A++ Studentじゃなくても STEMキャリアはいかが?

「STEM」と聞くと、MITのキャンパスを闊歩する学生や、白衣を着て研究室で実験していたり、最先端技術の開発なんかをやっている、ヒジョーにスマートな人たちのことを思い浮かべませんか?STEMとはScience、Technology、Engineering、Mathの頭文字で、ま、日本語でいうところの「理系」という感じですが、ここのところの流行り用語ですね。サマーキャンプやイベントなどもSTEMとつければ、人が寄ってくるというようなところがあって、あちこちで見かける用語です。トップクラスの成績でなければ、STEM学部には行けないし、その後もSTEM関係の仕事にはつけない・・かと思いきや、実は大学に行かなくてもつけるSTEM Jobというのが存在し、給料もよく、しかも人手不足だという・・・今日はそんなニュースです。

 

成長するMiddle Skill Job

大学の学位がなくても、ある程度のスキルがあればできる仕事をMiddle Skillというらしいのですが、このMiddle Skillが案外ホットなエリアであり、Middle SkillのなかでもSTEMに携わるMiddle Skill Jobはとくにホットだという・・そいうレポートを読みました。

現代では、4年制大学に行くことが、ひとつの「あるべき道」のようになっていて、中学校から大学受験のためのコース選択を意識し、高校ではAPクラスをたくさんとって、希望の大学への進学に着実に備えるという文化が、ミドルクラス以上の常識になっています。大学は、医者、弁護士、技術者などなど、いわゆるHigh Skill Jobにつくために必要な教育を受ける場ですが、じつは、そこまでの高等教育は必要ない仕事というのも多いのです。

高校卒業後、2年生のコミュニティカレッジでのAssociate Degree、専門学校でのCertification、あるいは職業訓練のトレーニング後の特殊技術のLicense、あるいはMicrosoft やCiscoやAdobeといった企業の提供する技術認定などを取得することで、可能性が開ける職業、これがMiddle Skill Jobというものです。

たとえば、電気技術者、歯科衛生士、Paralegal、看護婦、ソノグラム技術者、その他医療関係技術者などがMiddle Skill Jobにあたります。Middle Skill Jobは、Low Skill(高校卒業まで)、High Skill(大学以上)のスキルレベルに比べ、アメリカ友人で最も占有率が大きく全体の半分弱を占めるそうです。

“The Digital Edge: Middle Skills Workers and Careers” というレポートでは、Burning Glassというサイトに求人ポストされた2,700万件の求人情報を分析したところ、大学学位を必要としない仕事の2/3がDigital Skillsとよばれる、テクノロジースキルを必要とするものだったと報告しています。

Middle Skill Jobのうち82%はDigital Skillを必要とし、その最たるものはスプレッドシートとワードプロセッシング知識であったとのこと。78%のMiddle Skill Jobは、このふたつの知識を最低条件に設定しているとのことでした。また、Digital Skillの必要のないMiddle Skillには、運転手・操縦者などのトランスポーテーション系、建設関係、修理やメンテナンス技術関係などがありました。

そしてこの大きく必要とされているMiddle Skillエリアには、シビアな人手不足が存在し、企業は適切なスキルを身につけた人材を見つけるのに一苦労しているというのです。

 

それで給料は?

求人数も十分あるうえ、Middle Skill Jobは給与面でも展望は明るいようです。ライフタイムでの収入を考えたとき、大学卒業者のそれを上回るMiddle Skill Jobも存在しています。Carnevale, Rose, & Cheah 社のリサーチによると、2年生カレッジ卒業のSTEM関係Middle Skillワーカーは、大学でSTEM以外を勉強した人に比べて、ライフタイム収入が大きいと予想されるとしています。たとえば、飛行機整備士のライフタイム収入が$2.3ミリオン、電気技術者は$2.1ミリオンであるのに対し、教師は$1.8ミリオン、ライター/エディターは$2.0ミリオンとしています。

 

O*Net Online

ここでO*Net Onlineというサイトをご紹介します。U.S. Department of Labor/Employment and Training Administration (USDOL/ETA) の管理下で運営されているサイトで、アメリカの職業関連のデータが整理されています。

タブからMedium Preparation Neededという選択肢を選んでサーチすると、ここでいっているMiddle Skill Jobがずら~っつと出てきます。これから特に展望の明るい仕事には太陽マークがついています。

リストは長く、さまざまな仕事がありますが、それぞれの職業をクリックすると、それがどのような仕事なのか、どのような職場で働くのか、どのようなスキルと知識が必要なのか、どういう適正が必要なのか、将来の展望はどうかなど様々な情報とともに、その職業につくために必要な教育をどこで受けられるかという学校サーチまでできてしまうという優れたサイトです。

書き加えますが、Middle Skillだけでなく、High SkillやLow Skillの仕事もサーチできますので、将来の進学・キャリア研究のため、ぜひお役立てください。

 

今という時代

大学で提供されている教育と、企業が卒業生/新入社員に求めるスキルの間に大きな乖離があるといわれています。大学は職業訓練校ではありませんから、それは当然ともいえることかもしれません。実際、大学の一般教養というのは、とくにどのエリアに進むに関わらず、人生で知っておかなけらばならない土台的な知識を勉強するものですし、医者や弁護士になるのなら、高校までの教育に加え、その後の専門知識習得のために必要となるさらなる基礎知識を固めねばなりません。しかし、「大学を卒業して、就職し、生計を立てていきたい」というのが基本的な目標である場合、必ずしも大学を卒業したからといって就職する準備ができていないという、厳しい現状があります。

また、テクノロジーの進歩は、ここで繰り返す必要もありませんが、目覚ましいスピードで進んでおり、昨年学んだ技術は、年が明ければもう古い・・という状態なのに、大学の授業内容はそのようなスピードでは変わりません。大学の授業は、基本的なコア部分にフォーカズがあり、年々変化していくアプリケーション層のものにはフォーカスしていないということもあります。

ひと昔前であれば、大学を卒業した新入社員に対し、企業が仕事に必要な具体的スキルを手厚く訓練する教育制度がさかんでしたが、スピードの速いアウトソース時代の今、企業は「スキルをすでに身につけた人材」を必要としており、そこに根強いギャップが存在するようです。

結局、大学を卒業したものの、自分のスキルが企業の必要にうまくマッチせず、結局、コミュニティカレッジ、大学のExtensionプログラムや専門技術を教えてくれる学校に自ら戻り、勉強をしなおしてから就職するというケースも増えています。

極論になりますが、大学に行って大きなStudent Loanを抱えたが、仕事になかなかつけなかったり、給料が思うように得られないという可能性が見えているなら、きちんと生計がたつ技術を身につけることを目的に、最初から2年生の学校に行って、Student Loanなしに低収入が得られる仕事に就くという方が理に適う選択である場合もあることでしょう。

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2 comments

  1. 本件、大変参考になりました。私の妻も4年生の大学を卒業しましたが、職に就けずコミュニティーカレッジにもどり専門分野を学ぶ事になりました。4年で学士を卒業できる確率が50%と考えてさらにHIGHスキルの仕事に就職できる確率を考えると、コミカレに行ってミドルスキルの仕事に付ける確率の方が高く感じました。さらに学費を考えますと4年の大学を卒業してローンの返済のストレスを抱えるよりも、コミカレや専門学校でローンなしで卒業した時の解放感が違うと思いました。ようするに狭きの門のHIGHスキルの仕事につく需要が供給を上まっている、その仕事を就くため、更に大学でその上の学位や他の分野に時間、お金を使う人までいる。なにかラットレースになっていると思いました。有難うございました。

    1. ラットレースですね、本当に。みんながやっていることが自分にもベストとは限りませんし、みんながやっていることが正しいとも限りません。ふと立ち止まって考えてみることって大切ですよね。

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