転職したらどうする - 401(k)などのリタイヤメントアカウント

Last Updated on 2018年6月28日 by admin

会社の401(k)に積み立ててきたが、離職したので401(k)をどうしたらいいのかというケースについて考えてみます。401(k)以外にも403(b)や457などのリタイヤメント・プランも同じです(ここでは、401(k)、403(b)、457などのプランを401(k)という名前で総称させていただきます)。古い401(k)はそのまま残すのか、他へ移すのか。。。どんなオプションがあってどうやって決めればいいか考えてみましょう。

 

オプション1: キャッシュアウト

ひとつは401(k)を解約して引き出す(キャッシュアウトする)という選択肢です。ただし、結論からいいますとこれはお勧めではありません。比較的若い人だと、もらえるならもらってしまおうと引き出しを考える人もいるようです。しかしながら、401(k)に入っているお金は利回りが非課税のまま増え続けますし、今若くてリタイヤメントまで何十年もあるならあるならなおのこと、現在の残高がたとえたいした額でなくとも、将来にはものすごい額に増えていきます。たとえば、25歳のとき$10,000の残高も、そのまま6%の利回りで運用しつづければ、55歳の時には$57,000の資金に成長します。

若いからリタイヤメントのことはまだ考えなくていいと思うのではなくて、若いからこそそのまま手付かずにしておこうというのが一番楽なリタイヤメント準備です。しかも、今引き出してしまえば、全額インカムタックスの課税対象となり(まず引き出すときに20%が源泉徴収されます)、そのうえ10%のペナルティもかかることになります。先ほどの$10,000を引き出したとすれば、結局手元に残るのは、$7,500ほどでしょう(実際はその人のタックスブラケットによります)。今の$7,500をとるか、30年後の$57,000をとるかの選択です。

 

オプション2:そのまま残す

離職後も401(k)はそのまま残すことを許している会社も多いと思います。オプション1の引き出すという選択を踏みとどまった後は、現行の401(k)として残しておくか、(後述の)新しい金融機関に移すかという選択をせねばなりません。これは現行の401(k)がどのくらい充実したものであるかによります。たとえば・・・

 

  • 投資の選択肢が魅力的: 質のよい401(k)プログラムだと、ふつうでは利用できないようなファンドが選べたりということもあるでしょう。大きな企業や団体だと、その雇用者専用のファンドをつくっており、外からでは利用できないようなものもあります。
  • 手数料が低い: これも上と関係しますが、企業や団体がまとめて投資するからこそ、非常に低い手数料でファンド運用が可能な場合もあります。
  • アニュイティ・オプションが選べる: 質のよいアニュイティ・オプション(たとえばTIAA-CREFなど)が提供されているのであれば、一考の価値ありです。老後、一生涯得られる月々の定額収入は、プラニング上価値のあるものです。企業年金が化石になってしまったアメリカでは、定額収入はソーシャルセキュリティーだけという人も多いでしょう。定額年金を得るために、リタイヤメント資金の一部を使ってアニュイティを買う人も多いもの。すでに質のよいアニュイティがあるのなら、そのまま運用する価値があるかもしれません。一方で、質の悪いアニュイティも存在します。手数料や条件などよく吟味しましょう。
  • ローン・オプションがある: リタイヤメント・マネーは手付かずのまま老後まで運用したいものですが、どうしてもお金が必要!となった場合に、ローンによって資金を手にできるのは心強いものです。すべてのリタイヤメント・プログラムがローンを許しているわけではないので、特に新しい会社のプログラムでローンが許されていない場合には、現行のままキープするというのも考慮に足るでしょう。

 

オプション3: 新しい金融機関に移す

反対に、現在の401(k)プログラムでは、投資できるファンドの選択肢が限られているとか、手数料が高いという場合など、現行のプログラムに満足していないのであれば、満足できる金融機関を探しお金を移す(ロールオーバーする)ことを考えます。まずは、新しい会社に401(k)プログラムがあれば、古い401(k)からのロールオーバーを許しているかを調べましょう。また新しい401(k)のプログラムで良質の手数料の低いインデックスファンドが提供されているかを調べます。新しい401(k)がよいプログラムでロールオーバーを許しているのなら、古い401(k)のお金を移すとよいでしょう。それ以降の積み立てと一括管理ができ、マネージしやすくなります。

また、もしも新しい401(k)がロールオーバーを受け付けていない、あるいは選べるファンドに満足がいかないなどの場合は、第三機関にロールオーバーをすることを考えます。VanguardやFidelityなどの低手数料のファンド会社を使えば、多くのファンド選択肢の中からきっとニーズにあったファンドを選ぶことができ、より高い利回りを得ることも可能かもしれません。

 

ディレクト・ロールオーバー

お金を移す場合には、新しい401(k)にロールオーバーをしたい旨連絡する、あるいは新しい金融機関にIRAを開設し、そこに現行の401(k)のお金を移す手続きをします。これをディレクト・ロールオーバー(Direct Rollover)と呼び、新しいIRAはロールオーバーIRAと呼ばれます。このディレクト(日本語ではダイレクトというほうが聞きなれているでしょうか)という言葉がミソで、これは現行の401(k)を運営している金融機関から、新しい401(k)なりIRAにダイレクトに(わたしたちを通さず)お金が移されるということを意味しています。ただ単に、お金を金融機関から金融機関に移したい場合には、この方法がベストです。

一方、もし、古い金融機関から自分の銀行口座に送金を受けたり、小切手を受け取ったりするなどして、いったん自分の所有とする場合は、資金の20%が源泉徴収されます。60日以内に新しい401(k)/IRAに入金すれば、これはあとでタックスリターンのときに戻ってくるものですが、とにかく手元に届くのは80%のお金です。これを新しい金融機関の口座に入れるとき、20%は自分の他の資金源から補って100%にして入金しないと、20%分はリタイヤメント・プログラムから「引き出した」という扱いになります。つまり、20%分立替が必要ということ。59歳半前の引き出しは、インカムタックスに加え10%ペナルティの対象になります。

このような問題を避けるためには、自分で資金を受け取らず、金融機関から金融機関へダイレクトに送金する、ディレクト・ロールオーバーを選ぶことです。手続きは比較的簡単で、新しい401(k)なり金融機関に口座を開き、ディレクト・ロールオーバーをしたい旨告げます。古い金融機関の口座情報を提出すると、新しい金融機関が古い金融機関に連絡し、ロールオーバーの手続きをしてくれます。

 

最後の注意点

雇用主が提供する401(k)などのリタイヤメント・プログラムは、法律により最低限の基準やルールが決められていますが、詳細はあくまで雇用主と雇用者の間の契約によることになっています。多くのプランで、ディレクト・ロールオーバー可能であるという事実はあっても、個々の契約すべてがこれを許しているとは限りません。リタイヤメント・プログラムを利用し始めるときに同意した契約書が、すべてを決定します。契約書に、「離職後も、ロールオーバーは一定期間許しません」と書いてあれば、それに従うしかありません。何か問題がある、おかしい・・・と感じた場合は、契約書をもう一度よく読んでみる(もし、手元にないのなら、人事部に問い合わせてとりよせます)ことが必要です。

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7 comments

  1. 今まではあまり現実的に考えていなかったリタイヤメントも、だんだん近づいてきたので、最近、会社のリタイヤメント・プログラムのツールなどで、自分はOn Trackなのかなあと頻繁にチェックするようになりました。

    どうもそのツールで見ると、私のアロケーションはAggressive Growthということがわかり、私の年齢を考えると、もっとConservativeにしないといけないなあと思いながら、数ヶ月が経ってしまいました。会社の401Kだけだとリバランスするのは簡単なんですが、リタイヤメント・アカウントがあっちの会社やら、こっちの会社やら分散していてどう管理していいのかわからないというのが、行動を遅らせている原因。ということで、この際、いろんな会社で分散しているリタイヤメント・アカウントを、オプション3のディレクト・ロールオーバーを使って、401Kと同じ会社(Fidelity)にしてしまおうと思います。会社のHRのFidelity担当者に連絡すればその手続きを手伝ってくれるようなので、それを利用しようと思いますが、上記に書かれている以外でなにか注意することありますか。

    1. ロールオーバーしたいアカウントが昔の401Kなら案外ストレートフォーワードだと思います。IRAだと、Traditional IRAであればテクニカル上は401にロールオーバーできるはずです(ルールは会社ごと)。ひとつひとつのアカウントに対して、そのFidelityの担当者に確認して、どれがロールオーバー可能か、税金上など問題ないか、引き出しのタイミングなど変わらないかなどを確認し、問題がなければディレクトロールオーバーにする・・という方法で大丈夫かと思います。あとは、今の会社の401kの投資チョイスが、辞めようと思っている口座のチョイスよりよいこともポイントでしょうか。401kの手数料が高かったり、チョイスがいまいちというのであれば、現行の口座をあえてキープするというのも手かもしれません(とくに現行の口座の額が相当額であるなら。小さければ、管理のしやすさのほうをとってロールしてしまえばいいと思います)。Good Luck!

  2. 40手前で遅すぎるとは思うのですが、ようやく生活に余裕ができる収入が入り始めたので、リタイアメントプランを真剣に考えようと資料を集めているところでこのサイトを知りました。
    私は派遣契約で働いており、派遣会社が401Kを提供していますがマッチングは無しです。最長2年の契約で働き始めて数ヶ月ですが、収入の40~50%を401Kに充てられるくらい現金には余裕があります。しかし気になったのはやはりこのトピックにありますように、契約が終ったらどうなるのかと言うことです。すぐに仕事が見つからないことを想定すると、キャッシュアウトして税金を沢山払うことになったら意味が無いし…と考えていたところです。
    派遣会社からの401Kの契約書を読むと、契約終了後の選択肢にはここで書かれているように、キャッシュアウトかディレクトロールオーバーがあるようです。
    お恥ずかしながら私は何年もの間契約社員を転々としており、正社員の仕事に恵まれていないのですがこのように派遣社員で1年や2年しか勤めずその後のことは不明な場合は、401Kが適当なのかそれとも他の投資を考えたほうがよいのかアドバイスがあればありがたいです。

    1. こんにちは。税優遇のある他の投資プログラムというとIRAくらいになりますが、こちらは入れられる額が401(k)の1/3ほどですから、やはり税優遇を活用しながら、ある程度の額を積み立てるとなると401(k)も利用せざるをえない思います。もし転職を繰り返されていくつもの401(k)になったとしても、そのまま税優遇を受けながら持っておくほうが、他の税優遇措置のない貯め方よりよいかと思います。あるいは、いくつかの401(k)をまとめてロールオーバーしてひとつのIRAにまとめて管理ということもできますから、税優遇のプログラムが利用できるのであれば、なるべくされるのがよいと思います。ただ、おっしゃるように、すぐに仕事が見つからなかったときのためには、ある程度の現金をすぐに使える形で持っていくことは大切です。現金を一定額確保した(生活費の3から6ヶ月ですが、もし仕事を見つけるのにもっとかかるかもしれないと思われるならそれ以上)上で、積み立てられるとよいと思います。

  3. こんにちは、アドバイス頂けたら光栄です!
    >いったん自分の所有とする場合は、資金の20%が源泉徴収されます。60日以内に新しいIRAに入金すれば、これはあとでタックスリターンのときに戻ってくるものですが,

    上記の要領でロールオーバーを去年しました。自己資金よりホールドされた20%を足しましたが、Taxリターンでどのようにして戻るのでしょうか?
    無知過ぎる質問で恐縮です。

  4. こんにちは、アドバイス頂けたら光栄です!
    >いったん自分の所有とする場合は、資金の20%が源泉徴収されます。60日以内に新しいIRAに入金すれば、これはあとでタックスリターンのときに戻ってくるものですが,

    この要領で去年ロールオーバーしました。自己資金よりホールドされた20%を足してロールオーバーしましたが、Taxリターンで何をどうすれば、ホールド20%は戻って来るのでしょうか?

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