インデックス投資を理解する(1):それってなに?

このブログでも投資の始め方、運用法についてはこれまでたくさんご紹介してきましたが、今回はまた初心に戻って、インデックス投資についてシリーズでお贈りしたいと思います。401(k)やIRAなどでインデックスファンドを使った投資をすでにされている方も多いかと思います。でも、なんとなくそれを選んだけど、実は深く理解していない・・というような声を聴くこともあり、このシリーズを読めばひととおりの知識がつき、納得して投資ができることを目指します。

投資運用したいが何をどうすれば・・・

お金は増やしたいですよね。不動産投資で賃貸収入というのもよさそうだし・・クリプトカレンシーで儲けた人の話を聞けば少し興味もあるけど・・国債とかで手堅くいった方がいいかも・・いやいややっぱり世界状況を読んで株の売買がいんじゃない・・。いろいろな資産運用の策は頭をよぎりますね。でも、どれも物件の下調べをしたり、研究したり、外貨を選んだり、ニュースを見たり、過去の業績を調べたり、将来を予測してみたり・・そういうことが好きな人はいいですが、そうでないと大変です。いったんお金をつぎ込んだ後も、物件のメンセナンス、チャートの動き、売る時期をはかったり、面倒に思う人もいるでしょう。そういう面倒なことにはエネルギーをかけたくない・・いったんセットしたら考えたくない、だけどお金だけは増えてほしい人、そんな人に最適な複利資産形成ツールがインデックスファンドです。

増やすには株投資が不可欠

まず押さえたいのは、長期的に効率のよい利回りの獲得には、株投資が不可欠だということです。なぜ株投資が不可欠なのでしょうか。

儲かっている企業のオーナー経営者になりたいと、誰もが夢見るでしょう。いやいやオーナーなんて大変だから、儲かっている企業の従業員でもいいと考えるかもしれません。給料は年々伸びて、ボーナスが出れば十分と。ただ、もらえる給料やボーナスはここまでという上限は決まっているのがふつうです。

でもオーナー経営者なら、従業員への給料やボーナスの支払いを終えた後の利益は、会社が儲かれば儲かるほど自分の懐に入ってきます。会社を持つことはリスクもありますが、うまくいったときの報酬も大きいわけです。とはいえ、みんながみんな事業を立ち上げてオーナーになるほどの才があって、リスクをとりたいとは限りません。そこで便利なのが、ちょっとだけオーナーになる方法です。それが株投資です。

バークシャー・ハサウェイ社のウォーレン・バフェットを育てたベンジャミン・グラハムという人がいます。1894年に生まれ、インデックスファンドが生まれたころには亡くなった経済学者・投資家ですが、その人書いた「賢明な投資家」という本にこう書かれています。

株とは、証券コードや銘柄ニュースがすべてではない。株は、刻々と変わるその株価の変化とは関係のない、実質的価値をもった実際の事業のオーナーシップである。

株投資は、上がった下がったと一喜一憂する「賭け」とは関係のない、その会社へのオーナーシッ参加であるというのです。株を持つことでちょっとだけ会社のオーナーになることを実現し、その会社の利益をオーナーとして享受することを実現してくれます。このオーナーとしての利益享受が、複利資産形成の基本概念です。

ミューチュアルファンドで気軽に株投資

ただ投資先として、どの会社を選べばいいのかわからないという問題がありますね。自分で調べて買って・・・というのは大変ですし、一株あたりの値段が高いものでしたら、いくつかの会社を選ぼうとしてもかなりまとまったお金がないと無理です。そこでできたのがファンドという概念です。投資家がみんなで一緒に集まってお金を出し合い、集めたお金でいろいろな株式を買い、全体のマネージメントはファンドマネージャーと呼ばれる人に任せるというものです。「信じて託する」のとおり、ファンドマネージャーを信じて、お金を託し、あらかじめ約束した投資のルールで投資を代行してもらうものです。この投資信託の形態は株式投資にも使われますが、それ以外にも債券、不動産、コモディティーなどにも使われています。投資信託は、英語ではミューチュアルファンドと呼ばれます(以降は短くファンドと呼びます)。

インデックス投資で市場全部に投資

そしてインデックス投資というのは、このミューチュアルファンドのなかでもインデックス、つまり株価指数を追うファンドを使って投資を行うものです。株価指数を追うといっても、ちょっとわかりづらいかもしれませんね。

インデックス=株価指数というのは、市場平均のことで、その市場に存在する株の平均値をとったものです。インデックスファンドとは、その市場の中に存在する全株銘柄を、市場と同じ比率でファンドの中に持ち、投資するものです。結果的にそのファンドの利回りは、その市場の平均と同じ、つまり株価指数になります。

世界にはさまざまな株価指数があります。たとえばアメリカで有名なのは S&P 500とかDow Jones Industrial AverageとかNASDAQがありますし、日本であれば 日経平均 225とかTOPIXなどがあります。そのどれもが、その名前で定義される「市場」にあるすべての株価の平均値=株価指数を指しています。

このように、「株価指数(インデックス)を追う」 とは 「その市場全体に投資して市場平均利回りをゲットする」ということです。いわば、市場全体のマイクロサイズの縮小コピーを、自分のバジェットに合わせて持つイメージです。

インデックス投資ならば、限られた資金でも市場に存在する会社すべての、ほんの小さな「オーナーもどき」(株を直接持つわけではなくファンドを通して間接的に所有するので、株主としての投票権はないわけで、もどきです)になることができます。株を直接買うのなら、$1,000あっても限られた数の株を1株2株しか買えませんが、インデックス投資をするなら$1,000で市場全体に投資することができるのです。

インデックスファンドのよいところは、市場の中の全部の株式を持つため、言ってみれば市場のコピーをすればいいだけで、どの株を持とうか持たないかと選ばなくていいところです。お気楽な株式ファンドです。この平均狙いのファンドでの投資が、一番手がかからず、一番地道に、でも力強く複利資産形成していく方法です。なぜそうなのかは、これからじっくり説明していきますが、その前にインデックス投資の歴史について少しお話しします。

インデックスファンドの歴史とバンガード社

このインデックスファンドというものは、1976年にバンガード社の創始者であるジョン・ボーグルの手によってはじめて世の中に誕生しました。インデックスファンドといえばこの人の名前なしには語れません。

ボーグルは1974年に、「外部オーナーのいないファンド会社」としてバンガード社を設立しました。「外部オーナーのいない」というのは、バンガード社独特の経営形態のことをいっています。バンガード社のファンドがバンガード社を所有する形をとっている、つまり投資家がバンガード社のファンドに投資すると、個人投資家がバンガード社を所有する形になるということです。つまりファンドの投資家がオーナーであり、それ以外にはオーナーがいないということです。この形態をとることで、外部の株主や経営チームなどの「投資家以外の人々」が暴利をむさぼる可能性を排除し、適切なファンドの維持管理の費用を差し引いた利益はすべて投資家自身に還元できる体制を組んでいます。

ボーグルは、S&P500の指標に連動するインデックスファンドを立ち上げ、一般の個人投資家が、「低コストで幅広く市場の株式に投資すること」を実現しました。しかしながら、この今では絶賛に値するアイデアは、1975年当時は「市場平均を狙うなど、あまりにも消極的で非アメリカ的だ」として、「ボーグルの愚行」とまで呼ばれ嘲笑の対象でした。秀でること、人と違うことをすること、前へ前へと出ること、ユニークであることを重んじるアメリカで、「平均を狙う」などというファンドにどんな投資家が魅力を感じるものか・・と笑われたわけです。

1980年代になると、実際にバンガード社のファンドに投資して、その堅実で良心的な運営に感心した投資家がでてきました。彼らが自分の経験を家族・知人に話すことでじわじわと投資資産が増えました。その威力を見て、競合他社もインデックスファンドを売るようになり、今では投資の基本的柱になっています。

この世界で最初のインデックスファンドは、現在はVanguard 500 Index Fundという名前で存在し続け、$748.1ビリオンの資産高を誇り、モーニングスター社では最高のゴールドレイティングをマークするファンドに成長しています。

徹底した低コスト、明確な手数料提示、顧客に利益を還元するという設立当初からの社命はそのままに、今日、バンガード社は、$8トリリオンの投資資産を抱えるアメリカ市場を代表するファンド会社になりました。最初は小ばかにされ相手にもされなかった投資のしかたが、長い40年という時をかけて理解され受け入れられてきました。

私も、バンガード社の大ファンのひとりです。「よいもの」は人の感動を呼びます。バンガード・ファンは自分たちに「ボーグルヘッズ」という名前を付け、www.bogleheads.orgでは投資に関する知恵や意見が活発に交換され続けています。

今回は、インデックス投資とは何なのか、その発祥から発展まで簡単に説明しました。次回は、なぜそのインデックス投資が優れた投資法なのかについて学んでいきます。

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4 comments

  1. 記事についてのコメントでなくて大変失礼いたします。
    どうも昨年の後半くらいからメールでの通知が届いていないようです。
    私だけの問題かも知れませんが、上のsubscribeで再度登録しようとしてもerrorが出てしまいます。
    もしシステム的な問題で読者の方に通知メールが届いてなかったらと思い念の為コメントいたしました。

    1. 御親切にお知らせくださりありがとうございます!確認いたします。
      どうもありがとうございました。

      1. この件、右上のボックスであらためて購読し直すことができました。ご対応いただき誠にありがとうございました。

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