。どちらの見方に近いかは、その人の立場にもよります。National Association of Realtors(NAR 米国不動産協会)は、いつも前者に近い前向きなスタンスですし、不動産ビジネスとは関係ない経済学者なんかだと後者だったり。。。案外言うことが180度違ったりします。自分の家を買うべきかは、個人的な決断ですから、自分のファイナンス状況と長期的計画を鑑みて、自分で決めるしかありません。我が家の場合はこんなんです・・

過去10年の値動き

Zillow.comで、過去10年の値動きを調べてみましょう。Zillow.comはアメリカ全国をまだカーバしていませんので、もしカバー・エリア外にお住まいの場合はごめんなさい・・・zillowのトップ・ページにいき、上方のタブの「Local info」というところを選び、zipを入れ、左サイドのTime Periodというところで「10 years」を選ぶと下のようなグラフが見られます。

我が家が購入を考えているZip 90505エリアの値動きはこんな感じ。平均価格はピーク時で$860,000というところでしょうか。これが現在は$620,000にまで下がりました。計算すると27%の値下がり。全国平均は33から34%だから、それに比べると値下がり度は少ないということになります

値下がりは、比較的低額層の家から始まりましたから、このあたりの中・高額層の家は、遅れて値下が下がり始めました。ということで、まだこのあと下がるのか、それともこのあたりの不動産屋がいつも口癖のようにいっているように「このあたりは、みんなが住みたいところだから、そんなには下がらない」のか、見極めがたいところです。

 

インベントリ

続いてRealtyTracでインベントリの様子を見てみます。Zipを入れると、下のような情報がでてきますが、最初の4つのタブ、Preforclosure、Auction、Bank-Owned(REO)、Home for Saleに注目します。

  • ひとつめのPreforclosureは滞納が続きこれからフォークロージャのプロセスに入ろうとしている物件
  • ふたつめのAuctionはフォークロージャのプロセスに入りオークションされる日が決まっているもの
  • 三つめのBank-Ownedはオークションされたが買い手がなく銀行の所有となったもの
  • 四つめののHome for Saleは一番ふつうの売り家  です。

それぞれの件数をまとめてみると下のような感じになります。

 

Preforclosure+Auction+Bank-Ownedは、シャドウ・インベントリ(まだ売り家として出ていないが、そのうち売りに出て処理されるべき物件)と呼ばれますが95件あり、ふつうの売り家は31件ということになります。RealtyTrac.comのHome for SaleはRedfin.comなんかの売り家数と微妙に違いまして、Redfinでみると売り家数は59件です。ただし、これにはシャドウ・インベントリとダブっているもの(Bank-Ownedのうち実際に売りに出されているものやPreforclosure段階だけどショート・セール物件として売りに出されているもの)が含まれるようです。

といういうことで、厳密な数はわかりませんが、どうやら実際に売りに出ている家の数と少なくとも同じくらいの数のシャドウ・インベントリが存在し、また全体のうち(31+95=126件)の1/4程度が滞納などのない通常物件、残りの3/4程度が滞納ありあるいはフォークロージャにすでに入った物件(英語ではDistressed Homesという言い方をします)であることが分かります。つまり、Distressed Homeの割合が多く、目に見えているインベントリは全体のこれからマーケットにでてくるであろう物件の一部であるということです。

実際、ここのところ何ヶ月も売り家インベントリが非常に少ないと感じています。気に入る家どころか、見に行く家もあんまりないのです。あまりにオーバープライスの家は何ヶ月も売りに出されたままですが、そこそこの値段をつけた家はすぐに売れてしまう状態です。春マーケットまっさかりという感じで、このまま不動産市場は上向きになるか・・・という気分にもなりますが、しかしながらやはり隠されたシャドウ・インベントリの存在は無視できない気もします。

シャドウ・インベントリは不動産市場が通常あるべき姿に戻るためは、必ず処理されねばならないものです。どのくらいの時間がかかるかはわかりませんが、かならず市場に出て売却されねばならないもののはずです。それを考えると、買い急ぐのはやはり得策でないような気がします。

また、カリフォルニアの失業率はピークの12.4%から下がってきてはいますが、それでも2012年3月時点で11%です。失業者(unemployed)に加え、働きたいのに労働時間カットを余儀なくされている人(underemployed)を加えた数字は20.8%(Department of Labor発表)であり、5人にひとりは望みうる労働ができていないことになります。収入と家の値段は直接的な結びつきがありますから、このような状態を考えると、家の値段が安定して上昇していく状態はまだちょっと先のような気がしますが、どうでしょう。

我が家の作戦

ということで、我が家の戦略は「気長作戦」です。今は賃貸で月々のレントも決して安くはないのですが、以前にご紹介したNY Times Buy vs. Rentで、今のレントに対し、同等レベルの家を買った場合、いくら位までなら出してもOKかという線を計算しています(下はサンプル値)。レントは今のレント額をいれ、購入価格やAnnual Home Price ChangeとAnnual Rent Increseを変化させることで、だいたい、どの購入価格レベルならば妥当かの検討をつけています。

それから、下のような月々の支払いシュミレーションをして(下はサンプル値)、税控除の額なども計算したうえで、「本当に狙いたい購入価格」と「ある程度無理できる購入価格」を計算しています。こうすることで、オファーやカウンター・オファーをするときも、どの線までなら許容するという範囲があらかじめ明確になっています。

 

このBuy vs. Rentで「買うか、レントか」の判断にもっとも影響力ある要素は記事内でご紹介したとおり、何と言っても家のこれからの値動きです。「気長作戦」でもっとも重要なのは、買い急がず、良さそうな家があっても、その家のオファープライスが十分リーゾナブルか(ピーク時からの値下がりの具合など)、不動産市場がまた下降しはじめても、ある程度値下がりしにくい条件か(とくにローケーション!)などを考慮するようにしています。複数オファーが入って競争になりそうな家は、早々と退散します。本当に「いい家」ですごく気に入ってしまったりしたらそれも難しいでしょうが、住環境のよい他州から引っ越してきた私たちには、このあたりの家はどう考えても理想から程遠いので、難しいことではありません。だって古くて、ボロいんだもん・・・.「たとえ将来値が下がっても、とっても気に入った家だからいいわ」と言えるくらいの家に出会えればいいのだけど。

ひとつ、注意事項。こういうお客は不動産屋には「うれしくないお客」でしょうね。実際、これまでお世話になっていた不動産屋さんから、「あなたがたのプライスレンジでは理想の家は出ません」とお叱りをうけてしまいました。本当にそうだと思います。でも、だからといって、気に入らない家にすごいお金を払ってまで、将来のリスクをとりたくないから仕方がない。不動産屋さんはバブルの頃を経験しているので、「こんなに下がった」と思っているわけですが、わたしたちは他州から引っ越して来ているので、「まだまだこのあたりはバカみたいに高い」と思っているワケで、両者の間には埋めがたいギャップがあるようです。いつ買うかわからないのにムダに不動産屋さんを引き回すのも気が引けて、なるべくオープンハウスで自分たちで家を回るようにしています。

ということで、「気長作戦」であり「買えないなら買えないでいいわ作戦」でもあります。その場合は、子どもが高校を卒業するまで借りつづけて、学校区のことを気にしなくてよくなった時点で、もう少し安いところに夫婦二人で引っ越すというのも手かなと思っています。また、もし万が一、私たちの予想にはずれてこれから家の値段がどんどん上がっていったとしても、「あの時買えばよかったとは後悔はしないわ作戦」でもあります。

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4 comments

  1. やっぱりLAは高いんですね。こちらの倍です。

    ボストンも、それほどは下がらない地域ですが、カリフォルニアと違うのは、差し押さえも少なく、あまりシャドーインベントリーが無いと言われているので、安全な郊外なら、これ以上は下がらないっていう線がなんとなくあります。治安の悪いところや不便なところは、がくっと下がっているのに、そこそこ普通の家庭が住める場所だと、学校のレベルに差があろうが、電車に乗る時間が長かろうが、一番安い家の価格は同じくらい。つまり、もう付加価値なしで住まいの価格として底に近いんじゃないかと。。。だったら、できるだけ治安も学校も良くて、ボストンに近い場所がいい!とそんな場所にあるローエンドな家を買いました。笑

    狙っている地域と周囲の地域との一番安い家比較で見てみるのはいかがでしょう?
    差が大きければ、まだ価格が大きく変わる余地があると。。。

    1. Cheeさん!ホームオーナー、おめでとうございます!ローエンドな家とおっしゃいますが、環境のよいところを選んで、そのあたりの一番ローエンドの家を買うのは一番賢い選択ですよね!これから改装とのこと、(大変だけど)楽しみですね!うちは、とにかく「あきらめ」がつかないのでしょう。以前のマーケットとの差が、引越し後3年たっても受け入れられない・・・つまりDENIAL状態です!これ以上下がらなくても、「気に入った」家なら買いたいのですが、それがないのです。でもいつまで待っても「白馬の騎士」はきっと現れないだろうな・・・ Cheeさんは「住みたい」と思う家が見つかったこと、本当によかったですね!

  2. はじめまして。偶然、このWebを見つけました。まさに、私が求めていた情報が満載で楽しく読ませていただいております。私たち夫婦もVA周辺の南部の州から移住してきたので、こちらで家を買うのは馬鹿らしく思ってしまいます。古くて、小さくて、高い。しかもアリが出たりしたら散々ですよね。今は夫婦共働きなので、なんとか頑張れば月々$3,000ぐらいの支払いは何とかなるのでしょうが、老後の心配もあるし、子供の学費もためないといけないし。。。おまけに購入後も会社倒産、首、病気になった時点で、すぐForclosure覚悟で買わないといけません。家、老後、学費、この3つの出費を準備するのはCA州では無理そうです。っと思い、私たちの決断は、子供が小学校に上がるころまでにCA州を出て行くことにしました。それまで頑張って、貯金をします。

    1. お気持ちよくわかります。CAにずっといるひとは普通と思うことが、他の州から来たものには随分と常識外に見えたりしますよね。WJPさんの決断はよく理解できますし、そういう決断を夫婦でできたことはステキですね!うちは当分このあたりにいることになりそうですが、ゆくゆくはもうちょっと環境のいいところに引っ越したいです(でも、ここで得たよい友達のことを考えると、それも複雑ですが)。

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