リタイヤメントの現実を知る(1)

リタイヤメント後のご自分を想像されたことがありますか?何歳でリタイヤされる予定ですか?どのくらいの生活費で、何歳まで生きることになるのでしょうか?今一生懸命リタイヤメント資金をつくるため積み立てしている方であっても、リタイヤメント後の具体的な生活が想像がついているという方は少ないでしょう。今回は、ご参考までに、ひとつのリサーチ結果をご紹介します。Transamerica Center for Retirement Studiesという非営利団体が、リタイヤメントについてのアメリカ人の姿勢を調べるために、定期的に全国的なリサーチをしています。今日は、もっとも最近のレポート結果(2015年12月)を、2回に分けてご紹介します。

リタイヤは何歳で?

ファイナンシャルプラニングをするとき何歳でリタイヤされたいかという目標を必ずお聞きします。具体的に年齢を記入くださる方も、まだわかりませんという方もいらっしゃいますが、だいたい多いのは65歳(おそらくメディケアが始まる歳だからでしょう)か、67歳(ソーシャルセキュリティのフルリタイヤメント年だからでしょう)か、あるいは70歳(長く働いてきりのいいところだからでしょうか)という数字が多いものです。その数字を使ってプラニングを進めていくわけですが、今回のリサーチでは、実際に予定していた年齢にリタイヤしたと答えたのは33%に過ぎず、60%の人がプランしていた年齢よりも早くリタイヤしたと答えました。そのうちの66%(つまり全体の40%ちかく)が組織変更、失業、仕事や職場での不満、早期退職制度の利用など、職場関係の理由から早くリタイヤしたと答えました。また、早期リタイヤ組の11%(全体の7%ちかく)が親の介護など家族関連の理由からだと答えました。リタイヤメント資金が十分であったから早くリタイヤしたと答えたのは、早期リタイヤ組の16%(全体の10%ちかく)に過ぎませんでした。

また反対に7%の人はプランしていたより遅くリタイヤしたと答え、そのうち61%(全体の4%あまり)は収入が必要であったからという理由でした。

予定は未定で、やはりなかなかプランしたようにはいかないというのが現実のようです。安定した職業があったとしても、なんらかの変化があって自分が思う年齢まで同じように働き続けられないこともあるということは考慮に入れておかねばならないということですね。

どのようにリタイヤメントに入ったか?

46%がある年齢に達したとき、あるいは何らかの条件が整ったとき、一度に仕事をやめリタイヤメントに入ったと答えました。一方で33%は可能な限りでなんらかの仕事をしつづけながら徐々にタイヤメントに入っていったと答えました。

現在50歳以上のリタイヤメント前のグループ(50歳以上現役組と呼ぶ)のうち、職場で、フルタイムからパートタイムに移行しつつリ徐々にタイヤメントに移行していくプログラムがあるとしているのが23%、フレキシブルなワークスタイルが提供されているとしているのが22%でした。すでにリタイヤしているグループに比べるとこれらのパーセンテージは上がっていることから、一度のリタイヤメントに入る代わりに、だんだんと仕事のスタイルを変えていき徐々にリタイヤメントにフェーズインしていくやり方は今後増えていくのではないかと想像できます。

これはファイナンシャルプラニングの面からも有益なことです。労働から得るある程度の収入があることは、リタイヤメント資金から引き出して使う額を減少させます。とくに、リタイヤメント初期のまだ比較的年齢が低い(60代などの)時期に、リタイヤメント資金から多くの資金を引き出すと、その後運用されるべき元本を急速に減らし、運用にも影響がでます。よって資金の枯渇のリスクも大きくなります。ある程度の収入を得ながらの移行期を経つつ、徐々にリタイヤメントに入るというのは、このリスクを減少させる有益な方法です。

どこで何をする?

どこで老後を送るかは大きな焦点です。すでにリタイヤしている既リタイヤ組(63%)も50歳以上現役組(81%)も、生活費が妥当であることを、どこでリタイヤするかの選択基準の第一位に挙げています。たしかに、リタイヤメント資金を準備するのも大切ですが、その資金がどの程度もつかどうかは、リタイヤメント後の支出によります、いったんリタイヤしたら、資金を貯めること、つまり資金準備のほうはなかなか難しいわけで、そうなると使うほう、つまり支出のコントロールがだいじになります。

どこで済むかで住居関係のコストは大きく変わります。家の値段が違えば、モーゲージはもちろんのこと、モーゲージが完済されていても固定資産税や保険料、メンテの値段も変わってきます。借りているならレントも大きく変わります。アメリカでは、州税、消費税、物価や医療ケアの値段まで、住む場所によってかなりのバリエーションがあります。どこに住むかは大きな決断要素となります。

生活費の妥当性の次に重要視されたのは、家族や友人への物理的距離でした(それぞれ62%と54%)。リタイヤしてからの生活の充実度は、人とのかかわりと深く関係しているというリサーチ結果もありますから、周りに家族や友人がいることは大切な要素です。また、ケアが必要になったときに、家族が近くにいるかいないかは精神的にも金銭的にも大きな要素となります。

老後の生活でどこに暮らすかと関連して、もうひとつの大きな要素は住む家をどうするかです。リロケーションをするならもちろんのこと、同じ街にとどまる場合も家を売ってダウンサイズするのか、住み続けるのか、リバースモーゲージを開くのか、など家に関係する選択はいろいろ存在します。50歳以上現役組の57%は今の家に住み続ける、26%は新しい家に引っ越すと答えました。既リタイヤ組では、全社が61%、後者が39%でした。実際に引っ越した人の挙げた理由のうち最も多いのが、物理的に部屋数など不要なのでダウンサイジングした(34%)、費用をカットするために引っ越した(29%)を合わせると63%が生活の規模をアジャストするためにそうしたという結果でした。

住まいのタイプとしては、50歳以上現役組の71%が一軒家に住み続けることを希望しており、既リタイヤメント組の70%が実際一軒家に住んでいると答えました。リタイヤメントコミュニティーに住んでいると答えたのは5%に過ぎませんでした。50歳以上現役組でリタイヤメントコミュニティーに住みたいと答えたのもほぼ同レベルでした。

リタイヤメント後の夢としてよくあがるのは旅行することです。あとは、家族や友人と過ごすこと、趣味を楽しむことが続きますが、最近のトレンドとしては50歳現役組の答えのなかに、今と同じ分野の仕事をし続けることが“リタイヤメント後の夢”として挙げられることです。ここでも、一度にリタイヤメントに入るのではなくて、少し働き方を変えながら楽しみながら仕事をし続け、徐々にスローダウンしていくというイメージがあるようです。

老後は何年?

既リタイヤ組の70%が健康状態はよいと答えており、何歳まで自分が生きると思うかという質問については、57%が90歳までと答えています。リタイヤする年齢の中央値が62歳であり、90歳まで生きるとすると28年間をリタイヤメント状態で過ごすことになります。28年というのはかなり長い期間ですね。自分の28年前を想像してみてください。その時点から今までの間の生活をサポートできるように準備をしておくというのは、なかなか大変なことです。

ファイナンシャルプラニングをする際、現在デフォルトで使われる寿命は95歳です。現在の寿命はこんなに長くないですが、今からリタイヤする人たちが今後数十年生き続ける間にも、医療の進歩は進み、おそらく寿命は延び続けるでしょう。また、途中で資金が足りなくなるよりは余ったほうがよいという意味もあって、リタイヤメント資金でカバーすべき寿命は95歳までとするのが一般的です。

生活はどんな?

44%の既リタイイア組が、リタイヤしてから生活の楽しさが増したと答えており、これはうれしいことです。90%超が押しなべてハッピーと答えています。ただ、金銭的なやりくりが困難で生活がきちきちであるという層も28%います。

既リタイヤ組のもっとも大きい心配ごととしては、健康を害し長期介護の状態になること、ソーシャルセキュリティが崩壊すること、認知上の問題で生活を楽しむことができなくなること、孤立することでした。50歳以上現役組では、リタイヤメント資金が底をつくこと、適切で妥当なコストの医療ケアを利用できないことな、金銭的な心配を挙げました。

既リタイヤ組の世帯年収の中央値は$32,000であり、既婚者では$48,000、シングルでは$19,000という結果でした。50歳以上現役組の世帯年収の中央値は$71,000であり、既婚者では$84,000、シングルでは$35,000でした。

この数字だけ見ると、リタイヤメント後は生活水準が下がったのではないかと予想されますすが、リサーチでの自己申告では、既リタイヤ組では60%がリタイヤ前と生活水準は変わっておらず、43%がファイナンシャル的な数字もおぼ同じであると答えています。一方で、50歳現役組では自分の生活水準は落ちるだろうと予想する人が多くいました(40%)。

リサーチ項目はまだ続きますが、今回はここまで。

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2 comments

  1. ここにある年収はネットでしょうか、税込みでしょうか。ちょっと気になりました。

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