学費を貯める-529プランを賢く選ぶ(1) 2019年改定版

大学費用準備に人気の高い529プランでがありますが、ここ5年くらいで529を利用する家庭の割合は下がってきているという報告があります。529プラン自体がよくなくなったということではなくて、学費のために貯めあぐねている家庭の図が見え隠れします。一昨年の法改正で529の利用範囲が、大学レベル以上の高等教育だけではなく、キンダーから12年生までの学費までに拡張されたこともあり、お子さんが小さいころから計画的に利用すれば、かなりの節税効果を得られる利用価値の高いプログラムです。529プランについて、基礎的なことからまとめていきます。

 

Step 0:まずはベーシックから

529プランの529は、IRSコード529(税法529項のような感じです)に基づいてつくられた高等教育のための資金運用プランです。いろいろな529プランがありますが、基本は以下のとおり。

  • 各州が、それぞれの選ぶ金融会社を通して運営しています。運営する金融会社はときおり変更になることがあります。
  • 口座はAccount Owner(口座名義人)とBeneficiary(ベネフィシャリー:教育を受けるためにお金を使う人)をひとりずつ指定して開設します。Beneficiaryの変更は、家族間なら簡単にできます。
  • ひとつの州でいくつかの529プランが存在することがあります。529プランの中には、Prepaidプラン(特定の大学にいくことを前提に授業料を前払いするもの)とSavingプラン(Federal School Code登録校ならどこの授業料にも使えるもの)があります。一般的に529プランというと後者を指すことが多いです。Prepaidプランは利用が限定的なものが多く、あまり利用されることもないため、このブログでも、以下、Savingプランを前提に記事を書き進めます。
  • 自分の州の529プランを使わなければならないということはなく、自分の州以外の529プランに積み立てることができます。よって多くの529プランの中から、より条件のよいものを選ぶことができます。
  • 積み立てたお金は、税遅延で運用され、カレッジ費用(授業料、テキストなど教材代、Room&Boardの生活費など)に使う限り税金がかからないまま使えます。
  • 積み立てたお金は、Federal School Codeに登録されている学校であれば、どこの学校(海外の学校もあり。ただし日本は今のところ東北大学のみ)の費用にも使える。アメリカの大学ではなく海外、とくに日本に帰る可能性がある場合は、可能性の大きさによって529は使わないほうがいいこともあります。
  • 529プランの中には、Advisor-sold(アドバイザーを通して投資する)のものとDirect-sold(自分で直接投資する)のものがあります。ほぼ確実にDirect-soldのほうがよいチョイスです。Advisor-soldは手数料が高いが、内容はDirect-soldとそれほど変わり映えがしない(悪い場合もある)ことが多いです。デフォルトとして、Direct-soldを選ぶのがよいでしょう。
  • 州によっては、529プランへの積み立て金に対して州の所得税控除を提供している場合があります。

 

Step 1: 自分の州の税優遇を調べる

上で書いたとおり、私たちは自分の州の529プラン以外にも他州の529プランを選ぶことができます。ただし、自分の州の529プランを選んだ場合、州の所得税で優遇措置がある州があります。この州税の優遇措置をめぐっては、4タイプの州がありますので、ご自分の州がどのタイプか把握することがStep1です。4タイプとは:

a)    自分の州の529プランへの積み立てに対し、自州の所得税で優遇措置がある州 : たとえば、イリノイ州の場合、夫婦で$20,000までの529プランへの積み立てが州税控除対象(deductible)となりますから、たとえば州税率が5%だったとすると、$20,000を529に入れると$1,000分税金が少なくなるという優遇措置になります。インディアナ州では、$5,000までの積み立てに対して20%のタックス・クレジットが適用されますから、$5,000積み立てると$1,000分税金が削減できるという優遇措置です。このような優遇措置は州からもらえるフリーマネーですから、この場合には自州(own state)の529プランをぜひ検討されるべきです。ただし、すべてのお金を優遇措置のある自州の529プランに入れる前に、少々吟味も必要です。そのような吟味についてはStep2をご覧ください。

b)    どの州の529プランに積み立てても、自州の所得税で優遇措置がある州 : ペンシルバニアやメインなどのように、どこの州(any state)の529プランに積み立てても、積み立て額が自州の所得税控除の対象となるという、懐の広い州もあります。こちらは、自州のプランに加えどの州の529プランでも自由に選択することができます。Step 3へお進みください。

c)    所得税自体がない州 : うらやましいことに州の所得税がゼロ(no personal income tax)という州があります。フロリダやネバダなどです。このようなラッキーな州にお住まいの方は、そもそも税控除の対象となるような所得税を払う必要がないということですので、結果として自州のプランに加えどの州の529プランでも自由に選択していいことになります。Step3へお進みください。

d)    所得税はあるが優遇措置のない州 : これが一番悲しいケースですでが、私の住むカリフォルニア州はこの例です。所得税はしっかりとられるが、カリフォルニア州の529プランに積み立てたところで何の優遇もない州です。自州のプランだろうが他州の529プランだろうが、どうせ優遇措置はないのでどの州のプランでも自由に選択します。Step3へお進みください。

こちらの表で、ご自分の州がどのタイプに属するか調べてみてください。それぞれの州で複数の529プランがある場合も多いですが、各州レベルでの所得税や優遇措置についての詳細が確認できると思います。

 

Step 2:自州の529プランを吟味する

上でタイプa)の州にお住まいの方は、まずは自分の州の529プランを吟味します。税金の優遇措置があるからといって、やみくもに自州のプランを選択することはベストでないこともあるからです。たとえば、投資ファンドの手数料(Fee & Expense)の高すぎる場合などは、税優遇を敢えて逃してでも、他州の529プランを選んだほうがいいかもしれません(手数料について詳しくはこちらをご参考に)。手数料は投資利回りを直接的に減らしますから、注意が必要です。手数料が0.5%を超えたら要注意と考えたほうがよいでしょう。手数料と投資成績にはほぼ相関がない(高い手数料のファンドが、必ずしもよりよい投資成績を収めるということはない)場合がほとんどですので、手数料は低ければ低いほうがよいといえます。

こちらの表で、各州の529プランの手数料が比較できます。$10,000を10年間運用した場合の手数料を比較しています。この手数料は、うれしいことに過去何年かを通して下降傾向にあります。下の二つの図は、上が2014年の手数料一覧(抜粋)、下が2019年のそれです。比べてみると手数料が全体的に下がってきていることが見て取れます。これは401(k)などでもみられる傾向ですが、無駄な手数料を省きインデックスファンドベースの低コスト運用に移行してきている証拠でよろこぶべきことです。

2014年時点の数字

 

          2019年時点の数字

それであっても州によって手数料のばらつきが大きく、現時点のアーカンソーを見てみると、手数料は$859(2014年は$1,123)です。通常一番左が、もっとも手数料の低い投資オプション、一番右がもっとも手数料の高い投資オプションなのですが、アーカンソーの場合は一律$859ですね。これはかなり手数料の高い部類で、アーカンソーには夫婦で$10,000までの自州の529プランへの積み立てに対し、税金控除の優遇があるものの、おそらくこのプランは避けたほうが無難でしょう。積み立ての税金控除だけに焦点をあててはならない例です。なお、この手数料の数字は、$10,000を投資した場合の10年の累積額です。ふつうは学費と言えばこれよりずっと大きい額を貯めるはずですし、年数ももっと長い可能性が高く、手数料の差は実際の運用成績に大きくかかわります。とにかく手数料の低いものを中心に考えるというのは大切な一歩です。

我が州カリフォルニアは、運営会社が低コスト型のTIAA-CREFに変わってから、低手数料のなかなかよいプログラムになりました。実際に選ぶ投資プランにもよりますが、一番低くて手数料は$103(2014年は$154)、一番高くで$715(以前は$764)という結果です。TIAA-CREFはそもそも初めから低コストのインデックスファンドでの提供でしたが、それであっても5年で$50~$60レベルのコスト削減は拍手ものでしょう。これはあくまで一例ですが、アーカンソーにお住まいの人が、敢えて自州の529プランを使わず、カリフォルニアの529プランを使うというのも十分よい策のように思えます。

高手数料のプランを避けたほうがいいか、それとも高手数料を払ってでも税優遇をとったほうがいいかは、現在のお子さんの年齢も関係してきます。まだお子さんが小さく、これから数十年間529プランで資金運用していく場合は、毎年毎年徴収される手数料を避けるほうが、ある年に一度受ける税控除を選ぶより賢明だといえます。反対に、もうお子さんが高校に入っているなど資金運用期間が短い場合には、多少手数料が高くても一度に大きな税控除を受けるほうが得策であるかもしれません。

選択肢が4つあります。

  • 敢えて、全額、自州の529プランに積み立てる。Step4へ。
  • 自州の529はまったく使わず、他州のプランを選ぶ。Step 3へ。
  • 自州の529プランを選び、後ほど他州のプランへロールオーバー(資金移転)する : この場合は、いったん自州のプランに積み立てをすることで州税の優遇措置を受けた上で、後日他州のもっと適切なプランに資金を移すことになります。ロールオーバーにあたって、享受した税金の優遇を返金せねばならない州と、返金は必要ない州があります。十数州が後者のタイプにあたりますが、そのような州にお住まいの場合には、有効な方法でしょう。他州プランの選択はStep3へ。
  • 自州の529プランと他州のプランをうまく組み合わせて使う:税優遇を受けられる範囲内で自州の529プランに積み立てをし、それを超えた範囲の積み立ては他州のもっと適切なプランに積み立てる方法です。他州プランの選択はStep3へ。

これ以降は次回にいたします。

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17 comments

  1. 毎回、読まさせて頂き勉強になっております。
    初歩的な質問なのですが、アカウント開設するのにオーナーはU.S. citizens and resident aliensと明記されている州がありますが、 これは外国人の方でもアメリカに住んでいれば開設できると言う事ですか?例えばワーキングビザの方も可能という事でしょうか?
    よろしくお願いします。

    1. はい、可能だと思います。多くの州が、residentであればOKとしています。何をもってresidentとするかは州によって定義が違う場合もあるようですが、SSNかTax Identification Numberを持っており、アメリカ国内にアドレスがあれば大丈夫というところが多いかと思います。

  2. いつも分かりやすい情報ありがとうございます。

    私の住む州も所得税はあるが優遇措置のない州になりますが、逆にあまり悩まずに良いプランを選べそうです。

    冒頭に書かれている529プランを利用する家庭が減少しているデータがあるとの事ですが、先日生命保険のアドバイザーと話をしていると、彼女は月々の529 も401kも止め、全て生命保険 (whole life insurance) に変更したとの事でした。セールストークの一部かとは思いますが、もしかしたらその様な家庭がいることも529プランの利用者減少に一役買っているのかもしれませんね。私自身その決断は出来ませんが。

    1. なるほど、そんな方もいらっしゃるのですね。通常は生命保険はあくまで生命保険として使い、投資運用目的には使わないのがよいというのが、テキストブック的考え方です。通常の家庭では、生命保険より529のほうが理に適う場合がほとんどかと思います。

  3. 子供が小さいうちなら529や401kが有効なのは理解できたのですが、あと数年で大学と行った場合はどうなのでしょうか?

    アメリカに引っ越してきて間もないため、何もしてないのですが、今からでも529や401kを始めるべきなのでしょうか?

    私もBSWWさんと似たような話を耳にしました。(whole life insuranceについて)
    超リッチな家庭は置いといて、ごくごく一般的なアメリカ家庭はどうしているのかなあと気になるところです。

    1. そうですね、お子さんの入学年が差し迫っていると、529の節税効果が数年分しか使えないので残念な状況です。ただそれでも、損にはならないとは思います。401(k)はお子さんの年齢とは何も関係ないので、すぐに始められるべきだと思います。生命保険での投資運用はごくごく普通の家庭には、適さないことがほとんどです。みんなどうやってカレッジ費用 払っているの? など参考になるかと。

      1. ありがとうございます。リンク先、読ませていただきました。

        529について
        >ただそれでも、損にはならないとは思います。
        そうなのですね!朗報です。ただ、本人がアメリカ以外の大学に行く可能性もあり、ちょっと二の足を踏んでしまいます。

        401Kについてなのですが、会社で紹介されているのがJohn Hancockという会社のようです。調べてみると、手数料が高いようで、基本電話対応のようで、私が好きなチャット対応がありません。社内は、やっている方、やっていない方、半々のようです。(やってたけど今は解約したという方も)

        個人で別に証券会社や銀行がやっているIRA口座(チャット対応あり)を持った方がいいのかな?とも思ったりしますが、どう思われますか?

        1. 最近、手数料の高い401(k)はかなり少なくなったように感じていますが、まだ残っているのも確かです。手数料が高くファンドのラインナップが偏っているのなら、IRAで自由にファンドを選んだ方が良いと思います。

  4. 我が家の場合は子供が10才、内容を全て理解できぬまま少額からからスタート。
    毎月のバランスシートがない!?ので金額の変動が全くわからず、しかも最初から全く増えてないように思えるのですが、1年未満だとこんな感じなのでしょうか?このまま続けていいのか迷っています。
    それとも10年寝かせられないので、ほかに良い方法などありますか?

    1. そうですね。投資ポートフォリオが増えるための原動力は株式ですが、今年は株式市場が下がって上がって下がって横ばいみたいな感じだったので、今年だけのことを見れば、(もちろん投資の内容によって結果はまちまちですが)ほとんど上がらなかった人が多いと思います。投資の基本は長期投資。いったん買ったらそのまま持ち続けることです。お宅の場合はあと入学まで8年なので”ものすごい長期投資”ではないのですが、それでもやはりセービングなどよりは529での投資のほうが利があると思います。今後に期待して持ち続けてはいかがでしょう。

      1. お返事ありがとうございます。
        現在ネットバンクなら金利もいいのでそちらに移し替えた方が良いかとも思ったりしてしまいます。
        あまりに変化がないので、投資先?や設定など間違えているのかなど考えてしまいました。
        もうしばらく様子を見てみます。

        1. そうですね、確約で2%くらいを獲得(ネットバンク)するか、リスクをとって(株式ファンドを入れて)それより上を狙うかの選択です。歴史的にいえば、8年の投資期間ならば、おそらくリスクをとって株式投資した方がよりよいリターンが出る(長期で見て)確率が高いですが、もちろん確約ではありません。結局はリスクをとりたいかどうかの決断になります。

  5. いつも参考にさせていただいています。
    子どもが只今1才と3才で、529を始めたいと思っています。
    住んでいるColorado州の529に入ると、手数料がこちらの記事によると一律627ドルと高めで、Full amount of contributionとあります。Full amount of contributionであっても、この場合、おススメされているユタなどの3つの州のどれかの529にした方が良いと思われますか?今の所月々入れる額は、一人200ドル位の予定です。

    1. また買おうと思っているのはVanguardのtotal stock marketのような100%、index fundの予定です。

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