贈与税と相続税について

Last Updated on 2022年9月6日 by admin

アメリカでは人に贈与をしたとき、贈与税がかかる可能性があります。またご本人が亡くなると、ご本人の遺産に相続税がかかる可能性があります。これらはいつもいつも課税があるとは限りません。控除の額があるからです。また、これらはお互いに同じくくりで累積計算されます。今日は、贈与税と相続税をさらっとみてみます。

日本とアメリカは反対

人から人に贈与があったとき、贈与税がかかる可能性があるわけですが、納税や報告義務は日本では贈与を受けた人にあり、アメリカでは贈与をする人にあります。父から息子にお金をギフトした場合、日本では息子に納税・報告があり、アメリカでは父親にあります。これがまず一つのポイントです。

また、相続税も同じです。納税や報告義務は日本では相続をした(遺産をもらった)人にあり、アメリカでは亡くなった(遺産を残した)人にあります。アメリカでは、この意味で正式には相続税ではなく遺産税と言います(以下では、敢えて相続税と呼びます)。

この記事はアメリカの贈与税と相続税についてです。

ふたつトータルでの基礎控除額

上で見たように、贈与税は生前贈与にかかるもの、相続税は死亡して遺産相続が発生したときにかかるものであり、種類の異なるものです。ただ、死亡前か死亡後かのタイミングの差こそあれ、誰からから誰かに資産が移譲されたという意味では、根本的に同じです。よって、アメリカではこの二つを同じくくりで数えます。そしてこの二つのくくりに対して、ひとつの生涯基礎控除額(lifetime gift and estate tax exemptionと呼ばれる)が設定されており、二つのトータルがこの基礎控除額を超えない限り、贈与税も相続税も発生しません。

アメリカ国籍の人及びグリーンカードホルダーの基礎控除額は$12.06ミリオン/一人(2022年)です。なお、ここではアメリカに住んでいる米居住者を念頭に置いています。

年々の贈与の額は累積で記録されていき、最終的にはその人(贈与した人)が亡くなった時に遺産(エステート)とトータルされます。贈与額と遺産相続額のトータルが、上の基礎控除額より小さければ、課税はありません。もし大きければ、その部分には額に応じて18~40%の税金がかかります。もちろん、死亡前に贈与の累積額だけで、基礎控除を超えたら、その時点で課税がされます。

基礎控除額については、アメリカ国籍の人とグリーンカードホルダーは同じ扱いです(米居住者を前提)。どちらのステイタスでも、遺産の価値が控除額以内であれば、相続税は課されません。遺産価値がそれを上回る場合にのみ、両者で課税に違いがあります。

かなり大きな贈与/相続でないと、今のところは贈与税も相続税も納めなくてよいということを意味しています。一部のお金持ちは、考慮しなくてはならないこともあるでしょうが、一般的な人はおそらく贈与税も相続税も気にする必要はないわけです。ただ、これは連邦レベルのことであって、州によっては州の贈与あるいは相続税が設定されているところがあります。それらは、ハワイ、イリノイ、メイン、マサチューセッツ、メリーランド、ミネソタ、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、ワシントン、アイオワ、ケンタッキー、ネブラスカ、ペンシルバニア、メリーランド、ニュージャージーです。これらの州では、連邦レベルより低い基礎控除額が設定されていることもあり、連邦では納税義務がなくとも、州では納税義務があるケースもありますので確認が必要です。

以下は話を戻して連邦レベルのことを書きます。

贈与税については他の形の控除あり

さて、贈与税と相続税でまとめての基礎控除額が設定されているのですが、贈与税については他の形での控除もあります。

ひとつは、年間贈与税除外額(Annual gift tax exclusionと呼ばれる)です。これは、年間$16,000までの贈与に関しては全く課税対象から外れ、かつタックスリターン時に報告の義務もないというものです。これは、ある人からある人へ一人につきの除外額なので、父親が息子Aに$16,000、同じ父親が娘Bに$16,000、同じ父親が孫Cに$16,000を贈与して、すべて除外対象とみなされることができます。さらに、母親からそれぞれに$16,000ずつも除外対象となるので、夫婦であれば、一人の贈与対象者に対して$32,000までが課税なし報告なしで贈与できます(数字は2022年現在)。

この除外額を超えた贈与については、すぐに課税が始まるかというとそんなことはありません。除外額を超えた贈与については、タックスリターン時に報告の義務が発生します(IRS Form 709)が、その額は年々累積されていって、前述のとおりトータルが生涯基礎控除額を超えて初めて課税がはじまります。よって、基礎控除額に達する前は、いくら贈与をしても(報告の義務さえあれ)贈与税はかかりません。

また、教育費と医療費に関しては、本人に代わって直接大学なり病院なりの請求元へ支払いをした場合は、贈与税の対象とならないというルールもあります。教育費に関しては、primary、secondary、preparatory schools、 high schools 、colleges &universities が対象となります。nurseryやpreschoolなどはグレーゾーンのようです。除外対象となるためには、あくまで直接支払うことが必要です。

ということで、アメリカにおいては、贈与に関してはいくつかの除外枠があり、そのうえ贈与と相続の生涯基礎控除額も$12.06ミリオン/一人(2022年)と高額なため、かなりの資産がある方でないかぎり課税を恐れる必要はないかと思います(ただし、各州の税金はあるかもしれないのでチェック用)。

注意

しかしこの$12.06ミリオンという数字は実は期限付きの設定であり、今のところ2025年まで有効なもの(インフレ調整はあり)です。新たに延長がない限り、2025年以降は以前の低い設定($5.49ミリオン程度)に下がる可能性もあり、資産がそれなりに多い方は、贈与・相続についてあらかじめのプランが肝要です。

贈与、相続は、アメリカでの滞在ステータス、居住地、資産のある場所など、いろいろな要素が絡んできますので、上の情報はあくまで参考にとどめてくださり、個々のケースについては専門家の意見を仰いだくださいますようお願いいたします。

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3 comments

  1. ちょうど知りたいと思っていたトピックなので大変ためになります。ありがとうございます。専門家に相談とありますが、日米をまたいでの生前贈与に関して聞きたい場合(日本にいる親の財産を死ぬ前にアメリカに居る子に贈与する)、どこに相談するのがベストでしょうか?アメリカの税理士と日本の税理士を別々に、又は国際税理士(?)のような方がいらっしゃるのでしょうか?

    1. 日米両国でライセンスを持っている国際税理士みたいな方もいらっしゃるのかもしれませんが、私が存じ上げる範囲ではどちらかをベースに活動されている方がほとんどです。
      シカゴのCDHという会計事務所のYoutubeチャネルを添付します。こちらはアメリカの会計事務所ですが、日米間のことをよく研究されているように思います。
      https://www.youtube.com/channel/UCZUlUkPbDrwVrh9d5Ex2_iA

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