健康医療費の節約法

アメリカではご存じのように、さまざまな健康保険のタイプがあります。健康状態によっても医療サービスの必要度が変わりますから、年間の自己負担医療費はそれぞれのご家庭でまちまちでしょう。健康でほとんどお医者さんには行かないという方や、HMOタイプの保険でDeductibleがないものをお持ちの方なら、年間の自己負担医療費は百ドル以下ということもあるでしょうし、High Deductibleプランの場合なら数千ドル以上を自己負担ということもあるでしょう。いずれにせよ、医療費をマネージするために考慮するとよいポイントをまとめてみました。

いわずもがなネットワーク内に留まる

自分でドクターを選ぶのなら、保険会社のWebページでネットワーク内のドクター(あるいは医療機関)を選びます。主治医(PCP)からリファーされて専門医に会う場合は、リファーされたその専門医もネットワーク内であることを自分で確認します。HMOの場合は、主治医がネットワーク内の医師を選んでリファーしてくれるはずなのでかなり安心していてよいですが、PPOやPOSなどの保険の場合は、リファー先がネットワーク内であることを自分で確認するのが必至です。施術をネットワーク内の病院で受けたが、そこで働いている麻酔科医がネットワーク外だった・・というようなケースもありますので、綿密な確認が推奨されます。

「びっくり請求」はアピールする

知らず知らずのうちにネットワーク外で医療サービスを受けてしまって受け取る「びっくり請求(Surprise bill)」が問題になっています。2022年には新しい法律が有効になり、緊急時に(本人が確認する余裕がない状況で)ネットワーク外で受けた医療サービスに対する費用は、ネットワーク価格でカバーされるようになるそうです。それ以前でもびっくり請求があった場合には、とりもかくにも、保険会社にアピールをしてみることも有効です。アメリカの医療費はかなりネゴがきくといっても過言ではないと思います。州によって法律も違えば、保険会社によって許容量も違いますが、アピールしてみることは考慮に足ると思います。

請求書をEOBをよく吟味する

レストランで支払う請求書はよく確認するのに、病院からくる請求書はよく見ないなんてことありませんか。アメリカでの医療費の請求書ではかなり高い確率で間違いがあるそうです。とくに複雑な施術や手術を受けたときには明細表をもらいます。いくつもの項目が列記されているでしょうから、ひとつひとつ自分が受けたサービスか、間違ったものが入っていないかをチェックし、よくわからない項目があれば確認するというのが賢明です。

保険会社から別途送られてくるExplanation of Benefits(EOB)と病院からの請求書を突き合わせて確認することも必要です。EOBでは正しく保険がカバーされているかを確認し、保険がカバーしていない部分が病院から請求されているかを確認します。

Preventive Care(予防ケア)は最大限に活用する

多くの保険プランで予防ケアは無料でカバーされます。Deductibleとは関係なく(Deductibleに達する前に)無料でカバーされる場合も多いです。自分の保険プランのカバー内容を確認し、無料で受けられるものはなるべく活用するのも賢明でしょう。例えばカバー対象となるのは(年齢制限などがある場合もありますが)、予防接種、うつ病スクリーニング、血圧/コレステロールなどのスクリーニング、マモグラム、子宮がん検診などなどです。

Telemedicineを使う

Covidのせいで、TeladocやMDiveなどのTelemedicine(videoや電話でのリモート医療サービス)の利用が進みました。保険会社が第三者サービスと提供してTelemedicineを提供している場合もあれば、病院や医師自身がビデオ診断などを提供している場合もあるでしょう。多くの場合は後者ではオフィスに出向いての受診と同じCopayがかかったりするようですが、第三者提供のTelemedicineの場合はCopayが安かったり免除されたりすることもあるようです。相談の内容にもよりますが、低コストのサービス利用も検討するとよいでしょう。

雇用主経由のベネフィットを最大化する

雇用主によってさまざまなベネフィットが提供されている可能性があります。High DeductibleプランのHSA(Health Saving Account)や、FSA(Flexible Savings Account)などはよく知られたベネフィットですが、そのほかにもWellness Program(健康維持と予防促進のためのプログラム。多くの場合無料)に参加するとなんらかのベネフィットがある場合などもあります。提供されているベネフィットを今一度確認してみるとよいかもしれません。

HSA(Health Saving Account)に参加する

健康保険でHigh Deductibleプランをお持ちであれば、シングルで$3,600/年まで、ご家族で$7,200/年まで、55歳以上なら追加で$1,000(すべて2021年値)、税控除でHSA口座への積み立てができます。雇用主からも積み立て援助があることも多いです。雇用主がHASの金融機関を特定している場合にはその中で手数料のなるべくかからない形で貯金/運用します。金融機関の特定がない場合にはなるべく手数料のかからない使い勝手の良い金融機関を選びます。HSAはFSAとは違い、長期運用が可能です。引き出すお金は、医療費に使うのが基本ですが、65歳以降は医療費以外の何に使ってもペナルティー/課税がありません。

FSA(Flexible Savings Account)を利用する

FSA口座には、$2,750/年までを所得税控除で積み立てることができ、医療、歯科、眼科、薬などの代金のために非課税で使うことができます。基本的にその年(年末が基本だが、多くの場合、数か月の猶予期間が設定されているのでその期日まで)に使う必要があります。ただ、プログラムにより、ある程度のお金はその年に使わなくとも次の年に持ち越せるものもあります($500までなど)。Covidの影響でFSAの利用がかなりフレキシブルに変更されているケースが多く、利用期日や持ち越しも特例対応があるようですので確認してください。

Deductibleがあるのなら受診を1年にまとめる

急な病気やケガには該当しませんが、ある程度予定がたつ手術や施術、検査については、なるべく一年にまとめてしまってDeductibleを早々に達成し、その後は保険会社のカバーを最大に受けながら医療サービスを受けるというやり方です。個人に加えて家族のDeductibleが設定されている場合は、家族全員分を対象にプラニングが必要です。

タックスリターンで高額医療費を控除

あまりケース的には多くないかもしれませんが、保険でカバーされない自己負担医療費が、年収(Adjusted Gross Income)の7.5%相当額を超えた場合は、超えた部分が税控除が受けられます。

ジェネリック薬に変更する

ドクターに処方箋をもらうときにジェネリック薬で処方してくれるようお願いする、あるいはすでにブランド薬(ジェネリック薬でない)で処方されている場合には、薬剤師にジェネリック薬で出してもらえるか聞いてみます。ジェネリック薬はブランド薬に比較し数十パーセント程度の値段であるケースが多く、大きなコスト削減が望めます。また自分の保険の処方箋のカバレッジをよく読んで、カバーがなるべくされる薬で処方してもらえないか、ドクターに相談するのも有効のようです。同じ症状に対処するため複数の薬が存在している場合には、薬選びをドクター任せにしないで、なるべく安くかつ効果も出る薬を相談しながら選んでいくという姿勢が賢明です。

薬も値段の比較をする

常備薬が必要な方は、メールオーダーで買う、あるいは30日分ではなく90日分で買うなどの方法で薬代が節約できます。www.pharmacychecker.comwww.singlecare.comGoodRx.com、 WeRx.orgなどで比較したり、使えるクーポンを調べてみましょう。不思議なことに保険を使うよりも、クーポン利用での現金払いのほうが安いこともあるそうです。また、ディスカウント・プログラムのようなものが提供されている場合もあるようです。www.needymeds.org などで調べてみましょう。ただ、クーポンやディスカウントを使うと保険を介さないで購入することになり、自己負担費がDeductibleへカウントされないというデメリットがあるので、節約額とDeductible達成の意義とを比較してどちらをとるかは判断が必要です。

医療サービスを受ける前に値段を調べる

自分で病院やドクターを選ぶことが許されている場合は、反対に言えば、値段的にも質的にもよい病院やドクターを自分で調べて選択する「義務」があるということにもなります。推薦されたままの病院やドクターをそのまま鵜呑みで使うのではなく、医療費(Coinsurance)を払うのは自分ですからもっとも条件のよいところを調べて選ぶという姿勢が肝心です。アメリカの場合医療費は、病院やクリニックによって大きな差があります。たとえば、レントゲンやMRIやマイナー手術などOutpatientサービスなら、一般的には病院ではなく専門のOutpatientクリニックで受ける方が安いようです。自分で調べて専門医やクリニックを特定したうえで、主治医にリファーを出してくれるようお願いするというのも賢明です。www.healthcarebluebook.com や  www.fairhealthconsumer.org でお住まいのあたりでの医療費見積もりを比較するのがいいでしょう。連邦のルールにより各病院や医療施設で、それぞれが行っている医療サービスの値段をホームページなどで公示することが進んでいきますから、それらも大いに参考になるでしょう。

価格のネゴが効く可能性もあります。多くの場合、即現金で支払うのが一番安い価格を引き出せるようです。あまり保険のカバーが良くない場合などは、敢えて保険を使わず即金のほうが安いということもあるそうです。

健康保険プランを見直す

一年を通して、自分の健康保険の使い勝手(Deductible、Copay、Coinsurance、Drug benefit、Doctor networkなどなど)を吟味し、不都合を感じるところ、改善が必要なところについて把握しておきましょう。一年に一度のオープンエンロールメントのときに、それらの点がもっとも解決される健康保険プランを探します。結婚した、子どもが生まれた、慢性病になった、新しく薬が必要になったというご自分側のステータス変更も保険見直しのきっかけになりますし、反対に保険プラン側の条件変更などももちろん見直しのきっかけになります。いったん入った保険を入りっぱなしにせず、見直しをかけていくことは肝心です。

保険プラン選択のヘルプを得る

雇用主提供の保険であれば、選択にあたっての比較表やカリキュレータが提供されている場合が多いでしょうから使いこなしてみましょう。州の提供のHealthcare Marketplaceの検索機能でプランを選ぶことも可能でしょうが、なかなか比較検討は一筋縄でいかない場合も多いでしょう。その場合は、ブローカーに相談されることをお勧めします。Healthcare Market Place では、保険エージェントやブローカーのヘルプを無料で受けることができます。

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