投資と投機のちがい ー 投資するのはギャンブルか

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投資と投機はよく似た言葉です。案外、混同して使われてもいます。しかしながらこの二つは、性質的にかなり異なるものであり、違いを理解しておくことは大切なことだと思っています。私は、投資はしますし推奨しますが、投機はほとんどせず人にも特に推奨しません。どちらも納得と覚悟をしてするなら決して悪いものではないですが、よく違いをわからないで投資しているつもりで投機していたりすると痛い目にあうこともあります。

ひとつ思うのは、投資と投機はかなり異なるものですが、どちらもリスクがからむものであり、リスクをとるためのアクションが「ここからここまでは投資」、「ここからここまでは投機」と白黒はっきり区別できるものではなく、おそらくそのリスクの度合いやとりかたで、非常に投資的なもの、かなり投資的なもの、かなり投機的なもの、非常に投機的なもののように、スペクトラムで存在するのではないかということです。違う言い方をすれば、あるアクションには投資の要素と投機の要素が異なる配分で入ってて、あるものは投資の要素が強くて投機の要素は弱い、他のものはその反対というようなイメージでしょうか。以下で投資の要素と投機の要素の違いを考えてみます。

投資と投機の目的

投資も投機も、最初の漢字は「投」。何を投じるのかといえば、通常はお金、そうでなければ金銭的価値のある何かです。なんのために投じるかといえば、投資の場合は、企業やビジネスの成功を期待して、投じたお金が配当金やキャピタルゲインの形で増えて戻ってくることを狙うわけです。企業やビジネスが、財務的にきちんと成り立っているか、商品やサービスの質はどうか、それらが欲され必要とされる市場が存在しているか、将来的に成長しそうか・・・などなど、財務諸表を調べ市場調査などを行い成功しそうであることを吟味して(ファンダメンタル分析をして)、期待できると思ったときにお金を投じるわけです。

このような、ひとつひとつの会社ごとのファンダメンタル分析は非常に大変なので、それならば市場全部に対してお金を投じようというのがインデックスファンドです。その場合は、たとえばUS国内市場のインデックスにお金を投じるならば、US国内の経済が将来長期的には成長していき、そこに含まれる企業全体としての集合としては利益を生み出していくだろうと信じて投じることになります。投資の場合には、この根本的(ファンダメンタルな)成長への期待があるわけです。

一方で投機の場合は、このようなファンダメンタル分析もなければ、企業や市場が成長するだろうという予想も必要ありません。投機の場合は、一瞬でも値上がりしてその時に売って利ザヤを稼げればよいわけで、投機対象が将来的に伸びるか、成長するかということは考えません。単に、値段が上がりそうであればそれに掛けてみるという具合で、お金を投じる対象物がなんであれその実質的価値とか潜在力などはどうでもよく、値動きだけが関心事です。株のような大それたものでなくとも、たとえば道で拾った石ころだって何人かの人が売り買いしたければ、投機の対象になります。デイ・トレード、オプション、先物、ショートポジションなどは一般的に投機的なものです。「クリプト・カレンシーに投資する」というような表現も使われますが、「通貨の成長」というものは通常ないこと(通貨はたんなるツール。企業活動のようなファンダメンタルな活動がありません)、通貨とよばれるもののほとんどのクリプトは通貨として一般的に使うことができないことを考えると、Intrinsic Value(内在的価値)があるものでもなく(石ころと同じ)、単にその値動きだけが注目されている投機対象(少なくとも今のところは)であるといえます。

投資と投機のリスクレベル

投資は、投じた元資とそれに対する利回りが戻ってくることを期待してなされます。戻ってくる利回りは、リスクレベルに応じており、どの程度のリスクをとればどの程度の利回りが返ってくるだろうという予想のもとに行われます。リスクの測り方やそれに伴う期待利回りは、ある程度確からしく予想することができ、投資家はその予想に基づいて、自分のとりたいリスクレベルを決め投資を行います。

一方で、投機はどの程度の利回りが返ってくるか予想をたてることが困難などころか、元資が戻ってくるかどうかさえ期待できないことも多いです。投機は、純粋に値段が上がればもうかる、値段が下がれば損するというだけのもので、値動きは数的に確からしく予想ができず、よって、もしかしたら大当たりで大金持ちになる可能性もありますが、反対にすべてを失う可能性もあります。純粋なギャンブルです。

同じもの、たとえば株に投資するのでも、とるリスクがどんどん上がれば投機的になります。たとえば、ある会社Aを含むインデックスファンドに投資するならば、リスク分散されたプールとして集合的なリスクと利回りがある程度確からしく予想できますが、A社の株に100%投資するような場合、リスクと利回りの確からしさが低下し、投機的な色合いが強くなります。また、その株を買うとき、お金を借りて買う(マージン取引をする)ならば、リスクがより増長されより投機的になります。マージン取引の場合は、株価が上がればそれを売って借りたお金も返し残高は自分の利回りとなりますが、もし株価が下がれば借りたお金が返せないことになります。ギャンブルの要素が強くなるわけです。

一時世間を騒がせたGameStop株、AMC株、Hertz株などは、どれもあまり企業としては成長が見込めない、倒産を免れない企業であった(つまりファンダメンタル的には投資に好ましくない)のに、ソーシャルメディアでの書き込みをもとに買いが始まり、値段が上がりました。これらも投資というよりは、単に値動きだけに焦点を当てる投機的なものでした。

投じる期間

長期的なスパンで行われるのが投資です。企業や国の経済のファンダメンタルな成長に期待してお金を投じるので、その結果が安定的に出るためにはどうしてもある程度の期間が必要です。企業も国も、アップ&ダウンのサイクルがありますから、それらのサイクルを超越するある程度長い期間があるのが、投資には必要なのです。一方で投機は、短期的に勝負します。お金を賭けてすぐに結果が出るのを期待します。

株であってもインデックスファンドであっても、長期的な成長、配当金や値上がりを期待してもつなら投資的ですが、買ってすぐに値上がりして換金して利ザヤをえるやり方をするなら投機的になります。このような投機的な株トレードはパンデミックによるロックダウンで顕著に増えたそうで、RobinhoodなどのAppはもとより、E*tradeやSchwabなどのオンラインツールをつかって、デイトレードをする人が激増したそうです。そしてそこでは、成長が期待できるから買う株だけでなく、上にも書いたようにまったく期待ができそうにないが、単に値上がりを期待して買う株も多く取引されるようになりました。会社の潜在能力ではなく、ソーシャルメディアで誰かが騒ぐので人気がでるMeme株というやつです。

投じる人の姿勢

お金を投じる人の姿勢も違います。投資する人は、企業や国の経済が時間をかけて発展していって、その見返りを受け取るという姿勢ですが、投機する人は、人が成功したら自分も成功したい、みんながやっているから出遅れないようにしたい(FOMO=Fear of Missing Outというのだそうです)、じっくり働いたり投資したりするのでなくて手っ取り早く一発当てたいというのが動機です。

手っ取り早く一発当てたいというのは、だれでもそうなればいいと思ってしかりですね。一発実際に当てた人もいるのだから起こらないわけではありません。確率的には起こることです。ただ確率が低いというだけです。なのでギャンブルなわけですが、ギャンブルだから大きく当たることもあるが大きく損をすることもあるという覚悟がないと、投資したつもりが投機だった・・と気が付いておわることになります。

パンデミックがはじまってから、株トレードに終わらず、多くの個人投資家がオプショントレーディングへと進出しました。2020年には、個人投資家が主だと思われる小規模の株式オプションが前年比70%も増えたそうです。オプションとは、特定の期日または特定期間内に、その対象物を特定の価格で買う(または売る)ことができる権利を買うもので、もともとはリスク・ヘッジ(対象物の値上がりや値下がりのリスクを、オプションを購入することで中和する)のが狙いでしたが、昨今では対象物は所有していないのにオプションだけを取引して、値動きだけからお金を儲けるという投機が増えているわけです。

上にも書いたように、投機はいけないものだ・・といっているわけではありません。投資だろうが、投機だろうが、まつわるリスクをちゃんと覚悟でするならばそれは個人の自由です。うまくいけばそれに越したことはありません。ただ、この二つをちゃんと区別し、自分がしようとしていることが投資的なのか投機的なのか、投機的ならどのくらいリスクがあることなのか、を理解していることが重要だと思います。

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