教育費に対する税優遇 その2 – Lifetime Learning Credit

前の記事で、American Opportunity Creditをご紹介しました。これは以前からあったHope Creditにとって代わるタックス・クレジットで、$4,000の費用に対して最高$2,500までタックス・クレジットが得られるとあり、非常に利用価値の高いタックス・クレジットです。これとは別にもうひとつ、Lifetime Learning Creditという教育費のタックス・クレジットも存在します。今日はそれをご紹介します。American Opportunity Creditに比べると、ちょっと影が薄いかもしれませんが、Lifetime Learning Creditでないとダメというようなケースもありますから、知っておきたいと思います。

 

タックス・クレジットの大きさ

支払った経費の最初の$10,000の20%がタックス・クレジットの額です。つまり最高$2,000まで。ひとつのタックス・リターンにつき(学生ひとりにつきではなく)、最高で$2,000までとなります。つまり、ジョイント・リターンをしている夫婦に複数の学生がいる場合には、学生ひとりにつきではなく、家庭で$2,000までとなります。このタックス・クレジットはnon-refundableです。前にご紹介したAmerican Opportunity Credit は$1,000までrefundable(支払わねばならない税金がなくても、タックス・クレジットが使える、つまり支払う代わりにもらうことができるということ)でしたが、Lifetime Learning Creditは、タックス・クレジットを受けるためには、それと同じかそれ以上の支払うべき税金がなければならないもの、つまり支払うべき税金を減らすものであって、支払うべき税金が無い場合は利用できないクレジットです。

 

誰が利用できるか

American Opportunity Creditではdegreeあるいはcertificationを目指して学校に通っていることが必要条件のひとつですが、Lifetime Learning Creditではその必要はありません。また、American Opportunity Creditは4年を超えて通うとそれ以上の費用はクレジットの対象となりませんが、Lifetime Learning Creditは年数制限がありません。4年以上かかって通う大学や、大学院のクラス、仕事に関連したスキル向上のためのコースなども対象になります。とり始めて途中で辞めてしまい返金を受けられない場合も対象になります。

 

利用にあたっての所得制限は?

MAGI(Modified Adjusted Gross Income:通常AGIに、AGI計算で除外された米国外収入、プエルトリコなどの米国領土での収入を足し返したもの)が、シングルなら$57,000以下、ジョイント(夫婦)の場合は$114,000以下で、上記にあるとおり、払った費用の20%の満額クレジットが利用きます。これ以上のMAGIの場合は、利用できるクレジットが順次減らされます。シングルで$67,000、ジョイントで$134,000以上になると、利用できるクレジットはゼロになります。

 

費用のなかのどんなものが対象?

Department of Educationのスチューデント・エイドの対象である大学、カレッジ、職業学校、それ以外の高等教育機関でのTuition(授業料)とその他諸経費が対象です。アクティビティ費、教科書、備品、器具などは、“required for enrollment and attendance”(コースをとるために、取り続けるために必要であるという)条件を満たせば対象となります。

なお、Self employedの方が仕事関連の知識やスキルアップのために、このクレジットを使うことも可能ですが、通常はSchedule CでEducation Expenseとして計上するほうが節税になることがほとんどです。

 

対象外の費用

下記の費用は対象となりません。

  • Room and board (寮費・食費)
  • Transportation (交通費)
  • Insurance(保険)
  • Medical expense (医療費)

 

期間のカット・オフはいつでしょう?

上記対象費用のうち、その年に始まった学期と、翌年3月までに始まった学期のために、その年の年末までに支払った費用が、その年のタックス・クレジットに適用されます。つまり、2019年のタックス・リターンで、このLifetime Learning Creditを利用しようとするなら、2019年1月から2020年3月までの期間に始まった学期に対して、2019年末までに支払った費用を適用することができます。

 

事前プランも大切

冒頭のとおり、教育費のタックス・クレジットには、Lifetime Learning Creditと並び American Opportunity Creditがあります。また、カレッジ費用は、タックス・クレジットを受ける代わりに、deduction(税控除)を受けることもできます。通常、タックス・クレジットのほうがdeduction(税控除)よりお得です。また4年以内の在籍なら、American Opportunity Creditのほうが、より低い出費でたくさんのタックス・クレジットが受けられる場合が多いでしょう。具体的にはTurboTaxなどのタックス・ソフトを使うと、どちらが得か自動的に計算してくれます。

American Opportunity Credit、Lifetime Leaning Credit、教育費deduction(税控除)の3つは、同じ費用に対して同時に利用することはできず、その年にどれを利用するかを選ぶ必要があります。同じ家庭に複数の学生がいる場合は、学生ごとに選びます(兄弟姉妹で同じものにする必要はなし)。

また、もうひとつ重要なのは、上記3つの税金上の優遇策を受けるためには、その対象費用がすでに税金上優遇された資金から支払わられたのでないのも条件です。具体的には、529プランやCoverdell Savings Accountsなどの税金上有利なアカウントから支払った費用には、上の3つの優遇策は使えません。二重には税金上の優遇を受けられないことになっていからです。

Lifetime Learning Creditの利用価値

前述のとおり、4年以内のカレッジ費用であれば、American Opportunity Creditほうが、効率よくタックス・クレジットが受けられる場合が多いと思いますが、Lifetime Learning Creditは、4年で卒業できなかった場合や、4年を超えての勉強が必要な場合(大学院に行った場合)、DegreeやCertificateのための勉強ではない場合、仕事のためのスキル・アップの勉強の場合、ひいてはアメリカ国外での勉強(Department of Educationのスチューデント・エイド参加校)の場合など、American Opportunity Creditでは適用外のものに利用できる可能性がありますので、覚えておくとよいでしょう。

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10 comments

  1. Adminさん、こんばんわ。いつも勉強させてもらっています。今まさに、息子が大学生なので、このトピックはありがたかったです。ところで、息子は学生ローンを組んで、大学に通っているのですが、彼を扶養家族として、私たち夫婦がTax Creditを申請した方がいいのか、それとも去年はアラスカ漁船に乗り、それなりの収入を得た、彼自身のTax Creditにすればよいのか、ご存知でしょうか?彼は、2012年時点では、まだ19歳です。

    1. 息子さんが自分の生活/教育にかかる費用の半分以上を支払ったのでなければ、ご両親のdepemndantとなりますから、ご両親がtax creditを申請することができます。ただし、収入が一定以上だとtax creditが使えなかったり、使える額が制限されますので、その場合は、(収入の少ない)息子さんのほうでcreditを得たほうが全額利用が可能かもしれませんね。ただし、今度は、息子さんの収入が少なすぎて納める税金が十分にないため、tax creditが十分に使えないということも考えられます。ということで、なるべく全額creditが使えるように誰が申請するかを決めるといいのではないでしょうか? –追記:この記事はLife Time Learning Creditについてで、このcreditはnon-refundableですので、収入が少なすぎて税金が十分にないのでcredit全額使えないということも起こりますが、refundableのAmerican opportunityのほうでしたら、また違った話になるかもしれません。Turbotaxなどのソフトを使うと、シュミレーション計算してくれてどうするのが一番いいかsuggestしてくれるはずですが。。

  2. 夫が米国人のため日本から申告をしていますが、
    このような制度があるのですね~。

    でも、この制度(American Oppourtunity and Lifetime Learning Credit)は米国在住者のみが利用できるのでしょうか?

    現在、家族全員が日本に住んでおりまして、子供(19歳)が日本の学校(専門学校)に通っている場合は対象外なのでしょうか?
    IRSのサイトを見てみしたが、よくわかりません。。
    ちなみに、夫(米国籍)、妻(グリーンカード保持)、子供(日米両国籍)です。

    ご教授頂ければ幸いです。

    1. 海外の学校でも、Federal Aidの登録校だとOKな場合がありますが、日本の学校は登録がなかったと記憶しています。こちらのサイトで確認できます。またクレジットを利用できないケースに、joint returnのどちらかが、non resident alianというのがありますので、奥様がそれに該当する場合は、クジット申請できません。こちらのページのWho cannot claimの項目を参照ください。

      1. ご回答頂きましてありがとうございます。
        そうですね、日本の学校はなかったみたいです。
        どちらにしても、米国に居住していないと税の優遇を受けるのは
        難しいようですね。

        事情があり、今回私が初めて確定申告をしていますが、
        (40)Standard Deduction
        (42)Exemptions
        この2つはしっかりと記入しました。

        細かいことはわかりませんので、このサイトを読んで勉強させて
        頂いております。
        ありがとうございます。

  3. いつも貴重な情報をありがとうございます。一つ質問なのですが、私はアメリカの永住権を持っていて、今まで30年間アメリカで働き、今回退職し、日本へ帰国する予定です。今後はアメリカのソーシャルセキュリティと今まで貯蓄して来たIRAからのお金で生活することになります。この場合、控除される税金の面から見て、ソーシャルセキュリティの支払いを日本の年金と合算した方がいいのでしょうか、それともアメリカだけにしておいた方がいいのでしょうか。日本の年金はほんのわずかだけです。IRAの貯蓄は税金控除前の物なので何れにしても受け取る時には税金がかかるので、アメリカの申告は毎年しなければなりません。税金対策として一番有利な方法はどんなことでしょうか。ちなみに税金の申告はシングルでします。 
    よろしくお願いします。

    1. コメントありがとうございます。このご質問は、簡単にコメント欄でお返事できる範囲を超えております。私は日本側の税制にはまったく暗いのですが、日米の税制について明るい専門家の方に、詳しい情報を提供したうえで個別に相談されるのが一番だと思います。

  4. 私はアメリカの大学に通っているのですが今のところ収入は無く、親に学費や生活費など全てを負担してもらっています。American Oppourtunity and Lifetime Learning Credit は私に一定以上の収入があり、税金を納めていないと対象にならないということでしょうか。基礎的な質問ですが、答えていただけると幸いです。よろしくお願いします。

  5. 私はアメリカの大学に通っているのですが今のところ収入は無く、親に学費や生活費など全てを負担してもらっています。American Oppourtunity and Lifetime Learning Credit は私に一定以上の収入があり、税金を納めていないと対象にならないということでしょうか。基礎的な質問ですが、答えていただけると幸いです。よろしくお願いします。

    1. 受けられるクレジットの40%まで(最高$1,000まで)はrefundable(支払わねばならない税金がなくても、タックス・クレジットが使える。つまり支払う代わりにもらうことができるということ)ですので、収入がなくても使えますが、それは学生さんが自分で費用を払っている場合です。Yuiさんの場合は、Yuiさんが親御さんのDependentになる(生活費や学費を負担している)と思うので、親御さんがタックスクレジットを利用するのが一般的かと思います。

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