リタイヤメントへの投資 - アセット・アローケーションを選ぶ

このごろ1年が経つのが早いので驚きます。ついこの前のことと思っていたのが、もう2年前のことだったり。老後もまだまだ先のことだと思っていると、あっという間にそこまで来てしまうものなのかもしれません。老後の資金はいったいいくらあれば必要なのか概算が頭にありますか?将来のことですから、自分がいつまで生きるのかも、投資パフォーマンスがこれからどうなるかも、不確定要素は多いのですが、何歳でこのくらい貯めておきたいというだいたいのゴールは把握しておきたいものですね。

最も身近な準備方法は、雇用主の提供する401(k)、403(b)、457プランなどを利用することです。雇用主からのマッチアップを最大限に利用し、できる限りの積み立てを行いたいものですね。積み立ての手続きをするのは簡単ですが、問題はその次です。401(k)などのプランに入れたお金を、実際どのような配分でどのような投資商品に投資するのか、これをアセット・アロケーション(資産配分)といいますが、これを決めるのもとても大切なポイントです。

 

リスク・リターンとアセット・アロケーション

アセット・アロケーションを行うためには、自分の許容リスクと達成したいリターンとのトレード・オフを理解する必要があります。リスクとリターンは必ず裏腹です。高いリターンは誰でも望むところですが、それには必ずリスクがつきもの。リスクはとりたくないものですが、リスクは全くとらなければお金は(インフレなどによって)減ることはあっても増えません。

ある程度リスクをとって比較的高いリターンを望む場合は、株(ストック)の比率を高くし、反対にリスクを抑えつつ安定的なリターンを望む場合は、債券(ボンド)の比率を高くする・・・あるいはリスクを極小に抑えたい場合は、キャッシュ同等品(短期金融商品)の比率を高くしていくというのが、アセット・アロケーションの基本です。

このリストとリターンのトレード・オフは、個人個人でまちまちです。3メートルの所から簡単にジャンプできる人もいれば、とても怖くてできない人もいるように、リスクに対する許容度は個人個人でまちまちですし、また100万円のお金があれば十分と思う人もいれば、100万円ではとても足りないと思う人もいるように、リタイヤメントにいくらあればいいかという基準もちがってきます。こういうわけで、リスクとリターンのトレード・オフは自分で見極めるしかありません。「うまいこと持ちかけられて、大変な投資商品を買ってしまい、思わぬ損をした」というような話を聞きますが、このようなケースは自分のリスクと、その投資のリスクが見合っていないことを確認しなかったことに原因があることがほとんどです。自分のトレード・オフをしっかり知っておくこと、これが投資の基本です。

こういうわけで、リスクとリターンのトレード・オフとそれから割り出されるアセット・アロケーションは、個人ごとに決めるべきものですが、ただそうは言われても「いったい、どこからはじめればいいの?」と戸惑う場合もありますね。というわけで、今日はMoney誌にいい記事を見つけましたので、それを元に年齢別モデル・アセット・アロケーションをご紹介します。ここではIndex Fundに投資することを念頭においていますので、たとえばUS株- Large CapというのはUS Large Cap Index Fundのことを意味します。また、これはあくまで一般的なモデルですので、ご利用は慎重に。。。

 

アロケーション・モデル1 - 35歳から44歳

リタイヤメントまで20年から30年あることもあって、リスク許容度は高です。一般的には、この年齢層では株への投資比率が、低い場合で60%、高い場合で80%までを許容するといわれています。同じ株式のなかでも、US株と外国株に分散させ、その中でもまた比較的安定した株(Large Capや発展国の株など)と成長が見込まれる株(Small CapやEmerging Market株など)に分散させます。

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Large Capというのは、発行済み株式の総額が$10 billion以上の会社の株ということで、つまり大きな会社の株ということです。反対にSmall Capというのは、発行済み株式の総額が$300 million – $2 billionの会社の株ということで、つまり小さな会社の株ということです。過去のデータによると、Large Capは相対的に低リスク・低リターン、Small Capは相対的に高リスク・高リターンということになっています。同様に、US以外の発展国の株は相対的に低リスク・低リターン、US以外のEmerging Market(これから発展しそうな国)の株は想定的に高リスク・高リターンということです。

「代替」というのは、オルタナティブ金融商品と呼ばれるもので、コモディティー(原油、金属、穀類など)や不動産などへの投資です。最近ブームのゴールドへの投資もここに含まれます。

 

アロケーション・モデル2 - 45歳から55歳

リタイヤメントまで10年から20年、これまで持っていた株式の比率を少し下げ、その分を債券に移します。今までUSの債券が中心だったところ、債券の投資比率が上がったのを機に、外国の債券やハイ・イールド・ボンドと呼ばれる高リターンが見込めそうなもの(もちろんリスクも高です)にも分散させています。

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アロケーション・モデル3 - 55歳~

リタイヤメントが10年から10数年に近づきました。リタイヤメントが10年以内といっても、10年後にすべての投資を現金化するわけではなく、リタイヤした後は一部を引き出しつつ、残高は老後の何十年も運用し続けていくわけですので、株式の比率をゼロにする必要はありません。

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株式への投資比率はさらに低下させ、債券の比率を上げるとともに、ここではTIPS(Treasury Inflation Protected Securites)という、インフレーションに対してプロテクションのある(インフレ率が上がる、つまり物価が上がると、債券の額面も上がる)国債(非常に安全とされる)を新たに追加しています。また、「現金」というカテゴリも追加されています。ここでの現金は、キャッシュ同等品と呼ばれるもので、マネーマーケットやCDあるいは安全度が非常に高い特別な債券なども含まれます。

今後、リタイヤメントが近づくにつれ、またリタイヤメントの後にも、徐々に株式の比率は下がり、反対に債券あるいはキャッシュ同等品の比率が高くなっていくことになります。

401(k)などのプランで提供されている投資商品は限られている場合もあるので、この通りのアロケーションを実現することができないこともあるでしょう。その場合は、株と債券の配分に焦点を置いて、それぞれ株と債券のファンドのなかから利用できるものを使って似たようなアロケーションをつくることが可能かと思います。

繰り返しますが、これらはあくまでモデル例ですので、ご自分のリスク・リターンのトレード・オフを理解したうえで最適なアロケーションをお探しくださいね。

リバランスもお忘れなく。また最近では、ターゲットデイ・ファンドというものの人気を呼んでいますので、それはまた今度の機会に。

 

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