コロナ危機でソーシャルセキュリティ年金はどうなる?

Last Updated on 2021年12月6日 by admin

2020年4月20日づけで、Center for Retirement Research(Boston College)がSocial Security’s Financial Outlook:The 2020 Update in Perspectiveというタイトルのレポートを発表しました。このレポートの分析内容は、コロナ危機以前のデータを基にしていますが、後付けでコロナ危機を考慮したコメントも付け加えられています。私は経済や年金の数理計算のことはよくわかりませんが、ソーシャルセキュリティ年金が今後ちゃんともらえるのか・・はファイナンシャルプラニングでも大切な要素ですので、今回はこのレポートの内容をわかる範囲でまとめてみます。

年金の収支

まずは、ソーシャリセキュリティ年金はどう支払われるかですが、財源は大きく分けてふたつ。ひとは、ペイロールタックス(労働者と雇用主が支払う社会保障税。それぞれ勤労所得の6.2%ずつで合計12.4% がトータル税収入となる)であり、これでその年の年金支出が全部カバーできればよいのですが、そうはいかないことがあるわけで、その場合はもうひとつの出どころであるトラスト基金から不足分を捻出するというしくみになります。

このトラスト基金は現在$3トリリオンで、この資産は1983年に施工された改革の結果、毎年の収支がプラスに傾いてつくられたものだそうです。そして、この$3トリリオンという額は、年々の年金支出の2年半分にあたるそうです。

もちろんトラストの中の資産は運用されていますから、利子を生んできます。まとめると支出の順序は、その年のペイロールタックス、次がトラストの利子、それでも足りなければトラストの元本資産($3トリリオン)を切り崩していくということになります。

現状の見通し(コロナ前)では、2021年にペイロールタックスと利子では年金支払いが追い付かなくなり、トラストの元本資産を崩し始め、そのままいけば2035年にトラスト基金が底をつくという予想でした。年々のペイロールタックスは、年々の年金支出の73%から79%程度をカバーできるレベルだという予想でした。

年金システムが継続するために

以下がシステムの収支をまとめたものです。主な収入は、上述のペイロールタックス。労働者と雇用主で収入の合計12.4%の税金を負担します。課税収入は上限があって2020年は$137,700/年です。またトラスト基金からの利子も収入となります。少子化や低成長で税収が下がったり、低金利などでトラスト基金の利子が下がると収入が下がることになります。支出の方は、高齢化と長寿化により年金を受給する人の数が増えることで、支出増となっていきます。

収支が悪化した場合、変更できる要素に変更を加えるしかありません。労働者数や受給者数などは簡単に変更がきかないので、結局、税率を上げる・課税対象上限額を上げることで税収を増やすか、そうでなければ、受給額を減らすという調整が必要になります。

コロナの影響

このレポートの分析がコロナ危機の前に行われていること、さらには現時点でもコロナウイルスによる経済的な影響がどのくらい続くのか、どれほどの大きさなのかを正確に予想をたてるうことが難しいことから、レポートでは、ソーシャルセキュリティシステムに対してのコロナ危機の影響を具体的に予想することはできないとしていいます。

ただ、目先の影響としては、受給額に影響のある年齢層があることを上げています。現行の年金額計算システムでは、個人の60歳までの過去の収入に対して、受給者が60歳になった時点でのAverage Wage Index(AWI)を適用することで、将来の年金額を計算する形になってます(60歳以降の収入も考慮されますが、それらは別計算)。AWIは、その年その年に割リ出され、誰に対しても一定です。もともと2020年のAWIは7%程度の増加を見越していたそうですが、これがコロナの影響で低下すると予想され、2020年に60歳になる人(1960年生まれ)は、結果として将来受給できる額が減少する可能性があるとレポ―トされています。

また、ソーシャルセキュリティ年金は、年々の物価上昇にともない受給額の上方修正(COLA)がありますが、コロナの影響によりおそらく2021年のCOLA調整はなしとなるだろうとレポートしています。これはすでに年金受給をしている人全員に影響するものですが、ただ、物価も上昇しないことが前提にあるので、受給額が上昇しなくても大きな問題にはならないはずだと予想されます。

上で言及したトラスト基金の枯渇予想年ですが、コロナ前での予想で2035年でした。この年号は毎年予想値が割り出され変化します。1985年には2051年でしたが、その後1994年には2029年まで悪化。ところがその後持ち直し、2000年前半の経済好調期には2040年代前半まで伸ばしました。またその後、金融恐慌で2033年くらいまで下げて、最近は2035年まで上がってきたところでした。経済状況が大きく枯渇年に影響するようですが、ただ、リセッションの存在はあらかじめ前提として計算に入れてあるということで、その意味ではコロナ危機による経済状況もある程度の範囲では予想にすでに組み込まれているということになります。コロナの影響が前提に当てはまる程度のレベルのものなのか、それそもそれより長引いたり大きくなるのか、それは今の時点ではわかりません。目安としては、ペイロールタックス収入が2年間の間20%減だったとすると、枯渇年は2年繰り上がるという予想のようです。

レポートでは、コロナ危機によってソーシャルセキュリティがドラスティックな打撃をうけるようなことはなく、長期的にはシステム存続は固いとしながらも、すでに予想されていた収支のアンバランスと、今回の危機による収入減少の影響はたしかにあるわけで、それに対して、課税対象収入の上限の引き上げや、税率の上昇などの政府による介入が必要になる可能性を示唆しています。

将来的に年金額が減少することについては具体的なことがらは提示されていませんが、“2030年代半ばにリタイヤする人が20から25%の年金カットを経験しないように施策が必要”という一節が見受けられました。今後のシステムへの変更で、受給額が減少しない確率も十分にあるかと思いますが、今後リタイヤメント後のプラニングではソーシャルセキュリティ年金額は予想値の75%から80%として見込むと、より保守的に頑強なプラニングが可能かと思います。

Print Friendly, PDF & Email

4 comments

  1. CA州に住んでいますが、SS ベネフィットの申請に必要な書類を教えて頂けますか?

  2. 現時点で予測として出ているSS額の70%をもらえる仮定で計算していますが、これは今の給与額かそれ以上を維持し続ければの話なので手元の額はもっと少なめになる可能性が・・・。
    加えて401(k)を毎年4%で取り崩し、その税金も払うとなるとこれは厳しいですね。
    今はアパート住まいで (50過ぎて今更家のローンは組みたくないため) 今後も借家のままだと思いますが、アメリカは日本に比べて家賃が高めなのでこれもこれからの課題です。

    このサイトを見始める前までは老後住みたい州でかかる税金 (高いです‼) について考えてもいませんでした。適正なリスクを取れるよう引き続きここで勉強します。

    1. 本当ですね、アメリカは場所によりますが、レントがかなり負担になりますね。
      やれることだけ今とにかくやっておいて、後はできる範囲で生活する・・そう気持ちで生活していればきっと何とかなると思います!

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください