子どもに教えておきたいお金のこと - クレジットカードを与える

「子どもに教えておきたいお金こと」シリーズは、ショッピング編バジェット編クレジット編と進みました。お金の賢い使い方、使い方の計画と管理、私たちのファイナンシャル生活の大きな要素となるクレジットスコアについての考え方を学んできたことになります。ここまで来ると今度は、子どもにクレジットカードを持たせ、実践トレーニングの段階になります。

Credit Card Act of 2009という法律で、18歳から20歳までのヤングアダルトが自分名義のクレジットカードを持つためには、1) 自分の収入をもち自己責任でクレジットカードを持つ・・あるいは、2) Co-signer (連帯保証人)を立てて、その人のクレジットでクレジットカードを持つの2つのオプションとなります。まだ仕事がない状態では1)は難しいし、かといって2)は誰がCo-signerになるのかという問題があります。

代替策として、自分名義のクレジット口座を作る代わりに、親の口座に名前を加えてもらい(Authorized User)クレジットカードをつくることもできます。これは、配偶者カードと似たようなもので、2)のCo-singerを立てたうえで自分のクレジット口座を開いたうえで自分のカードを手に入れるのとちょっと違います。

 

クレジットカードを持つのにReadyか?

今日は、このAuthorized Userとして子どもにクレジットカードを与える場合について考えていきますが、まずそれをする前に、子どもが本当にクレジットカードを持つのに必要な準備ができているかを確認することが必要です。節約をしながらの賢いショッピングのし方、バジェット管理のし方、クレジットとは何かについてなどのベースがクリアされていないのであれば、まずそこの土台を固めることが先決です。クレジットカードを持つ前に、必要であれば、デビットカード(VisaやMasterマークのついたATMカード)やプリペイドカード(Amex のPASSなどのような)などを持たせて、責任ある使い方ができるようになるまで育てるというのもよいでしょう。

我が家の場合は、プリペイドカードでの練習期間を設けました。息子に3年ほど前からAmexのPASSを持たせていたのですが、結論を申し上げるとあまり利用価値は大きくありませんでした。クレジットカードのように自分でカードで買い物ができる、ATMカードのようにお金も引き出せる、ただし口座にあるお金(つまりお小遣い)以上に使い込むことはできない、手数料がほとんどないという利点があるものの、オンラインで物を買う場合などは、プリペイドカードは消費者プロテクションがまったくないので、親のクレジットカードで買うようにしていました。あとで親にお金を払い戻したりする必要があり、管理が煩雑でした。Amexということで使えないお店もあり、それも不便でした。今回、一応準備段階をクリアしたということで、クレジットカードに移行することになって親も本人も喜んでいます。

 

Authorized Userとして加えるということ

子どもをAuthorized Userとして口座に加えるのは簡単です。名義人である親がカード会社に電話するか、あるいはオンラインでリクエストをするだけです。この場合、クレジットカード会社は親のクレジットだけを判断基準においており、口座の利用限度額やAPRなどの条件も親のクレジットをベースに決定されているので、新たに子どもの情報が審査される必要はなく発行も迅速です。

子どもはAuthorized Userとして、親にによってクレジットカードの利用権限を与えられるわけで、口座残高の支払い責任はあくまで名義人の親にあります。Authorized Userの権限は、名義人の権限よりは限られ、たとえば利用限度額の変更や他のAuthorized Userの追加などはできないですが、カードの利用は範囲内であれば自由にできるのがふつうです。つまるところ、Authorized Userである子どもは使用権限はあるが、支払い責任がないというなんとも楽な立場であり、一方、名義人である親は、自分が支払い責任者であるクレジットカードを子どもの手に託すという危険な立場にあります。これゆえ、子どものクレイットカード使用に対する準備がしっかりできているかを、確認することがとても大切なわけです。

 

子どものクレジットはあがるか?

すでによいクレジットヒストリーがある人の口座に、まだクレジットの浅い人をAuthorized Userとして加えるということは以前から行われていました。クレジットの浅い人は、クレジットカードを持つことができ、同時に自分のクレジットスコアがインスタントに上がるという効果を享受することができました。

配偶者の間、親と子どもなど家族の中でこれが行われるのであれば問題も少なかったでしょうが、これを商売にするということも行われ始めました。クレジットリペア会社と呼ばれるビジネスが生まれ、クレジットのない人を、まったく他人のクレジットカードのAuthorized Userにすることで、インスタントにクレジットスコアを上げ、モーゲージローンなどが降りやすくするということが広く行われました。

これは信用ビジネス上の大きな問題となり、クレジットスコア計算システムをつくっているFICO社の側も対処が必要になりました。FICOは、このような「不当なAuthorized User」と家族ベースの「正当なAuthorized User」とを区別するようになり、前者の場合はAuthorized Userのクレジットスコアが向上するということはなくなりました。ただ、FICOがどうやって「不当」と「正当」との区別をしているかは公表されていないため、私たちには知ることができません。また、カードの利用状況をAuthorized Userである子どものクレジット情報としてクレジット審査会社にレポートするかどうか、どの範囲の情報をレポートするかなどは、カード会社によっても差があるようです。

というわけで、子どもが親のクレジットに便乗することで、即時によいクレジットスコアを手に入れるということは昔ほどは簡単ではなくなりました。ただ、もしそれが期待できなかったとしても、地道に責任あるクレジットカードの利用を身につけることができれば、あとは自力でクレジットスコアを構築していくことは比較的簡単になるはずです。Authorized Userとしてクレジットカードを持つことは、手っ取りばやいクレジットヒストリーの入手としてよりも、将来的に自分でクレジットを築いていくためのトレーニングとして考えるほうが理にかなうでしょう。

 

おさえておくべきポイント

使用ルールを決める: クレジットカードを何に使ってもよいか、何に使ってはいけないかについてルールを出来る限り明確にします。また、月々のバジェットを決めてそれを超えないように使うことを明確にします。

別に利用履歴が見られるようにする: カードによっては、同じ口座内でも誰が使ったか(夫、妻、子ども)により利用者ごとの利用明細が用意される会社もあれば(Amexなど)、誰が使った分であってもすべてが一つの明細にまとまって用意される会社もあります。後者だと子どもが使った分がすぐに見つけられないので、できれば前者の形をとっているカード口座を使うとよいでしょう。それば無理であれば、持っているカードのうちあまり使っていない口座を子ども専用にあてがうか、必要なら一口座新たに開くなどして、子どもの利用履歴だけが確認できるようにします。

利用限度額を制限する: 子どもの使う口座自体のクレジット限度額を制限するか、クレジット限度額内で月々使える利用限度を設定するかして使いすぎを防ぎます。限度額を制限する代わりに、利用の残高合計が一定額以上になったり、あるいは一定額以上の買い物をしたりしたら、親にメールかテキストで通知が来るようにしておくのもよいでしょう。

月々の利用履歴を一緒にチェックする: 最初のうちは利用状況を時折オンラインでチェックし、責任ある使い方をしているか、何に使っているかを見守るとよいでしょう。ある程度パターンがつかめたら、あとは月に一回、子どもと一緒に座って利用履歴をチェックし、ルールを守った利用ができているか、間違ったエントリーはないか(詐欺で使用された場合などの対応も教える)などを吟味します。

子どもの銀行口座とリンクさせる: 月々の使ってよいバジェット額を子どもの口座に入金してやり、クレジットカードの支払いはこの口座から子どもが責任を持って行うという形をとるとよいでしょう。ATMから現金を引き出せばその分、クレジットカードの支払いに回せるお金は少なくなります。それも考慮に入れて、バジェット内で支払うことができるように管理する力を養います。残高ゼロにならないよう、ある程度余裕を残しておくことも学ばせます。もちろんきちんと支払われないと親のクレジットに傷がつきますから、支払いは毎月きちんと親が確認しましょう。

 

さて、我が家もこれからこのやり方でこれから何年かトライすることになります。うまくいきますように。

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