びっくり医療請求から解放されます!

2022年1月から、医療費のびっくり請求がなくなります! びっくり請求ってなに?と思われる方もいらっしゃるでしょうか。びっくり請求とは、医療サービスを受けるとき、「自分の決められた医療ネットワークの中で医療を受けている」と思っているのにあとから実はネットワーク外だったことがわかったり、あるいは救急時に病院を選んでいられないので仕方がなくかかった病院がネットワーク外だったことで、あとから多大な請求がくるようなことを言います。これは、アメリカ医療においては本当に大きな問題でした。普段はほとんど知らないで生活できても、いざ医療サービスが本当に必要になってはじめて経験する恐ろしい問題でした。今回NO Surprise ACTが通り、来年1月からこのびっくり請求から私たちが守られます。

びっくり請求、今まで実際にあった話


ケース1:脳内出血のため救急で、あるネットワーク内の病院に運ばれた。ところがこの病院では手術の準備がなかったため、ネットワーク内の他の病院に搬送され、そこで手術を受けた。病院自体はネットワーク内だったものの、執刀した脳外科医はネットワーク外の医師であったため、後日執刀医から$40,091の請求が来た。保険会社は、ネットワーク外扱いとして$8,386だけをカバーし、残りの$31,704は患者の個人負担となった。

ケース1:子どもが、ネットワーク内の病院で、ネットワーク内の執刀医によって心臓の手術をうけたところ、アシスト外科医がネットワーク外であった。患者にはその事実は知らされないまま手術が行われ、アシスト外科医からの請求額は$6,400。健康保険は$1,400のみがカバーされ、残高の$5,000は個人負担となった。

ケース3:ネットワーク内の放射線センターで、乳がん検診(マモグラム)の定期健診を受けたところ、マモグラムの結果を読み診断をした放射線医がネットワーク外であった。放射線医からは後日$110の請求があり、この女性は$110を個人で支払うことになったうえ、健康保険会社はそのうち$58.64分しか、Deductibleの計算に数えてくれなかった。

ERに運ばれた人の5人にひとり、入院患者の6人にひとりの割合で、びっくり請求を受け取るという統計がありますから、本当にびっくりです。

びっくりがなくなる!


緊急でネットワーク外の医療サービスを受けた場合や、緊急でなくとも「ネットワーク内で医療を受けている」と思っていたのに、患者が知らない間にネットワーク外のサービスを使ってしまっていたというような場合、NO Surprise ACT施行後は、患者はネットワーク内の治療費相当を負担すればよく、それ以上のネットワーク外費用は負担しなくてよいことになります。また、支払ったネットワーク内の治療費相当は、Deductibleにカウントされます。

患者が支払うネットワーク内の費用と、実際のネットワーク外用の費用との差額は、病院、医師、保険会社の間で調整を行うことになります。今までは、大きな請求をもらった患者はそれをそのまま支払うか、あるいは、保険会社、病院、医師とに直接連絡しながら、交渉をして医療費を下げてもらう必要がありました。コミュニケ―ションや交渉には時間がかかり、そのうち請求がコレクション・エージエンシーに回ってしまい、督促の電話がかかってくるというようなことにもなりかねませんでした。今後は、ネットワーク内相当額を払えば、患者自身は調整・交渉から外れることができ、あとは、病院、医師、保険会社間で残額をどう負担しあうかネゴになります。

病院や医師と、保険会社との間で、それぞれの負担額について同意が得られない場合は、30日間の交渉期間に入り、その後でも同意が得られない場合は、調停サービスを使っての交渉になります。各種医療サービスに対する価格の目安ガイドのようなものが用意され、調停者はこれを使って、実際に提供された医療費に対する適正価格を探っていきます。このプロセスによって、病院や医師が不当に高い言い値をつけることができなくなるようです。このNO Surprise ACTは、患者をびっくり請求から守る目的と、さらには医療費に言い値がつけられることで医療費がコントロールなく上昇していくことを防ぐという意味合いもあるようです。

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その病院からの請求書、本当に払わなきゃいけませんか

保険を持っていない人が医療を受けた時の請求も問題になっていました。無保険者は全額自己負担で医療サービスを受けるわけですが、そこには保険会社が全くからまないため、病院や医師のつける言い値を請求されることになり(保険会社が絡む場合は、病院/医師と保険会社との間のNegotiated Priceというのが存在し、これは言い値よりずいぶん低いことが多い)、思いもよらない高い請求がくることもしばしばでした。NO Surprise ACT後は、無保険者にも保護が施され、あらかじめの医療費見積もりをもらったり、請求に問題がある場合はクレーム解決をする場も与えられます。

今後は・・

びっくり請求に対してはこれまで各州レベルで患者保護のルールがつくられている場合もありましたが、今回の連邦レベルでの法律は心強いプロテクションです。患者の保護と同時に、医療費の透明度を上げ、また医療費上昇も抑える効果も見据えての法律のようです。

気をつけたいのは、患者としては、ネットワーク内外の区別をしなくてよくなるということではありません。今までどおり、自分にできる限りにおいてネットワーク内にとどまるよう、保険会社の提携ネットワークをきちんと把握して医療サービスを受けることが必要です。NO Surprise ACTは、緊急時などに予想外にネットワーク外の医療を受けてしまった場合の保護です。通常計画的に受ける医療に関しては、ネットワーク内にとどまる努力が患者側に課せられていることは、今までと何ら変わりません。ただ、やるだけやったら、あとはびっくり請求からの保護があるというのは、安心なことだと思います。

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4 comments

  1. これすごくいいですね!
    有力な情報を教えてくださりありがとうございます^ ^
    意識がない時にout of networkに連れて行かれたらどうしよう!?といつも疑問(不安)に思っていました>_<
    でももし意識はあるけれど判断を間違ってout of network に行ってしまった場合、後から知らなかったでも通用するのでしょうか

    1. 一つ大きく安心ですよね。でも「判断ができた」とみなされれば、ネットワーク内にとどまることは患者側の責任とされるのではないかと思います。

  2. アメリカでクリスチャンとして一生懸命生きているものです。
    病院からMRIをアプルーブされた場所でとった次の日に、ーのファシリティーでのみ保険が使えます、というレターがポストに届きました。 その後MRI3000ドルの支払いを請求されて、クレームを病院にしたら2200ドルに下げてきました。いくら証明をメールでやり取りしても埒があかないのですが、次のステップはどうすれば良いのでしょうか? 困っています。 どうぞ教えてください!

    1. それは大変ですね。私は病院や保険の請求については専門家でもなんでもありませんが、思いつくことを書いてみますね。
      びっくり請求(Surprise Bill)の廃止にともない、「Ban out-of-network charges and balance bills for certain additional services (like anesthesiology or radiology) furnished by out-of-network providers as part of a patient’s visit to an in-network facility.」という項目ができました。保険のIn-Network 施設で受けた処置なのに、そこで働く医師や技師がOut-of-networkだったのであとで請求が送られることが違法になるという意味です。MRIを受けられた病院がIn-networkならば、あとから追加でOut-of-networkの請求が来ることがないはずなのですが、いとうさんの場合はこのケースに該当しますか?「病院からMRIをアプルーブされた」とありますが、アプルーブは普通保険会社(あるいはMedical Group)が出すのではと思うので、よくわかりません。しかるべくIn-networkの施設でMRIを受けられたのなら、保険会社(あるいはMedical Group)にDisputeをされるのが良いかなと思います。こちらに政府のガイダンスページがあります。

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