家計把握―マンスリーキャッシュフローをつくってみる!(2)

ファイナンシャルプラニングをするために大変重要な情報であるマンスリーキャッシュフロー。家計簿をつけていない、特に記録をとっていないという場合に、銀行の口座明細やクレジットカードの明細を駆使しながら、マンスリーキャッシュフローを作成するためのやり方を共有させていただいています。前回は、実際のマンスリーキャッシュフローを作成する前段階として、ざっくりと年間の収支状態チェックをしてみました。今回は、具体的なマンスリーキャッシュフローの作成に入っていきます。

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Smart & Responsibleのプラニングサービスをお使いいただくときにも、必ずマンスリーキャッシュフローを提出いただいていますすが、下のリンクからフォームがダウンロードできます。よかったら、これをお使いいなりご自分のマンスリーキャッシュフローを作ってみてください。

マンスリーキャッシュフロー

 

全体像の把握

ここで自分の家計のお金の流れを図にして把握してみましょう。手書きで構いませんから紙の上に下のようなお金の流れずを書いてみます。

 

給料が出ると、まず給料から直接天引きになる健康保険料、401(k)の積み立て、所得税などが差し引かれ、残りが銀行口座に入金になります。そこから、銀行で自動で引き落とされる費用や積立額が引き落とされ、さらにクレジットカードの請求額は月に一度銀行口座から支払われます。また、ATMで現金を受け取ればこの銀行口座から引き出され、チェックを書けばそれも銀行口座から引き出されることになります。

この図を見ながら、月々の支出を把握し、マンスリーキャッシュフローに記入していきます。

以下はすでに完成したサンプルのマンスリーキャッシュフローです。完成図を先にお見せしますね。クリックすると別タブで開きます。以下、これを見合わせながらお読みください。

 

まずはグロス収入

まずは、マンスリーキャッシュフローの一番上の欄である収入を見てみましょう。給料明細をご用意ください。

収入には2種類あります。まずはGross Income。これは税金やその他給料からいろいろ引かれるまえの、グロスの収入です。年収契約しているような場合は、その契約の年収。自営の方はちょっと難しいですが、ビジネス経費などは差し引いた、しかし個人的な経費は差し引く前の金額です。この年収は、多くの場合私たちにとって紙上の数字であり、そのお金を全額手にする、受け取るということはありません。ただ、「年収はおいくらですか?」と聞かれた場合いは、この数字を答えることになります。

マンスリーキャッシュフローには、このグロスの数字を書き込みます。給与欄には月々のグロスの収入を、ボーナス・コミッションには年間にもらう額を12割してご記入ください。自営の方は、年間グロスの収入を12割するというやり方でいいかと思ます。サンプルのマンスリーキャッシュフローの青いハイライトの部分です。

入ってきたお金のもうひとつは、手取り金額です。この金額が銀行口座に入金されます。よって銀行の明細に載っているのもこの金額です。毎月給料が出る方はこれが年間で12回記載されているはずですし、隔週支給の方なら26回、毎週なら52回記載されているはずです。この手取り額は銀行明細には記載されますが、マンスリーキャッシュフローには記載しません。マンスリーキャッシュフローには、上のグロスの収入と、すべての支出を記載します。

 

給料天引きの支出

給与が銀行に振り込まれる前の段階で、いくつかの支出がすでに発生しています。ご自分で支払わないので、支出という意識が薄いかもしれませんが、それらは確固とした支出ですので、マンスリーキャッシュフローに記載します。

たとえば、会社で入っている健康保険、団体生命保険、所得補償保険の保険料などは給料振り込みの前に引かれています。もちろん連邦所得税、(州税がある州では)州の所得税、ソーシャルセキュリティやメディケアなどの社会保障税も引かれます。その他、Health Savings Accountへの積み立てや、401(k)などリタイヤメントプランへの積み立ても引かれます。これらはすべて給与明細に記載されています。これらもすべて支出として把握し、マンスリーキャッシュフローに書き入れます。サンプルのマンスリーキャッシュフローでは、これらはオレンジ色のハイライト項目です。

税金やリタイヤメントプランへの積み立ても支出?と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、支出とは必ずしも生活費のための消費活動だけをいうのではなく、お金が出ていくことすべてを差します。将来への投資だろうが、家の頭金を貯めるための積み立てだろうが、入ってきたお金が出ていく(消費してなくなるわけではありませんが、チェッキング口座から出ていく)ので支出としてカウントします。

 

銀行自動引き落としの支出

さて、これらの給料天引きの各支出が差し引かれたあとの給料、つまり手取り額が銀行口座に入金されるわけですが、この銀行口座(メインチェッキング口座)から支払うことになるその他の支出を次に見ていきましょう。

まずは、銀行口座から直接引き落とされる支出があります。たとえば、電気料とか保険料などの費用を銀行からの自動振り込み設定にしているような場合です。それから、セービングやその他の預金や投資口座への自動積立を設定している場合は、これらも直接銀行口座から引き落とされます。これらについては、銀行口座の明細に記載があります。月払いにしてあれば毎月、四半期ごと、半年ごと、年間払いなどにしてあれば、それぞれ選択された月の明細に記載があるはずです。四半期ごと、半年ごと、年間払いのものについては、÷3、÷6、÷12をして月割の費用に換算してマンスリーキャッシュフローに書き入れます。

サンプルのマンスリーキャッシュフローでは緑のハイライトで示されています。この家庭の場合は、お子さんのカレッジ資金をためるため529口座で投資していますが、毎月それぞれのお子さんに銀行口座から自動積み立てをしてます。それに加え、月々のレントと電気・ガスなどのユーティリティも銀行から自動支払いになっています。

 

クレジットカードの支出

今度はクレジットカードで支払った支出を書いていきます。銀行口座の明細には、月に一回引き落とされるクレジットカードの引き落とし額しか記載がありません。その詳しい内容は、クレジットカード明細で把握していきます。

さて、ここはちょっと手間がかかります。一番簡単なのは、クレジットカード会社が提供しているAnnual Expense ReportとかSpend Summaryなどと呼ばれているものを利用する方法です。クレジットカード会社が一年分(期間は指定できる場合と、あらかじめ定められた固定の一年の場合とあり)の利用をカテゴリーに自動で分類し、それぞれの費用をまとめてくれています。たとえばこんな感じ。

問題は、カテゴリーがクレジットカードの任意で分類されており、必ずしも自分が分けたい項目ではないことです。たとえば上だと、Merchandiseと大雑把に分けれてるカテゴリーには、食品も衣料も本もまとめられていたりします。さらには、自動分類がゆえに、内容をよく見ていくと、医療費が食費に入っていたりなど誤分類もあります。ある程度マニュアルで分類しなおしたり、さらに分類を細かく分けたりなどが必要ですが、ただ何もないところからするよりは楽かもしれません。

もしスクラッチから自分できちんと分類したいという場合は、ペーパーの明細を前にひとつひとつ項目チェックしていくのもひとつの方法ですが、あまりに大変な場合は、クレジットカードのオンラインサイトで一年分のトランザクションをまとめてExcel表などにダウンロードして、Excelを使って分類していくという方法がよいでしょう。

サンプルのマンスリーキャッシュフローでは紫のハイライト部分がクレジットカードで支払ったものです。これらのうち、保険料やインターネット代などは月々決まった金額かもしれませんが、食費や生活用品などその他の費用は月々まちまちでしょう。その場合は、年間の合計額を12割した数字で入れていきます。あまりに正確にやろうとすると嫌になってくると思いますので、ある程度の誤差は丸め込んだり、細かい分類に困るようなものは「その他」などをつくってそこにまとめてしまってもよいです。ただ、マンスリーキャッシュフローに入れ込んだクレジットカード支出の合計が、クレジットカード明細の1年間の利用合計に(ぴったりでなくてもいいので)だいたい合っているようにします。

 

ATMとチェックの支出

全体像を把握した図を見てみてください。ここまでで、給料天引きの支出、銀行自動引き落としの支出、クレジットカードの支出が把握できました。残るはATMでキャッシングし現金で使った費用と、チェックを書いて支払った費用です。

チェックについては、チェックブックに残っているコピーを見るか、あるいは銀行のオンライン明細でチェック番号をクリックするとチェックの写真が出てくるような機能を使って確認します。チェックで支払う費用というのは限られているかと思うので、把握はクレジットカード支払いほど大変ではない方がほとんどかと思います。

ATMから引き出して現金で支払う部分は、人それぞれですが、やはりそれほど多くない方がほとんどではないでしょうか。コーヒー代だったり、人と食事にいったときの割り勘の食費だったりします。わかる範囲で、食費やその他の項目に入れ込んでもいいですし、ATM引き出しが大した額でないのなら、一年間のATM引き出し額を12割して、マンスリーキャッシュフローにATM費用という項目でまとめてしまっても問題ありません。

サンプルのマンスリーキャッシュフローでは、これらはグレーのハイライトになっています。この家庭では、お子さんの塾の経費は毎月チェックで支払っており、あとは薬代は現金で払います。その他、ATMで引き出していて、でも何に具体的に使ったのかよくわからない額が年間で$360ほどありましたので、それらは12割して$30をATM現金支出という項目にまとめてしまっています。本当なら、何に使ったか追跡できた方がいいですが、ただ月々$30という比較的少額なので、これらは額だけ把握して内容はその他ということで計上するのも大きな問題はないでしょう。

 

すべての収入とすべての支出が転記される

さて、これでマンスリーキャッシュフローのすべての項目が埋まりました。別の言い方をすると、給与明細に掲載されている給与天引きの支出と、銀行口座の明細に記載されているすべての支出(銀行自動引き落としの支出、クレジットカード支払い、ATM現金引き出し、チェックの支出)の全部をマンスリーキャッシュフローに書き写したことになります。

ちなみに、ここに載っていない使い方をした方もいらっしゃるかもしれません。たとえば、デビットカードをお使いでしたら、それは銀行口座明細にデビット支払いとして載っていますから、同様に支出としてキャッシュフローに記入しましょう。電子マネーなどを使っている方がいらっしゃったら、それはクレジットカード明細と同じように電子マネー会社が出す明細を見ることになります。いずれにせよ、最終的には給料が入金される銀行からお金が出て行っている項目がすべて支出としてマンスリーキャッシュフローに認識されていることを確認します。

 

さて、前回、マンスリーキャッシュフローの作成に取り掛かる前に、一年の最初と最後の二時点の銀行残高を比べて下のような収支チェックをしました。

マンスリーキャッシュフロ―が作成された今、収支の細かい内容が把握されたことになります。一番上のマンスリーの収入(グロス収入)は$8,833でした。12倍すると、$105,996になります。

片や、一番下のマンスリーの支出合計は$8,572で、12倍すると$102,861です。

 

さて、これらのふたつの一年分の収入合計と支出合計を先ほどの収支計算式にいれてみます。

そうすると、前に出してあった、年間収支の$3,135の黒字とぴったり合いますね!

さらにダブルチェックすれば、マンスリーキャッシュフローの最後の欄、余剰金(全収入から全支出を引いたもの)$261を12倍すると$3,136になります。$3,135と$1違いますが、これは四捨五入のための誤差であり、合致とみてOK。つまり上の計算でも、マンスリーキャッシュフロー上でもぴったりです。

こうなったら、すべての収支項目が正しくマンスリーキャッシュフローに記載されたということです!おめでとうございます。

もしも、誤差がある場合は、もう一度銀行口座の明細をチェックして、すべてのお金の出し入れが考慮されているか見てみてください。月にして数ドルの誤算なら、まあいいかとあきらめるのもよろしいでしょう。ポイントは、すべてきっちり合わせることではなく、月々のお金の出入りがかなり正確なレベルで把握できていればOKです。

おつかれさまでした!

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