あなたのタックスブラケット、知っていますか?

「あなたのタックスブラケットは?」と聞かれたらすぐ答えられますか? 「タックスブラケットってどういう意味があるのでしょう?」と聞かれたらどうですか? 自分のタックスブラケットを知っておくことと、タックブラケットを知っているとどのようなよいことがあるのかについて今日は考えてみたいと思います。

 

タックスブラケットとは?

タックスブラケットというのは収入(正しくはTaxable Income)によって決まります。アメリカは日本と同様、累進課税制をとっており、2015年の例でいくと下記のようなシステムで課税されます。

tax bracket

Married filing jointlyのケースを見てみましょう。この表にあるとおり、たとえば収入が$100,000であればタックスブラケットは25%、$430,000であれば35%となります。よく「今年はタックスブラケットが上がったから税金が多くなる」というようなことを聞いたりしますが、これは「今年は前年よりも収入が増えたので、次のタックスブラケットの範囲に上がった」ということを意味します。「あ~、今年はタックスブラケットが33%に上がったから大変だわ」などという言葉を聞いたら、それは「今年は収入がとうとう$230,000以上になったわ(実際、これは課税対象収入なので、税前収入はもっと多い$250,000以上でしょう)」という間接的な自慢だったりもします。

 

累進課税のしくみ

タックスブラケットは日本語では「最高税率」と訳されることもあり、収入があと1ドル増えたとしたらその1ドルにかかる税率のことをさします。収入がいくらのひとであれ、Married filing jointlyの場合、最初の$18,450は10%、それを越えて$74,900までは15%、それを超えて$151,200までは25%・・・という部分はすべての人に同じです。ただ、収入が多ければ多いほど、このステージがどんどん上がっていき、ステージが進めば進むほど、その最終ステージでの収入は高い税率で課税されます。どこのステージまで行き着いたか=最高の税率は何か・・という意味で最高税率と訳されます。

 

働くと税金が増えて損?

ここでクイズです。「もうひと仕事すると、$500収入が増えます。でもそうするとタックスブラケットが上がってしまうので、低いブラケットに留まれるようその仕事は引き受けないことにします」というのは、正しいでしょうか。

これはよく聞くステイトメントですが、一般的に正しくないステイトメントです。前に書いたとおり、収入が多かろうが少なかろうが、ブラケットが高かろうが低かろうが、最初の$18,450は10%、それを越えて$74,900までは15%、それを超えて$151,200までは25%・・というシステムはすべての人に同一です。タックスブラケットが上がるということ、つまり、たとえば25%から28%に上がるということは、いきなりすべての収入が28%で課税されるということではありません。この人は、$500増えると28%のブラケットに上がってしまう・・といっているのであれば、25%ブラケットの限度収入額を超えた数百ドル分だけが、次の税率28%で課税されるということです。確かにその数百ドル分は高い税率で課税されるものの、収入が上がったので、ごっそり税金でとられてしまい、余分に働かなかったほうが得だった・・ということにはなりません。

 

たとえば、Married filing jointlyで収入が$151,000であった人が、$500余分に働いて収入が$151,500になったとしましょう。

前の税金 = $10,312.50(15%までで課税される分)+$19,025(25%で課税される分:($151,000-$74,900)x25%)=$29,337.50

新しい税金 = $10,312.50(15%までで課税される分)+$19,075(25%で課税される分:($151,200-$74,900)x25%)+$84(28%で課税される分:($151,500-$151,200)x28%)=$29,471.50

 

となり、収入は$500増えたことにより、税金は$134増えましたが、差し引き$366の純収入増となり、決して働いたことによって損したということになりません。

このように通常は、働けば働くだけ純収入が増えるはずですが、ただ、場合によっては収入が増えることによって、受けることができるディダクタブル(税控除)額やタックスクレジットの大きさが制限されることがあり、その影響も考え合わせると敢えて余分に働かないほうを選んだほうがいい場合の可能性もあることを追記しておきます。しかしながら、一般的には「ブラケットが上がるので、税金がどっと増えるから余分に働かないほうがいい」というステイトメントは正しくありません。

 

ブラケットが高いほどお得な控除

たとえば持ち家のモーゲージローンの利子控除を例にとって見ましょう。ご存知の方も多いと思いますが、モーゲージの利子はItemized Deductionを選んだ場合、ディダクタブル(税控除)の対象となり、課税対象の収入から控除できますので税金を少なくする作用があります。たとえばある年、モーゲージ利子として$2,000支払ったとしましょう。タックスブラケットが15%の人と28%人とでは、この同じ利子$2,000によって享受できる効果に違いがでてきます。同じ利子$2,000でも28%にとってのほうが、節税効果が高くなります。

 

ブラケットが15%の人の節税効果: $2,000x15%=$300

ブラケットが28%の人の節税効果: $2,000x28%=$560

 

となり、15%の人は$300分税金を下げることができますが、28%の人はそれより多い$560分税金を下げることができます。なぜ、ここでの掛け算はタックスブラケットである最高税率を使うか(それより低い税率でなくて)ですが、それは税控除は、一番高い税率がかかっている「最後の」収入を減らすからです。$2,000の控除が減らすのは、28%のブラケットの人の場合は、その前の低い税率がかかっている収入の部分ではなくて、最後の28%で課税される収入を減らすということです。

余談ですが、これがモーゲージ利子控除は、富裕層に「不公平に」有利すぎるシステムであるという批判につながっている所以です。ペンシルバニア大学の調べによると、収入が$40,000~$75,000レベルの家庭の利子控除による節税額は平均$523であるのに対し、収入が$250,000rベルの家庭は経金$5,459であったそうです。

 

ブラケットを知っておくこと

さて、とはいっても、節税効果をあげるために収入を上げて富裕層になりましょう・・というわけにはなかなかいきませんが、それでも自分のタックスブラケットを知っておくことは意味があります。たとえば、上のようなモーゲージ利子控除がいくらの節税効果を生むのかを、タックスリターンまで待たなくともある程度把握できるということは大切なことです。また、401(k)やIRAなどの積み立ても、いくら積み立ててどのくらいの節税になるのかを把握することもできます。もちろん控除だけでなく、収入の増加やボーナスがあるとき、どのくらい税金でとられてどのくらい手元に残りそうかという概算もできるよういなります。つまり、ブラケットを知っておくと、税金を踏まえたうえでの収支の概算がすぐできるということです(注:ここでのタックスブラケットはFederal Taxだけを考慮していますが、税金にはそのほかにもState Tax、Social Security Tax、Medicare Taxなどなどがありますから、実際の税金の合計額や手取り額はもう少し計算が必要になります)。

また、アクションのタイミングを決めるのにも役に立つことがあります。たとえば、Traditional IRAをRoth IRAにコンバートしたいとします。コンバート時には、コンバートする全額が所得として数えられますが、そもそも所得が非常に多い年であれば、すでにタックスブラケットが高いところ、コンバージョンによりさらに所得が上がるとタックスブラケットがさらに上がることになります。逆に所得が少ない年であれば、コンバージョンによって所得が上がっても、低ブラケットにそのままとどまっていることができるかもしれません。その場合、同じ額をコンバートしても、コンバートする額にかかる税金は後者のほうが低いことになり、であれば所得を少ない年を選んでコンバートするのが得策ということになります。あるいは、ブラケットが上がるぎりぎり手前までの額を、何年かに分けて少しずつコンバートしていくという方法も選べるかもしれません。

 

というわけで、ご自分のタックスブラケット、ちょっと気に留めておくとよいかと思います。

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