スモールビジネスの401(k)

スモールビジネスで401(k)を提供するにはいろいろなハードルがあります。401(k)は準拠しなければならない法律やそれを記録する書類提出など、事務的労力とコストが高く、規模の小さいビジネスにとっては導入が難しいことがほとんどでした。そもそもスモールビジネスではリタイヤメントプランがないところもあり、またリタイヤメントプラン導入を考える場合には、SEP IRAやSIMPLE IRAなど事務的コストが低いものを優先させるケースが多かったものです。ところが昨今ではロボアドバイザーなどにもみられるように、投資サービスのデジタル化が進み、ローコスト401(k)を提供するオンラインサービスが登場しつつあります。

401(k)があるかないかは、優秀な社員のリテンションに大きく影響します。Vanguardをはじめとする低手数料インデックスファンドやETFなどが提供され、使い勝手の良い401(k)がオファーされていることは、スモールビジネスオーナー自体のメリットにもなる上、社員の福利厚生に大きなプラスでもあります。スモールビジネス向けの401(k)サービスプロバイダには以下のようなところがあります。

Bettermentはそもそも個人投資家向けロボアドバイザーですが、あとの会社はスモールビジネスをターゲットとした401(k)提供を専門にしています(プロバイダによっては、SEP IRAなどその他のプランを提供しているところもあります)。


低コスト・シンプルなGuideline.com

Smart&Responsibleはすべてのプロバイダを研究しているわけではありません。今回はこのうちのGuideline.comに焦点を絞ってご紹介します。なぜ、Guideline.comを選んだかというと、まずは提供されているファンドのほとんどがVanguardの低手数料・良質ファンドであるということ。大口投資用ディスカウントが効いたAdmiralシェアでの提供で、手数料平均(上図のAverage Fund Expense Ratio)は0.07%です。大企業の401(K)でスケール的なディスカウントが効いているとこのレベルの手数料はよく見ますが、スモールビジネスで従業員が少ないと手数料が非常に高いケースが多いです。そんな中、Guideline.comのこの低手数料は称賛に足ります。ファンド数は40程度(上図のInvestment Options)で他と比べると見劣りするように見えますが、最もよく使われる基本的重要ファンドがすべて含まれていますからこの40で十分だと思います。

ファンドの手数料が低いだけでなく、アドバイザリー費用(上図のAdvisory Fee)もゼロというすばらしさです。アドバイザリー費用とは、ポートフォリオを組んだりそれを維持したりのためのアドバイザーに対する(多くの場合人ではなくアルゴリズムがやりますが)手数料で毎年かかります。下に説明しますが、Guideline.comにはあらかじめ設定されたポートフォリオがあり、その中から自分い合ったポートフォリオをを選ぶだけで投資が始まるので、年々アドバイザリー費用を徴収しなくてよいしくみです。

以上、ファンド費用とアドバイザリー費用は、プランに積み立てをする参加者(社員)が支払うもの(上図のEmployee Pricing)ですが、一方で401(k)を提供する雇用主・スモールビジネスが支払う費用(上図のEmployer Pricing)もあります。401(k)のルール準拠を確認(コンプライアンス)したり、記録保持・必要書類の作成・提出を引き受けてもらうことに対する費用です。

Guideline.comには、3つのプランが設定されており、一番安いものはベース費用$49/月(上図では$39となっているが古い情報です)+$8/従業員ひとり・月 です。その次が(上図にはありません) ベース費用$79/月、一番高いのが(上図にはありません)ベース費用$129/月です。従業員ひとり・月あたりの$8はどのプランでも変わりません。月々のベース費用の差は、401(k)のカスタマイズとサポートの手厚さの差です。もっとも簡単にベーシックに導入できるものから、EmployerマッチやVestingスケジュールをカスタマイズしたり、手厚いサポートを得たいなら、より高いプランを選ぶことになります(上図でCustom Eligibility Requirements、Custom Profit Sharing Calculations、Vesting Schedulesの項目に、Guideline.comではチェックマークがありませんが、より上のプランを選べば可能です)。

ターゲットデイトファンドはありません

Guideline.comは残念ながら、最近の401(k)で多用されているターゲットデイトファンドの提供をしていません。ただ、下の6つの異なるリスクレベルでのポートフォリオを提供しています。

上の数字の組み合わせは、株式/債券の比率を表しています。一番左の45/55は株式45%、債券55%で最も保守的、一番右の95/5は株式95%、債券5%で最もアグレッシブなものです。この比率さえ選べば、提供している約40のファンドを自動で組み合わせ、世界分散ポートフォリオを作ってくれます。また、リバランス(それぞれのファンドの投資パフォーマンスが異なるために、当初の設定比率からずれたのを、定期的にもとのターゲット比率に戻す)は自動でおこなってくれます。

たとえば、85/15のポートフォリオの内訳は以下のとおりです。ファンドは前述のとおりVanguardのものがほとんどで、Vanguardのターゲットデイトファンドと比較するならば、ターゲットデイトより25年前時点(2021年で考えるなら、ターゲットデイトファンド2045)の内訳とほぼ似たものとなっています。つまり、投資を始めるその時点においては、各リスクレベルにおいてVanguardのターゲットデイトファンドと似たようなファンド構成になっているということです。

ただし、ターゲットデイトファンドではないため、その後の経年によるリスク調整(株式比率を次第に下げ、債券比率を上げる)が自動ではされません。最初の比率がずっとキープされます。よって、リスク調整は自分でする必要があります。おおまかな目安としては、20代は95/5、30代は85/15、40代は75/25、50代は65/35、60代は55/45、リタイヤメント後は45/55という形で変更するとよいかと思います。

なお、今回はGuideline.comをご紹介しましたが、Guideline.comの中のどのプランがいいか、あるいはGuideline.comでなくて他のプロバイダがいいかは、雇用主としてどの程度プランをカスタマイズしたいかと、従業員の数によります。最もシンプルに401(k)を導入したい10人程度のスモールビジネスなら、おそらくGuideline.comの最も安いプランが理にかないますが、規模が大きくなったりカスタマイズしたい要件が多くなるなら、質的にもコスト的にも吟味が必要です。

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