パンデミックの期間に大きく値を上げた不動産市場。大きな値上がりと上昇する金利とが相まって、持ち家購入には消極的な見方も広まっています。Fannie Maeが行った調査では、「今は家の購入には悪いタイミングである」と答えた人が70%にものぼったそうです。「良いタイミング」と答えたひとは25%にとどまりました。
家の購入は、株式ファンドの購入などと比べると、かなり個人的な要素が働く決断です。今買うべきか、待つべきか・・これにはユニバーサルな答えはありませんが、それぞれのご家庭で購入を考えるうえでのガイドラインみたいなものをまとめてみました。
需要はまだ高い
ここ数年でバブルともいえるに大きな伸びをみせた不動産価格ですが、サブプライムローン問題を発端にした2008年の金融恐慌時にくらべれば市場は安定しているという見方があります。安易なローンによってふくれあがった不安定な需要ではなく、またフリップ投資家(買って手を入れすぐ売りに出して利ザヤを稼ぐ投資法)などのせいでもなく、自分の住む家を買う、本来の堅実なバイヤー主導の市場であるという見方です。金利が上がった今も固い需要は存在し、在庫物件の減少とともに、いまだセラーマーケットが続いているという考え方です。よって、たとえ市場がスローダウンすることはあっても、いきなり価格が下がり始めるというようなことは期待できないであろうと予想するなら、今買うのも悪くないかもしれません。
価格変動を正確に予想することはできない
価格が今後下落するならば、買うのを待ったほうがいいのは当然ですが、問題はだれにも価格がどう動くかを正確に予想することはできず、またそのタイミングも予想不可です。いろんな人がいろんなことを予測しますが、こればっかりは誰にもわかりません。また不動産市場は、全国平均では考えられない世界でもあります。たくさんのローカル市場が存在し、そのローカル市場の中でもまたマイクロ市場が存在します。ある市では不動産価格が下がっても、となりの市では価格が上がることもあるし、同じ市の中の学校区が特に良いところでは今まで通り価格が上昇しつづけることもありえます。
変にタイミングを見すぎていれば家を買う機を逸することになるので、買うと決めたとき買い時と割り切るなら、買うのが理にかないます。
十分な頭金がある
家を購入しようと頭金を貯めてきた場合、おそらく現金かそれに近い形(CDなど)で持っていることになります。現在の高インフレ状況でも、銀行の金利は1%以下。ときがすぎればすぎるほど現金価値は目減りしていきます。不動産価格が下がることが分かっていれば待つのもいいですが、不動産価格が上がる、あるいはモーゲージ金利が上がるなら、今のうちに購入するほうがいいという考え方が理にかないます。
不動産はある程度インフレ率とともに価格上昇する(もちろん市場による個別要素はありますが)と期待できるので、現金を不動産に変えてしまえばある程度のインフレ保護が期待でき、また固定利子のモーゲージを組めば、たとえ将来的にインフレになったとしても利子は期間中変わりません。
市場によっては、、モーゲージ利子が高くなって購入を見送る人が多くなると、現金をたくさん持っているバイヤーにとって買いオファーが有利に働くこともあるかもしれません。
レントが上がり続ける
家を買わないならレントし続けることになりますが、レントの値上がりも大きな問題になっています。都市部では一年で30%も上がるところも珍しくない状態です。レントコントロールが施行されている場所もありますが、それでもそのコントロールがなくなれば、どのくらい上がるかは不確定要素が大きいです。これは家計を直接的に圧迫するだけでなく、長期的ファイナンシャルプラニングをも難しくします。家を購入しモーゲージを借りたなら、HOAやプロパティ税は上がっていく可能性はありますが、モーゲージ返済額は一定だという利点があります。これもかなり地域制があるので、その地域の状況を不動産エージェントさんとよく確認する必要があるかと思います。
人生のステージが家を買うとき
不動産市場という外的要因はちょっと横に置いておいて、ご自分の家計のライフステージでのタイミングを考えます。すぐに引っ越さなくてはならない要因が低いこと、当面10年くらいは落ち着こうと思っている場所であること、頭金が十分貯まっていること、月々の返済(プロパティ税、Home Owner’s 保険、HOAなどを含む)が長期的に無理のないものであること、収入は安定的に期待できることなどを鑑みて、今が家を持つときであると判断するならば、それが「買い」のときであるという考え方です。
この考え方に立つなら、たとえ買った後すぐに値が下がったとしても、そのまま住み続け10年、15年たって値が上がったところで売るなら大きな損はないかもしれないし、また今組むモーゲージの金利が高かったとしても、そのうち金利が下がったところでリファイナンスすればよいともいえます。
たとえばですが、以下がカリフォルニア州の持ち家の不動産価格の変遷です。2008年の金融恐慌で大きく値が下がりましたが、たとえこの恐慌の前に買ったとしても10年以上住むなら値は上がっています。おそらく今回値下がりがあったとしても、これほどの市場崩壊にはならないという予想が多いので、それが本当なら10年待たなくても値段がリカバーする可能性が高いかもしれません。逆に5年程度しか住む予定がないなら、値下がったところで売る可能性も高まってしまいます。
これはカリフォルニア平均であり、カリフォルニアの中にもこれより値が下がったところもあれば、値下がりがずっとゆるやかだったところもあります。マイクロ市場での状況は、ローカルの不動産エージェントさんに相談され吟味していく部分かと思います。
ここ数日私が悩んでいた事が今回の記事に記されていて読んだ後すごく気持ちが楽になりました。自分の決断がこの時点では間違ってはいなかったと思います。後は新しい土地でうまくやっていけるかが心配ですが今はまだ南カリフォルニアが恋しいですね。
新しい土地でのご活躍をお祈りします!
現在オレゴン州に住んでいますが、先日レントが200ドル値上がりする通達を受けたのでとてもタイムリーなトピックでした。
私達は家を買うにはまだまだ頭金が足らずかと言って高額な家賃を払い続けると頭金が全然貯まらない…という悪循環に悩まされています。
とてもわかりやすく有益な情報をありがとうございました。
その悩みは深いですよね。お気持ちお察しします。