家計管理―バジェットをつくる!

ここまでの2週間で、マンスリーキャッシュフローをつくってみました。家計簿をつけたり、APPなどで支出を逐次管理していない場合でも、給与明細、銀行口座明細、クレジットカード明細があれば、過去にさかのぼってご自分のマンスリーキャッシュフローがつくれます。マンスリーキャッシュフローはファイナンシャルプラニングをきちんとしようと思えば絶対に必要なものですし、もしそうでなくとも、年に一度くらいはつくってみて、家の中のお金の出入りの流れがどうなっているか、月々の収支のバランスはどんなものかを把握してみることをお勧めします。第一回目の記事では、マンスリーキャッシュフローに似たものにバジェットがあります・・というお話をしました。今回はそのバジェットのつくりかた、運営のしかたについて考えてみます。

 

事後報告と事前計画

マンスリーキャッシュフローは事後報告書であるのに対し、バジェットは事前計画書です。月々にいくらいくらお金が入ってきて、そのお金をどのような支出項目にいくら使ったかを事後把握するのがマンスリーキャッシュフローですが、それをもとに、これからやってくる月々に対して、どんなふうにお金を使っていきたいか、いくべきかの計画を立てるのがバジェットです。

事前計画書は、ある程度の事後報告情報があってはじめて有意義なものがつくれます。まず現状把握をしその見直しチェックを行います。その後、必要であれば将来を見通したファイナンシャルプラニングを行います。リタイヤメントや学資のための将来のお金の必要を満たすために、現状の収支に変更すべきとこがないかを吟味し、それを反映させたバジェットをつくり、今後はそれで家計運営していくことになります。

もし前2回で本当にマンスリーキャッシュフローをおつくりになっていれば、お金の収支管理をするために、どんな情報が必要か、どこに記録されているのか、家計の全体的なお金の流れの図はどんなかが、頭に残っていらっしゃるかと思います。これを活用しつつ、なるべく簡単にスマートにバジェット管理を行うためのポイントを考えていきます。

 

お金の流れをクリアにする

バジェット管理の土台は、クリアなお金の流れです。マンスリーキャッシュフローをつくる時に、どこにお金が入って、どこに出ていくかの図を書きました。下のようなものです。ご自分の家計のこの図がぱっと書けること、これが基本になります。

銀行口座がばらばらありあちこちから支払いがされる、クレジットカードも何枚もありあっちを使ったりこっちを使ったりしている・・というような状態だと、お金の流れは複雑になり図が簡単に描けなくなります。口座明細が送られてきても、その明細書がこの図のどこに属するのかすぐに想像ができない・・・全体像のどの部分なのかがすぐに思い浮かべられない・・こんな状態は×です。

まずは、自分にも家族にもわかりやすいお金の流れ、これを実現します。

まず、口座の整理からはじめるとよいでしょう。必ずしも、口座をすぐクローズするということではありません。お金が入り出ていくメインとなる口座を決めて、極力そのメイン口座でお金を出し入れするようにします。使う口座を限定し、また複数ある口座を、利用目的によってどう使い分けるかを考えていきます。

 

デビット、現金、小切手よりクレジットで!

マンスリーキャッシュフローをつくるときに気づかれたかもしれませんが、できるだけ記録の残る形で消費する・・しかも、できるだけひとところに残るようにする・・これが私のようなズボラ派には特に大切です。ATMで引き出して現金で支出したものは、自分でノートをとらない限り誰も記録をとってくれません。チェックを書いて消費したものは、チェックブックを見るか銀行の口座オンラインサイトで詳しく調べていけば何に使ったか調べることはできますが、手間がかかります。しかも現金支出、チェック支出は、クレジットカードのキャッシュバック、ポイントなどのリワードがたまりません。

また、デビットカードの支出は銀行口座明細に記録は残りますが、クレジットカードを持っているのなら、できる限りクレジットカードを優先にすることをお勧めします。できる限り、リワードがつき、また消費者保護の大きいクレジットカード支払いをし(詳しくは下の記事を)、どうしてもしかたがないものだけ、銀行の自動振替での支払い(ユーティリティー会社などはクレジット支払いを受け付けない、あるいは受け付けても手数料をとるところがあります)を使い、それもだめなら小切手、どうしようもない小銭での支払いだけ現金で・・という優先順位にするとよいと思います。

クレジット・カード vs. デビット・カード あなたはどちら派?

ただし、クレジットカードは月々支払い切ること。これが肝心です。クレジットカードは使いようによって、天国と地獄の違いを生みます。クレジットスコアを高く保ち、特典とリワードのよいクレジットカードを使って、生活費のほとんどをクレジットカード支払いにし、月々支払い切るのは天国の使い方。多くの特典が得られ、クレジットスコアがさらに上がり、さらに良い特典につながるというポジティブスパイラルを登れます。

反対に、クレジットカードを使うのはよいが、月々支払い切らないと、二けたの高額利子が発生することになり、月々の収支はマイナスになり、負債が増え、支払いが遅れればクレジットスコアも下がり、不健康な家計に陥いるネガティブスパイラルになってしまいます。もしこの問題がある方は、まずはマンスリーキャッシュフローをつくり、どこが赤字の原因かを見つけ、赤字脱出+クレジット負債を返済するためのバジェットつくる必要があります。

 

メインクレジットカードを決める!

クレジットカードは何枚も持ちすぎず、メインカード1枚、サブカード1から2枚に絞ります。クレジットカードはそれぞれの特典、キャッシュバック、ポイントの付き方が違いますから、利用はそれらを考えたうえで戦略的に使います。たとえば、普段の生活費は〇〇カード、旅行費用やレンタルカー、レストランは△△カードのように利用のルールを決め、月々そのルールにのっとって利用すると、あとあとマンスリーキャッシュフローをつくるような際の支出分類もずっと楽になります。クレジットカード利用にはこれまでたくさんの記事がありますので、併せてごらんください。

クレジットカードの知っておきたい特典たち

賢いクレジットとの付き合い方―成功へのロード・マップ

賢いクレジットカード利用者になる: キャッシュバックの最大化

電気製品やブランド物を買うならば:CitiのPrice Rewindがすごい

消費者としてのポリシー:クレジットカードの場合で考える

 

バジェットを振る

根幹となるいつもつかう銀行・クレジットカードの口座が決まり、どの支出をどの口座で払うかというお金の使い方ルールが決まり、お金の流れが明確になったところで、バジェットをつくります。ここで二つの選択があります。項目ごとにきちんとやるか、どんぶりでいくかです。

ふつうバジェットというのは、マンスリーキャッシュフローにある項目ごとに振っていくのが王道です。たとえば、下では項目別に、左のコラムが過去のキャッシュフロー、右のコラムがこれからのバジェットです。このケースでは、ユーティリティーの使い方を見直しコスト削減し、またグローセリーと外食を見直し費用を下げて、その分をリタイヤメントに多く積み立てるようにしました。ファイナンシャルプラニングは、こんなふうに将来のゴールを立て、それを実現するためには、今のキャッシュフローを変更しどうバジェットを組めばいいかを決めていきます。

オレンジとグリーンのハイライトの項目は、それぞれ給与天引きと銀行から自動引き落とし・振込の項目で、月々ほとんど変更がありません。月々、バジェット内に収まっているかチェックする必要があるのは、紫のクレジットカード支出とATM現金とチェック支払いのものです。先に書いたように、ATM現金支出も極力減らし、チェックもいたしかたないものに限定すれば、ほぼクレジットカード支出だけ管理していればよいことになります。月末や給料日など月に1回決めた日に、クレジットカード明細を開き、項目支出を記録してバジェットがうまく実現されているかを管理します。

もうひとつの方法は、どんぶりバジェット(と私が読んでいるもの)です。どうやるかというと、項目別ではなくて、口座とか支払いタイプ別にバジェットを振ります。下のような感じです。

給与天引きの$3,620と銀行自動振替の$2,500は、前述したとおりほぼ月々一定でウォッチの必要なし。チェックと現金のそれぞれ$200と$50もほぼ利用目的が決まっていますので、いつもと違う使い方をするときのみそれを意識します。たとえば、特別行事に$300のチェックを書いたら、それはマンスリーのバジェットとは違うものですから、それをまず認識します。この特別行事が月々の収支でカバーされるべきものならば、今月はその他の支出、たとえばクレジットカードの支出(外食など)を$300減らしてバランスをとることになります。あるいは、この特別行事は真に特別なものと割り切り、銀行に貯まっている余剰金から捻出するというのも一つの考え方です。特別支出があって困るのではなく、それをどこから捻出するか、どの項目でカバーするかをすぐに想像できること、これがバジェット管理です。

クレジットカードは口座ごとに、毎週残高をチェックしいくらくらい使っているか把握するようにします。携帯電話やインターネット代金などのように月の一定の日にチャージされるものもありますから、それも認識しつつ、月々のバジェット内になるように、利用残高を意識しながら使います。たとえば、上のメインのクレジットカード(月のバジェットが$1,755)で月の2週目で$800くらいの利用残高ならまあそこそこのペース、反対に$1,000を超えていたら、ちょっとスローダウンしないとバジェット内で終わらないな・・と認識します。このやり方で、項目ごとの額にかかわらず、全体(どんぶり)で月々のバジェットに収まるように調整しながら生活していきます。

なお、このひとつめの項目ごとのバジェット管理と、ふたつめのどんぶりバジェット管理は、必ずしもどちらか選ばなければならないというようなものではなく、最初は項目管理で軌道にのったらどんぶりで運用とか、ふだんはどんぶりでやっていて、ちょっとヤバそうな月はきちんと項目ごとに管理・・など臨機応変に使い分けられます。

 

アラート機能を使う

それから、バジェット管理の感覚づくりに役立つのが銀行口座やクレジットカードのアラート機能です。金融機関にもよりますが、下のようないろいろなアラートが設定できます。

クレジットカードに利用額がチャージされたときに、毎回その旨を金額とともにテキストメッセージしてくれるようなアラートは便利です。自分でスワイプしたものであればその確認ができます。カード登録しておいて自動的にチャージされるもの(Netflixとかスポーツジムの代金とか)などもありますが、これらは積極的に「使った!」という意識はないのに毎月確実に支出されている費用です。アラートが来ればそれらを忘れてしまうことなく、本当に必要かどうかの判断チェックにもつながります。ひいては、身に覚えのないチャージもあり、その場合はFraud(詐欺)ではないかの確認もできます。

銀行口座も、$〇以上のチェックがポストされたときにアラート、$△以上のATM出金でアラートというような設定ができます。銀行口座の不正利用に関する消費者保護は、クレジットカード会社のそれより範囲が限定的でもありますから、銀行口座こそアラートで見守る必要があります。加えて、バジェット管理にも上記同様、役に立ちます。

アラートを日々目にすると、家計の消費パターンが体で感じられ、「使い過ぎ」、「まだ余裕あり」・・の感覚がついていきます。この感覚とバジェットがリンクしていき、自然と管理ができるようになったらしめたものです。また、ご夫婦でこの経験を共有し、家計管理の意識統一をするのもとても良いかと思います。Good Luck!

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2 comments

  1. いつも拝見しております。
    既出であれば申し訳ありませんが、夫婦でクレジットカードをそれぞれ2枚ずつバラバラの4種類持っている場合、統合した方が得策でしょうか?一枚ずつ個人名義のカードを持ち、それぞれの家族カードを作り夫婦で2種類計4枚にするか迷っています。

    1. どうでしょうね。これはケースバイケースかと思います。
      一般的には、まとめて家族で2種類とかにしたほうが、管理が簡単なのとポイントなど貯まりやすいかと思いますが、でも、カード利用が明確に分けられるように敢えて別々のカードにしたいということもあるかもしれません。カードによっては、同じカードを持ていても、利用者が記録されて分類できることもあるので、わざわざ別カードにする必要もないかもしれません。家族会員のクレジットスコアも貯まるカードもあれば、本人でないとクレジットスコアが上がらないカードもあると聞いています。

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