税金のお勉強 - タックスクレジット

今年の(というか、2014年分の)タックスリターンの申請期日はもう過ぎました。なぜ今頃タックスの話?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、当分タックスリターンのことを考えなくてもよい今の時期だから敢えて、ちょとタックスの勉強をしてみましょう。自分でタックスリターンをする人はもちろんのこと、プロにお願いしてリターンを申請している人でも、自分のタックスはどのように決まるのか、節税の方法にはどんなものがあるのかについて、日ごろからある程度知っておくことは大切です。今日は、タックスクレジットの話にしようと思います。

タックスクレジットって何?

アメリカにある程度住んでいらっしゃる方なら、タックスクレジットという言葉はお聞きになったことがあるでしょう。タックスクレジットは支払わなければならないタックスを減らしますので、使うことができると喜ぶべきものです。しかしながら、タックスクレジットは自動的にくるものではなく、自分で申請しなければならないものでもあります。

タックスクレジットは、直接支払うべき所得税を減らします。タックスリターンでは、所得や所得控除などを全部リストアップし、最終的にいくら所得税を支払わねばならないかを計算します。もし、使うことができるタックスクレジットがあるのであれば、支払うべき所得税からタックスクレジットの総額を差し引いた額が最終的に支払わなければならない所得税ということになります。

(所得の合計 - 所得に対する控除額の合計) x 税率 = 暫定所得税

暫定所得税 - タックスクレジット = 支払うべき所得税

実は、タックスクレジットには2種類あって、ひとつめのカテゴリーは上で書いたとおり、「支払うべき税金から差し引かれるべき」タックスクレジットです。これは支払うべき税金があってはじめて使うことができるものです。もしそもそも所得が非常に少ないので支払うべき所得税がない場合は、タックスクレジットを使うことがある立場にあったとしても、差し引く大元の所得税がないので、タックスクレジットは使えないことになります。また、支払うべき所得税はあるが、タックスクレジットよりもそれが小さい場合は、支払うべき所得税はゼロになりますが、それを超えたタックスクレジット分は使われないまま失われます。たとえば、所得税が$300であり、使えうタックスクレジットが$350であった場合、$300の所得税は抹消され支払う必要がなくなりますが、残った$50のタックスクレジットは使うことはできずそのまま失われます。多くのタックスクレジットはこのタイプです。

もうひとつのカテゴリーは、「たとえ支払うべき税金がなかったとしても、もらうことのできる」タックスクレジットです。上の例で所得が少なくそもそも支払うべき所得税がない場合であっても、そのタックスクレジットの額が政府からもらえるというものです。

(所得の合計 - 所得に対する控除額の合計) x 税率 = 暫定所得税がゼロ

タックスクレジット = もらうことのできる額

たとえば、もし上の所得税が$300、タックスクレジットが$350であった場合で、このタックスクレジットがこの後者の場合であったなら、$50は政府からもらえることになります。同様に、所得税がゼロでタックスクレジットが$500なら、この$500はまるまるもらうことができます。このようなタックスクレジットをRefundable Tax Creditと呼びます。

ディダクタブルとタックスクレジットってどうちがうの?

所得税控除という言葉がありますが、この日本語は、英語のディダクタブルの訳語にも、タックスクレジットの訳語にも混同されて使われているようです。

ディダクタブルという言葉は健康保険や車の保険などでも聞きますね。もともとディダクタブルというのは、deduct(差し引く)+able(可能)=差し引くことができる金額という意味で、健康保険などの場合は、ディダクタブルが$500ならば、保険会社は全体の医療費のうちから$500を差し引き($500は個人負担)、残りの差額を保険会社が払います・・ということになります。この場合のディダクタブルは、「免責額」(保険会社にとっての)とか「個人負担」(患者にとっての)と訳されます。税金の場合のディダクタブルは、$100がディダクタブルなのであれば、$100分を控除(差し引く)できますということですので、この場合のディダクタブルは「税控除」と訳されます。

前述のとおり、タックスクレジットも税金を減らす(差し引かれる)という意味なので、時によっては「税控除」と訳されることがあります。日本で支払った税金分をアメリカで二重で払わなくてよくするために、外国税控除というシステムを使いますが、これは実のところタックスクレジットだったりします。

このように日本語では混同されている「税控除」ですが、ここでは英語でのディダクタブルとタックスクレジットには基本的な違いがあります。ディダクタブルもタックスクレジットも所得税を減らすという意味では同じわけですが、それなら違いはいったい何なのでしょう?

タックスクレジットは上で書いたとおり、支払わなければならない所得税を「直接」減らします。それに対して、ディダクタブルは所得税を「直接」減らすのではなく、「税金がかかる所得を」減らし、結果として所得税を「間接的に」減らします。

例をあげましょう。税金のかかる所得が$100,000で、所得税率が20%だとします。もし、$1,000のディダクタブルがあった場合の税金は、($100,000-$1,000)x20%=$19,800となります。ディダクタブルなしの場合の税金は$100,000x20%=$20,000でしたから、この$1,000のディダクタブルのおかげで、$1,000x20%=$200分だけ税金が少なくなったということになります。(注: 実際の所得税は累進課税で計算されます。この計算はシンプルにするためこうしています)

同じケースで、$1,000がディダクタブルでなくて、タックスクレジットだった場合はどうでしょうか?そもそも払うべき税金は、$100,000x20%=$20,000ですが、ここに$1,000のタックスクレジットが利用できると、支払うべき税金は$20,000-$1,000=$19,000となります。$1,000のタックスクレジットの額がまるまる(直接)税金を減らしました。

ということで、ディタクタブルとタックスクレジットは額が同じなら、断然タックスクレジットのほうが節税上威力を発します。では、そのタックスクレジット、どんな種類があるのでしょうか?

 

Child and dependent care credit

仕事をするため、あるいは仕事を探すため、あるいはフルタイムの学生であるために、子どもまたはその他扶養者のケアを誰かに頼んだ場合の費用に対するクレジットです。Married Filing Jointlyの場合は、共働き(あるいは夫婦ともに上記の条件に該当)である必要があります。AGI(Adjusted Gross Income)により、最高で費用の35%までクレジットがもらえます。最高額は、ひとり$3,000、二人以上で$6,000で(2015年)です。13歳以下の子ども、Disabled(障害者とみとめられる)の配偶者、あるいは扶養義務のある人のケアのために発生した費用が対象で、キンダー以前のナーサリースクール、プレスクールなども含みます。

 

Child tax credit

扶養義務のある子どもがある場合に得られるクレジットです。17歳以下の自分の子ども、孫、義理の子ども、フォスターチャイルドで、一年のうち半分以上同居し、子ども自身が自分の生活費のうち半分以上を出していない場合に適応します。MAGI(Modified Adjusted Gross Income)が一定限度(Married filing jointlyでは$110,000、Singleで$75,000)を超えると、クレジットの額が減額されます(2015年)。

 

Earned income credit

低収入者へのクレジットで、これはRefundable Tax Creditで「たとえ支払うべき税金がなかったとしても、もらうことのできる」ものです。勤労収入があり、それがある一定以下である場合に受けることができます。クレジットの額は、AGI、ファイリングステイタス、子どもの数によって変わります。米国居住者(Resident)である必要があります。真面目に働いているのに収入が思うように得られない低所得者には心強いクレジットですが、残念ながら悪用の対象にもなりやすいクレジットです。フリーランスやスモールビジネスの場合も、収入をトラックできるような記録、インボイス、レシート、銀行口座への入金記録などを書面で維持しておくことが必要です。

 

Education credits

自分、配偶者、子どもの教育コストに対して受けられるクレジットです。ふたつのタイプのクレジットがあり、一年ごとにどちらか一方を申請して受けることができます。

ひとつはAmerican Opportunity Creditで、学生ひとりにつき最高で$2,500が受けられます。ハーフタイム以上で通っており、大学学部レベル(undergraduate)の最初の4年間に対して有効です。Married Filing JointlyでMAGIが$160,000、SingleでMAGIが$80,000以下であればフルでクレジットが利用できますが、その以上のレベルだとクレジットが減額され、それぞれ$180,000、$90,000でクレジットはゼロになります(2015年)。

Lifetime Learning Creditは、タックスリターンにつき(学生ひとりにつきではなく)$2,000が限度のクレジットで、受けられるクレジットの額は少なくなりますが、ただ適用範囲は広がます。大学学部レベル(undergraduate)、大学院レベル(graduate)、その他幅広い範囲の専門課程のコストに対して受けられます。Married Filing JointlyでMAGIが$110,000、SingleでMAGIが$55,000以下であればフルでクレジットが利用できますが、その以上のレベルだとクレジットが減額され、それぞれ$130,000、$65,000でクレジットはゼロになります(2015年)。

 

Foreign Tax Credit

「外国税控除」と名前で知られています。アメリカ市民、グリーンカード保持者は全世界での所得が課税対象となりますので、日本などアメリカ以外の国から収入がある場合は、これもアメリカのタックスリターンで申告する必要があります。もし日本でも税金を支払っている場合、アメリカでも課税され二重課税が起きることになりますが、この問題に対処するために外国で支払った税金分に対し受けることができるクレジットです。クレジットの額の割り出し法には複雑な計算が必要です。

なお、この二重課税の対象となる税金は、タックスクレジットとして控除することもできますし、ディダクタブル(Itemized Deductionにより)として控除することもできます。通常は、前述の理由から前者のほうが節税効果が高いことがほとんどですが、計算の煩雑さなど何かほかの理由からItemized Deductionで控除することを選ぶ場合もあります。この二者の選択は一年ごとに行います。

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