そのドクターからの請求書、本当に正しいですか?

クレッジトカード会社から請求書がきたら、間違った請求がないかチェックするでしょう? 電話会社からの請求もチェックしませんか? では、お医者さんや病院からきた請求書はどうですか? ちゃんとチェックしていますか? 保険会社が入っているし、保険でカバーされないものは仕方がないから支払わねばならないと、盲目的にそうするのはどうもよくないようです。2013年のAmerican Medical Associationの調査では、医療費請求でのエラー・間違いは全体の7%に上るという結果でした。

 

たとえばこんなケースが。。

ある患者さんのところに、お医者さんから請求書が届きました。額は$38。「○○保険会社はこの額の請求を拒否したので、この額の支払いはあなたの責任になります」と書かれていました。この患者さんは保険会社の送ってくるEOB(Explanation of Benefit)をちゃんと保管していたので見てみたところ、「プロバイダー(医者や病院など医療サービスプロバイダー)は保険会社からの支払額を、医療費の全額として受け入れましたので、差額について患者であるあなたは支払う必要はありません」と書いてありました。その旨お医者さんの請求担当に説明し、$38は支払う必要はなしと取り消されました。

また、ある人が喘息でERに行きました。後日、$1,500もの請求がERから届きました。請求書には、「提供された医療措置は保険会社からの請求がうけられないので、あなたの責任です」と書いてありました。この人もEOBをちゃんととっていたのですぐにチェックしたところ、たしかに喘息の措置が拒否されていました。受けた措置はなにも変わった措置ではなく、喘息の発作があった場合、当然のようになされる措置なのでおかしいと思いよくよく見てみたところ、診断コードが間違って入力され、本来は「喘息(asthma)」であるべき診断が「心配性(anxiety)」となっていたのがわかりました。診断と措置に正しい関係がなかったため、保険会社から支払い拒否を受けたわけです。すぐに保険会社と医者に連絡し、診断コードを正してもらい、間違った請求から逃れることができました。

このような請求間違いを見つけたり、想定外の医療費を請求されることがないようにするためには、確認すべきふたつの重要な書類があります。ひとつはSummary of Benefits and Coverageと呼ばれるもので、もうひとつがEOB(Explanation of Benefits)です。前者は事前チェック、EOBは事後チェックです。

 

まずは自分の健康保険をよく知る

Medicare以外のすべての保険には、その保険でカバーする医療措置、カバーの条件やカバー額について規定したブックレットがあります。以前はそのようなブックレットが自動的に手元に送られてくることが多かったですが、最近では何でもWebベースになり自分でオンラインで探さないとそのまま知らずにいるなどということもあります。手元になければ、保険会社のオンラインサイトにいってプリントするか、あるいは保険会社に電話してブックレットを送ってくれるようリクエストします。Summary of Benefits and Coverageなどというタイトル(タイトルはいろいろなバリエーションがあります)です。手元にあっても、それが最新のものであるか1年に一度は確認しましょう。保険の内容やネットワーク医師などはどんどん変更になります。入手したら、読むこと! あまり読みたく内容でしょうが、ちゃんとしくみをわかっておくことが必要です。何がどれだけカバーされるのか、Preauthorizationなどの手順も知っておきましょう。すべて読む必要はありませんが、どんな内容のことが書いてあるのか見出しぐらいは見て把握しておくのが必要です。たとえば緊急時の対応とかアメリカ国外での対応などは、あらかじめ読むことはしなくても、そういう項目がブックレットの中で説明されていることを知っておくと、いざというときに「あ~、あそこを読めばいいんだ」とわかります。医師や病院にいくときには、その医師や病院がネットワークに属しているかなども確認することが必要です。

自分の健康保険の仕組みを知っておくことは、請求間違いを事前に防ぐことに役立ちます。私も実際に、そんなことがありました。血液検査のためにプライマリードクターのオフィスに出かけたとき、受付の女性が「Copayは$15です」というので、「あれ、私の保険はラボワーク(検査)は全額カバーするはずですが」といったら、「オッケー」といわれ$15は払わなくてよくなりました。たったそれだけのこと。はっきりいって、アメリカの健康保険は、保険会社の数も保険のプランの種類もあまりに多すぎて、お医者さんのほうもよくわけがわかっていないことだってよくあります。患者である私たちは、とりあえずたったひとつ自分の健康保険だけをよく知っておけばいいわけですし、それは保険会社でも医者でもなく保険に入っている私たちの責任ですから、プランの内容の把握は重要な第一歩です。

 

EOB(Explanation of Benefit)を確認する

医療措置を受けてから大切になるのは、EOBの確認です。EOBは請求書ではなく、保険会社から私たちの受けた医療措置と、それに対してどのようなコストがかかり、誰が支払うのかということをまとめたものです。このEOBをきちんと確認することと、別途医師から届く請求書がこのEOBに照らし合わせて間違いがないかを確認することが大切です。

医師にかかってもEOBが来ないこともあります。それは保険がHMOである場合などで、医師(プライマリーケアドクター)が、HMO患者ひとりに対し年間いくらというように固定額を、すでに保険会社から受け取っているので、個々の医療措置に対しては保険会社に請求をしないからです。HMOは、医療費理解と管理という面ではもっとも簡単な保険といってよいでしょう。患者側は毎回のCopayだけ支払えば、あとは負担がほとんどないので、請求面でのトラブルも少ないでしょう。

上記のようなケースを除き、医師が保険会社に請求をした場合は、必ずEOBが作られお手元に届くはずです。EOBが届く前に医師から請求書が来た場合は、できるだけEOBが来るまで支払いを待つか、どうしても必要ならミニマムの額だけ支払うのがよいでしょう。また医師への支払いは、たとえ$10のCopayでももっと額の大きいCoinsuranceでも、クレジットカードかチェックで支払うのがよいでしょう。窓口で現金で支払うのは、患者側には何の記録も残らないことになります。医師側のCopay管理もどれだけされているかわかりません。後で間違いを正すときや返金を受けるときに、支払いの証拠が手元にないと返金もおぼつきません。

 

EOBのしくみ

各保険会社でEOBのフォーマットはまちまちですが、項目は大体同じはずです。記載されているのは、下記のようなアイテムです。

  • 請求番号と請求の日付
  • 保険請求をしたプロバイダー(医師・病院)
  • 医療費が発生した日付: これが医療措置を受けた日です。
  • プロバイダーが請求する額(Full amount): プロバイダーは提供する医療措置に対し、それぞれ異なる値段をつけています。Full amountというのはプロバイダー設定の値段ということ。
  • 請求に対しての判断: Covered Amount(保険会社でカバーする額)とそうでない額が書かれています。請求が正しくない(たとえば、先ほどの診断と医療措置がマッチしないなどの理由で)Deny(医師の保険会社への請求が拒否)されたり、Disallow(請求額の一部が却下)された場合はここで確認します。先ほども書いたように、プロバイダは医療措置に対して自分の好きな額をFull Amount請求額として設定していますが、これに対しプロバイダと保険会社の間であらかじめそれぞれの医療措置に対して同意した額というものがあります。ある医療措置に対して、あるプロバイダは$300という額を設定しているかもしれないし、ほかのプロバイダは$500という額をつけているかもしれませんが、その保険会社を受け入れている医師がその医療措置に対して請求できる額は$280と決まっていれば、最初のプロバイダの場合は$20が二番目のプロバイダの場合は$220がDisallowed Amountとなり、保険会社は$280のみを支払うというしくみです。また、保険会社とプロバイダとの取り決めで、このDisallowed Amountはプロバイダは患者に請求できないことが多いので、その場合は患者はDisallowed Amountについてはまったく心配しなくていいことになります(これは、EOB自体に明記してあるはずですが、先ほどのSummary of Benefits and Coverageなどでも確かめられます)。
  • 患者の自己負担額: 年間Deductibleまでの医療費やCoinsuranceなど、患者が負担する額がいくらかが明記されています。この項目に納得がいくこと、プロバイダからの請求書がこの額と同一であることを確かめてから医療費を支払います。
  • Deductibleへカウントされる額: 年間Deductible達成のためにカウントされる額が書かれています。Deductibleへのカウントもれがあったという話も聞きますから、自分でも支払った医療費の記録をとっておいて、通算Deductibleを管理しておくことをお勧めします。
  • Out-of-Pocket-Maxへカウントされる額: 年間の医療費負担の上限が設定されている場合には、正しいか自分の記録と照らし合わせましょう。DeductibleやOut-of-Pocket-Maxの正しい管理は、無駄な医療費を支払うことを防いだり、年度末にはまとめて医療サービスを受けて全額保険会社負担とするなどの計画ができます。
  • Footnotes: その他ノート的な説明がプリントされている場合があります。自分のケースについて理解するために重要な場合も多いですから、よく読んで理解します。

アメリカの健康保険は本当に頭が痛いことが多いですが、高い保険料を払っているのですから、正しく最大限に活用したいものですね。

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