ETFを知る - ミューチュアルファンドとどう違う?

ETFはExchange Traded Fundsの略で、最近では非常に人気がでてきていますね。最初のETFは1990年につくられたそうですが、今ではミューチュアルファンドに代わる勢いで伸びてきています。昨今では、IRAや529など、今まではミューチュアルファンドがしきっていたエリアにもETFが進出してきています。あなたのIRAでETFを選ぶオプションがあったら、選びますか?従来のミューチュアルファンドとは何が似ていてどう違うのでしょう。今日はそのお話です。

ミューチュアルファンドと似ているところ

ETFはミューチュアルファンドと同じように、さまざまな株や債権などをプールしてファンドとして組んだものです。インデックス・ミューチュアルファンドがあるように、インデックス ETFもあります。Small Cap ミューチュアルファンドがあるようにSmall Cap ETFもあります。また、ITとか不動産など、特殊セグメントに特化したミューチュアルファンドがあるように、特殊セグメントに特化したETFもあります。

Exchange Traded・・の意味

ETFの最初の2文字―Exchange Tradedとは「市場で売買される」という意味です。株と同じように売りたい人が売り、買いたい人が買います。ETFの値段は、株と同じように、市場の供給と需要により一日を通して上がり下がりします。売り買いは一日いつでもできます。ETFの値段はいつも時価。市場の動きとともにリアルタイムに反映される値段です。

これに対しミューチュアルファンドは、市場では売買されません。ファンドを買いたい人はファンド会社(あるいは仲介会社)から買い、売りたいときはファンド会社(あるいは仲介会社)に売ります。ミューチュアルファンドの値段は日中は変動がなく、日中の売り買いは、その日の最後に設定される値段でなされます。朝買う手続きをしても、買値はその日の最後に値段が決まるのを待ってなされます。

税金上の効率性

ETFの方が、ミューチュアルファンドに比較して、支払う税金を削減できるといわれます。

ミューチュアルファンドを売りたい人は、直接ファンドに対して売りますので、ファンド側では売る人に支払う現金を確保するため、ファンド内で持っている株式や債券を市場で売って現金化するという作業が必要になります。このタイミングは必ずしもファンドマネージャーが「売り時」、「買い時」と判断するタイミングではない場合もあり、いたしかたない売り買いです。このような無駄な売り買いの結果として、はからずのキャイタルゲインが発生してしまうということになります。キャピタルゲインはそのまま個々のファンド投資家に配分され、投資家が税金を払うということになります。

一方、ETFは、あくまで売買は売る人と買う人の間で市場で行われるので、ファンド自体が不意のキャピタルゲインをこうむるということはありません。結果として、不意のキャピタルゲインが投資家に分配されるということもありません(実際にETFを売った人だけがキャピタルゲインを得る可能性があるだけです)。このキャピタルゲインは、401(k)や529などのように運用利回りやキャピタルゲインに税遅延措置のあるアカウントの場合には、問題になりませんが、通常の投資アカウントでは投資額によっては大きな差になります。

インデックスファンドならそれほど大きな差はないかも

ここまで書いた後で一つ付け加えますが、ミューチュアルファンドの税金面での非効率性は、広く一般的に普及しているミューチュアルファンドではそれほど大きな問題ではないと思われます。広く普及しているミューチュアルファンドなら、売り手と買い手が常に相当数存在するので、お互い相殺され売り買いはそれほど発生しないからです。

また、インデックス型のミューチュアルファンドなら、そもそもファンド内での売り買いが少ないので、すでにかなり税効率がいいです。ですので、「ミューチュアルファンドはすべて税効率が悪い」ということではありません。

まとめますと、一般的に普及しているインデックスファンドに焦点を当てるなら、ミューチュアルファンドでもすでに十分に税効率はよく、ETFになるとすでによい税効率がさらに若干よくなる・・・というようなイメージで理解いただけるといいかと思います。

低手数料

ETFの魅力のひとつは低手数料です。ミューチュアルファンドの手数料は過去にも問題視される向きがありましたが、高い手数料ですと3%などというものもあります。この手数料は投資家にはよくわかる形で「広報」されないうえ、直接利回りを食うクセモノです。これに比べETFは手数料がずっと低めという傾向があります。ミューチュアルファンドで嫌われるSales Load(アドバイザーを通して買う場合の販売手数料)もなく、また先に書いたようにファンド自体が売り買いをする作業も少ないので運営Expenseも低く抑えられています。

たとえば、Vanguardミューチュアルファンドの手数料平均は0.09%であるのに対し、ETFの手数料は0.05%です。Vanguardのミューチュアルファンドはすでにかなり低手数料ですが、ETFはその上を行って低手数料です。

少ない投資額ではじめられる

ミューチュアルファンドに投資をする場合、ある程度まとまったお金が必要になります。投資額の下限設定は低くて$1,000くらいですが、多くの場合$3,000くらいはないとファンドに投資できないでしょう。反面、ETFは下限設定がありません。結果的に、少ない投資額で気負わず投資を始められるという長所もあります。

ETFの危険性

低手数料に税金面での利点、しかも少ない投資額ではじめられる・・・いいことばかりですね。しかし、ETFにはひとつの大きな危険性があります。ETF自体が危険というよりは、ETFの提供する特典がかえってアダになるとでも申しましょうか・・・ETFのT=Trade(売り買い)があまりに簡単すぎて、かえって墓穴を掘ることになるということです。

Vanguard社を創設したミューチュアルファンドの父呼ばれるJohn Bogleはその著書の中で、このEFTのTradeの簡単さについて注意を呼びかけています。一日の最後に値段が設定され、次の日の最後まで値段が変わらないミューチュアルファンドと違って、常に値が動くETF。それに加えて、経済やビジネスについてどんどん飛び込んでくる情報。今買った方がいい、今売ったほうがいいと思えば、スマホからすぐに取引ができます。職場でも、コミュートの電車の中でも。

そしてこれはまさにMr. Bogleが警告しているMarket Timingと呼ばれるものです。これは値動きに応じ機をみて売り買いを繰り返し投機的な利ざやを稼ごうとするという行為で、Buy & Hold(一度買ったら長く持ち続ける)の長期投資の基本とはまるで180度対極にあるものです。Market Timingは、過去のリサーチで、かえって投資にネガティブな影響を及ぼすという結果が繰り返し発表されています。(Market Timingの危険性についてはこちらの記事をどうぞ)。

反対に、ミューチュアルファンドでは、一日ごとにしか値段が設定されず、売り買いもすぐにはできず、できたとしても401(k)などでは年間の回数制限があったりすることが、ある意味では功を奏するとでもいいましょうか、おのずと長期投資が促進されることになり、Market Timingのわなからは守られることになります。

またMr. BogleはETFの75%は大手機関や組織が持っているため、時には激しい値動きを経験するファンドもあり、それらの機関や組織と肩を並べて個人投資家が市場で売り買いをするというのは、かなり度胸がいるものであることも指摘しています。持っているETFがどんどん値が下がっていくのを目の当たりにし、売るなら今手の中にあるスマホからすぐできる・・となったとき、あなたは踏みとどまれますか?加えて、とある大手機関がそのETFをどっさり売ったというニュースがスマホに届きました・・・、さてどうします?今のうちに売り払えと売りオーダーを出した瞬間、損失は固定され、一年後の値の戻しは経験できないことになります。しかも振り返れば、一番安いときに売ってしまった・・・ということに。

ETFが悪いものだといっているのではありません。ETFはすばらしいツールです。Market Timingが悪いといっているのでもありません。そのリスクを承知で投機をしたいというのであれば、それもその人の決断しだい。ETFに限らず、ものには目的にそった正しい使い方というものがあるはず。自分の目的は何なのかをちゃんと知ったうえで、正しい使い方をすることが大切なのでしょう。もし投資で長期的に増やしていくためにETFを選ぶのであれば、その低コスト、税金上の利点などに焦点を当てるべきで、売り買いのしやすさゆえに投機的な激しい売り買いを繰り返すことがないよう注意した方がいいということでしょう。

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