マネー・マーケット(MMF) の知られざるリスク

マネー・マーケット(MMF)の「安全性」を疑う・・・というような記事を見つけました。マネー・マーケットといえば「安全」と同義語として理解する人も多く、株や債権ファンドに比べると、ずっとリスクが小さいcash equivalents(現金同等品)と位置づけられることが常ですが、その「安全性」を疑う・・というわけです。あなたの投資口座の中には、マネー・マーケット(MMF)が含まれていませんか?

マネー・マーケット(MMF)は、意図的に投資ポートフォリオの一部として使う場合もあれば、一時的にお金を「パーク(留め置く)」のに使われる場合もあるものです。前者の例でいえば、401(k)やIRAなどの投資をしていて、徐々に資産のアロケーションを保守的なものに変更しておくようなときに使われます。たんだんと定年が近づき、実際に定年を迎えて年金生活に入るにあたって、株や債権ファンドなどのよりリスキーなものから、マネー・マーケット(MMF)などのリスクの少ない「現金に近いもの」に乗り換えていくことで、投資ポートフォリオをよりリスクの少ないものにしていくわけです。

後者の例はといえば、とりあえずIRAを開いてどのようなファンドに投資するかこれから決めるとか、投資のタイミングを計って他のファンドに乗り換えるための中継地点として、一時的にお金を入れておくというような使い方です。というわけで、あなたの投資口座の中にもこのマネー・マーケット(MMF)が含まれている可能性はありますね。

マネー・マーケット(MMF)の隠されたリスク

マネー・マーケット(MMF)が「現金同等品で安全」とされるわけは、手っ取り早くいえば「$1入れれば、ほぼいつでも(最低)$1はすぐに手元に引き出せる」という前提があるからです。ところが、この前提は、どうやらそんなに確かなものではないということらしいのです。

理由は、マネー・マーケット(MMF)は、銀行に預けるセービングとは違い投資商品であり、投資である限り、元金割れする可能性があって、実際元金割れすることは一般に知られている以上に起こっているということがわかってきたからです。

実際、2008年9月にLehman Brothersが破綻したのを受け、歴史あるマネー・マーケット(MMF)であるReserve Primary Fundのシェア価格は$1を割り、97セントになりました。これは投資者不安を引き起こし、年金ファンドなどの大口投資者がファンド売りに殺到しました。この投資者不安による売り殺到は、無視できない大きなリスクだそうで、シェア価格の元金割れを加速度的に悪化させます。個人投資者は大口投資者に比べ、ずっと後での売り対応となりかねませんから、実際、悪化が進めば大きな損失を免れません。

このような危険な状況は過去何度もあったということが明らかになり、問題視されるようになりました。なんとか大きな売り殺到問題にいたらなかったのは、金融機関自身が自分が売っているマネー・マーケット(MMF)にお金を注入することでなんとか元金割れを防いできたからだそうです。1970年から現在までの間に、そのようなことは300回もあったという報告が明るみに出ました。

書き足されたウィキペディア

実際、ウィキペディアの定義にはこう書かれています:

マネー・マーケット・ファンド(MMF)は、US国債やコマーシャル・ペーパーなどの短期債権に投資するミューチュアル・ファンドである。マネー・マーケット・ファンドは、銀行預金とほぼ同じくらい安全であり、かつより高い利回りを提供すると広く一般に認められている(が、それは必ずしもそうとは限らない)。

括弧書きの部分はいつ書き足されたのでしょうか。。

SEC(証券取引委員会)のチェア・パーソンであるMs. Shapiroがこの問題を重要視し、「マネー・マーケット(MMF)は安全である」との先入観をもった一般投資家の注意を促すよう、いくつかの対処策を提案しているようですが、今後どうなることでしょう。

MMFとMMA

マネー・マーケットとひとくちにいいますが、場合によってMMFを意味したり、MMAを意味したりするのをご存知でしょうか。前者は上に書いてきたマネー・マーケット・ファンド(MMF)。後者は、マネー・マーケット・アカウント(MMA)です。私自身、混乱することもありまして、下に違いを書いておきます。

マネー・マーケット・ファンド(MMF): 上記のとおり、ミューチュアル・ファンド。投資であり預金ではないので、FDIC保険は適用されません(下参照)

マネー・マーケット・アカウント(MMA): ほぼセービングなどと同じ感覚で銀行にお金を預ける口座。セービングの場合は、銀行は預かったお金をローンで貸し出すなどして運用しますが、MMAの場合は、銀行は預かったお金で中期国債や地方債、CDなどに投資します。銀行が投資するだけで、預ける側にとっては「投資」ではなく、MMAはセービング同様、FDIC保険でカバーされます(万が一、金融機関が破綻した場合に、預金者一人当たりに対して$250,000まで預金保険でカバーされます)。

MMFとMMAは名前が似ているうえに、同じ金融機関でこの二つが取り扱われていることも多く、混同しないように注意が必要です。MMFは投資、MMAは預金口座という違いを踏まえて比較検討せねばなりません。

どう使い分ける?

2009年以降浮上してきたMMFの問題点(上記)と、ほぼ銀行口座なみの低い利回りとで、「MMFの時代は終わった」とする専門家も多いようです。チェッキングやセービングとほぼ変わりない利回りのために、FDIC保険が適用されないうえに、元金割れ+売り殺到リスクのあるMMFを買う利点がないというのが根拠。ごもっとも。。

「より安全な現金同等品」としては、MMFではなくセービングかMMAのほうが安心できるということですね(少なくとも当面は)。

SECの問題提起が今後どのように運ぶかは観察要ですが、当面のところ、MMFが安心して短期運用できる投資媒体になるきざしは見当たらないようです。

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2 comments

  1. 隠された事実・・・という感じですね。時間が経ってから「実はこうでした・・・」という情報が明らかになる。事実はちゃんとタイムリーに公にしてほしいなと思います。昔、「MMFはリスクが少ないからやったほうがいいよ」といわれたことがあります。本当はそうではなく、「リスクは少ないとはいえない」というのが正しいのかなと思います。

    1. 本当にそうですね。都合の悪い情報はなるべくしらせない・・・というようなことって、どこにでもあるのでしょうか。被害をこうむるのは一番末端の個人投資家というのは悲しいです。。

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