わかる長期投資:これだけ押さえてしっかり運用(4)

リタイヤメント資金準備などの長期投資をするにあたって、最低限知っておくべきポイントを抑え、できるだけ簡単に長期投資を始める、あるいは維持していくための考え方を身につけるシリーズを5回に分けてお送りします。1回目では、投資の基本であるダイバーシフィケーションとは何かとその効果について見てみました。2回目では、実際にどうダイバーシフィケーションを実現するかで、二段階に分けて考えることが必要なことと、その一段階目のカテゴリー内でのダイバーシフィケーションでは、インデクスファンドを使うと効率がよいことをご紹介しました。3回目では、二段階目のカテゴリーを超えてのダイバーシフィケーションとして、アセットアロケーションの考え方をご紹介しました。4回目の今回は、ふたつめのダイバーシフィケーションの続きです。実際アセットアロケーションを決め、インデックスファンドを選んでいくステップを見ていきます。

投資期間に従ってアセットアロケーションを考える

投資期間に従って許す限りのリスクは、リタイヤメント資金などの場合であれば、年齢によって提案されることが多いです。よく使われるやり方は、100から年齢を引いたものを株式比率とするというやり方です。下の一番左の表になります。これだとかなり保守的なアロケーションになりがちなので、110や120から年齢を差し引くというのも使われます。真ん中と右の表です。この表のうちどれかひとつを選ばねばならにというわけでもなく、最初は一番右の比較的アグレッシブなやり方ではじめ、年齢が上がるにつれて真ん中や左の表にシフトしていくというやり方もあります。

大切なのはあまり考えすぎないことです。多少比率の数字が違っても大きな問題になることは、長期的に見ればあまりありません。株式比率が10%違ったところで、天と地が分かれるような差が出ることはありません。長期的に見れば、もし問題があっても次第に調整していき、最終的に問題がないように持っていくことは十分できます。どのアロケーションでなければ絶対にいけないというように考えず、だいたいこのくらいなら大丈夫だろうと始めることのほうが大切です。

なお、ここで株式比率を上げるとリスクが上がりますが、第一回目でご紹介した分散投資において、分散が少ないとリスクが高かったのを覚えておられますか?分散を上げていきひいてはインデックスファンドでの市場指標全体への分散投資で、リスクを下げました。ここで下げたリスクと、上の図で株式:債券の比率を変えることで上げ下げしているリスクは少し性質が違います。第一回目でご紹介した分散投資で調整できるリスクは、Diversifiable Risk(ダイバーシフィケーション可能なリスク)と呼ばれ、このリスクをとることは意味がない、つまり必ずしもハイリスクをとってもハイリターンになると限らないものとされています。別な言い方をすればダイバーシフィケーションすればなくすることができるリスクであり、なくすことができるリスクをわざわざとる必要はないということです。

反対に、ここでご紹介しているアセットアロケーションを変えることで調節するリスクはUndiversifiable Risk(ダイバーシフィケーション不可能なリスク)と呼ばれ、このリスクをとる意味はあります。ダイバーシフィケーションではなくすことのできない、真の市場にあるリスクとでもいいましょうか、とる価値のあるリスクです。これゆえ、まずは1)インデックスファンドで分散を最大化して市場にある真のリスクだけを残してあとはなくすることができるリスクは分散し、2)次にそのインデックスファンドをつかってアセットアロケショーンをして必要なリスクレベルをという順番になるわけです。

株式と債券のアロケーションが決まりましたので、次はこの株式カテゴリーの中と債券カテゴリーの中で、それぞれさらにダイバーシフィケーションを確保していきます。

株式(Stock)と債券(Bond)が大カテゴリーとすると、その大カテゴリーをさらにブレイクダウンしたのが中カテゴリーで、株の場合ですと、US国内株式、先進国株式、新興国株式などに分かれ、またその中カテゴリーがさらに細かく分かれます。US国内株式の場合なら、資本サイズごとにLarge-cap, Mid-cap, Small-capに分けたり、あるいはセクター(業種)ごとにIT株、ヘルスケア株などに分けたりします。

よく使われるお薦めのダイバーシフィケーションの確保のしかたは、中カテゴリーレベルで行う方法です。US国内株式であれば、Total Market Indexを追随するインデックスファンドを選ぶことで、国内株4,000株にダイバーシフィケーションすることができます。中カテゴリーのこのインデックスを選ぶことで、小カテゴリのLarge-cap, Mid-cap, Small-capのどのレベルも、またIT株やエネルギー株などどのセクターもカバーしており、小カテゴリーレベルで組み合わせをするより簡単です。この考え方は先進国株や新興国株にもあてはまり、それぞれDeveloped Market Stock Indexや Emerging Market Indexをフォローするインデックスファンドを購入することで、小カテゴリーのレベルで組み合わせを行わなくとも、すべて含んでダイバーシフィケーションを行ったファンドに投資をすることができます。同様に、この考え方はBond(債券)にも適用することができます。

ファンドを選ぶ

すべてを上記の中カテゴリーのインデックスファンドを使ってポートフォリオを組む場合を考えてみましょう。業界でも低手数料で知られるVanguard社のインデックスファンドを使うとすると、投資するファンドは下のようになります。Vanguardでは先進国と新興国を「外国(International=US以外)」としてまとめていますので、6カテゴリーではなく4カテゴリーになっています。

Total International Stock Index Fundは先進国株式(US以外)が約8割で新興国株式が約2割でミックスされています。Total International Bond Index Fundは4%ほどが新興国に割り振られています。債券の場合は、株式より新興国に割り振る比率が少なくてよい(新興国の強みはあくまで株式市場の特殊な成長機会にある)という考え方です。

投資期間に従って許す限りのリスクをとりつつ、具体的なファンドを選んで投資するまでのステップは

  • 年齢あるいは投資期間を鑑みつつ株式と債券のアロケーション比率を決める
  • 株式と債券のカテゴリー内で、US国内株式、先進国株式、新興国株式(先進国と新興国は、外国株式(International Stock)としてまとめてしまってもOK)、US国内債券、先進国債券、新興国債券(先進国と新興国は、外国債券(International Bond)としてまとめてしまってもOKのインデックスファンドを選び、ダイバーシフィケーションをはかる

となります。これにより、株式と債券のダイバーシフィケーション(アセットアロケーションとも呼ばれる)、世界の市場インデックスに投資することで世界市場の株や債券をまんべんなくカバーするダイバーシフィケーションとのふたつのダイバーシフィケーションが完成します。

ファンドは多すぎないほうがよい

今までの復習をしますと・・・

1)     まずはカテゴリー内でのダイバーシフィケーションが大切で、これは各市場インデックスに投資したインデックスファンドを利用すると手っ取り早く実現できる(第2回を参照)

2)     カテゴリーを越えたダイバーシフィケーションも大切で、これはアセットアロケーションとも呼ばれ、まずは株式、債券の比率を決め、今度はその中で適切な市場インデックスををいくつか組み合わせる(第3回と今回を参照)

この2ステップにより、カテゴリーの中でも、またカテゴリーを越えても、うまくダイバーシフィケーションが行われ、自分にとって適切なリスク・リターンレベルを実現した世界分散投資ポートフォリオが構築されることになります。

ここで注意したいのは、2)のアセットアロケーションの段階で、必要以上に多くのファンドに投資を分散させると、かえって逆効果になり、リスクが集中するとともに狙っていたダイバーシフィケーションを壊してしまうことになる可能性があるということです。フルーツバスケットの例をとって説明してみましょう。

多くのお客様を迎えるパーティーを催すので、デザートにフルーツを仕入れるとします。フルーツは季節柄、旬でないものが手に入りにくかったり、取り扱う会社によっては新鮮さが足りなかったりするので、なるべくバラエティに富んだくだものを入手するのと、仕入れたくだものが質が悪いものばかりにならないため・・・つまり、リスク分散のために、敢えていくつかの会社から仕入れることにします。それぞれの会社で、適当にみつくろい万遍なくいろいろな種類のフルーツを盛り合わせたバスケットを納品してもらうことにします。会社もいくつか使うし、多様なフルーツの盛り合わせを頼むので、うまい具合にいくだろうと期待しますね。

ところがふたを開けてみたら、ちょっと違いました。たしかに、パーティーのテーブルには数十種類ものフルーツが並びました。質もいいものもあれば、あまりよくないものもあったけれど、おしなべればそこそこです。ところが、どの会社のバスケットにも、ちょうど旬で安価で万人受けする赤りんごが必ず、しかも相当数入っていました。結果的に、総合すると赤りんごはかなりの数にのぼり、パーティーでは消費しきれませんでした。

さて、リスク分散という意味では、成功でしたでしょうか?意に反して、赤りんごにリスクが集中しましたね。いろいろな会社のバスケットを組み合わせても、その中身のフルーツを吟味しないままだと、計らずも一種類のくだものを多量に持つことになりました。ミューチュアルファンドもこれと同じで、目的が似ていたり重なる部分があるファンドをいくつか持っていると、その中の銘柄や種類のセグメントにおいて重複があることがよくあります。このため、リスク分散を狙って多様なファンドに投資すると、かえってリスク集中してしまうという矛盾につながります。投資しているファンドの数が多くなればなるほど、この危険性は高まり、またオーバーラップのないように確認して維持するということが困難になります。

この理由から、まず1)のステップで、目的にかなったミューチュアルファンドを選ぶ作業をしたら、2)のステップではその中から目的や狙いの異なるファンドを、ファンド数が多くなりすぎないよう重複なく組み合わせるということが必要になります。投資額が少ないうちは2ファンドぐらいでもOK、基本的には先に紹介した4ファンドで投資、多くても6ファンドにしておくのが良いかと思います。

一番右の2ファンド型は小さい投資額っから手っ取り早く投資を始めるのに適しています。ただ、US株も先進国・新興国もすべてカバーしたTotal World Stock Index Fundは便利ですが、その分手数料は少々高めです(といっても、0.21%で多くのアクティブファンドに比べると低いですが)。投資額が少ないうちは、手数料も絶対額にしてそれほど大きくなりませんので、問題ありませんが、そのうち投資額が多くなったら、低手数のファンドを組み合わせて3ファンド、先にご紹介した4ファンドに移行していくのが良いと思います。注意点は、あくまで重なりのないファンドを組み合わせること。たとえばTotal World Stock Index FundとEmerging Stock Index Fundなどを組み合わせたり、Total Stock Market Index FundとSmall Cap Fundを組み合わせるなどすると、意図せず均等な分散がくずれることになります。

4ファンド型の4ファンドは次回の記事でもご紹介しますが、多くの投資ファンドの構成要素になっている、もっとも基本的な柱となるファンドです。ここではVanguardのファンドでご紹介していますが、他社でも同様なインデックスファンドは必ずあるはずですから、同等ファンドを選んでいただければ大丈夫です。

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4 comments

  1. こんにちは、私は日本に住んでいますが、こちらのブログはとても参考になるので時々拝見しています。
    軽い気持ちで質問させていただきます。
    株式の中身の配分について、米国株式を50〜60%割り振るのが目安とのことですが、その理由は自国(米国在住者にとって)だからでしょうか? それとも米国の株式市場が強靭だからでしょうか? はたまた世界の株式市場に占める割合?
    日本では最近では自国に多くの割合を配分することは危険であるという考え方が増えてきているようです。
    ただしこれは自国の未来について悲観的だからではないかと思っているのですが、米国ではどうなのでしょうか。

    1. ひとつめとみっつめのお答えが正解です。インッデックス投資ではどこの会社,どこの業界,どこの国が好調とか強いかということは考慮せず,あくまで全マーケットをもつのが基本です。ただ,その国の全世界における資本規模比率と投資者の居住国(正しくは将来お金を使う国)とを考えつつ比率を決めていくのがよいかとおもいます。

      1. お返事ありがとうございます。
        つまり全世界株式インデックスを模した形で複数のファンドを組み合わせて、時代の変化とともに合わせていくのが良いとされているのでしょうか。
        日本在住ですと、世界の株式市場における日本の占める割合はわずか10%たらずですから米国とは少し状況が違うかもしれませんね。わざわざ組み入れるのもどうかという割合です。
        ある程度自国の株式をオーバーウェイトに持った方がいいのでしょうか。米国人にはない悩みですがきっとカナダ在住の人も同じ悩みを抱えているような気がします。

        ともあれ大変参考になりました。ありがとうございます。

        1. そうですね。大変よいご質問ですがここで簡単に説明して終われないトピックとも言えますね。かなり個人的な好みもあるかと思いますが,ただ私は,多少各国比率が前後しても世界市場を押し並べて持っていれば,長期的な最終リターンは大きく差がでることはないだろうという見解に同意しています。

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