長期介護保険を買うなら・・

Last Updated on 2017年1月5日 by admin

前回の記事では、長期介護保険は、老後に必要となった長期介護に備える一選択肢であることを書きました。ただ、長期介護保険にはいろいろと問題もあって、個人が支払う保険料は割高な上、補償が十分でない、保険料も補償内容も変更される可能性がある、何十年後に補償が必要なとき不確定要素がぬぐえないというような懸念も存在することも見てみました。ただそれは、すべての長期介護保険を避けなければならないということではなくて、良質でニーズにあった長期介護保険であれば購入も十分考慮に足るということです。今日は、長期介護保険を買うとなったら、どんなことに注意すればよいかについて見てみます。

 

見積もりをたくさん集める

長期介護保険の保険料は、提供する補償内容によっても、保険会社によっても非常に大きなばらつきがあります。たとえ同一の補償内容であっても、保険会社が違うと50%以上もの保険料の違いがあることもあります。あるリサーチでは、60歳の夫婦を想定して同じ条件の見積もりを集めたところ、保険料は$3,025から$6,500(114%の差)の開きがあったそうです。

また、各保険会社にはもっとも顧客として獲得したいターゲット層というものが存在するわけで、それがある会社では50代の独身者であったり、他の会社では60代の夫婦であったりします。保険会社は、自社の得意なターゲット層に「はまる」顧客には、それだけ他社よりも有利な保険料と補償内容を提供できるわけです。これらの理由から、とにかくなるべくたくさんの保険料見積もりを集めてみることが非常に大切です。

スペシャリストやブローカーを使って見積もりをもらう場合は、彼らがいくつの会社を対象にしているのか聞くとよいでしょう。ひとつ、ふたつでは少々心もとありません。少なくとも3つは見積もりを集めたいところです。

なお、雇用者によっては福利厚生の一部としてオプショナルの長期介護保険を提供しているところもあるので、ぜひ検討されるとよいでしょう。また、プロフェッショナル団体が会員に対して提供尾している保険もあります。ただし、雇用者や団体を通しての保険がベストであるとは決めつけず、やはり見積もりをいくつか集めることをお勧めします。

 

保険料の安さだけにはとらわれない

また、保険料の高低は大切なポイントではありますが、いったん契約した長期介護保険の保険料は常に上昇傾向にさらされます。あるポイントで最低保険料だった会社が、数年後に最低保険料である確約はありません。将来のことはわからないものの、現時点でのその保険会社の財務健全性や、過去の保険料値上げのパターンなどを吟味することも必要です。

財務健全性については、こちらのサイトで一部確認できます。また、保険会社名と“rating”というキーワードでgoogle検索すると、各保険会社が自社のWebページで財務健全性レイティングを載せているのがみつかると思います。逆にそれを載せていない保険会社があれば要注意と考えてよいでしょう。

過去の保険料値上げパターンについては、こちらのサイトで一部確認できます。保険料の値上げは、保険会社がそれぞれの州政府に申請し、承認を受けて初めて実行されるものですが、上記サイトはカリフォルニア州の保険管轄部門がまとめているもので、全50州での値上げをリストしています(ただしカリフォルニアで保険を売っていない会社は載っていません)。このリストでたとえば、70%保険料アップの申請を出し、35%アップで承認されているような会社などは、ちょっと考え物かもしれません。

また、保険会社がいざというときに信頼の置ける対応をしてくれるかというのも、たいへん大きなポイントです。これに関しては、お住まいの州の保険管轄部門のWebサイトで確認することができます。各州でWebの作り方が違いますが、だいたいInsurance Company ProfileとかCompany Complaint とかの見出しで苦情クレームのデータが見られるかと思います。

50代、遅くても65歳までには買っておく

長期介護保険が自分には必要であることを確認し、保険に加入することは、できれば50代、遅くとも65歳までにはしておくことをお勧めします。60代後半になってくると保険料が急上昇するうえ、受けられる補償も限られてくる可能性があります。また健康状態もそれなりに劣化してくるので、そもそも加入が拒否されることもあります。大きな病気をしたわけでなく、単なる高血圧というだけで加入ができないケースもあります。また、病歴や症状があるのに、加入拒否を避けるため、それを隠したりするのは絶対いけません。後で判明したときに、契約自体を取り消される可能性もあります。

反対に、比較的若いうちであれば、健康状態がまだよく、標準以上の健康状態ということでディスカウントを受けられることもあります。50歳以下ではこのようなディスカウントの資格を受けるひとは3人に2人の割合ですが、50代で2人に1人に減り、60代で5人に2人、70台では5人に1人に減っていきます。もし買うつもりがあるなら、早めに自分の財務状況や将来への準備度を把握し、決断することが必要です。

 

カバーされる介護を確認する

長期介護保険でカバーされる介護の種類は、契約によってバリエーションがあります。どれも同じと決め付けないで、細かいところまで確認することが大切です。カバーされる介護の種類には、ナーシングホーム(Nursing home)、介助施設(Assisted living)、デイケアサービス(Adult daycare service、在宅介護(Home care)、自宅の介護のためのリモデル(Home modification)、コーディネーションサービス(Care coordination service)などです。また現在は選択肢にないが、将来的に新しいタイプの介護サービスができたとき、そのようなサービスもカバーするよう契約を変更できるオプション(Future service option)が選べることもあります。

また、契約によっては、介護要となって補償を受け始めたら保険料を納めなくてよいとするものもあれば、一定期間.介護要が続いたら保険料免除とするものもありますので、あわせて確認しましょう。

 

介護要の資格を確認する

通常、Activities of Daily Living (ADL)で規定された6つの基本アクティビティ(入浴、着替え、食事、歩行、身の回りの衛生、排泄)のうち少なくとも2つができなくなる場合、あるいは認知上の問題が起った場合を、長期介護の必要対象とみなします。保険契約の中に、入浴が盛り込まれていることを確認しましょう。入浴は、まず一番最初にひとりでできなくなることが多い項目で、これが漏れているとその他の項目でふたつができなくなるまで資格が得られないことになりがちです。

また同様に注意したいのが、認知上の問題です。認知症やアルツハイマーがどのようにテストされ資格有りとみなされるのかについて、しっかりと確認しておくのが後々の頭痛を軽減します。

 

除外条件をチェックする

どの契約にも、カバーの適用外とする除外条件が設定されています。先立つ病院での入院が長期介護資格の条件になっていたりするケースも、まだあるそうです。薬物乱用、精神障害、自殺行為などを除外条件に設定している契約もあります。アルツハイマーや、心臓病、糖尿病、一部のがんなどがさらりと除外条件に入っている場合もあります。除外条件を確認しないことは、せっかく買った長期介護保険が使えるか、まったく使えないかの大きな分かれ目になることもあります。目を皿にしてチェックしましょう。

 

適切な補償期間を選ぶ

平均的なナーシングホームの滞在年数は約2年だそうです。入居する人のうち65%は1年以内に死亡し、平均滞在は5ヶ月。一方、10%は5年以上滞在するという結果だそうです。ずいぶんとばらつきがあるので、自分の長期介護保険を買うときにどこに基準を置くかはなかなか難しい選択です。現在までに契約された長期介護保険でもっとも人気のある補償期間は3年と5年です。補償期間は短ければ短いほど保険料は削減できます。ただし、補償期間を短くして保険料を削減するよりは、補償期間は十分に保ちつつディダクタブル(下記参照)を上げるほうが、小さなコストは自分でカバーし、自力ではどうにもならない部分を保険でまかなうという保険本来の使い方だといえましょう。

 

ディダクタブルを考える

長期介護保険のディダクタブルはElimination PeriodとかWaiting Periodとよばれる除外期間のことで、たとえば除外期間が30日という設定であれば、長期介護要となってから30日間は自己負担、その後の長期介護を補償期間を限度にカバーするという契約です。除外期間は、20~30日から100日以上までさまざまですが、最もポピュラーなのは90日~100日の設定です。除外期間が長いほど、保険料は下がります。

ディダクタブルの除外期間の間は自己負担ですから、その期間のコストは自分で無理なくカバーできる準備をしておくことが必要ですが、それさえできれば長引く長期介護でかさむコスト部分を、保険料を抑えつつ効率よくカバーするという理想的な形になります。また、除外期間が、長期介護が必要になった都度、一日目からカウントされるのか、それとも一度除外期間を満足すれば、その後は何度長期介護が必要になってもすぐに補償が受けられるのかは大きなポイントです。

 

インフレ保護をよく吟味する

長期介護保険は、加入してから数十年以上たってからはじめて補償をうけるという性質のもので、よって年々上がる物価の影響を大きく受けます。一般的な物価の上昇率より、医療コストや介護コストの上昇率は高いことも予想され、インフレーション対応をよく考慮しておかないと、30年後に補償を受けることになった段階で、「こんな少ない額では到底不十分」ということになりかねません。

インフレ保護のオプションは、当初、一日当たり$150の補償で契約しても、これが年々インフレ相当分ずつ増加していくしくみのことで、保護率(補償額上昇率)は3%、4%、5%というように選択します。また、単利(Simple protection)と複利(Compound protection)についてもどちらか選択します。同じ3%でも、毎年、当初契約額の$150の3%($4.50)ずつ上がっていく単利と、毎年、その時点での補償額の3%(一年目は$4.50、二年目は$4.64、三年目は$4.77)と上がっていく複利では、30年後には大きな差になります。前者の補償額は30年後には$285/日であるのに対し、後者では$364/日になります。1年分にすれば$104,025と$132,860の差になります。現実のインフレの状況に即しているのは、後者の複利のほうです。インフレ保護のオプションは、保護率が高いほど、また単利より複利のほうが保険料が上がることになり、このオプションをつけるだけで保険料が50%アップとか場合によっては倍になるようなこともあります。とくにまだ若年で契約する場合は、将来が長いだけに、3%複利が適切かと思われます。反対に、すでに高齢の場合は2%の単利でもなんとかなる場合も十分あります。このオプションは非常に重要なオプションです。よく考慮され、しくみを把握してから契約しましょう。

 

夫婦で加入する

ひとりで加入するより夫婦のほうが割安です。また結婚している必要はなく、Domestic PartnerでもOK(一定期間の同居が条件だったりする)です。ふたり一緒に見積もりをとりましょう。多くの場合、トータルの補償リミットが設定されており、たとえばそれがトータルで$200,000だった場合、夫が$80,000分補償を受けたら、妻は$120,000分まで利用可能というようなしくみです。このような場合、保険料を低く保ちつつ二人分のカバーを得ることができるものの、場合によっては一人が全額分使い果たしてしまい、二人目には補償が残されていなかったという危険性はあります。契約にあたっては、よく納得してからしましょう。

 

契約は一生ものと覚悟しておく

自動車保険や医療保険などは、不満があったり、あるいはもっといい保険が見つかったりすれば、気軽に乗り換えることができます。生命保険の定期保険などもこの類です。しかしながら、生命保険の終身保険や長期介護保険などは、途中でキャンセルしたり乗り換えたりすることは可能ではありますが、すると損をする保険です。払い込んだ保険料は、(自動車保険や医療保険などのように、その年の一年分だけの補償費用ではなく)、将来にわたる補償への料金であり、いわば保険料の先払いです。5年払ってやめれば、将来のために払ってきた保険料が無駄になることを意味します。終身保険の場合はキャッシュバリューだけは戻り、将来の保険補償部分は無駄になるという具合ですが、長期介護保険の場合はキャッシュバリューはないので、払い込んだ分全額無駄になります(だたしNon forfeiture Option(下記参照)があれば多少ましです)。しかも乗換えで、新しい会社で契約をした場合、年齢が上がっての契約になり、保険料も割高からの再スタートになります。

保険料が払えなくなった場合は、キャンセルしたくなった場合には、“Nonforfeiture option”(保険料喪失回避オプション)というオプションがついている場合は、すでに払い込んだ保険料をもとに減額された補償を受けることができあます。ただし、このオプションがついている場合でも、できる限り中途で止めるという選択は回避するのが賢いといえます。

長期介護保険に加入するときには、長期介護保険はずっと持ち続けること、その会社で間違いないことを確かめて、覚悟の上でそうすることが必要です。長期介護保険は終身保険などと同じで、「とりあえず入っておく」という姿勢は絶対避けるべき保険です。

 

ハイブリッド版も検討する

長期介護保険保険そのものを買う代わりに、長期介護補償特約つきの生命保険(終身保険)という選択もあります。たとえば、$500,000の死亡補償に、1ヶ月に2%($10,000)を長期介護補償として4年を限度に支払うというようなタイプの保険です。長期介護補償を使わずに死亡すれば$500,000の補償金が支払われ、長期介護が必要になれば$10,000/月で4年まで補償、その後死亡した時点では死亡補償金は受けた長期介護補償の分だけ減額されるというしくみです。

一時金払い込みの生命保険にした場合、長期介護保険の場合のように年々の保険料アップを心配する必要もありません。ただ、保険というのは多くの場合、組み合わせを買ったほうが割高になる傾向があり(貯蓄/投資と保険の組み合わせのように)、生命保険と長期介護保険の組み合わせもしかりで、別々に購入するよりコスト高になる危険性があります。また、老後の死亡補償が本当に必要なのかという問題もあります。ただ、終身保険をすでにもっておりキャンセルするのもなんだから、1035エクスチャンジ(同等商品との交換により、キャンセルによる課税を防ぐ)により、長期介護保険特約付の生命保険に乗り換えるというチョイスはいいかもしれません。また同様に、アニュイティに長期介護特約をつけられる場合もあるようです。保険会社によりいろいろ条件が違いますので、担当者に聞いてみてください。

 

サインの前にはよ~く契約書を読む

最後に、契約書にサインする前に、保険契約の内容をよくよく読んで最終確認することです。分からないことがあったら、担当者にしつこく確認しましょう。また、ファイナンシャルアドバイザーや弁護士のヘルプを得て、一緒に契約書を読んでもらうのもよいでしょう。同じことの繰り返しになりますが、自動車保険や健康保険とは違って、長期介護保険は「とりあえず契約しておいて、いやなら後から変更すればいい」という類のものではありません。サインは慎重に行います。また、サインしてしまってからでも30日以内ならフルリファンドでキャンセルできる権利がほとんどの州で規定されています。気が変わる可能性があるなら30日以内です。それ以降のキャンセルは、高くつくミステイクになりがちです。

 

エステイトプランもお忘れなく

長期介護保険とは直接関係しませんが、同時に考えたいのがエステイトプランです。エステイトプランとは、遺書、トラストなど相続にあたってのさまざまな考慮されるべきことを含みますが、その中にはPower of Attorney(権限委譲)やAdvance health directive(医療サービスの事前指定書)もあります。長期介護が必要になったとき、手持ちの資産からそのコストを支払う必要があったとき、本人以外の親類がその処理をできるようにする権限委譲や、無駄な延命治療を回避するような指定書を用意しておくことも、非常に重要な要素です。

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4 comments

  1. いつもとても役に立つ記事、ありがとうございます。
    今、50代前半の女性、長期介護保険について考えて真剣に考え始めました。貯蓄型の生命保険に特約をつけるというもので、なるほど、使わなければその分生存者に残せるし、介護が必要になったとき、その介護の費用が払われるのであれば使えるということでUse it or lose itではないのでいいかな、と思っていました。
    長期介護はLong Term Careだと思うのですが、特約名はChronic Illness Ridersとあります。何か違いはあるのでしょうか?聞いてみると、Chronic Illness Ridersは介護のための領収証がいらない、審査が簡単、と言われましたが、今ひとつ違いがわかりません。教えていただけますか?よろしくお願いします。

    1. Chronic Illness Ridersで検索してみた一般的説明では、保険がおりる条件に、”Licensed health professional certifies insured cannot perform 2 of 6 ADLs for last 90 days or severe cognitive impairment with likely no potential for recovery”とあります。Activities of Daily Living (ADL)の6つのうち、2つができない状態が、少なくとも90日以上続くか、回復が見込めない認知の障害がある場合とあります。Long Term Careの場合は、回復が見込めるTemporaryの症状でもケアが必要であれば保険がおりるケースもあり、その辺が大きな違いのようです。ただこれは一般論なので、あくまで保険会社のポリシーの契約内容で確認されることをお勧めします。

  2. 米国に住み始めて6ヵ月、長期介護の保障に関心を持ち、調べておりましたらこのサイトにたどり着き、大変興味深く記事を拝読させていただきました。
    なるべく多くの会社の商品を比較すること、カバーされる種類・除外条件などをよく確認するということ、かなり腑に落ちました。
    ところで、商品比較にあたり、アメリカでもとりあえず資料のみをいただくということも可能なのでしょうか?
    先日、商品の概要を知りたく、保険会社に連絡したところ、エージェントさんを紹介していただき、そのエージェントさんと実際あって、いろいろと親身に教えてくれたのですが、「なるべく多くの会社の商品を比較する」となると、毎回エージェントさんと会うのも(多くのエージェントさんのオススメはお断りしなければならないため)気が引けまして。

    1. そうですよね、わかります。保険会社選任のAgentさんではなくBroker(複数の保険会社の商品を扱う)にお願いするといくつかの会社の商品を比較できますが、Long Term Careの場合は難しいかもしれません。Onlineで見積もりをとるという方法もありますが、やはりLong Term Careの場合は内容が複雑なので、Auto Insuranceのように簡単にはいかないと思います。そうするとどうしても数人のAgentさんからin-personで見積もりを集めることになります「。最初から複数見積もりを集めています。比較検討して最適なものを選ぶつもりです」・・と伝えておくといいかもしれませんんえ。Agentさんのほうも心得ているでしょうから、スムーズにいくのではないかと思います。

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