高校の後は大学・・ってデフォルト?

先日、興味深いラジオプログラムを聞きました。”Questioning the value of college(大学の価値を疑問視する)“という題名。うちにもあと数年で高校を卒業する子どもと、その数年後にその後を追う子がいます。自分自身、大学ではドイツ語学科で、家から通えない私立だったもので、今のアメリカの学費に比べればケタがひとつ小さいかもしれないけど、それでも親には大きなお金を使わせたと思います。その割りに、今その教育が何か生きているかといわれれば、ま、ドイツ語は間違いなく生きていないし、一般教養はどうかなあ。出会った人々、経験したことなどは大きな価値があったと思いますが。子どもがドイツ語学科に進みたいといったら、「はいはい何でも好きなものを勉強しなさい」と資金を出してやるだろうか・・・と思ったり。ま、私たちの時代には、就職には専攻がほとんど関係なかったですからね。でも、今は違うじゃないですか・・・と、いろいろ考えていることろ、このラジオプログラムを耳にしたわけです。

 

Bill Bennettという以前のSecretary of Education(教育省長官)がゲストでした。以下、要約。

 

大学進学は高校卒業後のデフォルトと考えられがちだが、どう思いますか?

ケース・バイ・ケースであるべきです。大学に行ったほうがいい人もいるし、そうでない人もいる。よく考えて決断するべきことであり、大学は高校のあとのデフォルトと捉えてはならないと思います。大きな問題は、卒業した学生が抱える巨額の学生ローンです。現在、数トリリオン・ドルにものぼり、増え続けている。学生ローンを組んででも大学に行く価値がある場合もあれば、そうでない場合もある。高校を卒業したら大学に進むのが当たり前とは考えず、吟味が必要です。

 

どんなことを吟味すればいのでしょう?

大学以外のオプションや、数年待ってから大学進学すること、あるいは2年生カレッジなども考えるべきです。リサーチによると、4年制大学に進学した学生のうち46%は結局卒業せず大学を去ったというデータがあるので、それはつまりほぼ半数に近い人々には4年制大学進学が間違ったオプションであったことを物語っています。大学を卒業したとしても、大きな負債をかかえ就職のない人もいます。4年制大学の卒業生の50%が仕事がない状態(unemployed)か、働きたいレベル・能力に見合わない仕事をしている状態(underemployed)というデータもあります。彼らは、学士号などなくてもできるような仕事をして生活しているのです。

 

価値があるかはどう見極めればいいのでしょう?

私は哲学専攻だった。Ph. Dまで終えたときには、当時の額で$23,000、現在の額に換算したら$150,000相当のローンが残りました。しかし、私は自分の受けた教育がそれに見合う十分な価値があったと思っています。入学する前から、自分が大学で何を望むことができるのか、どんなことは望めないかという現実的な情報をしっかりと受け止めておくべきです。たとえば、中堅大学の社会学専攻であれば、就職はかなり難しいかもしれない。反対にスタンフォードのコンピューターサイエンス専攻なら、仕事はあるだろう。スタンフォードならたくさんローンを組んでも行くべきかもしれない。

 

あなたの著書、“Is College Worth It?”の中に登場している女性がいましたね?

彼女は、とくに特殊の例ではありますが卒業時に$300,000の負債があったというケースです。こんなに極端な例でなくとも、たとえば卒業したら$70,000のローンが残ったのに、その割にはこんなことができるとかこんな知識があるというように、とくにアピールするようなものがない・・というようなケースは見ますね。仕事がないのにローンだけがある状態で、これは結婚したり家族をスタートしたり家を買ったりという次のフェーズに入るのを大きく遅らすことになります。先日会った人は、ニューヨークで給与のよい仕事についていましたが、それでも学生ローンの返済が大変で、とても結婚などできないと言っていました。

 

そうすると、どうすれば??

オプションとしては、大学の学士号がなくてもいい仕事、2年制大学でつける仕事というのもありますね。これを決めるプロセスはフィーリングだけでもいけないし、頭だけでもいけない、難しい決断なんですが。たとえば先日話をした溶接を営む経営者は、最近はよい溶接工を雇うことが非常に難しいといっていました。そこのトップレベルの溶接工は年間$150,000~$200,000の給料をもらっているそうです。あとは、放射線セラピスト、看護関係、ITサポートなどの仕事も、学士号がなくとも比較的よい給料をえられる仕事です。たとえばコミュニティーカレッジで勉強を始めてみて、自分がやりたいことかできることかを見てみるということもできます。

 

最近の雇用主は大学の学士号をどうみているのでしょう?

今までは、大学の学士号はスタートポイントと見られていましたね。ずっとそうでした。昨今では、学士号はプロキシーといいましょうか、大学を卒業したのならおそらくこのくらいの心構え(仕事に対する)はあるだろうとか、最低限読み書きはできるだろうとか、人格もある程度成熟しているだろうと考える素材とみなされているといえます。ところがその予想がそうでもないという状況も多く見られています。

 

大学は雇用市場が必要としている人材を育てていないということですか?

そうですね。大学側が掲げていることと、雇用主側の評価とはこの面ではマッチしていません。雇用主の86%は大学の卒業生のクオリティに満足していないという結果です。またこれは、仕事をする上でのスキルのことをいっているのではありません。雇用主は、具体的なスキルについては、就職してからきちんと教え込む覚悟でいます。それよりも、心構え(Readiness)とか仕事に対する姿勢(Attitude toward work)とかいう面で、満足がいくレベルではないというのです。結果として、雇用主は学士号ではない、ほかの指標で学生を評価できるよう工夫しています。外国の学生のほうがずっとよいワークエシックを持っているので、海外の学生を好む雇用主もいるという現実もあります。アメリカの大学では、木曜日にパーティーがはじまり週末に突入という現状があります。

 

大学にいくならどうやって大学を選べばいいのでしょう?

それぞれの子どもによりますね。子どもによって非常にチャレンジングな環境で大きく伸びる子もいれば、サポーティブで目をかけてもらえる環境で羽ばたく子もいます。

 

学費という面ばかりに心配が行き勝ちですが、子どもをどうガイドしてやればいいのでしょう?

金銭面の責任についてよく話し合った方がいいですね。親なりほかの人に支払ってもらうなら、その人の意見も聞いて進路を決めることを話し合います。子どもは自分で学費の一部に支払い責任を持てば学業にももっと真剣になります。

 

大学のROI(Return on Investment 投資効果)を計ることはできるのでしょうか?たとえば、学費の安い州立大学のほうが、学費の高いスタンフォードよりよい投資であるというような。。

よいポイントですね。実際、卒業生の大学に対する満足度というのを比べると、州立と私立とでは差がありません。学費が高いからよいということもないというわけです。

 

プログラムを聞いてみたい方、こちらで聞けます。このFocus on the Familyというプログラムは、家庭生活のさまざまなトピックを取り上げていて、クリスチャンベースの非常に内容の濃いものです。よろしければいろいろと聞いてみてください。

Print Friendly, PDF & Email

3 comments

  1. 確かに学費は高いですよね。私たちも共働きですが、自分たちの老後資金、家のローンを払うと、いっぱいいっぱいです。でも、子供たちが大学へ行きたいと言ったら、少しでも援助をしたいので、最低半分は貯めようと必死で頑張っています。ちなみに子供たちが大学へ行く頃、州内の大学の費用は4年で一人$200,000だそうです。

    でも、最近は、家が安い州へ移ってもいいかな~と思い始めました。子供たちも学生ローンがあると、家の頭金もたまらないし。でも、家が安い州へ行くと、私たちのモーゲージも軽減されるので、それ分、家の頭金を払ってあげるなど子供への援助ももっとできるかな…と。実際、学生ローンを抱えて、身動きできなくなっている知人を見ているので、子供たちには同じ思いはさせたくないですね。

    カリフォルニアは、魅力的な街ですが、お金がないと住めないですね~…。

  2. はじめまして。
    3歳と0歳児の母です。うまく専門職に就く事ができれば、学位は要らないのかもしれませんが、$150Kも稼ぐ溶接工なんて、一握りあるかないかでしょうね。とりあえず、子供たちには、大学を卒業した時に、ネガティブからのスタートを切って欲しくないので、最低でも州立大学4年分の半分($100,000)は出してあげるつもりで、頑張って貯めてあげていますが、15年後、大学のシステムも変わっているかもしれませんね。オンラインクラスが当たり前で、学費が思ったより高くなかったとか。

    カリフォルニアは特に家が高いので、大学を卒業しても学生ローンもあり、家も車も買えず、結婚もできない。ってなると可愛そうですよね。アメリカで生活する子供たちに取っては、私の希望でカリフォルニアに留まり、そこまで負担をさせてよいものか考えてしまいます。それだったら、家が安い州へ移り、のんびりした生活をさせてあげてもいいのかな。と頭をよぎりますが…。

    以前、独身時代住んで居た安いアパートにも、誰でも知っている一流企業で働いている兄弟が住んでいました。30歳と32歳の兄弟でしたが、二人とも学生ローンがあって、きついと言っていました。弟の方は、レントも払えず、彼女の実家へ同居するため出て行きましたが…。自分の子供たちには、同じ思いはさせたくないものです。

    1. そうですね、私もカリフォルニア州に住んでいますが、子どもにはいろいろな意味でカリフォルニアにはこだわってほしくないと思っています。別にカリフォルニアにいたいというのなら、それなりの覚悟の上であれば反対もしませんが。物価や生活のクオリティは各州で相当な開きがあるでしょうね。どこに住んでも、自分にあった生活を見つけてくれればいいなと思います。自分の道を見つけて、分相応な生活をし満ち足りていられるように成長してほしいと願っています。選択や努力は子どもにまかせるばかりですが、親としてはあまりに思い学生ローンからだけは守ってやりたいと思っています。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください