ソーシャル・セキュリティーの手はじめ(2) - Retirement Benefit

Last Updated on 2019年1月21日 by admin

最近のニュースで、「アメリカのミドルクラスの25%は、リタイヤメントの目標準備資金が$350,000であるのに対し、実際にはそのわずか7%の$25,000しか貯蓄しておらず、そのためリタイヤメントを先延ばしにし80歳まで働き続けなければならないと考えている」...というのを読みました。「80歳というのは、平均的なアメリカ人の寿命78歳より2年も長い!」などと皮肉る記事もあり、その深刻さが伺えます。今回はリタイヤメントの準備で知っておきたい知識として、ソーシャル・セキュリティーのRetirement Benefit(年金についてまとめました。

ソーシャル・セキュリティーの手はじめ(1)-何がいくら貰えるの?では、ソーシャル・セキュリティーの3つの柱、1) Retirement Benefits、 2) Disability Benefits、 3) Survivor Benefitsの概要をまとめてみました。そのうちのもっとも注目される柱であるRetirement Benefitsについて説明してみます。

Retirement Benefitsを受ける資格

ソーシャル・セキュリティーはクレジット制をとっており、クレジットの数によってBenefitの受給資格が決まります。Retirement Benefitを受給のためには、40クレジットが必 要です(1929年以降に生まれた人の場合)。1クレジットを取得するために必要な収入というのが決められていて、この数字は年々変わります。たとえば、 2000年では$780でした。年々引き上げられて、2010年と2011年は$1,120、2012年は$1,130です。2012年の例をかります と、$1,130の収入を得るごとに1クレジットを取得できるということです。ただし、1年に取得可能なクレジットは4クレジットまでと決められています ので、$1,130x4=$4,520を超える収入を得ても、取得クレジットは4のみです。結果的に、Retirement Benefitを受ける資格を得るためには、40クレジット÷4クレジット/年=10年間、働く必要があることになります。

 

日米社会保障協定

2005 年に締結された日米社会保障協定により、日本とアメリカの年金加入期間を相互に通算することで、年金受給権を獲得できるようになりました。このため、アメ リカで働いた期間が10年に達しなくても、日本で働いた期間を含めて合計が10年になれば、アメリカのソーシャル・セキュリティーから Retirement Benefitを受けることができるようになりました。裏返せば、日本の年金制度が必要とする25年10年(2017年8月に25年から10年に短縮)に、アメリカで働いた期間を含めてカウントすることが でき、合計で25年10年に達すれば、日本からの年金を受けることもできるということです。

注意したいのは、この協定は、あくまで年金加入期間の 通算を可能にしたものであって、両国の年金加入期間をまとめて一方の国から年金を受けるという仕組みではありません。それぞれの国で年金受給資格を得るための必要期間 を計算する場合に、相手国の年金加入期間を通算するという仕組みです。したがって、実際の年金は、日米両国のそれぞれの年金制度に加入した期間と収入に応 じた年金 を、それぞれの国から受けることになります。

日米社会保障協定について詳しくは、こちらをごらんください。

社会保険庁 http://www.us.emb-japan.go.jp/j/ryoji/shakaihosho.html

Social Security Administration http://www.ssa.gov/international/Agreement_Pamphlets/japan.html

 

Retirement Benefitのしくみ

Benefit を受ける資格を満たしていれば、62歳からRetirement Benefitとして毎月の年金を受けとることができます。また、10年以上婚姻関係にあった配偶者も、62歳から年金を受け取る資格ができます。離婚し た配偶者も、10年以上の婚姻関係があり再婚していなければ、年金を受ける資格が維持されます。

生まれた年により、Full Retirement Ageが定められており、1937年以前生まれなら65歳、1960年以降生まれなら67歳、その間の生まれは65歳から67歳の間です。一覧表はこちら。 Full Retirement Ageを知ることは、以下の点から大切です。

  • あなたがFull Retirement Ageで受給を開始すると、Benefitの満額がもらえる。
  • あなたが62歳からFull Retirement Ageまでの間に受給を開始すると、Benefitが減額される。Full Retirement Age が67歳である人が、

62歳で受給開始すると、30%の減額

63歳で受給開始すると、25%の減額

64歳で受給開始すると、20%の減額

65歳で受給開始すると、13.3%の減額

66歳で受給開始すると、6.7%の減額

  • あなたがFull Retirement Age を超えて受給開始を延期すると、70歳までを期限として、1年につき8%(1943年以降生まれの場合)Benefitの額が増額される。
  • あなたの配偶者はFull Retirement Ageで受給を開始すると、あなたの満額の50%がもらえる。
  • あなたの配偶者がFull Retirement Ageまでの間に受給を開始すると、あなたの減額率よりもさらに大きい減額率で、減額される。
  • あなたの配偶者がFull Retirement Age を超えて受給開始を延期しても、上記のようなBenefitの増額はない。

 

予想Benefitを知る

Benefitの予想額は、Social Security Administrationのサイトにあるカリュキュレータを使って確認することができます。

1)Quick Calculator :現在の年収を入力することによって、過去の年収履歴を推測し、Benefit を大まかに予想するもの。

2)Online Calculator :過去の年収履歴の詳細を入力することによって、Benefitをかなり正確に予想するもの。

3)Retirement Estimator :  実際にソーシャル・セキュリティー番号などまで入力して、かなり精度の高いBenefitを確認するもの。

4)Detailed Calculator :ソフトを自分のPCにダウンロードして、かなり精度の高いBenefitを確認するもの。

かなり正確に額を知りたいというのでない限り、1)か2)で十分ではないかと思われます。3)と4)については使ったことがありませんので、何ともコメントできかねます。1)についての使い方は以前のブログで紹介しましたので、そちらをご覧ください

 

残念ながらの留意点

現時点のソーシャル・セキュリティー・システムでは、ソーシャル・セキュリティー・タックスとして徴収しているお金のほうが、ソーシャル・セキュリティー・ベネフィットととして支払っているお金より多いのですが、しかしながら、2016年までにこれは逆転すると予想されています。出て行くお金のほうが入ってくるお金より多くなるということです。これ以降は、ソーシャル・セキュリティー・ファンドの中に蓄積されているお金から、足りない分をカバーすることになるわけです。

そして2037年までに、この蓄積分は使い果たされてしまい、その時点では、現在約束されているベネフィット額の76%しか支払うことができなくなるだろうと予想されています。

ソーシャル・セキュリティーでどのくらいの年金がもらえそうかを知っておくことは、リタイヤメント準備のための貯蓄、投資計画のために必要なことですが、リタイヤメントまでに20年以上ある人の場合はとくに、現在約束されている額の70%ぐらいを見込んで堅実な計画をすることが望ましいと考えられます。

 

以上、このブログ作成時点での法律にのっとり、概要をなるべくわかりやすくまとめました。それぞれの個別ケースで適用はもっと複雑になることはもちろんありますから、詳しくはソーシャル・セキュリティーのサイトhttp://www.ssa.gov/で確認ください。

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2 comments

  1. いつもとてもためになる情報ありがとうございます。10年以上結婚して離婚しましたが、元配偶者が、私の配偶者としてRetirement Benefitを受けようとした場合、彼が、需給時期についてどのような選択をしたとしても、私自身の受給額には影響はないものと考えてよろしいでしょうか?

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