リタイヤメント – 物価の安いところに引っ越すと・・

Last Updated on 2016年9月19日 by admin

Cost of livingという言葉を聞いたことがおありでしょうか。まあ、いってみればその土地の物価ということになりますが、家の値段に始まり食費やサービスにまで及ぶ生活にかかる全般の費用を総合して、異なる地域同士の物価の比較を容易にするためにつくられた指標のようなものです。Cost of livingの差というのは案外馬鹿にならないもので、同じだけのお金を持っていても、Costが高いところだとすぐに尽きしてしまうところ、低いところで生活していればかなり長持ちするということになります。誰でも物価の安いところに住みたいと思うものの、仕事をして家族をサポートしている間はなかなか簡単に暮らす場所を変えることはできません。しかしながら、リタイヤしたあとの生活であればコストを抑えるために移転するというのもひとつのオプションかもしれません。

アメリカ50州+ワシントンDCのCost of Livingを比べてみるとこんな感じになります。全米平均の物価を100としています。最も高いところはワシントンDCで、全米平均の117.7でした。反対にもっとも安いところは、ミシシッピの86.8でした。

cost of living for all states

https://www.bea.gov/newsreleases/regional/rpp/rpp_newsrelease.htm

州レベルではなくて都市部レベルで比較すると、高いほうのエンドが:

  • Urban Honolulu, HI (122.5)
  • New York-Newark-Jersey City, NY-NJ-PA (122.3)
  • San Jose-Sunnyvale-Santa Clara, CA (121.3)
  • Bridgeport-Stamford-Norwalk, CT (120.8)
  • Santa Cruz-Watsonville, CA (120.5)
  • San Francisco-Oakland-Hayward, CA (120.3)

 

であり、低いほうのエンドが;

  • Beckley, WV (78.0)
  • Danville, IL (79.2)
  • Rome, GA (81.3)
  • Jonesboro, AR (81.7)
  • Valdosta, GA (81.8)

でした。自分の街がない!・・という方はこちらで比較ができます。

http://money.cnn.com/calculator/pf/cost-of-living/

http://www.bankrate.com/calculators/savings/moving-cost-of-living-calculator.aspx

 

ここでちょっとケーススタディー。たとえば、San Jose, CAに住むカップルが、リタイヤメント資金が多少不足していることもあり、思い切ってコストの安いScottsdale, AZに引っ越すとします。なぜScottsdaleなのかというと、人口20万人超の大きさの都市で、フィルムフェスティバルやアートフェスティバルなどの文化的催しも行われ、ミュージアムなども多いそうで、また日本人の人口もある程度あるので日本のものも手に入るのかなという想像に基づいています。西海岸にも遠くはなく、Phoenixまでは30分。Phoenixからは西海岸経由で日本に飛べます。(以上、Scottsdaleに住んだことも行ったこともありませんのでイマジネーションの範囲での話です)。

San JoseとScottsdaleとのCost of Livingを比較してみると。。。

san jose to scottsdale cost of living

San Joseでたとえば$100,000相当の生活をしていた場合、Scottsdaleでは$76,000あれば同等レベルの生活ができることになります。最も差が大きいのはHousingで42%減、ついでUtilitiesで27%減です。

引越しに伴い、San Joseで住んでいた家を売ることにします。$600,000で購入した家の現在の市場価格は$1,000,00です。モーゲージローンはあと$200,000残っていたので、エクイティは$800,000となります。家の販売手数料や引越し費用など手元に残るのは$740,000。そこれを使ってScottsdaleに3BRの家を$250,000で購入します。

たとえばこんなかんじです。

sanjose home

San Joseの$1Mの家。3BR+2Bath

scottadale home

Scottsdaleの$250kの家。3BR+2Bath

Scottsdaleの家は現金で支払ったので、モーゲージローンの支払いが消えてなくなりました。残った現金$490,000はリタイヤメント資金として運用することができます。

上のSan Jose to Scottsdaleのコスト比較をもとに月々のバジェットをつくってみました。

san jose to scottsdale cost of living.GIF

Scottsdaleの家が現金購入のためモーゲージがなく、月々の返済が消えてなくなります。また、家の値段が安いので、固定資産税と持ち家保険が大幅に節約できます。物価はそれぞれ先のCost of livingカリキュレータのデータに基づいて計算しています。

また、所得税も大きく削減できます。これは、州の所得税率の高いカリフォルニアから、税率がそれほど高くないアリゾナに引っ越すことと、Scottsdaleでは物価が低くなるため年間の生活費が減り、そのためリタイヤメント資金を引き出す額が減ることのふたつの理由によります(ここでは、401(k)などの引き出し時に課税対象となるリタイヤメント資金を前提にしています)。総合的にみると、San Joseの約$112,000の年間生活費は、Scottsdaleでは約$66,000でよいことになります。生活費は41%減です。

生活費が大幅に削減できるうえ、先のエクイティーの残り$490,000がリタイヤメント資金に追加されるため、コスト高のSan Joseでは難しかったリタイヤメントもScottsdaleではかなり余裕のあるものになりました。

もちろん幸せなリタイヤメントには、単なる金銭的な計算以上の課題もたくさんあります。家族や友人がいる慣れ親しんだ場所とお別れするというのが現実的かということも考えねばなりません。今回の分析は、数字だけの計算ということでお留め置きください。

* 前提条件やデータは完全に架空のものです。引越しによる効果はそれぞれの状況により変わってきます。このケースは単なるサンプルとしてお考えください。

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6 comments

  1. 今になって思いつくのもなんですが、となると物価の高い、給料の高い地域に住んで家を買って頑張れば、老後物価の安い地域に住むとすごーくお得感がある、ということですよね。

    残念ながら、物価のひくーい中西部なので、老後西海岸に、と思っていますが(ハワイはとても無理そうなので)どうなることやら。ちょっと頑張って長く働くしかないですかね。

    興味深い、わかりやすい記事でした。ありがとうございます。

    1. でも、物価のひくーい中西部なら、それだけリタイヤメント資金の積み立てがパワーアップできるということですから、実現可能ですね!

      1. なるほど~。今頑張って貯めるしかないですね。株価は低迷したままのようなので、10年後株価が上がればすごいですね。がんばります~。

  2. 主さま、こんにちは。いつも勉強させて頂いています。不動産の購入についての記事、大変参考になります。ところで、いまMPDUプログラム(低所得者向け住居購入制度)を検討しているのですが、このプログラムきっとご存知でいらっしゃると思います。購入するには収入の上限がきまっているのですが、庶民な我が家は上限内におさまっていたため、半年前に無事にcertificateをゲットできたのですが、幸か不幸か、つい最近ポジションがあがって、収入の基準?(年収額)が上限を超えてしまったのです。ですが、この基準で受け取っている給与はまだ2週間分で、このtax returnをした後から計算すると、この年収はもらっていないことになるのですが、アメリカではどのように年収を計算するのでしょう。例えば、certificateをゲットしたときは年収500万円をベースに給与が支払われていたのですが、昇格後は年収750万円をベースに給与が払われることに・・。このプログラムで半額くらいで家が買えるかな・・と思っていたのに、急な昇格で逆に家が買えなくなってしまったかな・・と落ち込んでいるところです。

    1. う~ん。幸か不幸かですね。。タイミングがもう少しずれれば言うことなしでしたね。私はこのプログラムについては全然詳しくないですが、下記のような情報を見つけました。ご確認ください。
      What if a Certificate Holder gets a pay raise between the time a certificate is issued and he/she purchases or
      rents a unit?
      For purchase, the income of the Certificate Holder must be within the MPDU eligibility guidelines at the time a sales
      contract is signed for an MPDU unit. If the applicant has gotten a significant increase in pay since the time the
      Certificate of Eligibility was issued, and before he/she signs a contract, he/she may no longer qualify to occupy an
      MPDU. ACDS will recertify income eligibility when a household signs a contract to purchase.

      http://www.annapolis.gov/government/departments/plzon/mpdu/MPDUfaq.pdf

  3. 主さま、お返事をありがとうございます。
    記載文面まで探してくださって、恐縮です。
    私も関連するサイトをいろいろ読んでみましたが、やはりこの場合の家を買える可能性は低そうですね・・ 地道に不動産を調べて、正規に買う道を模索してみようと思います。また、これからも主さまの記事を楽しみに拝見させて頂きますね。

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