トランプ税改革でどう変わる?

昨年12月20日に、下院で賛成224、反対201(民主党で賛成はゼロ、共和党でも12議員が反対)で可決され(正しくは再可決)、次いで12月22日にトランプ大統領が署名をし、税制改革法が成立しました。富裕層ばかりが優遇される・・・という非難の声が大きい改革法ですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

 

2018年の4月18日までに申請する2017年のタックスリターンまでは、改革前のシステムを使います。2019年に申請する2018年のタックスリターンから新制度が適用されます。ただ新制度も現時点では永久に効力があるものではなく、今回制定された個人税に関するほとんどの項目が2025年以降は無効となる予定です。一方でビジネス関連の改定は期限なしに有効です。改革前と改革後の変更点を以下にまとめます。

 

個人所得税の税率

 

改革前の所得ごとの税率は以下のとおりです。どの所得レベルでも適用される税率が引き下げられました。

改革前

Single Filers
税率 課税所得
10 percent Up to $9,325
15 percent $9,326-$37,950
25 percent $37,951-$91,900
28 percent $91,901-$191,650
33 percent $191,651-$416,700
35 percent $416,701-$418,400
39.6 percent Over $418,400

 

Married, Filing Jointly
税率 課税所得
10 percent Up to $18,650
15 percent $18,651-$75,900
25 percent $75,901-$153,100
28 percent $153,101-$233,350
33 percent $233,351-$416,700
35 percent $416,701-$470,700
39.6 percent Over $470,700

 新制度

Single Filers
税率 課税所得
10 percent Up to $9,525
12 percent $9,526-$38,700
22 percent $38,701-$82,500
24 percent $82,501-$157,500
32 percent $157,501-$200,000
35 percent $200,001-$500,000
37 percent Over $500,000

 

Married, Filing Jointly
税率 課税所得
10 percent Up to $19,050
12 percent $19,051-$77,400
22 percent $77,401-$165,000
24 percent $165,001-$315,000
32 percent $315,001-$400,000
35 percent $400,001-$600,000
37 percent Over $600,000

 

Alternative Minimum Tax (AMT)

ある程度以上の所得者に対してはAMTの計算が義務付けられ、それがRegular Tax(上図の税率をもとに計算される)よりも多い場合には、AMTとRegular Taxの差額分を追加で税金として納めることになっています。

改革後は、Exemptionの額が引き上げられ、またExceptionの減額が始まる(Phase outが始まる)収入レベルも引き上げられます。より高所得者であってもより多くのExemptionが利用できるようになります。

  Single filers Married, filing jointly
  Exemption Phase out begins at Exemption Phase out begins at
改革前 $54,300 $120,700 $84,500 $160,900
改革後 $70,300 $500,000 $109,400 $1 million

 

Standard Deduction

課税所得を計算する際に控除額を決める方法として、項目別にひとつずつ控除していく方法(Itemized Deduction)とあらかじめ定まった定額を一括控除する方法(Standard Deduction)がありますが、この後者のStandard Deductionの額も改定になり、次のように引き上げられます。

持ち家があるわけではないのでプロパティ税やモーゲージ利子控除などを利用できるわけでもなく、医療費やその他のItemized Deductionも大した額ではない世帯では、より多くのStandard Deductionを利用できるようになります。

Single filers Married, filing jointly
改革前 $6,350 $12,700
改革後 $12,000 $24,000

 

Personal Exemption

Personal Exemptionは基礎免除額であり、ひとりあたりのExemption額をTax Payer自身やDependentの人数分、所得から差し引けることになっていました。改革後はこの基礎控除が廃止されます。Standard Deductionが増える一方で、多くの世帯で家族の人数だけクレームできたこの控除が廃止になり利用できなくなります。

Exemption
改革前 $4,050 per person
改革後 廃止

 

Child Tax Credit

17歳以下の子どもひとりにつき、得られるタックスクレジットの額が引き上げられるとともに、Phase outの開始所得が引き上げられ、より高所得者層でもこのタックスクレジットを利用できるようになります。Personal Exemptionは廃止されますが、子どもがいる家庭では、たとえかなりの高所得者であっても多くのCreditを利用できるようになります。また、低所得者の場合は、たとえ税金を払う義務がなくとも、子どもひとりにつき$1,400までは補助金をもらえる(Non-refundable)ことになります。

Married, filing jointly
Tax Credit Phase out starts at
改革前 $1,000 per child $110,000
改革後 $2,000 per child ($1,400 is refundable) $400,000

 

State and Local Tax Deductions

Itemized Deductionを選んだ場合の控除の一項目である州・ローカル所得税税、州の消費税、プロパティ税の控除が$10,000までの限度に変更になります。カリフォルニアやニューヨークなど、州の所得税やプロパティ税が高額で、ゆうに$10,000を越してしまう州の納税者にとっては非常に手痛い結果となります。

控除額
改革前 全額
改革後 $10,000まで

Mortgage Deductions

Itemized Deductionを選んだ場合の控除の一項目であるモーゲージローンの利子控除は、これまでもモーゲージ額に限度が設定されていましたが、限度額が以下のように引き下げられます。ただしこれは新規モーゲージについてのみで、既存モーゲージはこれまでの限度額がそのまま適用されます。エクイティローンの利子控除は廃止されます。家の値段が比較的低い州では問題になる可能性が低いですが、上記同様カリフォルニアやニューヨークなど不動産価格が高く、モーゲージ額も高い州では、利子の控除が部分的にできなくなる可能性があります。ただ、$750,000以上のモーゲージが組める所得がある人が影響を受けるわけで、その意味では中級までの層への影響は少ないでしょう。エクイティローンの利子控除廃止は中級までの層も影響を受ける可能性があります。学費や家の改装などの中短期的お金の工面をエイクイティローンで行っている場合も、これまで利子の控除ができましたが、今後はできなくなります。

モーゲージ額 エクイティローン額
改革前 $1.1 million $100,000
改革後 $750,000

ただし既存ローンはup to $1.1 millionのまま

廃止

 

Medical Expense Deduction

Itemized Deductionを選んだ場合の控除の一項目である医療費控除は、より控除が受けやすくなります。いずれにしても、AGIに対してかなり高い医療費がないかぎり控除はききませんので、それほど多くの家庭で関係があるとは思われません。

 

医療費控除
改革前 AGIの10%を超える部分
改革後 AGIの7.5%を超える部分

 

 

Limits on Itemized Deductions

これまではItemized Deductionのトータル額に限度がありましたが、今後は廃止されます。ただ、State and Local Tax DeductionやMortgage Deductionの項目別の限度が設定されるので、Charitable DonationやInvestment Interest Expenseなどの控除額が多額でない限り、限度廃止はそれほど意味のある変化ではないでしょう。反対に、Charitable DonationやInvestment Interest Expenseなどが高額になる高所得者では節税になるでしょう。

Married, filing jointly
改革前 収入が$313,800を超えると控除のPhase out開始
改革後 Phase outは廃止、全額控除

 

Estate Tax

相続においては、$5.49ミリオン以上の資産への課税が$11.2ミリオン以上で課税に引き上げられます。富裕層が非課税で相続できる額が増えました。

課税
改革前 $5.49 million以上のエステート
改革後 $11.2 million以上のエステート

 

Corporate Taxes

これまでのCorporate Tax(法人税)の最高税率は35%でしたが、これが21%に引き下げられます。同時にCorporate AMTは廃止されます。節税により企業に残ったキャッシュは、雇用の増加を引き起こし、経済成長につながるというのがトランプ政権の見通しです。

 

Pass-Through Business Taxes

Sole proprietorships、Limited Liability Company、Partnershipなどのビジネス形態は、法人税を支払う代わりに、オーナーが得たプロフィットをオーナーの個人所得とともに所得税として納めることになっています。改革後は、このプロフィットに一律20%の控除が適用されます(Married, filing jointlyで収入$315,000以上でPhase outあり)。

 

まとめると・・

  • 全体的に個人に対する節税より、ビジネスに対しての節税効果の方が大きい。ビジネスに対しての節税は期限なし、個人に対しての節税は2025年以降は無効。
  • 個人に対しての節税も、低所得者より高所得者に対してより大きな節税となる。
  • 改革は、アメリカの累進課税のしくみをより「非累進」にし、「低所得者は少なく収め、高所得者はより多く収める」という累進課税の効果をより薄くするものとなる。2019年に対する節税効果の試算は下記の通り:

節税効果のため、課税後の所得は全所得レベルで増加するが、一般的に所得が大きいほど節税の度合いも大きい。Lowest Quintile(所得レベルのボトム20%)では0.3%の課税後所得の増加にとどまり、額にして$50。一方でTop Quintile(トップ20%)では2.2%の増加で、額にして$5,740となる。Top Quintileの中をさらにブレイクダウンすると、トップの95~99パーセンタイル(トップ1%を除くトップ5%以内の層)で最も節税パーセンテージが大きく3.5%、額にして$11,610の節税。トップ1%やトップ0.1%では、それより低い節税パーセンテージではあるものの、額にするとそれぞれ節税額は$34,130、$85,640である。

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