タックス・リターンをどうするか(1) - 自分でする?人に頼む?

みなさん、タックス・リターンはお済みでしょうか?自分でしますか?人に頼みますか?2010年のIRSの発表によると、個人納税者のうち約67パーセントがe-fileを利用し、e-fileをした人のうち35%以上が自分でタックス・リターン書類を作成したとのこと。家のパソコンで自分で作成しe-file・・・というパターンは増加傾向にあるようで、その分、プロ頼むという人は少しずつ減っているそうです。オンライン・バンキングやパーソナル・ファイナンスのオンライン・サイトを使う人が増え、今やW-2や投資アカウント情報までダウンロードできる時代、タックス・ソフトを使って自分でやる派が増えるのもうなずけますね。今回は全4回の「タックス・リターンをどうするか」の1回目です。

 

コスト的にはどうなの?

National Society of Accountants によると、Standard deduction(項目ごとに控除を申請せず、一律標準額を控除する)のタックス・リターンをプロに頼んだ場合の平均コストは$129、Itemized deductions(項目ごとに列挙して控除する)の場合は$229だそうです。

一方、自分でファイルする場合のタックス・ソフトウエアは、安いもので$20、プレミアム・レベルだと$70超。また、AGIが$57,000以下の場合(夫婦のジョイント・リターンの場合はふたりのAGI合計が$57,000以下の場合)、IRS Free Fileというシステムを使って、無料でe-fileができます

これはもちろん金額的なコストであって、かかる手間や時間を考えると自分でしたほうのコストがだんぜん高くなるわけですが。。。

・・・ということで、どうします?自分でやりますか?プロに頼みますか?

 

プロに頼むといいところ

節税

プロはいろいろ勉強もし、様々なケースを知っている人(のはず!)でしょうから、個人でタックス・リターンをした場合には見過ごしがちな控除やタックス・クレジットなどを見つけ、節税に役立ってくれるでしょう。有能な専門家であれば、「来年度はこれこれこのようにお金を貯めたり運用すると税制上は有利ですよ」というようなアドバイスまでしてくれるでしょう。

人のせいにできる

“Don’t become an IRS victim.”とか “Don’t mess with taxes”などという宣伝を見たりすると、IRS=コワいところ、自分でタックス・リターンは危険すぎる・・・などと考えがちなもの。自分でする代わりに人に頼んでしまえば、何が間違いがあってもその人の責任。自分がよくわからないものはコワいものです。コワいものはなるべく避けたい。でもしなければならないから、誰かにお願いする。何か問題があれば、自分の代わりに誰かを責められる。。。というのは人間の心理かもしれません。それはちょっと、アドバイザーが推薦したミューチュアル・ファンドを買って値段が下がったとき、アドバイザーを責めるのと同じなのかもしれません。人間は自分で失敗して人を責めるより、人が失敗して人を責めるほうが気楽なのです。

面倒くさくない

なんといってもこれは魅力ですね。必要な書類をまとめておいて、あとは「はい、お願い」  面倒な入力や、税法の改定(頻繁に変わる!)については心配不要。自分でやるより早いし、あとは、寝てリファンドを待つだけ(あればの話)。お金は少々かかるけど、面倒はいや!という人には魅力的な選択肢でしょう。

 

自分でやるといいところ

安くすむ

金額的コストのみを単純比較すれば、自分でやったほうが安いです。 他のソフトは知りませんが、少なくともTurboTaxの場合、コンピュータ1台にしかインストールは許されませんが、そのコンピュータを使えば、e-fileは最高5リターンまで許されています。自分や親、子どものリターンも1本のソフトで可能ということです。

自分のパーソナル・ファイナンスの全容がつかめる

税金なんてふつう、楽しくもおもしろくもないですよね。でも、税金とは、自分の稼いだお金から特別に指定された控除分を差し引いて、公的目的に使われるための自分の負担すべき分を割り出し、政府に納めるものです。つまり、タックス・リターンとは、自分の収入と支出や、自分のお金の稼ぎ方、使い方、貯め方の集大成ともいえる作業なのです。

自分でタックス・リターンをするといいのは、これらの全容が把握できることです。たしかに面倒で時間もかかりますが、面倒で時間がかかるのには「全容把握(全容とはいわなくても概要でも把握できる!)」というご褒美がついてくるわけです。私はTurboTaxを使っていますが、収入や控除項目を入力していくと、画面一番上に表示されるリファンドの額がリアル・タイムで変わっていきます。その動きを見ているだけでも、「こういうお金の使い方は税金上はこういう影響があるんだ」とか、「ああ、この項目はこんなに大きな影響があるんだ」とかなかなか勉強になります。

以前、友達に教わってキムチを漬けたことがありました。その時、ものすごい量の塩を使うのに驚き、それ以降キムチを見るたびに、「キムチにはえらい量の塩が入っているから、食べ過ぎはキンモツ」と思い出すものです。ふんわりやわらかいクッキーには、たくさんのバターと砂糖が入っていることも、つくったことがある人ならおわかりですね。パーソナル・ファイナンスも同じこと。最終的な税金だけ知っているのではなく、ある程度でいいですから、このプラスのマイナスのそれぞれの項目と相互の絡みぐあいをつかんでおくこと。これが、家計の健康維持にはたいせつなポイントです。

これからのプラニングに役立つ

タックス・リターンは年に一度、人にお金を払って誰かにやってもらえばそれでおしまい、というものではありません。1年を通してのお金の出入りを整理するものであると同時に、リターンをした後も、タックス情報はその後のファイナンシャル生活の様々な局面で使われます。つまり過去の整理と将来の計画という流れをつなぐ、大事なイベントなのです。

たとえば、「自分はRoth-IRAに積み立てする資格があるか?」、「○○団体に$200募金したら、それはいくらの控除につながるのか?」、「子どもの大学のファイナンシャル・エイドはもらえそうか」、「地方債に投資するのと、株に投資するのとどちらがいいか」など、すべて自分のタックス情報を使って考慮されるべき問題です。

これらの問題を考えるのには、タックス・リターンの中の、AGI(Adjusted Gross Income)やタックス・ブラケット(自分の課税最高税率)などの情報が使われます。ご自分のAGIやタックス・ブラケットがすぐに答えられますか?Yesと答えた方は、普段から計画的なお金の利用、運用を考えていらっしゃる方でしょう。

注目したいのは、AGIやタックス・ブラケットがプラニングに使われるだけでなく、プラニングによってAGIやタックス・ブラケットさえも操作できるということです。ちょっと混乱しますか?

たとえば下はAGIの操作と、他のファイナンシャル選択肢とがどのように繋がっているかの例です。

この例でいきますと、最初はAGIが$102,000以上であったため、教育タックス・クレジット(Lifetime Learning Credit)を満額もらう資格がありませんでした。それとは別に、リタイヤメント準備でIRAに積み立てをしたいというニーズもあり、Traditional IRAかROTH IRAかで迷っていました。もし、タックス・リターンは誰かに頼んで、計算によって出てきたAGIを固定的な数字としてとらえていると、「私のAGIは$102,000以上だから、Tax  Creditは満額はもらえないわね」とあきらめてしまうかもしれません。しかしながら、AGIはどのように算出されるか、ある程度知っていると、「ではTraditional IRAを選んでAGIを低くして、Tax Creditも満額もらってしまおう」という選択肢も生まれてきます。

もちろんこれは、自分ですべてしなければならないことではありません。ご家庭のニーズをよく理解した専門家なら適切なアドバイスをしてくれることと思います。ポイントはすべてを自分ですることではなく、このような可能性があることやだいたいの概要をつかんでおくことです。私たちは、「知らないことは、知らないことさえ知らない」のです。そうであると、専門家に適切な質問をすることさえ思い浮かばないかもしれません。「よく知らないけど、そういうようなことがあるのは知っている」という状態を目指すのがいいですね。

第2回目は、「タックス・リターンをどうするか(2) - 自分でしても、人に頼んでも・・・」をお届けします。

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4 comments

  1. 先月から自動車の部品を作る工場の内職(Contract Labor)を始めした。
    会社にW-9 フォームを提出、所得税は来年のタックスリターンで払うことになっています。
    フルで働いても、月額300㌦弱、今年の年収は3000㌦未満になる予定です。
    5年前に退職してソーシャルセキュリテイのみの収入で、家の修理等でリタイアメントアカウントから毎年20Kほどおろしています。
    質問ですが、この内職の収入はタックスリターンで税金を払うと、可能性として相殺されてしまい可能性があるでしょうか。尚、過去数年のタックスリターンでは500㌦程度の追加徴税となっています。

  2. 早速の返事ありがとうございます。

    添付のリンクにケンタッキーの数字を入れたところ、Stateに10㌦以下の税金でした。
    これで、安心して内職を続けることができます。
    退職して以来、テレビを見る時間が多かったですが、内職をするようになって各段にテレビの時間が減りました。手を使う作業なので前頭葉?も使ってWinWinです。
    ありがとうございました!

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