家、購入かレントか(2) – NYTimes Buy vs. Rent Calculator

ピーク時から30%下がったアメリカの不動産価格。反対に、レント人口の増加にともない、レント価格は上昇中です。バブルの最中は、「家を借りるなんて、レントをゴミ箱に捨てるようなもの」と万人が家の購入を選びました。時代変わって、「ホーム・オーナーシップはかえって高くつく」という声が聞かれる昨今。購入かレントか、さてさて、あなたはどちら派?いったい、どうやって決めればいいの?という方のために、ちょっと役に立ってくれそうなカリキュレータをご紹介します。

以前のブログで、購入かレントかを決める目安として使われるRent to Buy Ratioについて書きましたが、今日ご紹介するのは、NY Times Buy vs. Rent Calculator!この手のカリキュレータはいくつか見たことはありますが、使い勝手のよさはこれがピカイチ!個人的に大ファンのものです。

使い方はといいますと…実際、具体例を使って見てみましょう。

たとえば、あなたが、下のような家を見つけたとしましょう。売り家としてリストされていたものを見つけて、買おうか迷っているというケースもありえますし、反対に貸家として出ていたものを見つけて、借りようか迷っているというケースもありえますね。

 

この家は、$599,000で売りにでていたもので、すでにオファーがはいり(いくらかは分からないけど)Pendingとなっています。この情報はzillow.comのページです。zillow.comは、アメリカの特定の場所しかカバーしていませんが、その範囲は拡大しつつあります。あなたの地域はどうでしょうか。zillow.comはそのエリアの情報を集め、独自の計算法によって、Zestimateと呼ばれる予想市場価格と、Rent Zestimateとよばれる予想レント価格を表示しています。この家の場合は、Zestimateが$567,300、Rent Zestimateが$2,481です。(Zestimateはあくまでzillow.comの計算によるもので、ホンモノの市場価格にかなり近い場合がほとんどですが、場合によってはかなりかけ離れている場合もあるので、鵜呑みにはなさらないでください。)

 

では、この家を買うべきか、レントすべきか。。。実際、この家は売り家でレントには出されていないので、借りることはできないかもしれませんが、この家と同じような条件の家で貸家を見つけることはできるでしょうし、条件がほぼ同じであればきっとレントは、この家のRent Zestimateと近いものでしょう。今回はこのzillow.comの情報を使うことにいたします。さてさて、ではBuy vs. Rent Calculatorを使ってみましょう。

 

Rent Zestimateの$2,481とオファー・プライスの$599,000という数字を入力してみました。ダウン・ペイメント(頭金)はこのところ要求されることが多い20%、モーゲージは4%、プロパティー・タックスは1.35%としました。

結果はといいますと、ブレイク・イーブン年数(買うのとレントとちょうどプラス・マイナス・ゼロになる時点)は8年目ということです。つまり、8年も住まないで引っ越すのであればレントしたほうが得。反対に8年以上住むのであれば買ったほうが得ということです。

しかしながら、ここで話を終わりにしてはいけませんよ。なぜなら、このブレイク・イーブン年数は、さまざまな条件によって大きく変化するからです。その「さまざまな条件」っていったいなんでしょうね。ここでは、一般的なケースを考えたとき、「買うか、レントか」の判断にもっとも影響力ある6つの条件要素を見てみましょう。

 

1.家の値段がこれから上がるか下がるか - Annual home price change

 

ブレイク・イーブン年数にもっとも影響力のある要素は、今後の家の値動きです。これはグラフの上にある、Annual home price changeというところで設定します。この例では1%(年に1%ずつ上昇)を使いました。これをたとえば3%にあげると、ブレイク・イーブン年数は3年に激減します。反対にマイナス1%にすると、なんとブレイク・イーブン年数は18年に激増します。

実際の値動きは、あと2年ほどは数パーセント下がって、3年目くらいから6年目まで5%あがって….というように(これは、あくまで例です)、年々異なるものですが、このカリキュレータは年々同じパーセンテージで上がり下がりすることを前提に計算するので、その意味では限界がありますが、しかしながら、この数字を上げ下げすることで、いろいろな状況下での「買うか、レントか」をシュミレートすることができます。

 

2.レント価格がこれから上がるか下がるか - Annual rent increase or decrease

 

家の値動きと同様、非常に影響力のある要素は、今後のレント価格の値動きです。これはグラフの上にある、Annual rent increase or decreaseというとこで設定します。現在、レント価格は上がっており、ここ1、2年は7%/年の率で上昇するなどと予想している専門家もいます。この例では3%を使いました。これをたとえば5%にあげると、ブレイク・イーブン年数は6年に下がります。反対に1%にすると、ブレイク・イーブン年数は11年になります。

家の値動きとレント価格、これがどう動くかのコンビネーションで、「買うか、レントか」の判断が大きく変わってくるのがおわかりでしょうか。このふたつはもっとも「読みにくい」要素であり、正確に予想することは不可能です。しかしながら、前述のようにさまざまな条件化でのシュミレーションを行うことで、「最悪の状況になっても、ある程度、財務上の健全性を保てる」判断をすることが可能です。

シュミレーションをしてみると、家の価格とレント価格の値動きがどうであっても、15年、20年といった単位で長く住むことがほぼ確実であるならば、そんなにナーバスにならず購入を決断できるのがおわかりいただけるでしょう。5年以下ならレントがいいという感じでしょうか。10年あたりだと、微妙なところかもしれませんね。

 

3.家を売るときの費用 - Cost of selling home

 

もうひとつ影響力の大きい要素が、家を売るときの費用です。これは、グラフ右上のADVANCED SETTINGのBuyingタブで行います。家を買えば、いつか家を売ることになることを前提にすると、売るときの費用(不動産エージェントの手数料が主。Sellerのみがエージェント手数料を支払い、通常その手数料はSellerエージェントとBuyerエージェントで折半される)も鑑みなくてはなりません。これはケース・バイ・ケースで0%から7%ぐらいまで大きく変わる要素で、「買うか、レントか」の判断をかなり左右します。

エージェント手数料は地域によって差があります。私が現在住んでいる南カリフォルニアは5%だったり6%だったりしますが、以前住んでいたバージニア州はだいたい7%でした。最近ではREDFINなどに代表されるように低いコミッションでサービスを提供するところもあり、その場合は1、2%見ておけばいいでしょう。また、買った家は一生住むつもりなので、売らないだろうというのであれば0%でいいわけですね。

 

4.リノベーションとメンテナンス・コスト - Annual renovation costs, Annual maintenance costs

 

レントの気楽なところは、何か壊れたら大家さんに電話すればいいところ。持ち家となると、何でも自分でしなければなりません。買った家がすぐ住める状態の比較的新しい家であれば問題はありませんが、手直しをしなければならない家であったり、古い家で年々のメンテナンスにお金がかかりそうとなると話は別です。リノベーション、メンテナンスにかかるコストは案外モノを言います。このふたつの要素も、グラフ右上のADVANCED SETTINGのBuyingタブで行います。数字を変化させてみてください。

 

5.投資利率 - Rate of return on investments

 

よく見過ごしがちで、でも重要な要素がこれ。家を買うときにはダウン・ペイメントが必要ですが、もし家を買わないならこのお金は他の用途に使えますね。家を買わないなら、ダウン・ペイメントのお金は投資に回せます。たとえばあなたが自分のビジネスを持っていて、このお金をビジネスに投資し、結果的に年平均10%の利益効果をあげられるとしましょう。ADVANCED SETTINGSのOtherタブで、Rate of return on investmentsに10と入力すると、どうでしょう。明らかに「レントしたほうが得」という結果になります。つまり、家はレントして、浮いた頭金はビジネス投資に使うのが、計算上はベターということです。

反対にローリスクの債権やマネーマーケットにしか投資しないのであれば、せいぜい利率は3%(少なくとも今は)でしょう。我が家の場合は、頭金はいつでも出せるようにHigh Yield Savingsに入れてあり利子はせいぜい1%です。こうなると、投資に回しておくよりは、早く家を買って家のエクイティーとして増やしていったほうがよいということになります。この数字もケース・バイ・ケースでかなり開きがありますので、ご自分のケースに合わせていろいろ変えてみてください。

 

6.所得税の税率(タックス・ブラケット) - Marginal tax

 

「家を買ったほうがいい」ことの大きな理由として挙げられるのは、モーゲージの利子の税控除です。アメリカ税法ではかなり寛容な控除が(今のところ)可能になっています。この控除は所得にかかわらず、モーゲージ利子を払う人に認められていますが、その人の所得税が高ければ高いほど控除される額は大きくなるという特徴があります。これも判断を左右する要素のひとつで、上記と同様、ADVANCED SETTINGSのOtherタブで設定します。

 

たとえば、1年に支払った利子が$5,000の場合を考えましょう。税率(タックス・ブラケット。ここではマージナル・タックスと同義)が15%だと、控除額は$5,000x0.15=$750、つまり$750分税金が浮いたということです。今度は、税率が35%だとしましょう。控除額は$5,000x0.35=$1,750となります。他の条件がまるで一緒でも、タックス・ブラケットが大きいほうが控除される絶対額が大きくなるわけです。他の条件が一緒であれば、所得が高い人のほうが、家を買ったほうが得になるということです。

ご自分のタックス・ブラケットがわからなければ、こちらから確認できます。

 

以上、一般的に「買うか、レントか」の判断を左右する要素を6つご紹介しましたが、数値化できないのでここには入っていない大事な要素があります。それは、家を買うことで得られる満足感。自分の家なら、好きなようにリノベートしたり、デコレートしたりできますね。それに、「これがわたしの家であり、家族の帰る場所」というセンチメンタル・バリューもあります。そのような心の面での満足感はこのグラフでは反映されていませんから、グラフをにらみつつ、ご自分で反映させてくださいませ。

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