コロナ経済対策 CARES ACTの概要

コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(The Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act―頭文字をとってCARES ACT)について、3月25日に上院を満場一致(賛成96票、反対0票)で通過、27日に下院でも発声投票で可決されました。COVID-19パンデミックによるアメリカ経済への被害を少しでも和らげるための総額$2トリリオンの救済パッケージです。このパッケージは中小企業やビジネスへの救済も含まれていますが、ここでは個人やご家庭に関する部分について概要をご紹介します。

リカバリー・リベートの支給

納税者に対し、独身で$1,200、ジョイントリターンの夫婦で$2,400、プラス“Qualifying Child”ひとりにつき$500をタックスクレジットとして支給します。2020年分のタックスリターンでリファンドされる額の前倒しリファンドのようなものです。本来ならば、この条件に合致する納税者が、2020年分のタックスリターンを行った時点 (2021年のリターン期日までに) ではじめて得られるタックスクレジットではありますが、それを前倒しで今適用し現金支給するというものです。このタックスクレジットは、条件さえ満たしていれば、必ずタックスクレジット(Refundable Credit)で所得税の有無にかかわらずもらえます。

収入制限が設けられており、adjusted gross income (AGI)が独身で$75,000、heads of household で$112,500、ジョイントリターンの夫婦で$150,000を超えない納税者が対象です。所得金額がこの金額を超えると、$100超えるごとに$5税額控除額が減額されます。ですので、AGIが独身で$99,000、heads of household $136,500、ジョイント夫婦で$198,000を超えると支給対象になりません。これらの所得の額はもっとも最近のタックスリターン(2019年分をすでにファイルしていれば2019年、まだファイルしていなければ2018年の額。2019年タックスリターンは期限が7月15日に延長されました)のものとなります。

さらに支給にあたっては、下記の条件すべてに該当している必要があります。

  • 米国居住者(resident alien)
  • 他の納税者の扶養家族でない
  • EstateやTrustでない
  • ソーシャルセキュリティ番号があること

リタイヤメント口座からの引き出しに対する条件緩和

通常は、401(k)やTraditional IRAなどの税優遇リタイイヤメント口座から引き出しをすると、全額所得にカウントされその年の所得税の対象になると同時に、59歳半以前である場合には10%の早期引き出しペナルティがかかります。CARES ACTによって、まず早期引き出しペナルティがなくなります。また、引き出し後3年以内に入金し戻せば、所得税の対象とはなりません。これらの入金は、通常定められている一年間の積立限度には影響しません。もし3年で入金し戻せない場合は所得税が発生しますが、一年で支払う代わりに向こう3年で支払えばよいという選択をすることができます。引き出し額には、2020年の間に総額$100,000までという上限があります。

引き出しではなく、ローンとして降ろす場合は、ローン限度額が今までの$50,000から$100,000へと拡大し、されに返済期間は1年間延期されます。

  • 引き出しが、CARES法制定以降2020年12月31日までにされること
  • 個人が引き出すこと
  • 以下のどれかに条件に当てはまること
    • 引き出し者は、CDCに認可されたテストによってCOVID-19感染が診断された者であるか、
    • 引き出し者の配偶者、扶養者がCDCに認可されたテストによってCOVID-19感染が診断されたか、
    • 引き出し者が、以下の理由から経済的困難を経験している
      • COVID-19ウイルス問題が原因で、隔離、レイオフ、自宅待機、労働時間の短縮された
      • COVID-19ウイルス問題が原因で、チャイルドケアが得られないために働くことができない
      • COVID-19ウイルス問題が原因で、引き出し者のビジネスを閉鎖・時間短縮せねばならなかった
      • その他Secretary of the Treasuryが適切と認めた要因

RMDの義務なしに

2019年12月に制定されたSECURE ACTでRequired Minimum Distribution (最低引き出し必要額。RMD)のルールが変更になり、2020年からはリタイヤメント口座のRMDの義務開始年齢が。これまでの70.5歳から72歳に引き上げられました。ただし、2019年に70歳半になった人は古いルールが適用され、2020年の4月15日までに2019年分のRMD引き出しを行わないとペナルティ対象となるはずでした。今回のCARES ACTにより、これがペナルティ対象にならなくなります。また、今年72歳になる人はSECURE ACTの新ルールに基づいてRMDの義務がありましたが、これもCARES ACTによりなしになります。

このRMDの免除は、お金を引き出す必要がないのに、株式市場が下落した状態にもかかわらず現金化する義務を免除するという意味があります。引き出しの必要がないのであれば、RMD分も手付かずのまま据え置き、市場回復まで待つことができるようになりました。

慈善団体への寄付しやすく

2020年のタックスリターンでは、チャリティ団体への寄付についての税控除がより利用しやすくなります。Itemize Deductionを選ばない人(Standard Deductionを選ぶ人)の場合は、Above-the-line(AGIを計算するにあたっての計算段階)において、$300までの直接控除ができます(収入を直接減らす形で寄付できます)。また、Itemize Deductionを選ぶ人の場合は、ご自分のAGIを限度に無制限で寄付額を控除できるようになります。

スチューデントローンの返済義務一時中止

連邦のスチューデントローンに関しては2020年9月30日まで一時中止し、この期間利子は発生しないとなりました。

健康保険利用拡大

High-Deductible Health Plan(HDHP)において、オンラインを介しての医療サービス(telehealth)やその他リモート医療措置が、Deductibleを課すことなしに利用可能とできるようルール変更されました。

このほか、スモールビジネスを対象にした救済措置もあります。会計士さんにご確認・ご相談ください。

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8 comments

  1. Junkoさん、いつも記事ありがとうございます。

    >> これは無償支給されるお金ではなく、2020年分のタックスリターンでリファンドされる(はずの)額の前倒しリファンドのようなものです。本来であれば2021年の4月15日までに2020年のインカムタックスリターンを行うわけですが、そのときにリファンドされるはずである額を、前倒しで今受け取ることができるということです。受け取った額は、2020年分のタックスリターンをおこなってリファンドを受ける分から差し引かれることになります。

    Junkoさんのこちらの記述を見て、気になって調べています。というのも、もし2020年のリファンドを前倒しでとるということであれば、2020年のWithholdingを減らしてTax dueに持っていく(2020年にリファンドが出ないようにする)ことで、今回の$2,400(MFJ)を2020年のリターンから差引かれずに済むのではないかと思ったからです。

    >> In essence, the stimulus check acts as an advance of your 2020 income tax refund. This means when you prepare your 2020 income tax return, there will be a line to include the section 6428 credit. The credit on your 2020 return is subtracted by any amount received as a stimulus check in 2020. If the amount you received as a stimulus check is less than the credit you are due, the difference will be included as part of your 2020 refund. If you have been overpaid by receiving the stimulus check, however, you will not be required to return any excess amount.
    https://www.dailylocal.com/news/coronavirus/what-does-the-stimulus-check-mean-for-your-taxes/article_d96e1aa0-729e-11ea-8123-ffd95baa7fd8.html

    こちらの記事によれば、以下のようになるのではないかと解釈しています。
    2020年の1040上に$2,400(MFJ)がクレジットされた上で:
    (a) $2,400 >= 今回の小切手額 ⇒ その差額は2020年のRefundに追加になる
    (b) $2,400 < 今回の小切手額 ⇒ 小切手は貰いすぎたけども返還を求められることはない
    (a)のケースでは例えば2020年に子供が産まれた場合、2020年の1040に追加で$500クレジットされるのではないか・・・?

    >> In this case, the stimulus check acts like a refund that you get in advance based on your 2020 income. That’s confusing because you don’t know how much you’re going to earn in 2020, but it’s why the IRS is using earlier returns. But this advance payment on the credit does not affect your “normal” tax refund for 2020: you won’t lose out on your expected tax refund for 2020 with the check.
    https://www.forbes.com/sites/kellyphillipserb/2020/03/25/all-you-wanted-to-know-about-those-tax-stimulus-checks-but-were-afraid-to-ask/#206e37621f9c

    上記Forbesの記事では、2020年の見込みリファンド額は今回の小切手によって減らされないと紹介されています。

    以上から、2020年の1040上にRefundable Creditとして$2,400(MFJ)が出現して、そこから既に小切手で貰った額が差し引かれる(差額が出れば追加でRefund, 貰いすぎていたら回収は求められない)。ということであれば、その2020年に出現するであろうRefundable Creditは一応は「無償支給」と呼んでも良いのではないか・・・というのが頑張って調べてみた私の結論なのですが、いかがでしょうか。

    IRCの該当セクションがこれみたいですが、私には難しくてよく分かりませんでした。前回2008年はどうだったのでしょうね。
    https://irc.bloombergtax.com/public/uscode/doc/irc/section_6428

  2. “受け取った額は、2020年分のタックスリターンをおこなってリファンドを受ける分から差し引かれることになります。”とのことですが、このクレジット自体が新しく2020年の税法に加わったということで良いのですよね?従来の税法のままだと、今1200ドルをもらったところで来年ファイルをした時にそこまでRefundがない人もいますよね。収入の無い人や、Standard Deductionに満たない人はFederal Income Taxを1セントも払わない人がいるわけですし。そういう人たちにも今回はRebateが渡るので、これはRefundable Tax Credit(場合によってはEarned income tax creditのような?)だという認識でいるのですが。

  3. >>これは無償支給されるお金ではなく、2020年分のタックスリターンでリファンドされる(はずの)額の前倒しリファンドのようなものです。本来であれば2021年の4月15日までに2020年のインカムタックスリターンを行うわけですが、そのときにリファンドされるはずである額を、前倒しで今受け取ることができるということです。受け取った額は、2020年分のタックスリターンをおこなってリファンドを受ける分から差し引かれることになります。

    この部分の、無償支給でないという説明している原文ソースはありますでしょうか。
    独身$1200、ジョイントリターンの夫婦$2400は、CARES ACT適用前と比べたら純増ですよね?
    だとすると実質無償支給で、そうでないというのは語弊があるかと思われますが…。

    1. 佐々木さん、Yさん、KKさん
      わたしが間違っていました。”無償支給でない”は語弊があるどころか間違っています。これは2020のTax Refundの前倒しで、Tax RefundにはTax Creditが適用され、このTax CreditはRefundable Creditだと思います。
      原文 https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/3548/text#toc-id0B379ADDB9CE401FA5F217393EC9B296

      Treatment Of Credit.—The credit allowed by subsection (a) shall be treated as allowed by subpart C of part IV of subchapter A of chapter 1.

      とあり、この箇所はRefundable Creditの規定です。

      ご指摘ありがとうございました!

      1. 早速ご確認ありがとうございます。
        個人的にはいつリカバリーリベートの部分以外気にしておらず、他の要点を纏めていただき大変ありがたいです。
        私は自動車部品メーカー勤務ですが、各自動車OEMが4月中旬~下旬まで生産停止しており、それ以降どうなっていくか心配してます。
        有効なワクチンができるまでは長期戦になる気がするのですが、そうすると果たして5月以降工場稼動できるのか… できなければ、政府が継続してベーシックインカム/生活保護を支給しないと、多くの人の生活が成り立たない気がします。
        失業保険があれば何とか生きてはいけるのかもしれませんが、私はまだ運よく在宅勤務で雇用があり、失業した際の生活が具体的にイメージできておりません。

        1. 在宅勤務ができるということは感謝なことですね。なにかのリサーチで在宅で仕事ができるのは30%未満、それ以外の方は外に出なければ仕事ができないと読みました。外にでられず仕事ができないのも困るし、今は仕事ができてもお医者さん、デリバリーの人、お店の方などそれぞれ危険を冒して仕事をしていらっしゃり、どちらも大変な状況だと思います。経済活動のストップを考えると、数千ドルもらったからといって実質的な助けにはならないというケースも多いかと思います。祈るばかりです。

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