アニュイティを解約したい、他に移したい(1)

「薦められるままアニュイティを契約したが、どうもニーズに合わないので解約して、他の投資にまわしたいのですが」というご要望をお聞きすることがあります。残念ながらアニュイティの場合、他の金融機関に移すということは、普通の(課税対象の)投資口座やIRAなどのリタイヤメント口座の変更に比べると、なかなか簡単にはいきません。どのような対処法があるかを見ていきましょう。

 

移したい理由

アニュイティは金融商品の中でももっとも手数料の高い商品の王様です。同時に、もっとも販売コミッションが高い商品の王様でもあり、“Annuity is not bought, but sold (アニュイティは、顧客のニーズをベースに購入されるのではなく、販売コミションのために押し売られる・・というような厭味)といわれるところでもあります。ぱっと見るとよくわかりませんが、fine printsをよく読みこむと、その手数料の高さは吐き気をもよおすようなものも多くありません(どのアニュイティも高手数料かというと、そうではありません。良質なアニュイティも存在します)。

とにかく手数料の高いアニュイティからインデックスファンドなど低手数料の投資に変更すると、平均で2%~3.75%(年)の手数料が0.5%~1%(年)の手数料に下がるというデータもあります。

 

アニュイティは保険商品である

アニュイティの中でもVariable Annuity(本人が投資ファンドを選んで投資することができるもの)の場合は、IRAなどの投資と同じように理解して、「将来のため、老後のため」と思い契約されるかたも多いでしょう。しかしながら、アニュイティは投資商品である前に保険商品であり、それゆえ契約上で他の投資とはちょっと異なる要素があり、それが解約・変更の障害になります。

 

サレンダーチャージがあるなら・・・

アニュイティを動かしたり、解約したりする場合の、もっとも大きな障害はサレンダーチャージ(Surrender Charge)と呼ばれるものです。これは、アニュイティを契約・開始してから、ある一定期間の間に解約した場合には、残高に対しての何パーセントかが解約手数料として徴収されるというものです。よくあるのは7%から18%のレベルで始まり、その後一年経るごとに1%とか2%ずつ減少していき、7年から18年を減るとサレンダーチャージがなくなるというものです。ただし、これは保険商品ごと契約ごとによってまちまちですがら、ひどい場合は当初のサレンダーチャージは25%、20年間しないとなくならないというような悪質なものもあるようです。

サレンダーチャージについては、きちんと説明されないまま契約してしまい、解約しようとしても免れることができないというのが社会問題になり、たくさんの訴訟も起こされています。

何年アニュイティを持っているかで現在かかるサレンダーチャージが決まりますので、契約書を読み、自分のケースを確認します。もし、あまりに高いサレンダーチャージがかかるのであれば、もうその時点で、アニュイティの解約や他会社への変更はあきらめ、少なくともサレンダーチャージがなくなる・減るまで持ち続けるというのがベストの選択になるでしょう。

 

どういう形態で持っているか・・・

もしラッキーなことにサレンダーチャージを払わなくても大丈夫だ(あるいはサレンダーチャージが少ないので払ってもいい)という場合には、次のステップへ進みます。サレンダーチャージ以外に、アニュイティの解約・変更の際に発生しうるコストは下記のふたつがあります。

1. インカムタックス: アニュイティに入れた投資元本は課税後所得ですので課税が終わっていますが、それを元に運用されて生じた利回りは、解約・引き出しと同時にインカムタックスの課税対象となります。ただし、利回りがネガティブ、つまり損失があった場合には、インカムタックスを払う必要はなく、この損失はインカムタックスの対象となる他の収入を減らすことができます。

2. 10%ペナルティ: 59歳半になる前に引き出した場合は、上記の運用利回りに10%のペナルティがかかります。

 

このふたつのコストを回避できる方法を模索してみましょう。

アニュイティがIRAとか、リタイヤメント・プログラムの中にある場合は、上の1と2は課せられることなく、他の投資に変更することができます。

 

「中にある」ってどういう意味?

IRAとかリタイヤメント・プログラムは器です。それぞれIRAや401(k)などについて定めた法律があり、その法律のルールの下に運営されている器ととらえてください。その器の中に、私たちが選ぶ投資媒体が入ります。個々の株や債権はもとより、ミューチュアル・ファンドなどです。

アニュイティはそれ自体が投資媒体ではなく、アニュイティもまた中サイズの器といえるかもしれませんIRAとか401(k)という大きな器の中に入れ、アニュイティという中サイズの器を入れ、またその中にさまざまな投資媒体を入れていきます。アニュイティがIRAやリタイヤメント・プログラムの中にあるとは、アニュイティとその中に入っている投資媒体とが、大きな器のルールで司られているということです。

ひとつずつ見ていきましょう。

 

アニュイティがIRAの中にある場合

IRAのプログラムの中でアニュイティを持っている場合は、同じIRAのプログラムの中で他のアニュイティや投資ファンドに変更することができ、インカムタックスも10%ペナルティもかかりません。IRA-アニュイティ からIRA-他の投資 への変更ということになります。こちらの記事を参考にしてください。

 

アニュイティが雇用主が提供するリタイヤメント・プログラムの中にある場合

401(k)や403(b)などの企業や団体が提供するリタイヤメント・プログラムの中で、アニュイティを持っている場合は、プログラムの中で提供されている他の投資に選択を変更することができる場合もあるでしょう(残念ながらアニュイティしか選択できない場合もあります)。

また、いったん離職すれば、ほとんどの場合、プログラム内の資金をロールオーバーIRAにロールオーバーして、新しく投資を始めることができます。これらの場合は、インカムタックスも10%ペナルティもかかりません。こちらの記事を参考にしてください。

 

次回は、アニュイティがこれらの大きな器の中にない場合について見ていきます。

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