生命保険で知らねばならない10のおきて-後編 

Last Updated on 2014年8月1日 by admin

納得のいく生命保険を購入するためにはどうしたらいいでしょう。生命保険を考えるうえで、知っておきたい10つのこと、前回の前半の5つに続き、今回は後半の5つです。

6.保険が保険でなくならないために

万が一のときの保障は保険でなければできません。家計の支え手が時期尚早に死亡するようなことがあれば、貯蓄や投資の残高ではまかなえないレベルの保障額が必要だからです。

ところが、保険と貯蓄・投資とを混同すると、保険が保険でなくなる可能性もあります。万が一のときに、必要な保障が得られないという危険性です。キャッシュ・バリューが貯まる保険ポリシーでは、その一部を引き出したり、あるいはローンを組んでお金を借り出すことも可能です。これは便利なことかもしれませんが、場合によっては死亡保障金を減らすことにもなりかねません。

Universal Lifeでは、たまったキャッシュ・バリューを使って保険料の支払いに当てることができるという便利さがあります。しかし、保険会社の運用成績が悪化しキャッシュ・バリューが伸びなくなったり、保険料支払いの管理を怠っていると、キャッシュ・バリューから必要な保険料が払われなくなる状態になり、結果的に保険が無効になってしまう危険性もあります。

そもそも、必要な死亡保障のために加入した生命保険であったのに、本来の目的が果たされない結果になるということは絶対避けねばなりません。そう考えると、生命保険の本来の目的をしっかり果たして揺るがず、かつシンプルで把握しやすいTerm Lifeは利用価値が高いでしょう。

7.実はとても高くつくかも・・・

まずは、先ほどの保険エージェントへのコミッション。これはミューチュアル・ファンドのセールス・ロードと同じで、元手を直接的に減らします。保険会社もビジネスですから、質の高い保険を提供して、利益を上げるのは当然のことです。しかしながら、貯蓄・投資と一緒になったWhole LifeやVariable Lifeを買うために、わざわざ高いコミッションを払うのはばからしいような気がします。コミッションは自分のポケットからエージェントに支払うわけではないので意識しないことが多いのですが、よく考えてみればそれは保険料に上乗せされた形で含まれているわけです。また上でも書いたように、コミッションに加え、その後の貯蓄・投資の維持のために徴収される手数料もばかになりません。そう考えると、保険料がずっと安いTerm Lifeを買い、浮いた保険料は別に運用したほうがベターかもしれません。

コミッションや利回りからの手数料以外にも、Surrender Chargeといって一定期間を過ぎる前に保険ポリシーをキャンセルするとチャージされる大きなペナルティもあります。上で説明したとおり、保険エージェントへのコミッションは一年目の保険料からごっそり支払われます。つまり、最初の一年目は保険会社は完全にマイナスで保険を提供しているわけです。これはその後、長い間をかけて月々の保険料からじっくりしっかり回収していくわけですが、もし2年で解約されてはその予定が完全に狂います。この開いた穴を埋めるために、大きなSurrender Chargeを課すわけです。これは、2年契約の携帯電話のキャンセル料と似たものがあります。安くiPhoneを売っておいて、その後の2年契約の月額利用料でじっくり利益を回収する。もし時期尚早にキャンセルするなら、ごっそりキャンセル料を徴収するというものです。

保険会社によって違いますが、Chargeが課される期間(キャンセルすると)は、6、7年が平均的のようですが、場合によっては15年にも及ぶことがあり、一年目は15%ものSurrender Charge(以降1%ずつ下がっていく)が課されることもあります。よくわからないまま契約し、やっぱりキャンセルする・・・は非常に高くつきます。

8.生命保険は一生必要ではない?

生命保険を、「残された家族の生活維持」という生命保険の本来の目的に使うのであれば、

  • 残された家族の生活費
  • カレッジ費用などの学費
  • 負債の返済
  • 葬儀やエステート処理のファイナル費用

などをカバーするために必要な額が、生命保険で必要な死亡保障となります。しかしながら、この額はずっと一定ではありません。

  • 残された家族の生活費: 子どもがひとりふたりと生まれるにしたがって増えていき、ひとりふたりと巣立ち自立していくにつれて少なくなっていく。
  • カレッジ費用: 子どもがひとりふたりとカレッジに入ると増えて息、ひとりふたりとカレッジを卒業するにつれ少なくなっていく。
  • 負債の返済 : 家や車を購入しローンを組むと増えて、年ごとにローンが返済されるにつれて少なくなっていく。

上の三要素はどれも、子どもの誕生、入学、家や車の購入とともに増え、その後時の経過とともにだんだんと少なくなっていきます。最後に残るのは、葬儀やエステート処理のファイナル費用だけということになります。

つまり、生命保険のニーズは人の一生にあってテンポラリであるということです。このテンポラリなニーズを満たすために、Whole/Universal/Variable Lifeなどのパーマネントな終身保険を買う必要が本当にあるのかは、よく吟味せねばならないことです。

子どもが自立できるとは限らないので、親の死後も生活が維持できるようお金を残す必要がある場合や、不動産投資などを持っていて相続時に相続税がかかるためそれをカバーするべく死亡保障が欲しいなどの特定の場合など終身保険を買うのが好ましいケースはありえます。しかし、それは一部の特定のニーズが存在する場合だけであり、広く一般的な人にはあてはまらないかもしれません。

9. ニーズが発生したらすぐ買う

「生命保険は、保険料が安い若いうちに買ったほうがいい」というフレーズはよく聞きます。たしかにそうです。下は、Marsh社の10 Year Level Term Lifeの保険料をプロットしたものです。40歳くらいまでは比較的横ばい、その後40代、50代と保険料の上昇率は大きくなり、60歳を超えると加速度的に上がっていきます。

Level Termの場合は、早いうちに契約すれば、それだけ低い保険料にロックインすることができます。

しかしながら、生命保険は、家計の支え手が時期尚早に死亡した場合の、残された家族の生活維持のためです。この意味で、若いシングルであれば生命保険のニーズは低いでしょう。子どもにかける生命保険も必要でないかもしれません。あくまでケース・バイ・ケースですが、基本はニーズがなければ買わないこと。ニーズがないのに、若いうちに入ったほうがいいという理由だけで購入するのは無駄です。ただし、結婚したり子どもができたりで、ニーズが発生したら、先延ばしにせずすぐ買うことです。

10. いったん契約したら放りっぱなしはダメ

繰り返しになりますが、多くの場合、生命保険のニーズはテンポラリです。人生のフェーズによって、必要な死亡保障の大きさも上下します。生命保険はいったん入ったら放りっぱなしというのはいけません。ライフ・イベントに応じて、適宜見直しをかけることが必要です。生命保険は、入りすぎもダメ、足りないのもダメ。必要なニーズはしっかりカバーし、不要な無駄は省く・・・これがポイント。見直しが必要になるようなライフ・イベントとは・・・

  • 結婚した、離婚した、配偶者が死亡した
  • 子どもが生まれた、養子縁組した
  • 子どもが大学に入学した
  • 子どもが自立した
  • 家を購入した
  • リタイヤメントが近づいている
  • 扶養家族が大変な病気になった・障害を負った
  • 転職した
  • 配偶者の収入が大きく変化した
  • ビジネスをスタートした
  • 親の面倒を看るようになった

上記のうちどれでもなくても、3から5年に一度は、ファイナンシャル・プラニングの一部として生命保険を見直しましょう。

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4 comments

  1. リクエストなんですが(^^;、相続税(遺産税)を取り上げて頂けませんか。JJさんはアメリカのcitizenではないかと察します。縁起でもないですが、万一お二人共事故死とかするとお子様たちへの相続税はどうなりますか?non-citizen(居住・非居住に関係なく)の親からの相続は6万ドル以上に対し35%もかかるそうです。

    夫婦間はJoint口座なら片方が死んでも相続にはならないと心配してません(間違ってます?)。でも私のほうが残った場合(その可能性大)、米国籍の息子への相続はどうするのがいいんでしょう?

    1. でへへ、cachacaさん、そうなんです、いつか取り上げねばと思いつつ、なんかあんまり得意でないので避けていました。でもいつかはやらないと、、と思っておりました。。。。私はcitizenではなくGCです。今頭にある記憶では、citizenの配偶者への相続は税金ゼロ、non-zitizenの配偶者やcitizen/non-citizenの子どもへの相続は$5,250,000(2013)までなら控除され、相続税はかからないはずです。ただ、これはfederalの話で、stateのほうは州それぞれですが。。Joint口座とかJointオーナーシップの不動産、Beneficiaryが登録されている口座や生命保険などだとprobateを通さないで相続されるという利点がありますが、probateと相続税は別物ですので、もし総合のエステート資産が$5,250,000(2013)以上あるなら、やはり相続税の対象となると理解しています。。。そうですね、この件、できる限りで取り上げてみます。

  2. 先日ある生命保険のセールスマンと話をする機会がありました。元々生命保険は早く入らなければ、と思っていたのですが、説明がTerm / Whole / Annuity と続き、説明を聞いているだけではTermよりはWhole、しかも今はAnnuityも魅力的ですよと言った内容でした。また、お金持ちは引き出し時のTax 控除を利用して、生命保険は何個も持っているんですよ、日本の生命保険や年金よりもずっと商品がいいんですよ、との事。内容自体は非常に面白かったものの、自分はMiddle Classなのと少々話がうま過ぎたので、こちらのサイトで再確認させていただきました。有難うございます。

    でも、友達はまだ20代なのにWholeに入ってしまいました。彼女に取って後々後悔することが内容祈るのみです。

    また、私自身も早くTermに入らねばと思っています。生命保険を比較出来る良いサイトがあれば教えていただければ幸いです。

    1. 経験談ありがとうございます。生命保険は場合によってはうまくニーズにはまるとよいこともあります。ただ多くの場合はTermでこと足りる場合が多いように思います。Termの比較ですが、Life Insurance Comparisonなどどのキーワードでサーチしてみてください。特定のサイトを推奨することはしておりませんで。。 

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