インデックス投資を理解する(2):分散投資で平均狙い!

インデックス投資を理解するシリーズ1回目は、インデックス投資とは何なのか、その発祥から発展まで簡単に説明しました。2回目の今回は、なぜそのインデックス投資が優れた投資法なのかについて学んでいきます。

インデックスファンドで市場全体の株式を持ち、市場の平均の利回りを狙うことの長所は、究極のリスク分散によります。このリスク分散によって、個別株の上がり下がりの影響を最小化し、その代わり市場の成長にともなう利回りをしっかりと手にすることができます。少しづつ見ていきましょう。

分散投資のパワー

ひとつの株だけ持っていると、モロにその価格の上昇・下落のリスクを受けます。ところが二つ以上値動きの異なる株を組み合わせると、それぞれの株式が上昇したり、下落したりのタイミングがまちまちになるため、おしなべると上下が相殺し合い、投資全体の上昇・下落がなだらかになるという効果があります。これが分散投資によるリスク分散です。

よく、「高リスク、高リターン」とか「低リスク、低リターン」と言います。とるリスクによってリターンが決まるということで、株式に限らず概して投資というものに当てはまる概念です。リスクとリターンはこのように直接的に関連しあっています。リスクとリターンは相関する、つまり「あい見合う」わけです。

ですから、ひとつひとつの株で考える限り「高リスク、低リターン」というのはありえません。それだと誰も買わないので消滅します。消滅したくなければ、株を売る側が値段を下げるしかなく、そうすると「高リスク、高リターン」に調整されます。反対に、「低リスク、高リターン」というのもありえません。それだとみんなが買うので値段があがり、すぐに「低リスク、低リターン」に調整されます。

そんななかいくつかの株式の組み合わせて分散投資によるリスク分散をすると、「まあまあ中リスク、まあまあ高リターン」のような効果が得られるのです。つまり、利回りは犠牲にせず、リスクだけを下げることができるわけです。これは、ひとつひとつの株を複数組み合わせてリスク分散をするから可能なことです。

リスクが下がる!

実際にリスク分散の効果を数字で見てみましょう。

5つの株があります。それぞれのYear1からYear5までの5年間の利回りは下記のようです。「分散投資=リスク分散」による「利回りを犠牲にせずリスクを下げる効果」がよくわかるように、意図的にそれぞれの株の5年間の平均利回りは3.0%に設定してあります。

その右は5年間のうちのベスト利回りとワースト利回りです。この差が大きいほど、振れ幅の大きい、つまり価格上昇・下落の激しいリスク高の株ということになります。

一番右はリスクの指標である標準偏差です。これは少し難しい計算が必要なので詳しくは述べませんが、利回りの振れ幅を統計的に計算したものでリスクの目安です。ベストとワーストの振れ幅の広いものは、この標準偏差も大きな数字になっています。

では分散投資をはじめます。まず株1から。株1だけではリスクを表す標準偏差は24.7%です。ここに株2を加え50%:50%で投資します。利回りは3.0%のままですが、リスク=標準偏差が14.4%に下がりました。株1と株2がかなり異なる動きをするからです。

次に株3を入れて、それぞれ1/3ずつの比率で分散投資します。利回りはまだ3.0%のままですが、リスク=標準偏差はさらに8.0%まで下がりました

このように株4、株5も加えていくとリスク=標準偏差は6.7%を経て、最終的に5.4%まで下がります。ベストケースとワーストケースの振れ幅もずっと狭まりました。不確定性が小さくなったのです。これが分散投資によるリスク分散のパワーです。

ここではリスク分散の効果がよく分かるように、5つの株の平均利回りをすべて3.0%に設定しましたが、実際はそれぞれの株の利回りは異なります。高利回りの株に低利回りの株を加えれば、利回りはその中間になります。

リスク分散のポイントは、株式を複数混ぜることで利回りはある程度下がるが、その利回りが減少した分を補って余るリスク低下が得られるということです。「利回りはそこそこに、リスクはかなり下げられる」という状態を実現できると理解してくださるとよいかと思います。

ふたつのリスク

株式投資に伴うリスクには、大きく分けてふたつのリスクがともないます。個別株リスクと市場リスクです。

個別株リスクは個別株に独特のリスクで、株式を発行している会社に起因するリスクです。たとえばトヨタの株であれば、トヨタの会社だけが持ち合わせるトヨタ独特のリスクです。上で分散させているリスクは、この個別株リスクです。どんどん持つ株式の数を増やすことで、値動きの上下の相殺効果を高めていくことができます。つまりリスク分散がどんどん進むということです。

市場リスクというのは、反対に、市場経済の動向、市場金利の上昇や下落、政府の政策、気候や災害などマクロ経済的要素に起因し、市場に存在するすべての株式に影響を与えるリスクです。市場リスクの方は、市場全体が受けるリスクですので、どんなに株式数を増やしても分散させることができません。それ以上下げることができないリスクです。

この分散できないリスク(市場リスク)は、株投資をする限り避けては通れません。このリスクがどうやっても残ることはしっかり理解しつつ、分散できるリスク(個別株リスク)のほうはどんどん分散させて投資をするというのが基本的な分散投資の考え方です。

消える個別株リスク

上でシミュレートしたように個別株リスク分散のプロセスをどんどん続けて、市場にあるすべての株を加えていくと、それぞれの株のもつ個別株リスクはすべて分散され消えてなくなります。最終的に残るのは、市場リスクと呼ばれる、マクロ的なリスクだけが残ります。

これを図にしてみるとこんな感じです。一番左端は一つの株だけに投資する状態です。左から右に移動するにしたがって、投資する株式の数が増えていきます。最終的に一番右端では市場に存在する株式を全部持つことになります。それにつれて、個別株リスクはどんどん分散され減っていき、最終的に市場リスクだけになります。

市場リスクだけをとって市場平均を得る

さて、市場リスクだけが残るまで分散し尽すと、ここで得られる利回りは、市場にある株式のすべてをおしなべ平均した利回りになります。個別株リスクは排除し市場の平均利回りを稼ぐ状態です。

この個別株リスクがなくなり市場リスクだけが残った状態、つまり市場リスクだけをとって得る市場平均利回り、これが市場インデックスです。市場インデックスを追うインデックス投資とは、その市場のすべての個別株リスクをとりのぞき、市場リスクだけに投資する投資法です。

「市場」の定義にはいろいろあり、たとえばアメリカ大企業500社全部に投資した場合の市場平均でならば、S&P500というインデックス名で呼ばれます。アメリカの上場株式全部(約4,000社)に投資した場合の市場平均ならば、Total Stock Marketというのがあります。このほかにもいろいろなインデックスがありますが、要はそのインデックスに投資すれば、その市場の全部の平均利回りが得られるということがポイントです。

どの市場インデックスを選べばよいかという問題は、後ほど考えていきます。今は、市場全体に投資し、個別株リスクを分散させ、市場平均を得るのがインデックス投資であるということを理解いただければ十分です。

インデックスファンドで市場全部を買う

インデックスファンドというものが誕生するまでは、市場全体に投資するというのは大変なことでした。なにせ、自分ひとりで市場に存在するすべての個別銘柄を買っていくとなると一株数万ドルという株もあるとなれば、相当な資金が必要になります。また、自分で全株買うとなるとかなりの手間です。

この点を克服し、広く一般の投資家に分散投資の門戸を開いたのが、前回ご紹介したジョン・ボーグルが開発したインデックスファンドだったのです。インデックスファンドは市場の株式すべてに投資しており、そのファンドの1シェアを買うと、小さな投資額でも市場全体の株式にまんべんなく少しづつ投資できるというしくみです。数万円の投資額でも、市場の株式をすべて持つことができる、夢のような投資方法です。

選ばず市場に存在する株式すべてを持つことで、究極的のリスク分散を果たし、個別株リスクはすべて排除し、着実に市場平均利回りを狙う、少額でも投資しやすい投資法、それがインデックスファンドです。お金持ちでなくてもインデックスファンドに投資できますが、インデックス投資はお金持ちであっても十分活用できる(活用すべき)投資方法です。

今回は、株式のリスク分散について学び、インデックスファンドは、市場において究極的にリスク分散を突き詰めたものであることを見ました。市場平均を狙うインデックスファンドは、本当によい選択なのか、儲かる株を積極的に見つけて投資した方がいいのではないか・・そのあたりのトピックを考えてみます。

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