老後の生活費確保を想像してみる

Last Updated on 2020年1月16日 by admin

実際にリタイヤしてお金を引き出すフェーズになった場合、いったいどんなふうになるのか想像してみたことはありますか?リタイヤメント資金を準備するため積み立てるフェーズは案外簡単で、いったんシステムをつくったらあとはケアフリーで自動運行中という方も多いでしょう。もうすでにリタイヤメントに入っている人だけでなく、もうすぐリタイヤが目前の人、あるいはまだリタイヤメントまでは時間がある人でも、実際口座からお金を引き出して使う図をあらかじめ想像しておくことは意味があると思います。今日は2組の例を使って、リタイヤメント生活の生活費確保の様子にちょっと思いめぐらしてみましょう。。

AdamとBarbaraの場合

Adamは67歳、Barbaraは66歳で、夫婦でそろってリタイヤします。

AdamとBarbaraが受け取れるソーシャルセキュリティは、それぞれ$1,700と$900、これに加えBarbaraは$950のペンション年金が受け取れます。これらは生涯年金で固定で受け取れる額です。さらに、当分の間Barbaraはパートタイムで仕事を続けるつもりで、月々$450くらいは収入がある予定です。これらを合わせると固定収入としてカウントできるのは、月にトータルで$4,000です。

Adamは401(k)で$200,000が貯まっています。

リタイヤメントを迎えるにあたって、ふたりで生活費の見直しを行いました。家は支払い済なので、保険とプロパティ税がかかるのみ。生活費は固定費用が$3,300ほど。$1,200を変動費とし、「ある程度調整のできる趣味の費用」から「完全に調整のできるバケーションやレジャー費」までが含まれます。合計で月々の生活予算は$4,500です。月の生活費用が$4,500、収入が$4,000で、残りの$500を401(k)から確保することになります。現在の401(k)はUS株式ファンド35%、国際株ファンド15%、US債券ファンド30%、国際債券ファンド10%、短期債ファンド10%に投資しています。

年の初めに、年間に必要となる$500ⅹ12か月=$6,000ドルを、その時点で値が上がっているファンドから優先に引き出し、いったんMoney Market ファンドに入れます。Money Marketファンドで自動送金設定をし、月々$500ずつをChecking口座に送金し、このChecking口座に月々振り込まれるSocial Security、年金、Barbaraのパートタイム収入と合わせ、赤字のでないように生活します。月によって、変動費を大きく使う月(バケーションに行ったり、州外に住む息子のところに行く月など)があったり、反対に固定費しかかからない月もありますが、年間で$4,500x12か月=$54,000の範囲で生活することを守り、余裕金の範囲でレジャーなどを組むようにします。

非常時のときの資金としては、Saving口座の$45,000を常にキープします。これは基本的に使わないお金です。

Social Securityはある程度のインフレ調整(物価上昇とともに支給額が増える)がありますが、ペンション年金は調整がありません。物価が上昇すると、生活費用が上がり、月々$4,500の収入では厳しくなることも予想されます。その場合は、401(k)から引き出す額を上げてカバーする必要がでてきます。ただし、資金の枯渇を防ぐことも大切なので、投資パフォーマンスを見据えつつ行います。市場が不調のときは、ある程度変動することのできる生活費を切り詰めて、引き出す額を下げる、あるいはしばらく待つという策をとります。待つ場合はChecking口座の余裕金から生活費を賄うようにしますが、どうしても市場の状態が悪く長く待つ場合は、限度を決めてSaving口座から「借りる」こともします。

Adamが70歳半(2019年末SECURE ACTにて72歳に変更)からは、401(k)からRequired Minimum Distribution(RMD)を引き出すことが義務付けられますが、今のところ、現状の引き出しをしていればそれは満たされる予定です。ポートフォリオからの引き出しは、基本的に年初に一度行いますが、どのファンドから優先に引き出すかは都度見極めます。値上がりしているファンドから優先に引き出すことで、できる限り当初のアロケーション比率に戻すことを狙いますが、同時に年齢とともに株式比率を下げていくことも必要です。株式比率が5年で10%ずつくらい下がることを目指しつつ引き出しを行っていきます。

Carolineの場合

Carolineは60歳まではフルタイムで仕事していましたが、その後フリーランスで70歳まで働き、この春本格的にリタイヤすることを考えています。

ソーシャルセキュリティは月に$975見込め、それとは別にペンション年金で、一時金で$75,000もらうか、あるいは一生涯月々$445もらうかを選ぶことができます。401(k)には$200,000貯まりました。以前働いていた会社を退職したとき、そのままにして運用し続けた古い401(k)には$60,000あり、また5年前に亡くなった夫から相続したTraditional IRAが$200,000あります。

返済済の持ち家に引き続き住むつもりです。月々の生活費は、趣味や旅行などの予算も入れて月に$3,000ほどです。

まず、年金で、一時金$75,000でもらうのか、それとも生涯年金を月に$445もらうのかを決めます。一時金でもらったら自分でそれを運用することになります。どれくらいの運用益が出せるのかが問題です。一方で月々の$445の年金は、早く死ねば損ですが、長生きしてもずっともらい続けられるという安心があります。Carolineの場合、月々の$3,000の支出のうち、固定収入でカバーできるのは$975のソーシャルセキュリティだけです。支出の3分の一が固定収入でカバーできるという計算ですが、これをできれば50%くらいまで引き上げると収支のやりくりが楽になります。また、ファイナンシャルプラナーに計算してもらったところ、90歳くらいまで生きれば月々もらったほうが得になると聞き、月々もらうことに決めました。固定収入は$975+$445=$1,420となり、支出の50%弱を固定収入でカバーできることになりました。

一方で、新しい401(k)と古い401(k)をTraditional IRAにロールオーバーし資金の一元化を図り、マネージをしやすくしました。年間平均4%の利回りを目指し、株式40%:債券60%で始め、次第に株式比率を下げて運用していきます。すでに70歳半(2019年末SECURE ACTにて72歳に変更)を過ぎているのでRMDが発生します。当初のRMDは$19,000弱、月々$1,600弱です。先の$1,420と合わせてちょうど支出の$3,000になる計算です。

将来のRMDを計算してもらったところ、4%の利回りを出していればRMDは次第に大きくなっていき、ちょうどインフレによって大きくなる支出を相殺する効果が得られます。4%の利回りを出している限り100歳まで資金は枯渇しない予定ですが、もちろんそれまでの間、市場の状況が悪い年もありますから、そういう年には引き出し額を少なくする(残高が減ればRMDも小さくなる)ことで、資金枯渇を防げるよう、月の余剰金がある場合にはキャッシュで貯めておき、ある程度のクッションをつくっておくつもりです。

IRAからは年の初めにRMDを計算し、その額をいったんMoney Market口座に移します。Money Market口座と銀行のチェッキング口座をリンクさせ、12か月割した額を月々自動送金するように設定します。市場の状態が悪いときには、IRAからMoney Marketに一括で12か月分出してしまわず、6か月分にして様子を見たり、あるいは当面手持ちのキャッシュから生活費を賄い、市場の状態がよくなるまで待つようにし、資金が急激に減ることを防ぎます。

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3 comments

  1. 老後の生活で1番の不安は、高い医療費と、ロングタームケアが必要となった場合かと思います。
    リタイアメントプランニングは、Tom Hegnaがよく説明していますが、inflation やdownside market risk に加え、Longevityのリスクも大きいと思います。大体の方は、平均寿命で長期医療や介護を必要とせずに亡くなることを想定しているように感じます。
    ナーシングホーム費用の高騰を考えると、平均2,3-5 年と言われるナーシングホームの滞在期間の対策は必須かと思います。ロサンゼルス、オレンジカウンティーのナーシングホームの平均月額費用は、$7,000とも言われています。
    特に、ご夫婦の場合には、どちらかが多額の医療、介護費用が必要となった場合、残された配偶者の生活を維持することが困難になるケースは他人事ではないと感じます。持ち家を売って、この費用を捻出した場合は、非常に厳しい経済状況に陥るリスクがあります。
    メディカルを受ければいいと安易に考える人達もいるようですが、できれば避けたい選択肢です。

  2. 質問です。Adamと Barbaraの場合のソーシャルセキュリティについて、
    なぜ BarbaraはAdamの50%支払われるサポースを選択しないのですか?

    1. コメントありがとうございます!確かにBarbaraは夫の50%をもらったほうがよいですね!
      というこどで、Adamのソーシャルセキュリティを$1,700、Barbaraを$900という数字に訂正させていただきました。細かいところまで見ていただきありがとうございます。
      (*変更前は、Adam$1,900、Barbara$700でした)

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