家の売買 - 不動産コミッションを考える(1)

アメリカでの不動産取引では、売り手が取引のコミッションを負担し、そのコミッションが売り手のブローカーと買い手のブローカーに折半されます。このコミッションの額については地域差があるようで、家の価格の6%~7%あたりに設定されていることが多いようです。売り手は直接的にこの額を支払うわけですが、買い手も間接的にコミッションを負担しているいえます。なぜなら、もしコミッションが安ければ、その分だけ売り手は低い値段で家を売ってくれる可能性があるからです。コミッションは家の価格に対してかかるわけで、ドルに直すと大きな額となります。たとえ0.5%であっても、家の値段によってはウン千ドルという単位になります。しばらく前から、従来のコミッションより低い額で不動産サービスを提供する会社が増えてきました。今回は2度に分けて、消費者として不動産取引コミッションをどう考えるかのお話です。

 

従来型コミッションとその疑問

たとえば、$300,000の家を売る場合で、コミッションが6%の場合、売り手の支払うコミッションは$300,000x6%=$18,000となります。50%ずつの折半の場合、売り手の不動産ブローカーに$9,000、買い手の不動産ブローカーに$9,000が入ります。このうち一部をブローカーがキープし、実際に売り手あるいは、買い手のお世話をした不動産エージェントが、その残りを手にします。

 

不動産ブローカーというのは、州によって法律が異なるようですが、通常不動産エージェントより経験やトレーニングが必要とされます。ライセンス試験も、より難しいこといなります。ブローカーが不動産取引に対し最終責任を持ち、エージェントは単独では働くことができずブローカーとともに働きます。通常エージェントはブローカーと雇用関係があります。エージェントが売買を取り持った取引のコミッション収入は、ブローカー・エージェント間の契約により、決められた双方で比率で分けられるというわけです。

 

しばらく前から、契約成立時に支払う一律6%とか7%とかというコミション制度について疑問点を指摘する向きが出てきました。ひとつめは、利害の対立という点です。コミッション制度では、ブローカー/エージェントは、売買契約が成立して家が売れないことには一切利益が出ませんので、どうしても(たとえ多少顧客側に不利があったとしても)契約を成立させようというインセンティブが働く・・という点です。たとえば、買い手側のブローカーが、契約が成り立ちやすいよう買い手により高い額を出すように説得したり、条件を緩和させて契約がスムーズに行くよう家のインスペクションをなしにしたり、インスペクションで見つかった問題に目をつむるよう薦めたりする可能性を生むのではないかという点です。よって、本来なら顧客の代理として顧客のために働くべきエージェントが、顧客の利益ではなく自分の利益を優先しがちではないかということです。これはかなり微妙なところで、「顧客のために適切なアドバイスをして、契約をまとめること」はエージェントの仕事であり、それには「相手の条件を飲む」ことが必要なときもあるわけで、私利的なアドバイスなのか顧客の利を考えたアドバイスなのかは、判断が難しいところです。

 

ふたつめの疑問点は、実際、6%とか7%のコミッションといってもその内訳ははっきりしておらず、いったい私たちはどういうサービスを受け、それぞれのサービスに対しいくらずつ払っているのか、それがいったい適正なものであるのかということについて吟味が難しいという点です。$300,000の家であれば、6%コミッションの場合、それぞれのブローカー/エージェントに入る金額は$9,000ほどということになりますが、この$9,000は具体的にはどんなサービスに対しての値段なのか、リスティングしてすぐ売れた家でも、1年かかって売れた家でも、そこに費やされた時間やコストは違うはずなのに同じコミッションというのはどうも理解がしがたいというわけです。すぐ売れて、しかも取引も何の支障もなくスムーズに行った場合と、何度も何度も現場に足を運んだり、さまざまな人と折衝が必要だったり、多くの交渉が必要だった場合とでは、必要となるスキルも所要時間も仕事内容も違うはずなのに、一律6%とか7%は納得ができないといういう考え方です。

 

また3点目の疑問点は、コミッションは家の価格に対するパーセンテージで決まるが、それは果たして合理的なやりかたであるかという点です。$300,000の家を売るのと$1,500,000の家を売るのでは、ブローカー/エージェントが得るコミッションは$9,000と$45,000という違いがあります。確かにハイエンドの家を専門に扱う宣伝媒体は広告料が高かったりするかもしれませんし、高い家に独特のマーケティングの仕方もあるかもしれませんが、ただ契約成立までのプロセスにおいて、この大きな差を正当化するほどブローカーがする仕事量や仕事内容が違うのかという疑問です。

 

ここで挙げたような疑問点は、Redfin、ZillowやTruliaなどインターネット上の不動産情報サイトの台頭によって、さらに拍車がかかりました。このようなサイトが登場する前は、家を売りたい・買いたい場合には、とにもかくにもまず不動産ブローカー/エージェントを探して、家の値段を査定してもらったり、市場の状況を聞いたり、どこに売りに出ている家があるかを紹介してもらう必要がありました。個人がそのような情報を得るすべがなかったからです。しかし今では、家にいながらにして、不動産市場の動向や、近辺の販売履歴や、現在の在庫情報やなど、何でも手に入る時代になりました。「情報のソースとしての不動産ブローカー・エージェント」は必要が薄れ、「自分でできない・やりたくない特殊作業だけを請け負ってくれるブローカー・エージェント」への必要性が高まってきているといえましょう。

 

新しい形態

そんな消費者の疑問に応えて、新しい形の不動産サービスが登場してきました。たとえば、こんなタイプがあります。

 

家を売りたい人に対して

Flat fee (固定手数料) 制:固定額をチャージするブローカーで、固定額はサービス内容によってかなりのばらつきがあります。家を売る場合、安ければ数百ドルでMLS(Multiple Listing Service=不動産リスティングサービス)をはじめとした各種オンライン媒体に掲載してくれ、問い合わせが来たらそこからは自分で対応するものから、数千ドルの固定費で従来のようなエージェントサービスを提供してくれるものまであるようです。いずれにせよ、これは売り手側のブローカーに対する固定費だけをカバーするもので、買い手側のブローカーに対しては従来どおり3%なり3.5%のコミッションを支払うことになります。つまり、Flat fee制のブローカーを使っても、節約できるのは自分側のコミッション分だけということです。それでも額に直せば大きな数字になります。先の例で行けば、$9,000の買い手側ブローカー/エージェントへのコミッションはそのまま必要ですが、$9,000の売り手側コミッションが、たとえば$2,000の固定費で済んだとすれば、$7,000の節約ということになります。

 

Reduced fee (ディスカウント手数料) 制:上のFlat feeの変形版で、Flat feeではなく、従来のコミッション同様パーセンテージでチャージされますが、ただそのパーセンテージが従来よりも低く設定されているものです。たとえば1%とか2%という数字になっています。この場合も上と同じく、売り手が自分の(売り手側の)ブローカーに支払うコミッションがこの低いパーセンテージになるのであって、買い手側のブローカーへは従来どおりのコミッションを支払う必要があるのが普通です(買い手ブローカーへのコミッションも低く設定して、リスティング情報にその旨記載することも可能ですが、売り手ブローカーに避けられ場合によっては売れるのに長くかかるという可能性もあるので、ブローカーと相談の上進めるとよいでしょう)。先の例でいけば、$9,000の買い手側ブローカー/エージェントへのコミッションはそのまま必要ですが、Reduced feeが1%の場合、$9,000の売り手側コミッションが$300,000x1%=$3,000で済むことになり、$6,000の節約ということになります。

A-la-carte service (アラカルト・サービス):こちらは、不動産取引にかかわる諸手続きのうち、必要に応じアイテムごとに選択して委託することができる会社です。たとえば、MLSリスティングをする(リスティング情報を集めて、データ入力し、サイトにアップする)のに$500、ロックボックス設置に$100、プロフェッショナルな写真撮影に$200、オープンハウスに$350、 For SaleやOpen Houseの看板貸し出しに$60といった具合に、アイテムごとの値段が設定されています。自分でできるところは自分でし、サービスが必要なところだけを委託することができます。

 

家を買いたい人に対して

Buyer commission rebates(売り手へのコミッションリベート): 先にも書いたとおり、売り手は直接的には不動産コミッションを支払いません。ですので、Flat feeやReduced feeは売り手には関係がありません。ここで登場したのが、売り手側のブローカーが得る3%のコミッションのうちから、いくばくかを売り手に対してリベートとして支払うというシステムができました。支払われるリベートはfixed(固定額)であったり、reduced%(パーセンテージ)であったりします。先の例であれば、$300,000の物件を買った場合、売り手が買い手側ブローカー/エージェントに支払う$9,000のうちから、その一部が家を買った人に対して支払われるということです。たとえば50%リベートのケースであれば、半分の$4,500が買い手にわたることになります。

業界先駆けのRedfinなどは、売り手にはReduced fee、買い手にはBuyer commission rebateで双方向にとって利があるシステムをつくっています。

 

シリーズ1回目の今回は、不動産コミッションの疑問点とそれに応答する形で登場した新型不動産サービスについてみてみました。次回は、それに対する市場の反応と、消費者としてできることについて考えて見ます。

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