インターナショナル株式ファンドのパワー

インターナショナル株式ファンドの人気が上がっています。USの株式インデックスファンドだけでも、十分なダイバーシフィケーション(投資の多様化)ができるとされた時代が変わりつつあり、2015年にはインターナショナル株式ファンド(以下インターナショナルファンド)に投資される額は$200ビリオンの伸びを見せ、反対にUS株式ファンドは$50ビリオンの投資残高の減額となりました。今日は、このインターナショナルファンドが、私たちの投資ポートフォリオでどんな意味があるのかを見てみましょう。

 

そもそもインターナショナルファンドって?

実は紛らわしいものにグローバル株式ファンド(以下グローバルファンド)というのもあります。インターナショナルとグローバル、まずこの比較から始めましょう。

グローバルファンドというのは、世界のすべての株式を投資対象にしています。よって自分の住むアメリカも含め、世界各国の株式に投資しているファンドです。これに対し、インターナショナルファンドというのは、自分の住む国以外の国外株を投資対象にしています。つまりアメリカ以外の国外株に投資していることになります。

アメリカに住んで低手数料のPassive Investingを試みる場合、アメリカの株式市場インデックスに追随したインッデックスファンドに投資することになります。これらの中身は言わずもがなUSの株式です。これに国際色を加えようとする場合、グローバルファンドはアメリカ株も含めたファンドでありダブリがあることになりますが、インターナショナルファンドであれば、アメリカ株以外の他国の株に投資しているため、ダブリなく国際色を加えることができます。

 

国際化の波

ここ数年、このインターナショナルファンドの人気が高まり、投資マーケットは国際化の波を経験しています。投資の国際化は、経済の国際化に裏付けられた動きともいえます。

2001年には世界GDPのうちアメリカのGDPは33%を占めていましたが、2014年には22%に減少しました。全世界の上場企業のうち今や80%が、アメリカ国外に本社を持っています。株式投資をする場合、もはやUS株だけを対象にすることだけでは、投資機会を十二分に得ることができないということになり、国際化する経済にそぐった方法ではなくなってきています。

また、同時に、今後アメリカでは金利が上昇することは必至であり株価にマイナスの影響がある可能性があること、また現在のUS国内の株式の多くはPrice Earning Ratioから見てもオーバープライス状態であることから、今後のUS株価の伸びは決してバラ色ではないだろうという悲観的な予想も、糸口を国外株に見つけようとする動きにつながっています。

しかしながら、インターナショナルファンドの効用は、実はこれを超えた部分に存在します。

 

ダイバーシフィケーションの力

インターナショナルファンドに投資することの本当のパワーは、このファンドを投資ポートフォリオに加えることによって得られるダイバーシフィケーション(投資の多様化)にあります。投資の基本はダイバーシフィケーションで、これはなるべく動きのパターンが異なる多様な株式に投資することで、リスクはなるべく下げつつ利回りを最大化することを目的にしています。くわしくはこちら参照。

正しく投資を理解する – 投資ファンドの種類はいくつか適当?(1)

正しく投資を理解する – 投資ファンドの種類はいくつか適当?(2)

 

インターナショナルファンドの中の株式は、USとは異なる法の下、USとは異なる経済圏で、USとは異なる通貨でビジネスを行っている企業の株であり、必然的にUSの多くの株とは違った値動きの仕方をします。この値動きのパターンの違いが投資の多様化には大きな魅力なのです。

インターナショナルファンドを加えることで、全体的なポートフォリオにどのような利点がもたらされるか具体的に見てみましょう。

下の表はFidelity社の調べで、1) S&P500インデックスに100%投資した場合(つまり、100%US株に投資)、2) インターナショナルファンドに100%投資した場合(つまり、US株式はゼロ)、3) US株式70%、インターナショナルファンドに30%投資した場合を比較しているものです。
iinternational fund

Annualized Return(1950年から2014年までの一年ごとの利回り)は、1)と3)はほぼ同レベル、2)はちょっと劣るレベルです。ところが、リスクを意味するStandard Deviationは、2)が最も高く、次に1)、最も低いのが3)ということでした。これをまとめると、2)の国外株だけでは、リスクが高い割には利回りはもっとも思わしくなく、1)のUS株だけでは、利回りはよいがリスクもそこそこ、ところが1)と2)をミックスさせる(多様化させる)と、リスクはぐんと下がるのに、利回りがもっともよくなるということになります。これこそがダイバーシフィケーションの醍醐味です。

つまりUS株をメインにしながら、インターナショナルファンドをある程度混在させることで、ダイバーシフィケーションが進み、リスクを抑えつつ利回りを最大化することができたことを示しています。

上の例ではインターナショナルファンドの比率は株式全体の30%程度でした。この比率はある程度の長期投資を念頭にした場合のモデル比率といえましょう。投資期間が短くなったり、あるいはリスクは最低限に抑えたいという場合には、インターナショナル比率を下げるとよいでしょう。教科書的には、インターナショナル株比率は20%は持つのがいいという指標があります。

 

エマージング市場

 

インターナショナル株の中には、Developed Market(ディベロップドマーケット)株とEmerging Market(以降エマージングマーケット)株が含まれています。もうひとつFrontier Marketというカテゴリもありますが、これは超高リスクなのでふつうは投資対象から外れています。このエマージングマーケット株は、ディベロップドマーケット株に比べれば高リスク・高リターンなわけですが、これもだからといって避けるのではなくスパイス的に含めると、ダイバーシフィケーションがさらに進み、リスクを下げつつ利回りの最大化に役立つというリサーチ結果があります。カテゴリ分けは下のようになっています。

emerging market

一般的なアドバイスはインターナショナルファンドのうち20~25%程度をエマージングマーケット株にするというものです。たとえば先の例でいけば全体の30%がインターナショナルファンドとすれば、そのうちの20~25%がエマージングマーケット株となり、それは全体ポートフォリオの6%~7%程度となります。ちなみにVanguard社のTotal International Stock Index Fundでは、19%弱がこのエマージングマーケット株にすでに割り振られています(下記のとおり)。残りは各国のディベロップトマーケットに投資されています。

vanguard international fund

ご自分のポートフォリオの見直しの時には、ぜひこのインターナショナル比率とエマージングマーケット比率にも注目しつつ見直しをかけられるとよいでしょう。

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