アメリカ不動産と中国キャッシュ

中国人がアメリカ不動産を購入する勢いがさらに進んでいるようです。1年間で$22ビリオンというチャイニーズマネーがアメリカ不動産につぎ込まれたそうで。中国人が好んで買う州は、1位がカリフォルニア州、2位がワシントン州、3位がニューヨー州なのだそうですが、この1位のカリフォルニアは2位を引き離しダントツの1位だそう。たしかに私の周りでも、チャイニーズマネーの威力は確かに感じられます。今日はその話。

ロサンゼルスの場合

わが家は2009年にロサンゼルスに引越し4年間ずっとレントし続けたまますごし、2013年にやっと買いたい(+経済的に買える)家にめぐり合いました。ずっとこのあたりLAサウスベイエリアの不動産市場とは向き合ってきました。2009年には、家の値段が下がった後で、今こそが買い時だという人もいれば、いやいやまだ下がるであろうと言う人もいました。家の値段の割りには、レントしたほうがずっと割がよいという見方もありました。シャドーインベントリといって、フォークロージャーとその予備軍を含めた「問題あり物件」が確かに存在するものの、それらがマーケットに押し寄せることはありませんでした。自分たちの抱える物件の値崩れを恐れた銀行が手持ちをホールドしたため、本来ならもっともっと下がるはずの値段が下がらないまますんでいる状態が続いたのです。2010年もこのあたりエリアは大きな値動きもなく、そのまま過ぎました。2011に入るとそろそろリカバーが始まったとする見方が出始め、2012年になると結局値段は下げ止まりのまま、超低インベントリー状態が続き、マルチプルオファーの入る家が続出しました。結局、シャドーインベントリーが表舞台に出ることで、価格が本来あるべき姿まで下がるということはないまま、人工的につくられた低インベントリーと、Federal Reserveのすすめる超低金利により、まるで整形手術を受けたかのような不自然な「回復」を遂げたのでした。もちろんこの「回復」に加担したのは、我が家のような地道な勤労世帯の購入も入っていますが、それ以外に投資家の存在が大きいといえるでしょう。それからなんといってもチャイニーズマネー。この脅威はひしひしと感じました。

中国人には勝てない・・・

かなりいい条件でオファーを入れても、相手はオールキャッシュの中国人。オールキャッシュでは、たとえ少々オファー額を上乗せして、すばらしいクレジットスコアを持っていたとしても、なかなか太刀打ちできません。知り合いのお宅も、中国人の若い夫婦が購入し、支払ったのは中国にいる両親。もちろんオールキャッシュで。自分のために1ミリオン以上の家をキャッシュで買い、息子にも同時に家を買ったというような中国人のお話も聞きます。

中国人に一番人気のカリフォルニアは、アメリカの中では中国に近いこと、気候がよいこと、中国人コミュニティーがあることが理由だそうです。またIT産業など中国人を多く雇用している企業や、中国人が行きたがる大学が多く、息子や娘のためにコンドを買うというようなケースも多いとか。その中でもロサンゼルスというのはそのまたダントツ人気だそうで。

しかしながら、住むために不動産を買う中国人は40%ほどで、それ以外は投資として購入するのだそうです。

高い物件に集中

National Association of Realtors調べによると、アメリカで不動産を買う外国人のうち数で1番多いのはカナダ人で、外国人購入者の23%を占めます。これに対して、2位中国人は外国人購入者の12%を占めるのみ。ところが、カナダ人の購入価格のメジアン(中央値)は、$183,000であるのに対し、中国人のそれは$425,000と2.3倍で価格ではダントツ1位。全外国人の購入価格のメジアンは$276,000ですから、中国人は、高額物件を好んで買っているのがわかります。そして、中国人の購入の70%はオールキャッシュで取引されているとのこと。また、アメリカ全体では、外国人購入者の23%を占めるのみの中国人ですが、カリフォルニアではその50%が中国人だそうです。中国人がカリフォルニアの高額物件をオールキャッシュで購入している・・・という図が浮かび上がってきます。

DataQuickは、オールキャッシュでの不動産購入は2012年には全体取引の32.4%に上ったと報告しています。32.4%ですよ!カリフォルニアといえば、もちろん場所によりますが、不動産は他州に比べて高いのに、その三分の一はオールキャッシュ!2008年くらいまではオールキャッシュ物件が70,000件ほどだったのが、2009年あたりからいきなり増え、2012年には150,000件に届く勢いです。このオールキャッシュ購入はすべてが中国人によるものではありませんが、多くがそうだと推測されます。そもそも、カリフォルニアというところは非常に特異なところで、取引される三軒に一軒は、金融機関、ヘッジファンド、個人投資家(フリッパー含む)、あるいは外国人バイヤーという、つまり「ふつうにそこに住む人」以外のバイヤーによっての売買だそうです。投資目的の売買が増えればそれだけ値段はつりあがりますし、そこにオールキャッシュオファーとなれば太刀打ちゆかず、なんというか、「ふつうに住みたい」人にはヒジョーにやりづらい状況です。

なんでそんなにお金があるの

・・と思いませんか、中国人の方たちは。。どうやら中国の不動産バブルによるらしいですね。北京や上海の不動産市場はあまりの不動産バブルで、そこで持っているコンドを一軒売れば、アメリカでキャッシュオファーは無理なくできる・・・というこういう寸法らしいです。IMF調べのHouse Price to Wage Ratio(家のメジアン価格÷世帯収入メジアン額)という指標があり、この数値が大きい方が収入に対して家の値段が高く、つまり価格がバブリーということを意味しています。3.0(家の価格が収入の3倍)だと「家が買いやすい」という状態で、反対に5.1(家の価格が収入の5.1倍)だと「非常に買いにくい」という状態。ちなみにロサンゼルス全体は5.7、ロサンゼルス・サウスベイのこのあたりは8から9くらい、東京では10ですが、なんと上海は15.9、北京にいたっては22.3です。そりゃあ、すでに物件をもっているなら一軒売れば、アメリカの家などpiece of cakeかもしれません。。

私の家の値段は中国次第?

でも、それってどうなるんでしょうね。たとえば5年後中国の経済の雲行きが怪しくなり、不動産市場が暴落したら、どうなるんでしょう。それとも、アメリカより魅力的な不動産市場が世界のどこかに現れたら、どうなるんでしょう。ここ5年ほど不動産市場の雲行きをうかがってきて思いますが、アメリカの経済、アメリカの人口増加や結婚率、アメリカの雇用状況に金利など、アメリカにまつわる諸要素により不動産市場がどうなるかを予測した経済学者やアナリストがほとんどでした。そりゃそうですよね、アメリカの不動産市場なんだから。家は船にのっけて輸出できないし。でも、ここにきてチャイナマネーというすごいパワーが台頭してきて、アナリストの分析などふっとばしてしまったというかんじがしています。とくにこの南カリフォルニアの不動産市場は、アメリカ経済より中国経済にかかっていたりして。。10年後我が家が家を売るとしたら、それは中国の経済次第かもしれません。。いやあ、なんというか言葉もありません。

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5 comments

  1. すごいですよね、恐るべし中国マネー。

    金融機関も以前よりモーゲージの審査には慎重になっているようだし(サブプライムローンを煽るよりは健全なのですが)、FRBが住宅市場がまだ弱含みと言っているのは、こういった中国やファンドなどの投機マネーが取引の主流になっていて、コンシューマの実需と乖離している点があるからなのでしょうね。
    LAでは住宅だけではなく、ダウンタウンでもこのところ再開発が盛んだし、ホテルの買収などにもかなりのチャイナマネーが入ってきているようですね。
    少し前に、Hollywoodのちょっとファンシーなお店でディナーしていたら、中国人投資家ツアー(みんなバッジをつけていて、物件案内のような冊子を持っている)のような団体がどどっと入ってきて、すさまじい勢いに圧倒されてしまいました。

    そんな我が家(中国人ではないです)も、実は昨年キャッシュで今の家(南トーレンス)を買ったのですが、この先の周辺環境がどうなっていくのかは気がかりです。
    Toyotaの移転で引っ越して家を手放す人たちが、オセロのように中国人オーナーに変わっていき、Toyotaの施設も中国資本の会社が買い取り、そのうちトーレンスは中国人ムラになってしまわないかと。。。

  2. 初コメントです。
    中国の勢い凄いですね。汗 私の東京に住む姉の家(コンド)にも
    中国人が購入希望でチラシが度々入りますよ。
    それにも 現金購入とか書いてあります。汗
    日本も同じ様に、投資目的で即決らしいです。
    そして それ様のツアーまであるそうな。。
    なんだか、、怖いぐらい。。汗
    でも 一昔前、日本がバブルの頃、ハワイのホテルや物件
    NYの高層ビルも日本が沢山購入した時代がありましたね。。
    今はもう残っていないと思いますが。。 
    時代は移り変わりますね。 どうなって行くのやら。。

    1. 美子さん、日本でもそうのようなのですね。ツアーのことは、ドキュメンタリーかなにかで見たことがあります。そうそう、日本人もその昔はそのようでしたね。本当に時代は移り変わるです。。

  3. いろいろと勉強になります。
    我が家のあるボストンでも、もとのチャイナタウンは再開発で高級コンドやオフィスビルがポンポン建ってしまったので、今は中国系は、地下鉄の最終駅の辺や郊外の中規模都市に買いまくっています。うちもそういうエリアに隣接している市なのですが、だんだん中国系が増えてきています。
    ここでは香港出身の人が多いです。といっても、中国から直接では無く、元々はカリフォルニアやニューヨークにいた人たちが多いようです。家を買い、学区の教育レベルを上げてくれるだけでなく、すでに成功しているビジネスも持ちこんでくれるので、ある意味、中国人サマサマ状態です。(彼らにとっては、カリフォルニアやニューヨークに比べれば安く、アジア系ビジネスがまだまだ少ないボストンは、開発価値ありなのでしょう。)
    中国バブル、あの時の日本を彷彿とさせるものがありますが、アメリカ国内でも、地域によって、中国系が増えている理由が微妙に違うってのもあるかもです。

    1. おっつ、Cheeさん、お久しぶりでございます。なるほど、いろいろな地域の特色もあるのですね。たしかに、学校のレベルアップ(テストスコアだけでなく、設備とか教育の質という意味で!)とか開発の活性化などに貢献してもらえるのなら、大歓迎ですね。もともと、アメリカは多国籍文化ですし。。このあたりのビジネスビルも、中国式に「四階」はなしなどというビルもあると聞きました。

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