日本で受け取るソーシャルセキュリティ と アメリカで受け取る日本の年金

Last Updated on 2022年2月14日 by admin

「現在、アメリカに住んでいます。昨年から日本の厚生年金をもらいはじめました。税金はどうなりますか。」 「アメリカに長く住んでいましたが、このたび日本に帰国します。アメリカの401(k)を日本でもらいますが、税金はどうなりますか。」 というご質問を受けることがしばしばです。日本とアメリカ間での税金の問題は、両国間で結ばれた日米租税条約に加え、アメリカの税法と日本の税法が関わってきます。Smart & Responsibleは、あくまでアメリカ暮らしのファイナンシャル・プラニングに焦点を当てており、日本の税法に精通していません。よって詳しいご説明をする資格はありませんが、今回はよくご質問を受ける基本的な部分のみを解説させていただきます。

2004年に成立した税制により、退職年金、ソーシャルセキュリティを含む社会保障年金、保険年金を日米の境を超えて受け取った場合、年金の支払い国ではなく受け取った人の居住国においてのみ課税されることになっています(改正後新日米租税条約第17条)。よって、アメリカに住む日本人(日本の住民票が海外転出となっている人)が日本で受け取る年金は、日本で非課税、アメリカで課税となります。反対に、日本に住む人(税法上アメリカで非居住者である人=日本人でグリーンカード保持者でない人、その他租税条約の居住地判定で日本基盤と判断される人)がアメリカで受け取る年金は、アメリカでは非課税、日本でのみ課税となります。

アメリカに住む人が日本で年金を受け取る場合

日本で受け取る年金に対しての源泉徴収を免除してもらうためには、下記の書類を、年金の支払い者(日本の社会保険事務所、各種年金基金、保険会社などの金融機関など年金を支払う者)を経由してその支払者の所轄税務署に提出します。

前述のように、受け取った年金はアメリカで課税されますので、タックスリターンで申請します(Form 1040のLine 16)。

日本に住む日本人がアメリカで年金を受け取る場合

アメリカで受け取る年金に対しての源泉徴収を免除してもらうため、年金の支払い者(ソーシャルセキュリティー・オフィス、保険会社、金融機関など年金を支払う者)に、IRS Form W-8BENを提出します。IRS Form W-8BENはアメリカで本来源泉徴収の対象となる人が外国籍であることを証明する用紙で、口座名義人のステータスを居住者から非居住者へと変更します。こちらも前述のとおり、受け取った年金は日本で課税されますので、日本で確定申告します。

年金以外なら・・・

アメリカで長く暮らした方は、年金以外にも預金や投資をお持ちかもしれません。税法上アメリカで非居住者である日本人が受け取る、アメリカの銀行預金の利子はアメリカでは非課税です。債券の場合は、米国国債、地方債などの利子は原則としてアメリカで非課税、社債の利子は原則として課税対象で10%の源泉徴収が施されます。株式の配当金、ミューチュアルファンドの配当金は、アメリカで課税対象で10%の源泉徴収が施されます。またキャピタルゲインについては、株式、債券、ミューチュアルファンドのどれでもアメリカでは非課税となっています。なおこれらの所得は、日本側では全世界所得に含まれて課税対象となります。

これらのアメリカ側での非課税扱いおよび10%源泉徴収扱いは、上記年金の箇所で書いたのと同様に、金融機関にIRS Form W-8BENを提出して初めて適用されることになります。この手続きをしないままですと、それぞれの金融機関は、これまでどおり支払いをアメリカ居住者に行っていると認識し続けます。金融機関は、支払われる所得の種類に応じて1099-INT、1099-DIV、1099-RなどのFormを名義人に発行するとともに、支払い内容をIRSに報告します。報告を受けたIRSはその報告内容と、タックスリターンでの申告を照合チェックします。小額であれば問題にならないかもしれませんが、ある程度以上になるとチェックにひっかかります。アメリカに住んでいないから関係ないと放っておくと、あとでIRSから督促状が届くということになりかねません。帰国の際には、忘れないように帰国前にW-8BENを提出しておくことをお勧めします。

グリーンカードを持っていたら・・・

また、グリーンカードを持つ日本人が日本に住んでいる場合はどうでしょう。グリーンカード保持者は、「アメリカ居住者」とみなされますから上記のような優遇措置の対象となりません。アメリカ国内の所得はもとより日本の所得も含む世界所得がアメリカの課税対象となります。また、日本に住んでいるのであれば、日本でも居住者であり、同様に日本の所得はもとよりアメリカの所得も含む世界所得が日本の課税対象となります。よって、アメリカと日本の両方でタックスリターンと確定申告を行うことになります。ただ、日米で同じ所得に対しダブル課税にならないように、Foreign Tax Credit(外国税控除)を適用したり、あるいは日米租税条約に基づき控除を受けることが可能になっています。必要に応じ、日米間の税金に詳しい専門家にご相談ください(Smart & Responsibleでは承っていません)。

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12 comments

  1. 検索で見つけました
    広範囲に専門的に無料教育してくれているのが 他の顧客探しのHPページと異なります
    あなたの人柄が想像できます 主婦であり しっかりした一人の女性さしさが出ています
    私は 家族なしの68歳定年者で GC 保持者です
    最後は生まれ育った日本と決めている弾こん世代は多いと思います
    その時 受給してますUS/SS をUS大使館で受けるてつずきの内容はどのようなものでしょうか
    USを引き上げる前にすべきことなのか 引き揚げてからできることなのか 
    このあたりのタイミングを掲載していただきますと とても助かります

    1. ひとり老後さん、こんにちは。そうですね、最後は日本で・・という方は多いようですね。ふるさとが恋しくなる気持ち、私も分かるようになってきました。すでに受給を開始されているということですので、住所変更の手続きをすればいいのだと思います。手続きの詳細は私の専門ではないので、よく知りませんが、日本で受給開始をする場合については日本の社会保険事務所になりますが(こちらのページに情報あり)、受給をすでに開始している場合の住所変更は、東京のアメリカ大使館のホームページによるとソーシャルセキュリティアドミニストレーション(SSA)へ連絡するよう書いてありますので、こちら(SSA)のページの情報にあるようにアメリカにいらっしゃる間にSSAに連絡して住所変更なさればよいのではないでしょうか。

  2. 日本の年金を受け取れますか?
    私は日本で3年間結婚し離婚しました。日本で働いた経験は1年位です、それでも日本の年金を受け取れますか。私は今64歳で、アメリカ国籍を取得しています。

    1. 個別ケースについては、無責任に私が判断できませんので、所轄の事務所にお問い合わせください。

  3. あきさん、

    米国で就業なさいました?もし米国で働いていた場合10年間の壁をクリアーすれば、日本の年金はもらえるはずです。私は日本で9年間働いて、結婚と同時に米国に参りました。主人が亡くなる際に米国籍を取得。本当はいけないのですが、日本に国籍喪失届を提出しておりません。62歳から年金がもらえると聞いて、日本に行った際に年金事務所でいろいろ聞きました。その後、米国に戻って郵送にて手続きを済ませ、今年からもらっております。日本に行かれることがあったら年金事務所に相談に行かれることをお勧めします。https://www.nenkin.go.jp/で用紙等も手にはいります。

  4. 管理人様、とても役に立つ情報ありがとうございます。

    記載のURLは、リンク切れになっています。新しいのを調べましたので、ここに書いておこうと思います。(2022年2月14日現在)

    租税条約に関する届出書は、こちらに移動しました。
    https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_47.htm

    フォーム 6166 はこちら:
    https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/form-6166-certification-of-us-tax-residency
    によると、フォーム 6166 というのは米国政府の発行する書類で、それを発行してくださいという申請は、8802 という申請書で行います。手数料 $85
    https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-8802

  5. 追記:
    年金額が公的年金控除額 60万円(65歳未満) / 110 万円 (65歳以上) [未確認]に達しない人は、そもそも源泉徴収免除を申請する必要はないと思います。6166発行申請料の$85 を損するだけだと思います。(日本で源泉徴収されようが免除されようがIRS への報告義務は残ります。)

  6. 「源泉徴収免除を申請する必要はない」と書きましたが、年金ダイヤルに電話で問い合わせたところ、アメリカ在住者の場合の提出必要書類に入ってまして、提出するように言われました。提出しないと年金開始の届けを受け付けてくれないのかとたずねたところ、それは所管年金事務所(海外提出前の最終居住地で決まる)が最終的に判断するが、非受理の可能性大と言われました。さる理由で親戚の住所に住民票だけ置いてあるので、それを使って申請するのが一番簡単そうですが、これから何十年もそれを続けるのはいろいろ問題あるような気がしています。追加情報として、アメリカ在住として申請するとアメリカの銀行に入金も可能らしいです。長所短所いろいろあって、どうしたものかと悩んでいます。

  7. いつも大変有益な情報をありがとうございます。今回は、そのお礼の意味も含め、私からの情報が役にたつかなと思い、ご連絡差し上げております。

    私ですが、現在日本海側の中核都市に住んでおります。2023年7月31日に、日本年金機構の当地のオフィスより米国ソーシャルセキュティー受給開始を申請しました。4ヶ月しか払っていないけど、厚生年金手帳がある限り、日本年金機構を通さなくてはいけないそうです。

    そろそろ2週間経ったので、アメリカ大使館に書類が転送されたかどうか、昨日大使館の年金課へメールで連絡。今朝返事がありました。なんと、アメリカ大使館からの電話インタビューがあるのは、年金機構に書類を提出してから半年後になるそうです。それだけ遅れているそうです。半年後に大使館から連絡がない場合に、再度連絡をという事です。

    日本にてのソーシャルセキュリティーを受給されたい方にご参考になれば幸いです。

    1. 現場の貴重な情報の共有ありがとうございます!
      半年後とは。。半年後に大使館から連絡がない場合に再連絡・・というのもちょっと不安ですね。
      ちゃんと電話が来てスムーズにインタビューが済みますように!

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