リバースモーゲージ - リタイヤメントと金策

リバースモーゲージという言葉をお聞きになったことがありますか?リバースモーゲージとは、自宅のエクイティ(市場価格からモーゲージローンの負債を引いた額)を元に、月々お金を借りるしくみです。つまり、自宅を担保にお金を借りるローンです。これは62歳以上の方を対象にしたプログラムですが、通常借りたお金は死亡したときまで返す必要がないので、存命中は支払いを気にしないで借り続けられるというものです。

 

みなさんは、リタイヤメント後の生活をどのように描いていらっしゃるでしょう。三十年、四十年と一生懸命働いた後の生活ですから、できればお金のことは心配しないで、第二の人生を楽しみたいところですね。しかし、企業年金は消滅しつつあり、また401(k)やIRAも増えあぐねている昨今、人生90年といわれるこの時代に不安を覚える人も少なくないでしょう。今回、ご紹介するリバースモーゲージは、自宅のエクイティを元にお金を借りる方法で、自宅に住みながらにして現金を手にすることができるという画期的なプログラムです。このプログラムは、正しい使い方をすれば、リタイヤメント後の生活に大きな安心を与えるセーフティ・ネットとなります。ただし間違った使い方をすれば、人生の最終フェーズで最後の砦である家やそのエクイティを失うという悲劇にもなりかねませんので注意が必要です。

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これに対し、リバースモーゲージはある程度エクイティがたまっている状態から、お金を借り、時が経つにつれてローン分が増えていき、エクイティは少なくなっていきます。

家に住み続けている限りはローンを返済する必要はなく、本人が死亡した時点、家を売った時点、あるいはその家から引っ越した時点で、一括返済することになります。

 

リバースモーゲージには、いくつかのタイプがありますが、現在ではほぼ90%以上のリバースモーゲージが、金融機関が開発しFHAが保証するHECM(Home Equity Conversion Mortgages)です。以下の記述はHECMに焦点をあてて書きます。

 

HECMのバリエーション

Standard と Saver

HECM Standard: 比較的大きなローン向き。モーゲージ保険は、ローン開始時に家の評価額の2%、それ以降ローン残高の1.25%/年

HECM Saver: 比較的小さめのローン向き。モーゲージ保険は、ローン開始時に家の評価額の0.01%、それ以降ローン残高の1.25%/年

 

リバースモーゲージはコストの高いローンで、コスト高の理由の第一はモーゲージ保険です。モーゲージ保険は、ローンが予定どおり回収できなかった場合に、FHA(Federal Housing Administration)が貸主の金融機関に対して損失の補償を行う保険です。

 

ARM と FRM

ARM: 変動金利

FRM: 固定金利

 

FRM(固定金利)はLump sum(一時金支払い)を選択した場合にのみ適用されます。それ以外の形態でのお金の受け取り方には、すべてARM(変動金利)が適用されます。

 

従来型 と Purchase Program

従来型: 現在住んでいる家に対してローンを受ける

Purchase Program: 新しく買う家に対してローンを受ける。頭金が必要で、家の値段から頭金を差し引いた部分をリバースモーゲージでカバーする。月々のローン支払いなしで新しい家の購入ができる。老後、小さな家にダウンサイズするような場合に向いている。

 

誰が借りられるの

  • 62歳以上であること
  • 居住する家を持つ(一軒家である、あるいは二世帯~四世帯の建物のうちの一世帯がローン契約者である)こと
  • 家はメンテナンスや構造上の問題のない状態であること
  • エクイティが十分にあること

 

いくら借りられるの

いくら借りられるかは下の要素によります。

家の価値: その時点での家の評価額(Appraised Value)、あるいはFHAの限度額$625,500(2013年1月現在)のどちらか小さいほう。FHAの限度額内なら評価額が大きいほうがたくさん借りられます。モーゲージ残高がある場合は、借りた金額からモーゲージ残高を返済する形になりますので、モーゲージ残高が少ないほど、手元に残るお金は多いことになります。reverse mort 135_134

金利: 金利が高ければ高いほど、借りられる額は少なくなり、金利が低くなればなるほど借りられる額は大きくなります。

年齢: 夫婦で借りる場合は、若い方の年齢。年齢が高いほどたくさん借りられます。

 

お金の受け取り方

借りるお金の受け取り方には下記のようなオプションがあり、通常、受け取り方法は途中で変更することも可能です(数十ドルの手数料がかかります)。

Lump sum: 一時金としてまとまったお金を最初に受け取る。

Term: 5年型、10年型、15年型のように一定期間の間、月々の固定額を受け取る。

Tenure: 生涯型。その家に住み続ける限り、月々の固定額を受け取る。

Line of Credit: 最初に借り入れられる額の限度(Credit)が決定され、その限度内であれば、いつでも必要なだけ借り入れることができる。

フレキシブル型: 上記のオプションのミックス

 

こんな使い方ができる

ケース1: 夫76歳、妻74歳の夫婦。ソーシャル・セキュリティ年金と401kからの引き出しで暮らしています。2年前夫が脳梗塞で体が不自由になり、二階建ての現在の家での生活が不便になりました。引越しも考えましたが、できれば住み慣れた家に住み続けたいと願っていました。リバースモーゲージの専門家に相談したところ、すでに支払いが終わっている家をもとに$120,000の借り入れができることがわかりました。$20,000を一時金として借り、それでベットルームを一階に移動する改装をしました。残りの$100,000はLine of Creditにし、将来医療費が嵩んだり、401kが底をつきたときのクッションとすることにしました。

 

ケース2: 65歳の女性。夫が昨年亡くなりました。夫と住んでいた家は大きすぎ、また月々のモーゲージの支払いも負担になってきたので、この際思い切って、娘夫妻が住む街に引っ越すことにしました。現在の家は$300,000で売り、残っていたモーゲージ残高$160,000を差し引いた$140,000が手元に残りました。娘の家の近くに$150,000の家を買うことにしました。$150,000の家はリバースモーゲージのPurchase Program (新しい家を購入するのと、その家に対してリバースモーゲージを組むのを同時に行うプログラム)を利用することにしました。古い家を売ったお金の$140,000から$60,000を新しい家の頭金として使い、新しい家の残高$90,000($150,000-$60,000)はリバースモーゲージを組みました。新しい家は月々の支払いをする必要がないので、これまでの年金でなんとか生活が成り立ちます。また古い家を売ったお金$140,000から頭金$60,000を差し引いた$80,000は現金として手元に残ったので、家の維持や医療費のために蓄えておくことにしました。

e-Book 発売予定 「リバース・モーゲージ - 失敗しない契約と使い方」

 

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2 comments

  1. 初めまして! ハワイ在住のジュンと申します。
    いつも日本語での丁寧な解説、有難うございます。
    リバースモゲージについて、1つ質問させてくださいませ。
    リバースモゲージは、一戸建て住宅以外、つまりアパートでは適用されないのでしょうか?
    それがフィーシンプルであってもダメなものでしょうか。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    1. もちろんいろいろ満たさねばならない条件はあるとは思いますが、アパート、コンドだからだめということはありません。もう少し詳しい情報はこちらに欠いてあります。ご参考になれば。http://www.nolo.com/legal-encyclopedia/can-i-reverse-mortgage-condo.html

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