アメリカの大学 – ファイナンシャル・エイド研究

Last Updated on 2012年3月5日 by admin

「たとえ年収が$250,000であったとしても、ファイナンシャル・エイドは、必ず必ず必ず申請すること」とは、カレッジ対策をよく知るFrederick Ruggの言葉。「貯蓄も収入も十分な家庭であっても、ツボをおさえていさえすれば、劇的に学費を削減する方法を見つけられる」とは裏を知り尽くしたLynn O’Shaughnessyの言葉。十分にお金があってもなくても、とにかくaskしなければ与えられることはない国、アメリカ。高騰し続けるカレッジ費用…。子どもは大学を出たが、自分たちの老後資金はすっからかんということがないように、できるだけ利用したいファイナンシャル・エイド…。今回はその研究です。

「ファイナンシャル・エイド」という言葉は、かなり自由に使われており、いろいろなタイプのエイドをまとめて総称するために使われたり、あるいは一部の奨学金のことを指すために使われたり、返済が必要な学生ローンのことを指すために使われたりと、その使われ方はまちまちです。もともと、ファイナンシャル・エイドとは、「大学の費用を支払うために、何らかの形で受けることができるお金」というような大雑把な意味です。では実際、このファイナンシャル・エイドには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

まず最初に、各種ファイナンシャル・エイドを比べたり吟味したりするときにキーとなる3つのポイントをご紹介しましょう。ファイナンシャル・エイドに申請したり、オファーされたファイナンシャル・エイドを吟味する際には、この3つのポイントを確認するとエイドの大まかな特徴を把握することができます。

 

ファイナンシャル・エイドの種類を見分ける3つのポイント

 

出どころ : フェデラル政府、州、大学、その他民間

 

ひとつめは、ファイナンシャル・エイドの出どころです。たとえば、グラントとよばれるものは、通常、フェデラル政府か、あるいはその大学のある州が財源となっています。学生ローンなどは、フェデラル政府がスポンサーになっているものもあれば、民間の銀行が発行するものもあります。

 

付与の判断基準 : ニード・ベース(経済的ニーズがある場合)、メリット・ベース(成績やその他の才能が秀でている場合)

 

次は、付与の判断基準です。そのエイドの受給資格のことで、ニード・ベースとは、文字通りエイドを必要としている、つまり収入や財産から十分学費が拠出できないので金銭的ヘルプを必要とする場合に提供されるものです。これに対し、メリット・ベースとは、財務上のニーズにかかわりなく提供されるものです。カレッジ側が、「この学生にはぜひ来て欲しい」と判断する場合、学生誘致の目的で提供されます。判断基準はさまざまで、学業、スポーツ、芸術など広範囲に及びます。

 

返済の要・不要 : ギフト・エイド(返済不要)、セルフ・ヘルプ・エイド(返済要、あるいは労働要)

 

3つめは、返済の要・不要です。受けたお金を返済する必要があるかないかのことで、返済する必要のないもの、つまりもらえてしまうものはギフト・エイドと呼ぶのに対し、返済せねばならない学生ローンや、ワーク・スタディーのように学生の労働を要するものはセルフ・ヘルプ・エイドと呼びます。

 

では、この3つのキーポイントを理解したうえで、具体的にはどのようなファイナンシャル・エイドが存在するのか見ていきましょう。

 

ファイナンシャル・エイドの種類

 

グラント

 

グラント呼ばれるものは、通常、フェデラル政府や州がニード・ベースで付与するギフト・エイドのことを指します。これは、FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)を申請することで、カレッジ費用を払うにあたって経済的ニーズが存在すると判断される場合、付与されるものです。グラントは、ギフト・エイドであり、返済する必要のないお金です。ただし、メリット・ベースで付与されるグラントも存在するようで、たとえば、州から出るグラントなどは、経済的ニーズの存在は前提になりますが、それに加えて成績の基準が設定されていることもあるのでメリット・ベースの側面もあります。いずれにせよ、もらえてしまうお金ですから、もっとも好ましいものです。また、経済的ニーズという言葉を見て、「うちはきっと資格がないだろう」とあきらめてしまう人も多いのですが、資産や家計を操作することによって、合法的に資格を得るあるいは付与の額を増やすことも可能であることが多いので、簡単にあきらめず専門家にご相談ください。

 

学生ローン

 

これは大きく分けてフェデラル政府の提供している公的ローンか、民間の金融機関が提供しているプライベート・ローンかの2種類があります。ローンなので自ずからニード・ベースであり、公的ローンの資格を得るには、FAFSAの申請が必要です。いずれにせよ、返済は必要なのでセルフ・ヘルプ・エイドです。ファイナンシャル・エイドの中で、もっとも注意して利用せねばならないものです。学費の高騰とともに学生ローンは増え続けており、アメリカの学生ローンの総残高はとうとうクレジット・カード負債のそれを上回ったというニュースが最近報道されました。昨年卒業した学生の学生ローンの平均残高は$25,000以上だそうです。ローンを抱える学生のうち、昨年返済を滞った学生は8.8%、私立大学を卒業した学生だけを見ると15%という数字です。今からキャリアを作り上げ、車や家を買おうとする時期に、学生ローンの返済は多大な負担になりかねません。借りるか・借りないか、借りるならいくら借りるか、という問題と合わせて、そもそも選ぼうとしている大学が経済的に現実的なものかということにまで熟慮が必要です。

 

ワーク・スタディー

 

これはフェデラル政府が助成しているもので、学生がオンキャンパスか近くの非営利団体で労働をし収入を得ることを可能にするセルフ・ヘルプ・エイドです。ニード・ベースであり、FAFSAの申請が必要です。週に10から15時間の労働を対象しているのが普通で、時給はそれほど期待はできないようです。ただし、通常学生の得る収入は、FAFSAではその学生が受けるエイドの額を減らすように働くものですが、ワーク・スタディーの収入はカウントされないという利点があります。つまり、いくら働いても、他のエイドの額は減らされないということです。また、経済的な意味だけではなく、貴重な労働経験を得られるということや、レジュメにかける経歴をつくるという経験面の価値もあります。

 

学費ディスカウントや大学からのスカラシップ

 

これは大学から出る、返済の必要のないギフト・エイドです。大学によって、付与の判断基準は、ニード・ベースであったり、メリット・ベースであったり、そのコンビネーションであったりします。このような学費ディスカウントは特に多額の寄付基金(Endowment Fund)を持ち合わせる私立大学に多く見られ、College Boardによると、「平均的な私立大学は慣例的に学費を33.5%ディスカウントする」というデータもあります。この慣例は州立大学にも広がってきており、州立大学の学費ディスカウントの平均値は14.7%だそうです。呼び名も大学によってさまざまで、学費免除(Tuition Waiver)、学費ディスカウント(Tuition Discount)、学費アシスト(Tuition Assistance)、あるいは単にスカラシップ(Scholarship)と呼ばれたりします。州立大学の場合ならFAFSA、私立の場合は、FAFSAに加えてCSS/Financial Aid PROFILEというもうひとつの申請書(役割としてFAFSAと同じだが、ニーズの判断において収入や財産の取り扱い方に違いがあったりするもの)を提出することを要求されることが多いようです。メリット面では、大学側が「この学生はぜひ欲しい」と判断すればするほど、提供される額は大きくなります。ですから、「がんばってやっと合格した大学」からではなく、たとえば合格者のトップ25%に入っているような「余裕で合格した大学」からのほうが、大きなエイドを期待できます。大学選びには成績面だけではなく、ファイナンシャル・プラニング面もたいせつです。大学教育は将来のための投資ですから、他の買い物と同じようにコストとリターンをよく考え、自分たちに(家計にとっても子どもにとっても)最適な学校を選ぶというのが理想的ですね。

 

外部からのスカラシップ

 

フェデラル政府、州、大学以外の第三者からのスカラシップがこれにあたります。さまざまな会社や非営利団体がさまざまなスカラシップを提供しています。付与の判断基準は、それぞれの会社や団体が決め、学業、リーダーシップ、スポーツ、ボランティア活動など千差万別です。ローンでない限りは、返済の必要はありません。FastwebCollege Boardなどがこの種のスカラシップの検索を容易にしてくれます。ただし、このようなスカラシップは一発モノが多く、また金額も数千ドル単位のものがふつうです。実際のところ、このタイプで得られる額は、全ファイナシャル・エイド額の約3%を占めるに過ぎませんので、過度な期待はしないほうがいいでしょう。また、通常このような外部団体からの「収入」は、他のファイナンシャル・エイドの額を減らすように働くことが多いので、その点でも注意が必要です。

 

ここまで読むと、ファナンシャル・エイドをなるべくたくさん得るためにはFAFSAの申請が必要不可欠ということがお分かりだと思いますが、フェデラルのファイナンシャル・エイドに関しては、グリーンカード保持者にもアメリカ市民と同様に申請する権利が認められていることを付け加えさせいただきます。州や学校ごと、あるいは外部団体の提供するエイドに関しては、それぞれの規定を確認していただくことが必要です。

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2 comments

  1. ”外部団体からの「収入」は、他のファイナンシャル・エイドの額を減らすように働くことが多いので、その点でも注意が必要です。”
    なるほど。例えば、入学許可の手紙と大学スカラシップの手紙が来ても、外部のスカラシップを受けると、FAFSA申し込み後、ファイナンシャルエイドの手紙が来て入学手続きする時に大学のスカラシップ額が後に減らされるのかしら?

    1. ミセスLさん、コメントいただいておりましたのに、お返事が遅れまして申し訳ありません。コメントをいただいていた旨の通知がうまく届いておりませんでした。
      どうなんでしょうね。その年のスカラシップが減らされるかというと、実はわたしには分からないのですが、でも、翌年のタックスリターンやFAFSAにはその旨報告することになりますね。きっと大学やスカラシップの性質にもよるのだと思いますが。

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